都立高専交流委員会ブログ

都立高専と城南地域の中小企業(特に製造業)との交流・連係を図り、相互の利益と地域社会・地域経済の発展を目指します。

謹賀新年 …… 年末年始に考えること ……

2012年01月04日 | Weblog
 謹賀新年
 旧年中は、大変、お世話になりました。
 本年も宜しくお願い申し上げます。
 
 
 皆様は、いかがお過ごしですか?
 
 こちらは、昨年内の仕事が終わらず、
 大掃除もままならないまま、新年になだれ込みました。
 3日までに、この仕事をかたずけ、4日には、本年の最初の仕事が入りますので、
 
 そのあと、
 改めて、本年の活動計画について考えてみたいと思います。
 
 
 本年度の 都立高交流委員会のスケジュールは 
 
 1月20日(金)午前10時25分より
 都立産業技術高等専門学校 西棟6階 PBL多目的教室 にて 
 バルテス 株式会社 代表取締役 田中真史 氏による
 中小企業家経営塾 第5講(本年度の最終講義)から始まります。
  http://www.valtes.co.jp/

  
 皆様のお時間をお取りいただけば幸いです。
 
 
 
    2011年をどのように振り返るのか? 
 
 
 さて、昨年を振り返れば、この年は
 東北大震災と原発事故の年であっただけではなく
 
 エジプト革命に象徴される「アラブの春」が、中東を席巻した年
 リーマンショックが、欧州の政府債務危機(恐慌)へと波及していった年
 野田政権成立の年 …… として、記録されることになるでしょう。
 
 
 
   「アラブの春」は、21世紀型 市民社会戦略 の普遍的指標
 
 
 「アラブの春」は、
 イスラム復古主義やテロリズムの「逆流」が吹き荒れていた 中東 において
 着実に、市民社会の基盤が形成されていたことを明るみ出しました。
 
 冷戦終結の20年間に訪れた
 世界の大きな変化から、誰もが、逃れることはできません。
 このことが、社会の 虚 実 の姿を明るみに出し、
 人々を、政治環境の転換へと、一気に引き入れていきます。
 
 社会の表に華々しく現れていたものは、実は「虚」の表れで
 その背後で、社会の「実」の変化が蓄積していきます。
 見えるものが「虚」、見えないものが「実」であったが故に
 それまで「見えなかったもの」が、その姿を現した瞬間、
 それまでの「見える世界」が、あっという間(?)に、瓦解していきます。
 
 「アラブの春」は、このことを、純粋な形で示すものです。
 
 中東の研究者たちは、大変な衝撃を受けましたが
 「中東における市民社会の成熟」という論点に立ち
 正面から、今回の変化を議論する者は、まだ、いないようです。
 
 けれども、今回の変革のプロセスは、
 これからの世界のあり方を考えていく上で、
 誠に、普遍的な指標を提示しているように思います。
 
 
 
    欧州金融危機の拡大で試される世界
 
 
 欧州の金融危機は、政府債務恐慌の様相を呈し始めています。
 
 世界は、リーマンショックが、
 21世紀型(グローバル)金融危機の入り口に過ぎなかったことを意識しています。
 世界の主要国は、それぞれが傷くとともに、さまざまな制約下にあり
 単独行動主義 や 保護主義 は、国際秩序を破滅に導きかねません。
  
 2012年は、主要国のリーダーの交代の年となりますが
 政治家の浮ついた行動は、
 それぞれの国や、国際秩序の 大きなリスク に、なりかねません。
 このリーダーの選抜を通し、世界の人々の英知が試されているようです。
 
 ちなみに、欧州金融危機についての 学習機会 は、下記
 ご参加いただけば幸いです。
  http://www.tokyo.doyu.jp/tokyo-doyu/flack/8107.pdf
  
 
 
 
    未来への確信が、新しい扉をこじ開ける
 
 
 さて、わが国ですが、
 本年は、野田政権成立の意味を噛みしめていく年になりそうです。
 
 年末の日本経済新聞では、12月26日に
 「強い人々と弱い指導者」(核心/平田郁夫氏)が論じられていたのが印象的でしたが、
 元旦の紙面では、1面が「次世代への責務果たせ」(実哲也氏)
 13面に「未来を信じ扉開こう」(新年に考える/太田泰彦氏)です。
 (社説は「消費税増税の合意を実現につなげよ」)
 
 朝日新聞の元旦の社説は「すべてを将来世代のために」
 読売新聞の社説は、
 「ポピュリズムとの決別」と「危機を乗り越える統治能力」を結びつけるものです。
 
 こうした時期の「未来への確信」は、
 与えられるものでも、漠然としたものでも、あってはなりません。
 それは、自ら自身のなかに、
 その行動指針として、確立されなければならないものです。
 
 「未来への扉」をこじ開けていく時期、
 あろうべき姿の2割ほどの実現も、まだ 空論 である時期、
 危険な均衡のなかで、
 妥協を重ね、試行錯誤を繰り返して、前進していかなくてはならない故に
 未来(将来の社会像)への確信をもっている者だけが
 動揺なき仕事を、積み上げていくことができるでしょう。
 
 
 
    地方自治=自主的な合意形成の真価が問われる被災地
 
 
 今回の震災で壊滅的な打撃をうけた被災地において、
 最初の応急対応が終った段階において、直ちに挙がってきたのは
 被災後の土地利用が決まらないことです。
  http://www.doyu.jp/news/110613-111922.html

 
 復興/再生のための地域ビジョンに問われることは
 被災後の土地利用を基軸に、私権の制限を含めた
 住民の自主な合意形成を進めていくことです。
 
 それは、
 中央政府への依存か? 自立か? の格闘を続けてきた地方が
 自らの回答を、このビジョンのなかに書き記すことでもあります。
 
 直接民主主義に立脚し(地方自治法第5章)、
 「民主政治の学校」となる地方自治の真価
 (住民自身による自主的合意形成の真価)が、問われ続けています。
 
 
 
  「強い国民」と「弱い指導者」の対比から抜け落ちるもの
 
 
 震災 と それに続く一連の事態は、
 
 被災地 や サプライチェーン回復の現場 における
 あるいは「なでしこジャパン」に象徴される
 「強い(誠実で、自己犠牲の精神に富んだ)国民(現場)」と
 
 永田町の多数の議論、原子力村、オリンパスの経営陣といった
 「弱い(茫然自失の)『本部』や、リーダー、経営者」の対比を
 改めて、浮かび上がらせるものになりました。
 
 それは、問題解決を進める「現場」と
 情報隠蔽で延命する「本部/経営陣」の対比でもあります。
 
 (オリンパスの医療機器分野の売上は 3000億円超、営業利益は 600億円超)
 
 一方、「強いリーダー」は、
 公共の利益をめぐる開かれた政治競争(市場競争)の舞台から
 初めて、選抜されていきます。
 
 それは、私たちに
 国民全体 や その基盤となる 地域社会 の合意形成を進める
 新しい社会基盤と政治基盤を構築していくことを要求するものでしょう。
 
 この合意形成のシステムや政治基盤の上で踊り、鍛えられるのがリーダーであって
 自由と民主主義を基調とする社会の指導者は
 何か、別のところから与えられるものではありません。
 
 政府のガバナンスが崩壊する危機のなかで
 個々の人々が、公共の利益を基準として行動できるということと
 社会の社会自身による意思決定能力、自己実現能力を高めること
 (市民社会の確立)が、別のものであることが、明確になっていきます。
 
 一年有余にわたる予備選を全国で戦い、
 大統領就任演説に、百万人余りの国民を結集する政治基盤の上に
 リーダーが踊り、選抜されていくのであって、その逆ではありません。
 
 個人後援会や利益団体の集合としての自民党政治が崩落しゆくなか
 
 社会生活の現場を支える「強い国民」(サイレント/マジョリティ)を、
 社会の中核的利益(将来の利益)の意思決定へと参画させていく、 
 新しい政治基盤(国民合意形成の基盤)の構築こそ、
 緊要な課題となっているに他ならないでしょう。
 
 言うまでもなく、これらのことは
 行政措置や、政府の予算で、実現できることではありません。
 それは、政府 や さまざまな立法 などが、拠って立つ基盤を
 再設計、再構築していくことを意味します。
 
 
 
    国民合意形成の社会基盤の意味するもの
 
   
 それは、次のような基調を含むものになるでしょう。
 
 
■ 憲法秩序の再構築 
 
 市民社会と公共の利益から、
 私権をどう制約していくのかをめぐる規範(社会契約)への
 憲法秩序の転換
 (日本国憲法 前文 第11条 第97条 第12条 …… )
 
 言うまでもなく、それは「憲法の文面の変更」ではなく
 「受益者民主主義(依存と分配の民主主義)」から「責任民主主義」へ、
 統治=国民主権の主体として憲法を受け取る
 国民自身の 憲法観の転換 を意味し
 「新しい責任の時代」へのスタートラインを引くものでなくてはなりません。
 
 
■ 政党政治の再設計 
 
 主権が、国民の代表を通して行使される
 (「日本国憲法」前文……間接民主主義)の国政を機能させるために
 政党政治の再設計、再構築は、避けて通ることのできない課題です。
 (国民政党の新しいビジョン)
 
 わが国のリーダーたちが、
 組織として行動する政党組織(政権交代可能な政治システム)の
 支持基盤(社会的基盤)や政党秩序、政党組織の規範を、
 一から再設計、再構築することなくして、
 強いリーダーや、リーダーたちの強い結束を求めるのは、絵空事となります。
 
 
■ 公共のガバナンスについてのシンクタンクの構築
 
 これは、行政や企業の経営戦略に依存するものではなく
 国民自身に立脚するものでなくてはなりません。
 「行政スタッフ」を育成するものではなく、
 政権が必要とする 政治スタッフ を育成するものでならないでしょう。
   
 
 
    市民自治に立脚する 地方政府 の確立を
 
 
 一方、こうした、国全体の合意形成/意思決定システムを支え、
 その基盤になるのが、
 地域社会における、住民自身による合意形成システムです。
 (住民自身に直接立脚する=直接民主主義を基盤とした地方政府の確立)
 
 すでに、地方分権改革推進委員会の報告が述べているように
  http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/torimatome/torimatome-index.html

  (「基本的考え方」「中間的的取りまとめ」など)
 
 地方分権改革はの向かうところは、行政権限の移管ではなく
 市民自治に立脚した「民主政治の学校」の構築でなくてはなりません。
 
 さまざまな社会的セクターを、
 《ソシアルパートーナー》として再構築し、
 その協働のなかに、
 行政に依存せずに、社会を社会として成り立たせるための試みを繰り返し
 共同の計画を確立していくことが問われているでしょう。
 
 そして、住民自身により自主的な合意形成の組織を生み出していく抜きに
 より高度な、間接民主主義による国政の合意形成基盤を生み出し
 運営していくことは、絵空事ごとに等しいものなるでしょう。
 (もちろん、権限と責任の再配分を意味する分権改革は
  国民全体の合意形成を進める以外に、実現し、機能させることはできない。)
 
 「民主政治の学校」としての地方自治のあり方を、
 今ほど噛みしめていかなくてはならない時期はないように思います。
 
 
 
     歴史に 何かを教える ために闘う
 
 
 さて、この1~2か月で読んだ2冊の歴史小説が印象的でした。
 
 ひとつは、日本経済新聞の朝刊に『等伯』を連載している
 安部龍太郎 氏の『道誉と正成』です。
  http://www.bk1.jp/product/03136175

 
 近世の入口に入ると共に、
 鎌倉幕府が滅亡し、南北朝の王権(皇室)分裂へむかう時期の数年
 
 貨幣(商品)経済が社会に広まり始めるなか
 商業拠点と物流を掌握した新興勢力を代表する
 佐々木道誉 と 楠木正成 が、
 ある時は、立場を異とし、ある時は、立場を共有して、
 時代の変化に立ち向かいます。
 
 歴史(時代)認識の骨格が強固で圧巻、
 わが国のガバナンスの発展という観点から描ききっています。
 
 
 
   旧い時代の幕引き と 新しい時代の構築が交差する20年
 
 
 もう一冊は、
 山本兼一 氏が、山岡鉄舟を描いた『命もいらず、名もいらず』(上/下)です。
  http://www.bk1.jp/product/03253566
  http://www.bk1.jp/product/03253567

 
 明治維新によって、幕藩体制は崩壊いたしましたが
 それが直ちに、武士(士族)の時代の終わりを意味したわけではありません。
 旧い時代の終りは、10年後の西南戦争を待たなければなりません。
 
 このとき、
 薩長の側から、士族の憤懣を鎮めるために命を差し出したのが 西郷 であれば
 幕府の側から、
 旧い時代の幕引きのために、一貫して活動したのが 山岡鉄舟 です。
 
 維新を基点に、旧い時代を終らせるのに10年、
 そして、明治維新を牽引したすべてのリーダーたちが命を失うなか
 内閣や立憲政治という近代統治システムの確立のために
 西南戦争から、さらに、10余年を必要としています。
 
 この仕事を託されたのが 伊藤博文 が、
 藩閥政府のなかで、孤立を厭わず、一貫して追求したのが
 立憲政治を支える 政党 の結成です。
 これ(立憲政友会)が、非薩長藩閥の 原敬 に引き継がれていきます。
 
 
 
   新しい世代のリーダーが拠ってたつ社会基盤の構築を
 
 
 2009年9月の政権交代について
 「『自民党的なる日本』の崩壊」としたのは、東大教授の 御厨貴 氏です。
 (総選挙直後の日本経済新聞「経済教室」)
  http://www.bk1.jp/product/03189432

 
 言うまでもなく、その含意は、
 「自民党的なるものと重なるあらゆる日本のシステムの崩壊」は、
 もはや、過去に戻ることのできない 退路なき 社会環境 政治環境 ではあっても
 直ちに、旧い社会観、政治観の終りを意味するものでも
 新しい体制の確立 や 新しい政治の始まり を意味するものでもないことです。
  
 それは、旧い社会観、旧い政治観を埋葬し、
 その向こうに、新しい社会システムを確立していく
 困難な一時期の始まりを意味するでしょう。
 
 このことを理解できない人々(民主党のトロイカ??)が
 早々と退場をはじめ、そのことにより、
 私たちの直面する課題が、比較的見やすいものになりつつあります。
 
 私たちのなすべきことは、「弱いリーダー」を揶揄することではなく
 わが国の 新しい世代のリーダーたち が、拠って立つことのできる
 新しい社会基盤を用意していくことであるはずです。
 
 
 
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