こんばんは。今日は本当はイベント情報を書く予定だったのですが、前回書き忘れたことをまた思い出したので、忘れないうちにちょっと書いておきます。
プロ用ユニットをやっている時、レコーディングスタジオ、映画館に加えて、ソニーではPA用にもトライしていたのですが、その当時PAの現場で活躍されているいろいろなサウンドエンジニアの方と話をすることが結構あったのですが、その中で非常に印象的なことがありました。
その方(Hさん)はその世界では著名なサウンドエンジニアで、当時も非常にメジャーなアーティストの方々のPAを専属で担当されていらっしゃいましたが、ある時「冨宅さん、いいPAの音ってどんな音だと思う?」と聞かれたのです。Hさんのコメントは、「生の音って大きい音量でもうるさく感じないでしょ。例えば、コンサートに行って隣の人の話す声も聞こえないくらいの大音量なのに、全然うるさいとは感じないし、違和感も無い。でコンサートが終わって会場を出てみると、耳がキーンって感じになってて、そこで初めて今までどのくらい大音量を聴いていたのかを実感する。そんな経験ないですか?僕はそういうPAが正解だと思うんだよね。」と。
いや正直これを聞いた時はほんと驚きました。先に書いたようにHiFiで私やSさんが目指していたことと全く同じことを言ってるなぁと・・・・・。まさかPAの世界でも同じようなことを考えている方がいるとはちょっと意外にも感じられたのです。PAをちょっとなめてました。ごめんなさい。結局Hさんの言ってることも、早い話が自然な音ということにつながるのだと思います。ただ音量や対象とする人の数がHiFiとはずいぶん違いますが。
ちなみに最先端のPAは私が思っていた以上に進んでいて、会場にマイクを立ててPAをしながら出ている音を常に測定しており、会場の温度変化等で刻々と変わる音響特性を常に微調整しているんですね。コンサートの最初と最後では音のバランスや印象がずいぶん違うと感じることが皆さんも経験ありませんか? 私はこのことを知ってから、コンサートに行ってもそのことが気になって、100%楽しめなくなったりしました。あ、今ちょっとバランスをいじったなとか。まぁこれも職業病かも知れません。今度皆さんも機会があったらコンサートでミキサー席にいるエンジニアがどれくらい奮闘しているか見てみてください。特に初日はやりながら調整をしていくようで、かなり大変なようですよ。
ちょっと脱線しましたが、Hさんの話でもう一つおもしろい話があります。それはある超メジャーアーティストのPAを担当した時のこと。いつものように音の調整を済ませそのアーティスト担当の偉いさん(確かプロデューサーだったような)が来られて音の確認をしてもらったところ、その方が言ったことが「なんだこの音。こんなCDみたいな音じゃダメだよ~。」と。Hさんに言わせれば、CDの音とはそのアーティストが目指す理想の音ではないのかと。その理想の音であるべきCDの音に出来るだけ近づくようにするのがサウンドエンジニアの使命ではないのかと。CDの音を否定されたら、サウンドエンジニアは何を目標に音を作ればいいのか?というHさんの嘆きは私も非常に分かります。どうやら、その偉いさんが望んでいた音は、コンサートらしくど~んと迫力のある少々はったりのきいた音だったようなのですが、こんな感じのコンサートはほんと多いと思います。中には、せっかくアーティストが素直な声で歌っているのに、PAでそれを台無しにしていることもあったりして、なかなかPAの世界も大変なんだなぁとつくづく思います。
でもHさんと同じような考えを持っているアーティストもいらっしゃって、スタジオモニター用スピーカーをそのままPAに使うという大胆不敵なことをやったソニーのPA用モデルを今でも使っていただいている森山良子さんや加山雄三さんのような例もあるんですね。皆さんも機会があれば是非森山さんなんかのコンサートに行ってみてください。ほんとPAの存在を感じないような自然な音が出ていると思います。
最後はちょっと宣伝みたいになっちゃいましたが、やっぱり最後に言いたいのは自然な音に勝るもの無しって感じでしょうか。ということで、このシリーズはこれで一応終わりとしたいと思いますが、また何かおもしろい話を思い出したら追加したいと思います。
次回は、秋に予定されているイベントについてお知らせしたいと思います。ちなみに延期となっていた中国出張を7/27~7/31にやることになったので、来週はブログの更新はお休みとなります。なので何とか出張前にもう1回更新したいと思ってます。(たぶん)。
プロ用ユニットをやっている時、レコーディングスタジオ、映画館に加えて、ソニーではPA用にもトライしていたのですが、その当時PAの現場で活躍されているいろいろなサウンドエンジニアの方と話をすることが結構あったのですが、その中で非常に印象的なことがありました。
その方(Hさん)はその世界では著名なサウンドエンジニアで、当時も非常にメジャーなアーティストの方々のPAを専属で担当されていらっしゃいましたが、ある時「冨宅さん、いいPAの音ってどんな音だと思う?」と聞かれたのです。Hさんのコメントは、「生の音って大きい音量でもうるさく感じないでしょ。例えば、コンサートに行って隣の人の話す声も聞こえないくらいの大音量なのに、全然うるさいとは感じないし、違和感も無い。でコンサートが終わって会場を出てみると、耳がキーンって感じになってて、そこで初めて今までどのくらい大音量を聴いていたのかを実感する。そんな経験ないですか?僕はそういうPAが正解だと思うんだよね。」と。
いや正直これを聞いた時はほんと驚きました。先に書いたようにHiFiで私やSさんが目指していたことと全く同じことを言ってるなぁと・・・・・。まさかPAの世界でも同じようなことを考えている方がいるとはちょっと意外にも感じられたのです。PAをちょっとなめてました。ごめんなさい。結局Hさんの言ってることも、早い話が自然な音ということにつながるのだと思います。ただ音量や対象とする人の数がHiFiとはずいぶん違いますが。
ちなみに最先端のPAは私が思っていた以上に進んでいて、会場にマイクを立ててPAをしながら出ている音を常に測定しており、会場の温度変化等で刻々と変わる音響特性を常に微調整しているんですね。コンサートの最初と最後では音のバランスや印象がずいぶん違うと感じることが皆さんも経験ありませんか? 私はこのことを知ってから、コンサートに行ってもそのことが気になって、100%楽しめなくなったりしました。あ、今ちょっとバランスをいじったなとか。まぁこれも職業病かも知れません。今度皆さんも機会があったらコンサートでミキサー席にいるエンジニアがどれくらい奮闘しているか見てみてください。特に初日はやりながら調整をしていくようで、かなり大変なようですよ。
ちょっと脱線しましたが、Hさんの話でもう一つおもしろい話があります。それはある超メジャーアーティストのPAを担当した時のこと。いつものように音の調整を済ませそのアーティスト担当の偉いさん(確かプロデューサーだったような)が来られて音の確認をしてもらったところ、その方が言ったことが「なんだこの音。こんなCDみたいな音じゃダメだよ~。」と。Hさんに言わせれば、CDの音とはそのアーティストが目指す理想の音ではないのかと。その理想の音であるべきCDの音に出来るだけ近づくようにするのがサウンドエンジニアの使命ではないのかと。CDの音を否定されたら、サウンドエンジニアは何を目標に音を作ればいいのか?というHさんの嘆きは私も非常に分かります。どうやら、その偉いさんが望んでいた音は、コンサートらしくど~んと迫力のある少々はったりのきいた音だったようなのですが、こんな感じのコンサートはほんと多いと思います。中には、せっかくアーティストが素直な声で歌っているのに、PAでそれを台無しにしていることもあったりして、なかなかPAの世界も大変なんだなぁとつくづく思います。
でもHさんと同じような考えを持っているアーティストもいらっしゃって、スタジオモニター用スピーカーをそのままPAに使うという大胆不敵なことをやったソニーのPA用モデルを今でも使っていただいている森山良子さんや加山雄三さんのような例もあるんですね。皆さんも機会があれば是非森山さんなんかのコンサートに行ってみてください。ほんとPAの存在を感じないような自然な音が出ていると思います。
最後はちょっと宣伝みたいになっちゃいましたが、やっぱり最後に言いたいのは自然な音に勝るもの無しって感じでしょうか。ということで、このシリーズはこれで一応終わりとしたいと思いますが、また何かおもしろい話を思い出したら追加したいと思います。
次回は、秋に予定されているイベントについてお知らせしたいと思います。ちなみに延期となっていた中国出張を7/27~7/31にやることになったので、来週はブログの更新はお休みとなります。なので何とか出張前にもう1回更新したいと思ってます。(たぶん)。
>特に初日はやりながら調整をしていくようで、かなり大変なようですよ。
あ、やっぱりそうでしたか。むろん、放送を通じて、なのですが、特に生中継だとそのことを感じます。生中継されるほどの人のコンサートなら、有名どころの会場で、当然、データも豊富にあって、経験も豊かなエンジニアがついているんでしょうが、それでも実際にお客さんを入れて、走り出してみないとわからないところがあるんでしょうね。
気のせいかな、と思っていたのですが、そうじゃなかったのですね。
>コンサートらしくど~んと迫力のある少々はったりのきいた音だったようなのですが、
これもよくわかりますね。それに、これ、お客さんもこっちを望んでいたりはしませんか? 結果、ショップの店先は、ドカン、バコン、バリン……の連続という結果になっているような気がします。
P.S.
中国出張、お気をつけて。
>それでも実際にお客さんを入れて、走り出してみないとわからないところがあるんでしょうね。
そのようですね。私は吸音体としての入場客の影響が出るのかと思っていたら、それ以外に人の影響による会場の温度変化が大きいようで驚きました。
実は、今までに2回、音が酷いという理由でコンサートを途中で退席しました
良い音楽を作るには、お客も責任もって不買を貫かなくては。
偉いさんの言うことも分かるような気がします。
コンサートは日ごろCDばかり小音量で聞いている
ファンにとって非日常の世界ですからスケールの大きな(特に低音の迫力のある)サウンドを聞いてみたいという気持ちも分かる。
CDのサウンドがアーチストの理想とする音なんでしょうか?私は違うような気がする。CDは売れなければ話になりませんので、多少エフェクトの聞いた高音部を持ち上げた刺激的な音になっていると思いますが・・・、特にポップスはそう思います。70年代の名盤をCD化して発売したものを聞いてみると大抵がっかりしてしまいます。ナチュラルさを失っていますので。
アコースティックなコンサートは社長のおっしゃるとうり、ナチュラルサウンドでPAして貰いたいと思います。
しかしどこへ行ってもPAは音量ばかり大きくて、歪みの少ない良質の音を聞いたことがありません。
野外コンサートは特にそうです。その点がいやでポップスのライブに行かなくなってしまいました。残念!
Meyer Soundのパワードスピーカーです。
お聞きになった方も多いと思いますが、衝撃を受けて、現在に至っています。
あそこが、現在の原点です。
>実は、今までに2回、音が酷いという理由でコンサートを途中で退席しました
たしかに私も思わず出ようかと思ったこともあったりします。ただ貧乏性の私は、もったいないとそのまま我慢して残っちゃいますが・・・。(^^;
>ファンにとって非日常の世界ですからスケールの大きな(特に低音の迫力のある)サウンドを聞いてみたいという気持ちも分かる。
たしかにそういう考え方もあるかも知れませんね。音楽の内容にもよると思いますが。
>CDのサウンドがアーチストの理想とする音なんでしょうか?私は違うような気がする。CDは売れなければ話になりませんので、多少エフェクトの聞いた高音部を持ち上げた刺激的な音になっていると思いますが・・・、特にポップスはそう思います。
そういう仕上がりのCDが多いことも事実ですが、私は基本的な考え方として、CD(もしくはレコード)はそのアーティストが自分の作品を表現する非常に重要な手段であって、そこは当然そのアーティストが目指す音を出すべきではないかと思います。自分が目指す音はこっちだけど、それでは売れないからこうしようという感じでしているとしたら、それはすごく悲しいことだと思います。それではアーティストとは呼べないのでは・・・。
>Meyer Soundのパワードスピーカーです。
メジャーPAの代名詞とも言えるモデルですね。私もずいぶんと競合させていただきました。たぶん、対戦相手としてはこれが一番多かったかも知れません。非常に安定感のある音で、これはこれで有りだなぁと感じていました。
はて、Hi-Fiアンプがもちこたえらるのかいな、という懸念もものかわ、見事にもちこたえたばかりか、音が出ているのか出ていないのかわからないのに、耳許に忍び寄るように音が近づいてきて全員を驚かせました。
この驚きが「原点」かもしれません。
>この驚きが「原点」かもしれません。
そうでしたか。オーディオ好きの皆さんには、それぞれこのような衝撃的なご経験がおありなのでしょうね。