都立高専交流委員会ブログ

都立高専と城南地域の中小企業(特に製造業)との交流・連係を図り、相互の利益と地域社会・地域経済の発展を目指します。

極東ダイカススト 専務取締役 山森勝利 氏 / 中小企業家経営塾 講義 原稿 ③

2013年11月09日 | Weblog
 
 極東ダイカススト 株式会社 専務取締役 山森勝利 氏 による
 本年度の中小企業家経営塾 平成25年度 第1講 の 講義の原稿です。
 下記と併せて、お読みいただけば幸いです。
  
   
   
 
    5.中国現地人材育成から、グローバル化の前線へ
 
 
 続いては、弊社のグローバル化についてお話をしましょう。
 弊社は1995年に中国の上海と寧波の2ヶ所に合弁でダイカスト工場を立ち上げました。
 そのきっかけとなったのは、中国人研修・実習生の受入れでした。
 これは現在も続いており、20年以上に渡り100名以上の研修・実習生を育ててきました。
 当時からこのような人材はヘッドハンティングにあい、北米やヨーロッパのメーカーに
 取られるという現象が取りざたされましたが、弊社も例外ではありませんでした。
 しかし、それでも弊社はやり続けました。その結果、
 弊社の現地工場に留まった人材は、立派な幹部に成長し信頼の置ける中国人に育ってくれました。
 製造業は人が財産であると昔から言われてきました。海外に拠点が移ってもそれは変わりません。
 そして、現在も未来もこの人材教育を続けていくことは、弊社の基盤になると確信しております。
 
 現在はチャイナプラスワンとよく報道されておりますが、
 弊社のプラスワンは、やはり、中国にありと考えております。
 華東地区(中国の海沿いをさす)がいち早く発展を遂げていますが、
 その発展を遂げている市と市の間には、まだまだローカルな地域があり、
 そのエリアの交通のインフラ整備は確実に行われ進んでいることから、
 寧波市からさらに南下したところにあります寧海県(中国は日本と違い市の下に県がある)の開発区内に
 約1万坪の用地を受け、新しいダイカスト工場を独資で建設しているところであります。
 
 中国のダイカスト工場は日本の異業種分業化と違い、1つの工場内でほぼ完成に近い状態にして出荷します。
 ダイカストの前後の異業種を取り込むということです。
 金型→ダイカスト鋳造→製品仕上げ→機械加工→洗浄→熱処理→含浸→表面処理→塗装
 (→部品供給があればセミアッセンブリまで)工程があります。後半の含浸・表面処理・塗装の分野は、
 どちらかというと化学的分野のため取り込むには非常に難しくハードルが高いという状況下にあります。
 そして、環境問題に直接影響するため、許認可の取得が極めて難しいという状況がありました。
 しかしながら、現在政府から弊社に許認可が降りたのは、
 先だって合弁工場含め、日本的外注製作方法をとりながら先行して仕事を請けていて、
 そこにはもちろん中国既存の表面処理メーカーとの合併、技術・設備の導入により
 環境問題に対応した日本的管理方法と専用設備を導入し、
 約6年かけて実績を積み上げてきた事が認められたのだといえます。
 
 また、新興国の人件費高騰は当たり前のことであって、台湾や韓国を見ても明らかです。
 それでも日本人ほどの人件費が高騰することはありませんでした。
 中国でも日本人ほどの給料高騰はしないと考えておりますが、
 最終的には製造業の生産設備の自動化は避けては通れない事実であるとも弊社では考えております。
 
 日本人に限らず、ダイカストマシンオペレーターの教育指導において、
 実習生全員や日本人作業者が、必ずしも高いレベルに育っていくとは限りません。昔ダイカスト業界は
 3K(きつい・汚い・危険)産業と呼ばれ、体力に自信のある人の採用がほとんどでした。
 近年就職難民が増えて、現役で大学を卒業したとしても必ずしも就職できない時代となり、
 業種を選ぶ余地がなくなってきました。それは、
 ようやく中小企業の3K産業にも大卒などの高学歴の人材が回ってくるようになったということです。
 
 先にも述べました、ダイカスト業界といえども少しづつ進化していっており、
 最低限中間管理職以上は化学や電気工学・金属材料といった知識を持つ人材が必要となってきております。
 日本は採用募集を掛けて応募してくる人材のレベルが上がってきたのに対し、
 中国の人材は今まで実習生を実習期間中に教育し現地に戻って管理職になっていましたが、
 今後は、現地で採用する段階である程度の高学歴者を採用し、現地で現場経験をつませ
 その中から優秀者を選抜し日本への実習が可能となる仕組みに変えていくことにしています。
 
 昔から“ものづくりは人づくり”といわれており、
 製造業は過去も未来もその人たちが会社の基盤となるのです。
 歴史を重ねていく為には、携わる人が死ぬまで勉強し知識と知恵を使って
 経済危機等グローバルレベルでのターニングポイントで生き延びる術を見出していかねばならないのです。
 
 
    6.新しい課題に取組む中国ビジネス
 
 
 今建設中の新工場では、最新式の電動サーボ制御ダイカストマシン(東洋機械製)を4台発注済で、
 これは今までの油圧制御ダイカストマシン消費電力の60~70%カットすることができる
 省エネタイプのダイカストマシンであります。
 
 ダイカストマシンには主に2種類ありまして、ホットチャンバー・コールドチャンバーと呼ばれております。
 違いとして、ホットはダイカストマシンと炉が一体で金型まで空気に触れることなく鋳造でき
 酸化しにくいのが利点で、射出圧力が弱く金属組織を細密化できにくいのが不利な点が特徴です。
 そしてコールドは、ダイカストマシンと炉が別体で給湯装置なるもので溶湯を搬送しますが、
 その時に溶湯は空気に触れ表面が酸化するという不利な点があり、
 有利な点は射出圧力が高い為金属組織を細密化できる利点があります。
 
 溶解保持炉は省エネタイプを採用し、停電対策を考慮した設計にしています。
 開発区には、ガスエンジンによる発電機やバッテリーによる蓄電システムの導入を検討してもらったり、
 日照条件の悪い中国ですが太陽光発電の導入も調査・検討することにより、
 停電が起こりにくくする対策も同時に検討しております。
 水の純水処理システムも、現在合弁している表面処理工場で採用している
 設備の実績・評価を政府より受けていて認可されていますので、その設備を採用します。
 寧海県でのモデル工場となるよう目指しているのです。厳しい環境基準に準じた、
 エコな未来志向の工場として雇用問題・環境問題を考慮した地域に密着した製造業を目指すのです。
 
 世界中何処の国でも同じことが言えますが、
 1つのことを最後まで責任持ってやり遂げることのできる人が他人からの信頼を得ることができ、
 周りから必要とされる人間になるのです。
  
 中国人実習生も
 20年以上掛け100人以上輩出しましたが、定着した実習生上がりの管理者は20名いるかどうかです。
 ですが逆に考えるとその20名は、本当に信頼を置ける人材であると言え、
 望んでも簡単に得ることのできない深い関係にあるということです。
 これは、弊社中国工場において掛替えの無い財産であります。
 
 中国での事業は難しいと言われておりますが、一流メーカーが撤退しないのはなぜか?
 それは圧倒的消費量が見込めるからです。
 中小企業がグローバル化に対応するため中国進出を図るか否かは、自分の目で確かめるべきと私は思います。
 
 私は2011年3月13日(東日本大震災の2日後)まで約3年弱寧波市に駐在して、
 新工場の登記登録であったり銀行口座開設であったりと事前準備をしてきました。
 リーマンショック・北京オリンピック・上海万博・新幹線・リニアモーターカーなど
 中国が今までの先進国に無いスピードで発展した事実に嘘は無いことを自分の目で見ることができました。
 これは、今後、事業を継承していく私の判断材料・掛替えの無い財産となるでしょう。
 
 そして、グローバル化というのは国境を越え地球上すべての国・人をエンドユーザーと考え、
 必要とされる製品を必要な数だけ無駄なく合理的に生産・供給することが求められ、
 自分自身の人間関係もこれからの時代はグローバル化していかなければならない。
 自分以外の人々が、お金を払って手に入れたいと思う製品を作らなければ、
 他人に必要とされる自分にはならない。
 それは過去も未来も唯一変わることの無い、原理原則であるといえるのではないかと思います。
 
 私の学生時代から現在までの歩みと、
 学生と社会人の違い・製造業の歴史とグローバル化についてまとめてみました。
 いかがでしたでしょうか? 少しでも皆様の将来の展望に役立ちましたら幸いです。
 

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