環境問題が騒がれる中、各社の次世代環境対策車の開発競争もしのぎを削る時代となりました。
ここにとある国会議員がいました。
彼は環境対策には随分熱心で、CO2問題を解決するには皆が環境対策車に乗るべきだとの考えを持っていました。
ある日彼はトヨタの海外工場を視察し、そこで熱心に開発や製造に取り組む人々の姿を見て、いたく感銘を受けました。
彼は以前からトヨタプリウスに乗っていました。彼は、皆がこの車に乗ればいいのにと思いました。
そこで彼は、自分のサイトでトヨタプリウスの宣伝を始めました。
プリウスの試乗会には足しげく通い、来る人来る人にその優秀さを宣伝しました。
そしてとうとう、自らのサイトにプリウスのパンフまで載せてしまいました。
国会議員には「政治倫理綱領」というものがあり、それは次のように定められています。
一、われわれは、国民の信頼に値するより高い倫理的義務に徹し、政治不信を招く公私混淆を断ち、清廉を持し、かりそめにも国民の非難を受けないよう政治腐敗の根絶と政治倫理の向上に努めなければならない。
一、われわれは、主権者である国民に責任を負い、その政治活動においては全力をあげかつ不断に任務を果たす義務を有するとともに、われわれの言動のすべてが常に国民の注視の下にあることを銘記しなければならない。
一、われわれは、全国民の代表として、全体の利益の実現をめざして行動することを本旨とし、特定の利益の実現を求めて公共の利益をそこなうことがないよう努めなければならない。
一、われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。
一、われわれは、議員本来の使命と任務の達成のため積極的に活動するとともに、より明るい明日の生活を願う国民のために、その代表としてふさわしい高い識見を養わなければならない。
(強調は引用者)
さてお話の議員さんは、ある特定の車種を自分のサイトで宣伝しています。
しかし実際は環境対策車を開発しているのはトヨタだけではなく、ハイブリッドの他にも電気自動車、水素自動車など、様々なものが各社で開発されているのが現状です。
このような中にあって、あるメーカーの特定の車種ばかりを宣伝する行為というのは、この倫理綱領の三番目、「特定の利益の実現を求めて公共の利益をそこなうことがないよう努めなければならない。」という事に違反している事にならないでしょうか?
しかしこの事をよくよく考えてみますと、私にはちょっとどうしたものか分からなくなってしまうのです。
この議員さんは決して特定の利益の追求などは考えておらず、あくまで皆がプリウスに乗れば世界は良くなる、つまり公共の利益に寄与すると考えているからです。ですから彼は、自分の行動は正しいものだという信念を貫いているのです。
しかしともするとこのような行為(サイトにCM)は、見方によっては特定の業者に対する「利益誘導」にあたり、一般市民ならいざ知らず、公人である国会議員としての立場では行うべきではないのではと私は思うのです。
前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、こういう「お話」を考えたのは、あくまで分かりやすい事例を提示したかったからに他なりません。具体的に「プリウス」の名を出したのも、それを実感として感じとってもらいたかっただけであり、特にこの車に関してここでどうこう言うつもりではありません。
私がここで述べたかったテーマはあくまで「EM」についてです。
「EM」というものは農業問題や環境浄化活動などにしばしば登場し、それにハマってしまってまるで信者の様になってしまった人達の姿をよく目にします。そんな人達の中には勿論議員さんの姿もあります。
ここに登場するのは、ついそのように見えてしまう、参議院議員のツルネンマルテイさんです。
ツルネンさんは元々はフィンランド人ですが、日本の国籍を取得し現在参議院議員となっており、日本の農業に対して真剣に向き合い、超党派で作る「有機農業推進議員連盟」を立ち上げ、2006年12月には「有機農業推進法」を成立させるに至りました。
彼の農業にかける思いは真剣なものであると私には感じられます。
しかし彼のHPを見ると、私が例に挙げた架空の議員さんと同じ事をしていらっしゃいます。
サイトを開いて見てみると、「有機農業」の欄とは別に、「EM情報」としてEMだけの特別の項目が設けられています。
そこを覗いてみると、「なぜ私がEMにかけるのか」とか、「EMパンフレット」などEM関連会社からのものがそのままの形で紹介されています。
前掲の例を思い返して見て下さい。ここの「トヨタプリウス」の代わりに「EM」と入れ替えてみますと、まさにそのまま当てはまってしまう事を彼はやっている訳です。
果たしてこれは、何の問題もない事なのでしょうか? これこそ特定の業者に対しての「利益誘導」にはあたるのではないでしょうか?
それにこの事はいずれ、対立する党からの絶好の標的になりはしないかと、そんな不安な気持ちにさせてしまうものでもあり、その事を本人は気が付いているのか、私はどうしても確かめたくなりました。
そこで私は、ツルネンさん宛てに「ホームページのEM表記について」と題して、以下のようなメールを送りました。
* * *
(7月12日送信)
拝啓 ツルネン・マルテイ様。
さて、世間の目が民主党に有利に注がれるにつれ、かねがね疑問に思っていた事をツルネンさんにお尋
ねしたくこのようなメールを差し上げました。
ツルネンさんのサイトを見ておりますと、その中で「EM」というものを薦めていらっしゃいますが、私はこ
れは問題ではないかと危惧しております。
「EM」というものは私もよく存じております。サイトでは「EM」の有効性など色々書かれておられます。
しかしそもそも、「EM」は〔数ある微生物資材の中の一つの製品〕でしかありません。
その数ある製品の中の一つだけを持ち上げているのは、公平性の観点からも問題ではないのかと思いま
す。
これが、一般の人が自分のサイトで薦めるのは何の問題もない事だと思いますが、ツルネンさんはあく
まで国会議員でいらっしゃいます。
その国会議員である人が自分のサイトで、ある特定の企業の製品を企業の宣伝通りの文言で薦めたりす
る事は、一部の企業に対する【利益誘導】にあたりはしないのか? という懸念を持っております。
現在国内では数々の微生物資材が販売されており、その数は100種以上にも上るといいます。(参考)↓
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/nogyosinko/sehi16/h16-2-9.pdf
また有機農法に関しても、その農法自体その土地に適した様々な方法があります。
ところがツルネンさんには、有機農法と言えば「EM農法」しか頭にないようにも見えてしまいます(あく
までサイトからの印象なので、違っていたなら謝らせてもらいます)。
よく引き合いに出されるのがタイなど海外での成功事例ですが、微生物資材というものはそこの自然環
境(気候・土壌)に左右されるものです。ですから、タイで成功してるからといってそれが日本国内どこ
でもうまくいくとは限らないものであると私は思います。
事実、実際の農家の方達の中では「EM」を止めて他の微生物資材に切り替えている人や、微生物資材
を手作りしている人もおります。(参考)↓
http://www.ruralnet.or.jp/gn/200609/bokasi.htm
http://www.ruralnet.or.jp/gn/200703/kant.htm
つまり、有機農法というのは決して「EM農法」だけではなく様々な方法があり、その土地その土地そ
れぞれに合った方法があるという事です。
そういう事があるにも関わらず、国会議員の勉強会では「EM農法」ばかりを薦めているように見受け
られるのですが、それこそ狭い視野でしか有機農法というものを捉えていないのではないだろうか?
という不安を抱いてしまうのです。
ツルネンさんがやっている事を他の例で示してみますと、地球温暖化の政策の一つとして各社が環境対
策車の開発を行っていますが、そこで、
「私はトヨタのプリウスに乗っている。このプリウスこそ未来を開く鍵である。」
とご自分のサイトで宣伝している事と同じなのです。
微生物資材についても各社が様々な製品を出しており、それぞれ自分の所の製品の優秀さを宣伝してい
ます。(一例)↓
http://www.soilcare.co.jp/index.html
http://www.geocities.jp/cleenstevia/saikin.html
ツルネンさんのサイトにおける「EM」の効果についても、メーカーの宣伝そのままの文言が随分見受
けられます。つまり、政治家が一製品を自分のサイトで宣伝しているのです。
これは明らかに特定の企業に対する「利益誘導」にあたると私は思いますし、著しく「公平さ」を欠く
ものと判断されます。
願わくば、サイトの変更なり声明なり、早急に手を打たれた方が懸命ではないかと、老婆心ながら不安
に思ってしまう次第です。
長々と文を連ねてしまい申し訳ありませんでした。
ただ私は決してツルネンさんを批判している訳ではありません。その事だけはぜひともご理解いただき
たくお願い申し上げます。
ツルネン・マルテイ様へ
OSATOより
このメールを送った次の日、早速ツルネンマルテイ事務所から返信が来ました。その内容については次回改めて紹介したいと思います。
あ、この微妙な時期にこの話題と言う事ですが、今回のエントリーは現在の政治状況とは関係ありません。
前から出そう出そうと思っていたのですが、単に今まで本業が忙しかったからというだけです。
(この項しばらく続きます)