都立高専交流委員会ブログ

都立高専と城南地域の中小企業(特に製造業)との交流・連係を図り、相互の利益と地域社会・地域経済の発展を目指します。

東京都への政策要望/原案 第1部 グロ-バル経済と産業政策の地域化・分権化・補完化、中間自治体の役割

2012年09月01日 | Weblog
 東京都への政策要望/原案 の 第1部 となります。
 
 地域の産業と人材育成、地域社会が直面する課題についての 政策対話のテ-ブルづくり のため
 
皆様の議論の「下敷き」にしていただけば幸いです。
 
 
 
  世界経済グロ-バル化の新段階と地方自治体の新しい課題
 
  産業政策の地域化、分権化、補完化と中間自治体としての東京都の果たすべき役割
  
 
1.地方分権改革と地域産業コミュニテイに立脚した産業政策の地域化、中間自治体の役割の明確化
 
 5月25日(金)の日経産業新聞1面「ものづくり現場発/墨田発」は、墨田区の中小企業の先端的取り組みを紹介するとともに、大田区との対比で、都内のそれぞれの地域の産業構造の違いを紹介しています。
 それぞれ、両区の産業構造は、3~4千といった製造業事業所のうち20%余りが「金属製品」を扱うことは共通していますが、墨田区は印刷、繊維、皮革製品へ展開し、大田区では、生産機械、汎用機械、電気機械(計39%……金属製品と合わせて約60%)へと地域産業の展開が進められてきました。
 墨田区では、明暦の大火(1657年)以降、多くの職人が在住し、様々な生活用品生産し、日用雑貨、医療、衣料、皮革製品などの最終消費財に広く展開する伝統をもち、先端的な製品開発においても、建設、医療、衣料、美術品保護などに展開し、18社の中小企業が、スカイツリ-開業に合わせた地域の観光資源として、電気自動車を開発するなど、地域密着型の展開を進めているといえます。(以上、日経産業新聞紙面より)
 一方、1960年代から大規模生産拠点が地方へ、そして、途上国へ移転していった大田区では、大企業の製品開発拠点が、首都(東京)圏の西側に集中的に立地したことにより、これと結びつき、試作、金型、生産設備、高機能部品等、わが国の国際競争力の担い手であった機械、電気/電子など、大企業の製品開発を支える生産財を提供することによって発展し、工業専用地域の存在などにより、高付加価値製品を生産する(従業員規模100名前後の)中核的な企業群を生み出してきました。1995年、大田区産業プラザ開所に合わせた「APEC・大田区中小企業国際フォ-ラム」では、10名の地元中小企業経営者からなる起草委員が「『ナショナルテクノポリス』から『グロ-バルテクノポリス』ヘ……新しいステ-ジへの挑戦」という「宣言」を発しております。わが国 → グロ-バル経済の産業中枢 に、生産財を供給することにより、産業集積の基軸を形成してきたのが、この地域です。
 多摩地域は、電子・情報・通信などの分野のテクノロジ-開発で、中小企業が重要な役割を果たしています。
 いうまでもなく、それぞれ独自の産業集積は、基礎自治体の境界に沿ってつくられているものではありません。大田区の名称は、大森+蒲田から来ていますが、大森駅前の半分は品川区です。一体化した産業集積が続いていて、大森駅前から品川駅を越えると、ソニ-や明電舎の本社工場があった地域となります。多摩川沿いにあるキャノンの本社からガス橋を渡った川崎市の一帯には、大田区と同様に、機械工業の高度な基盤技術をもった工場群が続きます。
 これらから理解されることは、地域社会の産業コミュニテイが、自治体(地方政府)レベルでは、単一の基礎自治体を超える地域に形成され、中間自治体を超えて(グロ-バルに)展開されていくことです。
 猪瀬直樹副知事/東京市政調査会西尾勝氏が、7名の委員の一人として参加された地方分権改革推進委員会の「勧告、意見等」では、地方分権改革=「中央政府と対等、協力の関係にある地方政府の確立」(「基本的考え方」)の基盤として「団体自治と住民自治」を一体で強化し(「中間的取りまとめ」*)、「最も身近なところで、行政のあり方国民・住民がすべて自らの決定・制御できる仕組みを構築」(「基本的考え方」)する……そのために、基礎自治体を(最)優先し、「民主主義の原点」としての「自治体単位から小学校区単位」の住民自治を再構築する(「中間的な取りまとめ」)としています。(地域社会が次世代人材育成に責任を負うスク-ルボ-ド=学校理事会などが想定されているでしょう。)
 (*「『団体自治』の拡充と『住民自治』の実質的な確立」)
 一方、中間自治体としての東京都の産業政策もまた、地域の実態に合わせ、東京圏の広域基礎自治体を領域とする「地域産業コミュニテイ」を、その基盤に据えて、地域化していくことが急務になっているといえます。
 そのために必要とされるのは、東京都の産業政策の基礎を、東京圏の多様な産業集積やそれぞれの産業コミュニテイの直面する課題、各基礎自治体の産業政策や関連するセクタ-の現状に対する評価におき、それぞれの地域の実情にあわせたコ-ディネ-タ-の役割を果たしながら、それぞれ地域の産業コミュニテイの歴史的形成に合わせた、多様で独自の産業発展の道筋や産業環境形成を進めることです。
 地域産業の発展と次世代産業人材育成、産業人材の生涯教育と新市場、新製品、新産業創成を一体で進めていくことは、地域の産業コミュニテイの持続的発展に欠かすことのできないことです。この意味でも、東京都の果たすことのできる役割、果たすべき役割は、大変、大きなものがあります。
 国政が、国民が「正当に選挙された国会における代表を通じて行動」する間接民主主義を原則とするのに対して、憲法95条(地方自治特別法の住民投票)や地方自治法が「議会」「執行機関」の前に「直接請求」を置いていることにも明らかなように、地方自治は直接民主主義を基盤とするものです(地方自治の本旨)。
 地方分権改革による地方政府の基盤に座るのもこの市民参加=直接民主主義に他なりません。民主政治の最良の学校としての市民政治と国政全体のあり方を決する間接民主主義の二つが一体となって 国民主権 が実現されていくものです。
 その政策形成、執行プロセスに、地域産業や地域における産業人材育成の担い手、様々な地域社会のアクタ-達を参加させ、「団体自治」と「住民自治」を一体で強化する地方自治体の産業施策にとって、中間自治体が、一方的に「上からのビジョン」を形成したり、一律の基準で政策を進めること、また、新興国の国家予算並みの予算を使って「目玉事業」を行うこと、特定の基礎自治体の枠内だけでの政策執行を進めることは、市民や地域社会のそれぞれの担い手が自らの責任で自らのあり方を決していく阻害要因になりかねません。
 これからの地域の産業の発展に必要とされているのは、地域の産業の担い手たちや人材育成、研究開発など、これに関連する様々なアクタ-が能動的に参画し、ここに、複数の基礎自治体や公的機関が関与してオ-ブンイノベ-ションを進めるとともに、共同の議論の中から地域社会の産業環境整備を進め、様々な公的機関の施策を効率的に連鎖させていく、新しい型の産業イノベ-ション拠点の形成でしょう。
 中間自治体としての東京都が果たすべき役割は、高度な政策知の集積と、産業政策が執行される現場の実情の広範な把握を前提に、地域の産業コミュニテイを基盤として、東京圏に複数の産業イノベ-ション拠点を形成して、地域産業の担い手たちを、ここに大胆に参画させるとともに、その担い手自身が、それぞれの産業コミュニテイの独自の発展を生み出していくコ-ディネ-タにつきるでしょう。
 地域の産業コミュニテイの中核に位置する東京都立産業技術高等専門学校のキャンパス、産業技術研究センタ-などのプラットホ-ム、首都圏に立地する多様な研究開発機能/人材育成機能、基礎自治体の産業政策などを上手に結び、特に、次世代産業人材育成、生涯教育と新市場、新製品、新産業創成を結ぶラインを地域産業コミュニテイと深く結び付けていくこと(産業政策の地域化、分権化、補完化)が東京都の産業政策の基軸になるはずです。
 すでに、冷戦終結により始った 世界経済のグロ-バル化(国境を超えた一体化)は、新しい段階に入っています。地方分権改革(の新しいステ-ジ)が「掛け声倒れ」になる時代にも、私たち自身の意志で終止符を打たなくてはなりません。
 東京都の産業政策のこれまでの基盤となっていたものを正しく検証し、地方分権改革と地域産業コミュニテイに立脚する産業政策の新しい基軸を形成していくことが要求されます。
 
2.世界経済グロ-バル化の新しい段階 に 照応した 新しい自治体ビジョン の形成
 
 世界経済グロ-バル化への対応は、言うまでもなく、民間(企業等)が先行して進めてきたものです。
 地方分権改革推進委員会の「勧告・意見等」が、「国境を超えた地域間競争」の時代と結び付けて「地方政府の確立」を議論し、東京国際空港の国際化などを介し、多くの基礎自治体のビジョンの中にも、この課題が取り上げられるようになりました。
 ところが、東京都の「アジアヘッドクォ-タ-特区構想」が、同時に指定を受けた川崎市の「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」と比べ、明らかに、具体性に欠けるように、それぞれの基礎自治体の「国際交流都市構想」などを含め、まだまだ、地に足のついたものになっているとは言えません。
 経済のグロ-バル化は、言うまでもなく、わが国企業や産業のグロ-バル展開(従来の「貿易立国論」等)を意味するものではありません。冷戦終結による単一の世界市場の形成と、これを介して、世界経済がグロ-バル化(国境を超えて統合、一体化、ボ-ダレス化)したことを意味します。この結果、ものづくりの分野では、労働集約型のプロセスが、一気に、先進諸国から途上国に移転、東アジアが世界の生産センタ-として、一体として機能するようになるとともに、国境を超える工程分業により各国の産業構造の転換、競争力基盤の再構築が要求され続けてきました。
 中国の国内自動車販売台数は、2006年にわが国を、2009年に米国を越え、昨年、2010年には、わが国の4倍に当たる1800万台強となりました(このほとんどを中国国内より供給)。リ-マンショックを介して、国際経済の構造は大きく変化し、先進国が世界の経済を主導する時代が終わりました。同時に、わが国は「GDP世界2位の経済大国」の地位から降り、わが国国内市場の相対的価値は、急速に低下しています。新興国では、国民の所得が飛躍的に向上し、これに照応した産業構造の転換が急務となり、市民社会を基盤とした国内政治/社会秩序確立の社会革命の前夜に入りつつあります。
 このような国際経済環境の激変の中で、わが国は、2010年の「地域貿易バランス」において、アジアに対して10兆円余り貿易黒字を計上しています(中国+香港に3.2兆円、台湾に2.5兆円、韓国に3兆円の貿易黒字)。これは、わが国の産業界が、産業システムの国境を超えた工程分業に対応して、その競争力基盤を、不断に再構築し続けてきたその結果です。これまで言われてきた中国脅威論、産業空洞化論、「世界を制覇するサムソン、追い落とされる日本企業」などとは、別の現実をわが国企業と産業界がつくりだしてきたことを意味します。
 一方、国境を超えて一体化した産業構造の工程分業のあり方を超えて、市場の構造全体が激変し、新興国が産業構造の高度化に本気で取り組む環境で、わが国の産業界が直面しているのは、激変する市場環境に順応する と同時に テクノロジ-を産業社会に運用する新しいステ-ジを創造する という、世界経済グロ-バル化の新しい段階の課題です。
 これからの自治体の政策の前提もまた、国際環境の連続的な変化に対する自主的な認識を基盤に据えることなしに成り立ちません。このことが、中央政府と対等、協力の関係に立ち、国境を超えた地域間連携、地域間競争を進める地方政府(地方自治体)の政策基盤をうち鍛えていくでしょう。
 国際経済(アジア経済)における従来のわが国の特別な位置が、このまま温存されるという幻想に立って描かれるビジョンは、必ず、現実から拒否され、地方自治体に不良債権を積み上げることになるでしょう。一方「国際ビジネス交流都市」をつくる等の環境変化依存型の問題設定は、「ビジョン」の体をなしていません。国際交流都市の中で、都民(市民)は何をするのでしょうか?(ウエイタ-や交通整理のガ-ドマンでしょうか?) 地方自治体の国際ビジョンに要求されるのは、私達が新しい市場環境にどう対応するのか? 国際交流都市において、その地域の担い手たちがどのような役割を果たし、どのような新しい価値を世界に発信するか? 以外でありようがありません。
 
3.わが国の地方自治体のグロ-バル展開の時代の扉を開く
 
 すでに、大田区では、タイ現地に、現地の企業と連携(現地企業が全面出資)し、区内の企業が現地進出する「オオタテクノパ-ク」という「開発区」を設置して5年を超えます。
 地方自治体の国際展開は、第一に、国内とは違った困難な環境で事業経営をすすめる海外進出企業や海外で活動するすべての人々を支援することでなくてはならないでしょう。このための、地方自治体自身の海外進出、海外拠点形成と海外活動が、今ほど要求されている時はないはずです。
 中国/大連市は、戦前のわが国が、日本国内を越える近代的都市を建設しようとし、中国が日中国交回復後の対日人材育成の拠点とした都市です。大連市政府は、わが国のものづくり企業を中核に改革開放を進め、わが国企業が(開始系企業では)初めて(合弁ではなく)独資で中国国内に進出したのもこの地域です。これらの企業により(独資を基本とした)日本的のものづくりや日本的経営を進めてられてきた地域でもあります。
 1989年、大連市に進出したキヤノン(最初の中国拠点)は、以降、毎年、大連市キヤノン杯日本語弁論大会を開催(昨年が第22回)、毎年、1万人を越える大連市市民がエントリ-し、現地での日本語人材育成に尽力しています。1987年、経済技術開放区に最初に進出したマブチモ-タ-は、農村地域における小学校建設などを進め、「中国において優れた社会貢献をした外資企業50社」に選定、多くの日系企業が現地における社会貢献で評価されています。東京都の中小企業では、大田工業連合会、東京中小企業家同友会大田支部が、同じ大連市で、現地の 鍍金排水対策 や 国境を超えた人材育成 の地道な取り組みを進めています。
 こうした地域にすら、わが国の地方自治体が戦略的に進出することは、ほとんどありませんでした。
 戦後、東アジアにおける「雁行型発展」のモデルを形成し、この地域の発展に貢献してきたのがわが国です。多くの地方自治体が、早い段階で国際展開し、地域の中小企業などの海外進出を支援し、地域社会とわが国のビジョン、歩んできた道、産業や文化などを紹介し、現地の地域社会に貢献するとともに、国内と現地の教育機関などを結んで、国境を超えた人材交流、人材育成などを進める戦略拠点を形成し、こうした地方自治体の戦略拠点が、アジアの各地に広がっていたとするならば、わが国の世界経済グロ-バル化への対応は、まったく違っていたものになったに相違ありません。
 冷戦終結によって進んだ世界経済のグロ-バル化は、すでに、新しい段階に入りつつあります。
 今日、地方自治体に問われているのは、「国際化」をめぐる勝手なビジョンを描くことではなく、地方行政のあり方、地方政府の行動様式全体を、国境を超えた地域間連携、国境を超えた地域間競争の時代に相応しいものへと変革していくことです。
 言うまでもなく、地方自治体の国際協力/国際連携は、国境を超えた都市と都市、地域と地域、そして、市民と市民の協力/連携を意味します。実体経済と情報、金融などの社会基盤が国境を越えて一体化していく中で、それぞれの都市、地域、その担い手としての市民が、新しい環境に能動的に対応する能力、相互学習の機会、国境を超えて活動する機会や国境を超えた社会関係資本をどれだけ手にし、これをどれだけ活用しうるかの能力構築競争の舞台が、国境を超えた地域間連携/地域間競争に他なりません。
 議員の相互訪問や行政(機関)間の協力は、その入口として、初めて意味を持つものです。地方自治体の課題は、逆に、この分野で行政に先行している民間企業やNGO、様々な市民の活動をうまく取り込んで、地域間の連携を拡大するとともに、国境を超えた人材育成、人材登用、社会的課題に共同で取り組むスキ-ムを確立して、地域社会と市民が能動的に地域間協力を進める仕組みづくり、海外拠点づくり進めることです。
 これまでの経験を総括して、明確な達成目標をもった地域間連携、地方自治体の海外拠点づくりを進めるべきです。特に、東京都は、基礎自治体の対外進出を支援し、アジアを中心に、縦横な対外都市間連携を進め、多数の対外拠点を形成して、充分な対外社会貢献を進めるとともに、海外の多文化と活力を国内に深く取り込み、都市と地域社会と市民が、新しい国際環境の主体として能動的に活躍する地域文化をつくり上げていく総合戦略を形成し、コ-ディネ-タの役割を果たすべきです。
 
4.東アジアの中の日本を意識した東京国際空港の上手な使い方の確立
 
 世界経済のグロ-バル化を介したわが国の国際ポジションの変化の第一は、わが国が(東)アジア諸国と共に生きる国になったことです。わが国の地域別貿易(輸出)の56%はアジア向け、1985年は約40%が北米向けであったことからみるならば、国際環境の変化を介して、わが国の生き方が変わったことを理解することができます。
 地方自治体の国際展開の主たる対象となるのが、アジア諸国であることは言うまでもありません。
 東京国際空港の国際化、成田と羽田の一体運用 並びに 棲み分けについては、東京国際空港を、わが国と(東)アジアの関係の中に上手に位置づけていくべきです。韓国、台湾、中国といった近隣地域に、成田経由で向かうことは、明らかに不合理です。東京国際空港において対欧米便を増発するのではなく、東京国際空港を国内各地とアジアを結ぶハブ機能と位置づけ直すとともに、充分なストップオ-バ-が可能な経由地として、世界とアジア結ぶ東京国際空港を位置づけるなど、わが国と東アジアの関係を基軸に、成田空港との棲み分けによる国際化を実現すべきです。(主に、東京都が国へ要望すべき課題として …… )
 
5.臨海地域に、サイエンスとテクノロジ-を結び、次世代技術、次世代産業を創成する研究開発拠点を
 
 わが国の国内市場の価値は、新興国市場の爆発的拡大により相対的に低下し、人口構成の超高齢化と人口減少によって絶対的にも低下しつつあります。携帯電話に象徴されるように国内市場に依存した製品提供を進めてきた産業分野は、「ガラパゴス化」し、衰退へと向かいました。
 不動産開発やトレ-ドセンタ-、展示場を建設すれば、多国籍の高度人材をわが国に引き寄せられると考えるのは、既に、時代遅れの考え方です。わが国が、こうした、高度人材を国内に引きつけられるのは、わが国が、世界が必要とする次世代の技術(や次世代のサ-ビス、マネ-ジメントシステム)を創造して、発信し続け、社会の信頼性や自由と民主主義(市民社会)の価値観において、真に、尊敬されうる社会を築いていく時だけでしょう。
 一方、携帯電話、スマ-トホンを生産する中核製造装置を世界に提供し続けてきたのは、東京城南地域の中小企業です。自動車産業の生産財を提供する中小企業では、リ-マンショックでは、売上が70%余りも減少いたしましたが、海外メ-カ-との取引拡大、異分野への進出により、環境変化への対応を進めています。東京同友会IT部会のアウトソ-シング先は、モンゴルなどを含めたアジア各地に広がっています。
 アジア諸国が、急速なキャッチアップにより、労働集約型産業構造からの離脱を速めているとき、私達に要求されるのは、このプロセスが要求する 人/もの/技術 を提供し続けるとともに、このキャッチアップの「坂の上のその先」…… テクノロジ-を産業社会に運用する新しいパラダイムを提示していくことにつきます。
 地方自治体の産業政策に問われるのは、「産業空洞化論」と闘い、国内のテクノロジ-、その担い手としての高度人材、生産システム(闘うマザ-工場)を守り、地域のものづくり中小企業の本社機能強化を支援して、これらの国内の産業機能に、改めて、磨きをかけると同時、これを基盤に、次世代産業のコア技術創造へと、地域の産業の担い手が舵を切っていく環境を整備していくことです。
 特に、わが国産業の製品開発を支持することにより、わが国産業の国際競争力の中核部分を担い、ものづくりの上流における高度な機能を果たしてきた城南地域の産業集積を守り、首都圏の地域社会と結びついた生産的機能を維持し、発展させていくために、この地域の産業の担い手が、次世代型テクノロジ-創成に取り組む新しい環境を整備していくことこそ要求されているといえます。
 東京国際空港跡地やその先に広がる中央防波堤埋立地などの臨海地域に設置、整備していくべきは、展示場やトレ-ドセンタ-ではなく、理化学研究所等の研究機関やトップ企業の次世代技術創成センタ-です。この地域の産業コミュニテイ また 製造業の基盤技術と深く結び付けて、これらの研究開発センタ-を設置、整備し、サイエンスとテクノロジ-を深く融合して、新しいテクノロジ-、新しい製品、新しい産業連携を生み出し、ものづくりを高度に知識産業化する新しい型のテクノポリス「ものづくり創造都市」こそ、私達の目指すべきものです。
 
6.労働市場の開放と多国籍の中核人材登用を進める地域社会の国際化を 
 
 経済のグロ-バル化に乗り遅れたことを感じた大企業の一部が、あわてて、ヘッドクォ-タ-への多国籍人材の登用を進めていますが、少なくない中小企業では、早い段階(1990年ごろ)から、アジア人留学生の採用を進め、海外営業などに登用してきました。一部の企業では、帰化して日本国籍を取得したアジア人留学生出身者が、経営陣(取締役)に加えられています。最近では、ものづくり企業の生産現場が、アジアの理工系大学出身者の採用を進め、これらの留学生が、設計や技術革新の担い手、現場のリ-ダ-として活躍し始めています。
 アジア諸国とのEPAの課題の一つも、看護師、介護福祉士などの社会の中核人材を、国境を国境を超えて登用する開かれた労働市場の形成です。ところが、まだまだ、形だけにとどまっており、むしろ、海外の看護師協会から 抗議の声明 が上がるほどです。
 技術職や管理職、看護師、介護福祉士等の有資格者など、社会の中核人材が地域社会で(また、内外で)共に働く労働市場の形成、多国籍の中核人材がともに手を取りあって生み出していくグロ-バルシティこそ、経済のグロ-バル化に対応する国内環境整備となり、地方自治体の国境を超えた地域間連携、地域間競争の 地に足のついた基盤 となるものです。
 この障害を外すための旗を振り、施策を生み出していくことこそ、地方自治体の役割です。
 在留外国人の日本語学習の機会を広く設けるとともに、特に、EPA協定などにより、就労を目的に来日する外国人の日本語学習や資格取得を支援すること、この障害となっている仕組みなどをよく調査して外していくこと、国境を超えた地域間協力や自治体の海外拠点の施策により、現地における日本語人材の育成を進めること、国境を超えた教育機関の連携などにより、国境を超えた人材育成を制度化していくこと……これらが地方自治体の施策となるでしょう。
 社会の中核人材の国境を超えた登用を進める地に足のついた基盤があってこそ、より高度な人材を、有効に国内に引き寄せることが可能となります。研究開発をになう人材やこの地域全体の将来を決して行く政策スタッフなど、アジアの将来を決して行くヘッドクォ-タ-を担う人材を国内に引き寄せる(その前段階の)条件づくりこそ、今日、私達が進めていく施策であるべきです。
 
7.「アジアヘッドクォ-タ-特区構想」と東京都の自治体施策の基盤について
 
 「アジアヘッドクォ-タ-特区構想」については、これが、国内に「割拠」し、およそ国際競争と無縁の世界に生きてきたと思われる業界の皆さんの提案(「総合特区に係わる民間事業者からの提案」)を基盤としていることが不思議でなりません。
 東京都は、わが国の首都であり、わが国の経済中枢に位置する自治体です。中小企業、大企業を問わず、わが国の産業全体を網羅する多くの民間セクタ-との結びつきの中からビジョンが提示されてくるのが当然です。、
このプロセスこそが、本来の意味で、自治体の政策基盤を強化するものでしょう。
 「アジアヘッドクォ-タ-特区」は、新しい課題に取り組むわが国産業の将来 や 21世紀の東アジアの地域ビジョンの中に生きる私達の将来 を 照らすものでなくてはなりません。  
 

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