取組を了へて目を伏せがちにして立つ北天佑ただ美しき
八日目の切符を持てど七日目に引退せしはいとど悔しき
川と名付く四股名いよいよ少なしか蔵前国技館跡形もなし
こんなことなんになるのと思ふたびミヅノの硬球日に日に重し
浅瀬川に力水をば付けたるは大竜川を下しし長谷川
ねんごろに蛇の目の砂を掃き浄むる呼出重夫の背中(せな)のひらかな
見逃しの三振とれば相棒がぐぐつとさし出す勝利球かな
倒れこみ頬擦(こす)りたるベースラインより白き歯を生(お)ふ修造かな
たおやかな弧を描く貴女(きみ)の身体よりファーストサーブよ放たるるべし
新しきスパイクを履く晩き春ラインに懸かる花びらもどかし
百分の二秒で破れし友を見つ四分過ぎたる麺を食らひぬ
渾身の柵越え放つイチローはかくして普通名詞になるかも
フェンスなき学童野球スタジアム昼顔越ゆるが本塁打なり
何かしら秘伝書かれたる巻物のごとく日本はバトンを継ぎぬ
(再開から29年上半期まで)平尾誠二へのオマージュの歌はこんな形でまとめたくないので載せていない。