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吸音材について

2008年03月31日 22時51分19秒 | オーディオ



PARC Audioとして仕事を始めてみて、いろいろと気がついた(驚いた)ことがありますが、キャビネット用の吸音材もその中の一つでした。

先ずWEB等でユーザーの皆さんが書かれている自作記事等で吸音材についての表記が意外に少ないのではということ。音質(特に中低域)の調整において吸音材というのは非常に影響が大きいのですが、意外にそのことに無頓着なユーザーの皆さんが多いようにも見えるのです。まぁこれは実際にはいろいろと調整をされているがわざわざ書いてないということかも知れませんが・・・・。

私の本業はユニット屋ですが、ユーザーの皆さんの試聴記等で低域が全くでないとか、逆に低域が出すぎて音のバランスが悪いとかのコメントを見ると、もう少し吸音材等で調整できる可能性もあるのではなどと思ってしまいます。もちろん、これはPARC Audio以外のユニットに対しても同じことが言えます。

吸音材の調整というのはシミュレーションとかで簡単に済ませられるような内容ではないので、結構根気と時間が必要になったりします。人によっても調整の方法はいろいろあるので、これが定番というのを言うことは難しいですが、私の場合は吸音材というのは必要悪であって少ないにこしたことはないと考えています。密閉箱などは別として、良いユニットと適正なBOXチューニングが出来ていれば、そんなに大量の吸音材を使わなくてもうまく音はまとめられるのではと思います。

経験的なことで言えば、過度の吸音材処理はユニットが持っている情報の鮮度を奪い、全体に開放的でない音になることが多い気がします。私の場合は、先ず最低限の吸音材を入れてチューニングをスタートさせてみて、どうしても気になるようなところがあればそれが無くなる(または気にならなくなる)最低限の量を追加していき、仕様を決めています。

この時、量だけでなくその種類や位置も非常に重要です。位置についてはそれぞれのBOXによって一概に言えませんが、各種材料について私の簡単な印象を参考のために書いてみます。

グラスウール
 吸音材としては一番の定番材料。材質は、その名のとおり細かいガラス繊維でできています。他の材料に比べ吸音率も高く、価格もそんなに高くないので、以前はメーカー製でも多く使用されていました。ただ細かいガラス繊維が肺に入ると健康障害が出るとのことで、大手メーカーでは作業者の健康に留意してグラスウールをむき出しそのままで使用することはなくなり、表面を薄い不織布で覆ったものを使うようになっています。でもこの不織布で覆ったものは音が良くなく、出来れば無しで使いたいというのが本音のところです。
 ただ個人的に私はあまりこの材料は好きではありません。その理由は、ガラス繊維固有の明るめの音色で、どうも触った感触と同じように硬めで無機質な音になるように感じるためです。まぁこれは私の個人的印象なのであくまで参考程度にしてください。

粗毛フェルト
 これも定番吸音材の一つで、廃材になった衣類等を細かくほぐしてフェルト状にしたもので、綿や化繊、ウール等のものが原料になっています。この材料の長所は、価格が安いことと、いろいろな材料からでできているため音色にクセが少ないところかと思います。
 品番によって厚み、密度、硬さ等に違いがありますが、最近流通しているものは比較的硬いものが多く、音質的には良くも悪くも中庸といった感じでしょうか。材料費の関係で低価格のメーカー製品には非常に多く使われています。
 実は私が今まで使った吸音材の中で一番気に入った吸音材もこの仲間でしたが、それは非常に密度が低く特殊なもので、原材料に使う良い廃材が入手困難になったため、残念ながら現在では製造されていません。吸音材に限らず、昔あった良い素材で今は入手できなくなったものは意外に多く、非常に残念なことです。

化繊系の吸音材
 アセテートやナイロン、その他各種化繊系の吸音材ももう一つのメジャーなGpとして存在します。この材料の長所は、化繊系ということで素材が安定していることです。化繊ですがグラスウールのような健康被害も無く、安心して使える材料の一つです。
 ただ一般的な傾向として、市販されているものは厚みが厚いものが多く、比較的容積の小さめのBOXに使うと吸音過多となる傾向が強く、その意味であまり使いやすい材料ではないかも知れません。
 あくまで個人的な好みですが、実はこの材料も私はあまり好きではありません。理由はグラスウールと似ているのですが、どうしても音色に人工的な響きを感じてしまうのです。吸音材以外も含め、スピーカーでいろいろな素材を検討してきましたが、経験的に言えることは素材としてはやはり天然材の方が音色的に好ましいものが多いという印象を強く持っています。紙、ウッド、シルク(絹)、ウール、麻、天然ゴム、漆など天然材には本当に良い物が多くあります。

ウレタン系吸音材
 これはあまり一般的ではないかも知れませんが、市販されているものは表面に凹凸のエンボス加工をされているものが多いようです。材料コストが高いためメーカー製のスピーカーでの使用実績は少ない感じがしますが、他の材料とは少し違う音色があります。
 個人的な印象で言えば、少し重め厚めの音色といったところでしょうか。ただあまり薄い形状では使いにくいため、小型のBOXにはむいていないと思います。
 以前検討した時に、布エッジのウーファーだったにもかかわらずこのウレタン吸音材を入れると音が少しウレタンエッジのウーファーのような音になり驚いたことがありましたが、他の素材に比べると好き嫌いがはっきりと分かれる材料ではないかと思います。

ウール系吸音材
 これも私が今まで使ったものの中で非常に気に入っている材料の一つです。グレードによって100%ウールから化繊との混合品までいろいろありますが、やはり天然ウール100%のものがダントツで音質は良いと思います。
 この材料の長所は、何と言ってもその音色の自然なことでしょう。これを聴くと他の材料はやはりちょっと異質なものを感じてしまいます。またこの材料は、板厚が薄いものが多いため、比較的小容積のBOXまで使うことができ、調整の範囲も広いので初心者の方にも安心して薦めることができます。大手メーカーの製品にも使われることが多い素材の一つです。


最後にちょっと宣伝のようになってしまいますが、今回PARC Audioでも100%ウールの吸音材(
DCP-A001)を発売することにしました。実は、いろいろなユニットの試聴BOXの検討等で吸音材を入手しようとしたところ意外に適当なものが販売されていなかったというのが背景にあるのですが、現在入手可能な材料の中では厚みも10mmと扱いやすく自然な音色のものなので、今まであまり吸音材の検討をされていなかった方は是非一度お試しいただければと思います。きっとPARC Audioのユニットとの相性は抜群に良いと思います。では今日はこの辺で。

コメント (8)
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