杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

ある構図

2015年10月31日 | ニセ科学
自然界には様々な植物が存在し、その植物の有効成分から数多くの薬品が作られています。
これはその様な背景の中で繰り広げられた、「あるお話」です。

ある博士が、独自の生薬配合で新たな「胃薬」を発明しました。
当初はあまり注目される事はありませんでしたが、彼はその胃薬を『特別なもの』であるとして、英語名「Exceptional Medicine」、日本名で「胃薬」と「いい薬」をかけて「E薬(いーやく)」と名付けました。
そして彼は「E薬があなたを救う」という宣伝本を出し、そこで「E薬」の万能性を唱えてその本はベストセラーとなり、こうして「E薬」の名は世間に知られる事となります。

初め「E薬」は胸焼けがよく直ると評判でしたが、本の内容に刺激された読者が、試しにぬかみそにE薬を混ぜて発酵させた液体(「E液」)を飲んだ所、それが便秘によく効いたという話が評判になり、やがておりからの健康・自然ブームにも乗り、「E液」作りはボランティアの協力によって、施設や小学校の地域貢献活動で盛んに行われる様になりました。

やがて博士は、「E薬」の万能効果はとある生薬が発する「波動作用」によるものとする理論を打ち出し、「E薬」の愛用者達は博士の話に驚嘆し、「E薬」の万能性をすっかり信じきってしまいました。
そしてその「E薬」の効果をより長く体内に留めたいと願うある愛用者により、「E液」を混ぜたぬかみそを小豆ほどの大きさに丸めて乾燥させ、表面に白カビを生えさせた「E丸(いーがん)」というものが考案されます。

そして健康に良いとして毎食後「E丸」を飲む姿がマスコミでも紹介されると、小学校でも授業の一環として「E丸」作りが推奨され、生徒達の健康のためとして、給食後に「E丸」を飲む学校が全国に広がっていきました。

これがいつしか国会議員の間でも知られる様になり、やがて「E薬」信奉議員の発案で「生薬推進議員連盟」なる会が創設され、与野党問わず「E薬」の効果を信じる議員達が、増え続ける医療費抑制の切り札として、「E薬」の医療現場への導入などが議論される様になります。

こうして「E薬」が広く知られる様になるにつれ、博士の波動理論にはますます磨きがかかり、
「「E薬」の波動が血液中のソマチッドを活性化し、それにより引き起こされる生体内元素転換によって体全体に「結界」が生じ、あらゆる病原菌が寄り付かなくなる!」

「よってワクチンはもう不要!」

「ガン細胞も消滅する!」
とまで言い出す様になります。

ここに来てさすがに医師達も黙ってはいられず、

    「万能薬などはない!」

    「生体内元素転換などありえない!」

    「それはニセ医学である!」

と批判の声をあげ始め、小学校で作られて飲まれている「E丸」の、児童に対する健康面への危険性も訴える自体となります。

すると今度は「E薬」会社の顧問達が、彼らの言葉を真っ向から批判する行動に出る事となります。
曰く、
「誰が「万能」などと言っている!」

「こんなに多く売れている!」

「皆、『胸焼けが直った』と喜んでいる!」

「こんなに効果の報告があるのに、『ニセ薬』などと根拠のない誹謗中傷を繰り返している!」
そして「威力業務妨害」として裁判に訴えるぞと、次々と批判者達に脅しをかける様になります。

この姿に気を良くした発明者の博士は、幻の「E薬」効果にますますのめり込んでいき、ついにこんな事を声高々に唱えてしまう様になったのでした。













     「「E薬」の検証は不要である!」




















     「「E薬」を神様と思いなさい!」





















     「効くまで飲み続けなさい!」


































     「すべて自己責任です!」
















































※(この物語はフィクションです。)


(おまけ)
胸焼けの直し方はこちらを参照。


6 コメント

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11月ですが… (com)
2015-11-04 20:04:17
小咄をする日かと思ってしまいました。
序盤だけ切り離すと、大先生ネタ…まぁ、世間の挙動と大差無いってことですよね、双方。
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ご本家はさすがです (OSATO)
2015-11-05 21:26:47
いらっしゃいませcomさん。

ご本家の方はさすがの出来、私などまだまだ足元にも及びません(笑)。↓
http://dndi.jp/19-higa/higa_100.php
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EMは技術? (たもん)
2015-12-16 11:54:17
EM技術と言われて20数年。廃糖蜜を数十倍に水で薄めて容器に入れて置けば自然発酵しPH3.5ほどの溶液となる。糖分が発酵で有機酸になるから糖分が無くなれば発酵は終了。その溶液中に何某かの微生物を入れておれば環境条件によりその微生物は繁殖とか消滅するだろう。そうして出来たものじゃないかと勝手に私は想像している。EMが万能微生物なら世に出て20数年も経っているのだから色々な成果が出て、ノーベル賞など他から認められてもおかしくないと思う。もしかしたら万能なEM技術とは技術でなく妖術かもしれないと勝手に思っている。妖術には惑わされないよう心がけています。
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妖術と言うよりも (OSATO)
2015-12-16 12:50:57
いらっしゃいませ たもんさん。

仰るとおり、EMの生成過程は基本的には乳酸菌発酵技術の応用です。
その過程では様々な有機酸が生成される訳ですから、それなりに効果がある事は分かるのですが、それらが「万能」というのは単なる「願望」に過ぎません。
その願望を叶えるために、「波動」や「結界」などというツールを用いている姿は、妖術と言うよりは『呪術』に近いと私は感じております。
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呪術? (たもん)
2015-12-16 13:51:37
そうですね。私も以前は呪術とも思っていましたが、願望だけでなく人心をあやしく誘導するのが主な目的のようになってしまいましたので妖術と思うようになりました。EMについてのご解説は私には不要です、EMの製造に関わっていましたのであしからず。以前、比嘉さんは農業の為にと一生懸命な姿でしたが少々残念に思っています。波動については、「はっ、どうかな?」と思っております。
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なるほど (OSATO)
2015-12-16 20:52:01
>たもんさん

ああ、なるほど。
先生が周りの人を取り込んでいく様は、まさに妖術と言ってもいいかもしれませんね。
いずれにせよその様は、分かる人から見ればもう立派な「宗教儀式」としか見えないのでしょうね。

たもんさんはEM製造の方でしたか、お見それしました。
それなら尚更の事、今のEMの現状には脱力しておられるかとお察し致します。

> 「はっ、どうかな?」

私は常々「はぃどうどう」とつぶやいております。
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