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17cmPPコーンコアキシャルについてのレポート

2009年11月10日 23時53分00秒 | オーディオ


こんばんは。今日はPARC AudioのPPコーンつながりということで、前回に引き続き17cmPPコーンコアキシャル(DCU-C171PP)についていただきましたユーザーレポートをご紹介したいと思います。詳しいレポートはこちらをご覧ください。

今回レポートをいただきましたS.A様からスピーカー購入についてのご相談をいただいたのは、まだ暑い7月中旬でした。S.A様は多くのPARCユーザーとは違い自作派ではなく、あくまで完成品システムをお探しのようで、海外製を含めかなり高額なシステムまでご検討されていらっしゃるご様子で、PARC Audioとしては非常に珍しいというか興味深いケースとなりました。今回ブログでご紹介するのもそのためです。

今だから言えますが、私自身最近の海外製の高額モデルを聴いているわけではないので、PARCのモデルが他社比でどのようなご評価を受けるのか、正直ドキドキ、またわくわくするような感じだったのです。こういう瞬間は、純粋に自分の設計したモデルがどのような評価を受けるのかが知りたいと言う、経営者というよりは一人のエンジニアになっちゃうんですね。

でそれからいろいろとメールでのやり取りをさせていただいたのですが、いろいろな海外製との比較試聴をされた中で下記のようなメールをいただきました。

その結果、貴社のPPのコアキシャルのほかに、価格帯がぜんぜん違うのですが、D社のFOCUS110 or 140も気になりました(他の複数の国内外メーカーについては候補からすぐに外れました)。視聴した環境(D社モデルは石丸電気のレフィーノ・アネーロで聞きました)がぜんぜん違うので、実は迷っています。

貴社のPPコアキシャルは別の日に2回視聴させていただきました。まず初日はジャズ(Waltz for Debby)を聞き、別の日にモーツァルトのレクイエムを聴きました。ジャズはすこぶる印象が良かったのですが、レクイエムについては、アンプが真空管だったせいもあり、D社ほどの解像度が出ていないように思いました。クラシックの交響曲のような非常に多くの楽器を使用したソースの場合においても、音がごっちゃにならないようにしたいと考えています。

この中の「PARCがD社モデルより解像度の点で負けている」というご指摘を伺い、正直私の技術屋魂に火が点いたというか、ちょっとスイッチが入っちゃったんですね。(笑)

正直この140というモデルを聴いたことはないので、想像(予想)でお話をすることはよくないことですし、私自身お客様の感じられたことに対して異論をはさむことは感覚の話のため普段はしないのですが、今回はちょっと違いました。

何故かと言うと、それは自分の経験や設計ポリシーとしてそれは無いのではと強く感じたからなのです。これはD社の振動板構造とPARCのそれとの違いからくるのですが、前から言っているようにPARCのPPコーンは振動板の軽量化ということにこだわって設計をしています。振動板を軽量化するということは剛性も落ちるので、当然歪特性とか特性面で言えば決して有利ということにはなりません。あくまで聴きやすさや音離れといった聴感上の良さを最優先にしています。また振動板を極限まで軽量化しているので、当然細かい音のニュアンス等はPPコーン系の中では一番よく出るようになります。もちろん聴感上の解像度という点も有利になると私は確信しています。

これに反して、D社のモデルは振動板構造もバランスドライブ型のセンターキャップと一体成形のタイプで、PP系の振動板もどちらかと言えばしっかりと厚みを持って剛性重視の設計のモデルと私は見ています。これはこのユニットがモニター系に多く使われるため、耐久性でもかなりシビアな要求に応えなければいけないという背景があるのではと思いますが、それに加えてこの一体成形タイプの振動板構造は、振動板自体の剛性は形状効果で高くできるものの、振動板の表層駆動が出来ないというかなり大きな欠点を持っていると私は感じています。この表層駆動については話すとちょっと長くなるので、また別の機会に詳しくしたいと思いますが、早い話が人は振動板の表面の音を一番細かく聴いているという非常に当たり前のことがベースで、一般のコーンタイプはボイスコイルのボビンがコーンの表面側に接着されるという実は非常にシンプルながら理にかなった構造なのです。でこのD社の一体型のタイプは、ボイスコイルが振動板の背面に接着されるので、いくら薄いとはいえその板厚を介して表層を駆動するということになっているのです。ちなみにこの背面駆動を嫌って必死で特殊な構造をやっていたのがソニーの平面スピーカーAMPでした。

なお一応ここで念のため言っておきますが、このD社の方式が全ての点でだめと言っているわけではありません。もちろん、耐久性の面や、特性面ではコーンタイプより優れている点はあります。ただ私がこだわる音離れや、聴感上の解像度についてはやはりベストとは思えないのです。というわけで下記のようなやりとりになったのです。

> ただユニット設計者として正直に言えば、好き嫌いは別として、ユニットの構造、 材質等を考慮しても、D社のユニットにPARCのPPコーンが解像度で負けているというのは結構悲しいコメントです。すみません、ちょっと言い過ぎかも。

実はこのコメントを聞きたくて、メールを差し上げたようなものです。所詮私は異なる環境下で視聴・比較しているに過ぎず、このため私の印象をそのまま信用することができなかったのです。また海外ブランドは輸入コスト、代理店コスト、販売店コストがそれぞれかかっており、価格はまったく異なっていても製造コスト的には実は貴社と同レベル以下、という可能性も考えていました。


まぁ後半のコストの件は一概に言うのは難しいと思いますが、肝心の解像度に対しての不安は何とかぬぐうことができたようで、その後の限定キットのご購入ということになったわけです。ちなみに、解像度優先ということでしたので、S.A様には今回テストケースとして1ペアだけサンプル製作をしていた中国製のピアノ塗装タイプをご購入いただきました。実はこのピアノタイプは音質は中国製といえどもなかなか生意気な音を出してくれたのですが、仕上げ面でまだちょっと問題があり、製品化はペンディングとしていたものなのですが、塗装面の問題部の写真を見ていただき気にならないとのことでご購入いただきました。で最終的なS.A様のご評価はユーザーレポートのとおりで、無事合格点をいただけたようで、本当にエンジニアとしてうれしい限りです。なんたって、日本のちっぽけな無名のメーカーが海外製の超メジャーなメーカー製に勝るご評価をいただけたわけですから・・・。これだからスピーカーは面白いです、はい。

最後にS.A様からいただいた下記のコメントをご紹介させていただき、今日は終わりたいと思います。


話は脱線しますが、最近の大手メーカーの製品は見てくれはいいけど・・・という気がします。代表にしろ、Nmodeの社長さんにしろ、昔会社内でさまざまな経験をされていたと思いますが、最近のエンジニアはそのような余裕がないと感じています。(職業柄(弁理士です)、第1線のエンジニアとお会いする機会が多いのですが、強くそのことを感じます)。
10年後のこの業界はどうなるのだろう、と少し心配になっております。


まぁ身につまされる話ではありますが、この体が動く限りPARC Audioも微力ながら少しでもオーディオファンのお役に立てるよう、頑張っていきたいと思います。では今日はこの辺で。次回は、今週末開催の音展関連のお知らせをしたいと思います。


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (GX333+25)
2009-11-11 12:36:11
PARC 様

 訳あって、もうしばらくは朝一番にケータイでブログの更新を見るのが最大の喜びです。

 しかし、うれしい一方で、罪作りだなぁ、と少々筋違いの恨みがましい思いも募ります。

 それは、読むにつれ、物欲がわらわらと湧き起こってくるのを抑えるのに苦心惨憺すること。置くスペースに経済的余裕もない、というのに、わらわらと……。

 いっそ、フィルタリングしちゃおうかしらん……
返信する
Unknown (PARC)
2009-11-11 23:11:10
GX333+25様

>読むにつれ、物欲がわらわらと湧き起こってくるのを抑えるのに苦心惨憺すること。

いやぁ、なんと申し上げてよいのやら・・・。
まぁ大蔵大臣様ともめない範囲でお願いできればと思います。
返信する
Unknown (GX333+25)
2009-11-12 06:35:22
でもね、20年前、新婚の頃に買って、今も居間で活躍中のセレッション(今じゃみんなのアイドル)を一緒に選んだのもこわ~い大蔵大臣なら、「そんなに気に入ったのなら、気分一新もいいことだから」と迷っていた私の背中を押してW3導入の決意を固めたのも大蔵大臣様。

時折私の部屋にきては、大音量のW3・サラウンドを聞いて、「すごい迫力と音、だけど全然うるさくないね」とか「綺麗なスピーカーねぇ、下の部屋じゃ猫がひっかきそうだから無理っぽいけど」とか喜んでます。

隣部屋の娘は「騒音被害者」なんで少し複雑そうですが、息子は目を丸くして聞いてます。

子供にもこうやって「良い音」とはこれだ、と教えてやらないと、耳は育ちませんし、大蔵大臣もいずれ巻き込んで……だからいずれ、どんと純国産ピアノ塗装のコアキシャル大量発注……となればいいな。

その頃には、もう20cm or 25cmダブルダンパー・コアキシャルの時代かなぁ……?
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Unknown (倉田 智朗(有大))
2009-11-13 02:20:09
PPコアキシャルは、本当に感動できたスピーカーですよね。
小型なエンクロージャーなのに低域もいいし、解像度も高い。
細かいことはおいといて、CDをきいて特等席にいるような感覚に陥ったのは、市販品だと10万は最低でもこえちゃうんですよね、今までの経験だと。

大きいコアキシャルの話題も出てますが、20cmとか25cmだと、ツイーターも大きく出来るのでしょうか?
ツイーターの帯域がひろがるのなら、20cm、25cmコアキシャル興味深いです。

でも、ウーハーを大きくすると低域のスピード感がへるってほんとですかね。17cmぐらいしか使ったことがないのでわかりません^^;
返信する
Unknown (GX333+25)
2009-11-13 06:43:03
倉田 様

大丈夫、代表がお作りになると、きっと大口径ならではのゆったりとした低音と、小気味のいい応答性が高次元で両立した凄いモデルになりますよ。

後はわれわれで、「PARC Audio普及会」でも作って、より多くの方々に、その良さを知っていただく、ってところですかね。
返信する
Unknown (倉田 智朗)
2009-11-14 00:34:05
>大丈夫、代表がお作りになると、きっと大口径ならではのゆったりとした低音と、小気味のいい応答性が高次元で両立した凄いモデルになりますよ。

楽しみですね。25cmだと、フロア型に近くなっちゃうかな?

そういえば、D社のスピーカーは私も大好きで、昔使っておりました。
D社のブックシェルフはバッフルが背面についてますので、低域はスピード感より量感があったと覚えております。

ところで、D社のスピーカーは10万強のスピーカーでも各ユニット一万5000円x4ですので、原価が全く違ってたりしますね。勝負するならPARC Audioの3万円のユニットをもってこないと。なんちゃって
返信する
Unknown (PARC)
2009-11-14 00:46:51
GX333+25様

>子供にもこうやって「良い音」とはこれだ、と教えてやらないと、耳は育ちませんし、大蔵大臣もいずれ巻き込んで……だからいずれ、どんと純国産ピアノ塗装のコアキシャル大量発注……となればいいな。

はい楽しみにお待ちしております。


>後はわれわれで、「PARC Audio普及会」でも作って、より多くの方々に、その良さを知っていただく、ってところですかね。

ありがとうございます。零細ガレージメーカーには最大の武器となりますね。なぜなら数千万円の広告費をかけた広告よりも、実際に使っていただいているユーザーの皆様の生の声ほど説得力のあるものはありませんから。
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Unknown (倉田 智朗)
2009-11-14 00:47:46
>バッフルが背面

失礼、ダクトが背面の間違いでした。
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Unknown (PARC)
2009-11-14 00:51:05
倉田様

> PPコアキシャルは、本当に感動できたスピーカーですよね。小型なエンクロージャーなのに低域もいいし、解像度も高い。

ありがとうございます。これで開発の苦労も吹っ飛びますね。


>大きいコアキシャルの話題も出てますが、20cmとか25cmだと、ツイーターも大きく出来るのでしょうか?
ツイーターの帯域がひろがるのなら、20cm、25cmコアキシャル興味深いです。

ウーファーが大きくなるとボイスコイル径も大きくできるので、その意味ではTWも少し楽になりますね。ただそれと同時にウーファーのSPLも上がるので、通常のドームタイプでは少し限界も出てくるかも知れません。

返信する
Unknown (PARC)
2009-11-14 00:52:59
倉田様

>楽しみですね。25cmだと、フロア型に近くなっちゃうかな?

大口径ユニットについては、長~い目で見てやってくださいませ。(^^;
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