杜の里から

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EMへの疑問(8) ~ちゃんと検証しているの?(2)~

2009年12月21日 | EM
平成13年6月、四日市市議会定例会が行われていた同じ頃、埼玉県戸田市議会で公明党市議中名生隆(なかなお たかし)議員が質問を行っていました。
その中でこの年行われたEM技術交流大会の詳しい内容が伝えられています。
戸田市議会(2001・6・14 平成13年6月定例会)
11 (中名生隆)
~(前略)~
 去る5月13日、三重県津市の総合文化センターにおいて行われたEM技術交流大会では、市民団体、地元自治会、市の三者が、EM菌を使った阿瀬知川の浄化運動に関する経過報告が大きな反響を呼んでいるそうです。
~(阿瀬知川の説明)~
 四日市市では、最下流にある自治会長から、阿瀬知川の窮状と、その早期対策の必要性を切々と語られ、市だけに任せておけない、阿瀬知川を守る会を発足させ、官民一体となって浄化していこうと提案され、また、ボランティア団体の代表から、汚濁の著しい阿瀬知川にEM菌を散布し、浄化を図る活動をしたいとの提案があり、前述のとおり、対策に苦慮していた四日市市は、ぜひお願いしたいとの結論のもと、米のとぎ汁発酵液を利用して、EM菌の投入が始まりました。
 平成12年の9月5日、阿瀬知川のヘドロを、上部、約50立方メートルをバキュームカーにて除去。
これで9月5日の「ヘドロ対策」というものの内容が分かりました。行政側もしっかりヘドロの除去作業を行っていたのですね。
しかも50立方メートルというと、例えば深さ50cm、幅5mとすると20mほどの除去面積となり、堆積していたヘドロは随分除去されたのではないでしょうか。
また阿瀬知川には、平成9年から12年にかけて、ヘドロ堆積を防ぐ目的で河床の改修工事が行われていました(→こちら)。
改修後の様子を見ると、今まで思い描いていた「川」というイメージからはほど遠く、ちょっと思いもよらないやり方であったようですが、ヘドロを貯めないように流れを作るという事からこのような形になったとは言え、ここはもう少し他の方法がなかったのか疑問に思う所でもあります。
そして、最も見過ごせない出来事として、平成12年9月10~12日、ちょうどヘドロ除去作業が終わってEM投入開始の間、この地域を「東海豪雨」が襲っているのです。
最も甚大な被害を受けたのは愛知県ですが、隣県である三重県四日市市でも浸水被害を被っています(→参照)。
もちろん阿瀬知川も氾濫していましたからその時の水量は計り知れず、河床のヘドロなどはその時にずいぶん流されてしまっているのではないでしょうか。

その後のEM投入の様子は、引き続き中名生隆議員から詳しく報告されています。
 9月19日にEMの投入が始まり、月に二、三回投入することを決めて、EMを100倍に拡大した活性液を使用。
 メンバーの各家庭から、米のとぎ汁にEM菌を入れ、発酵させた米のとぎ汁を、台所やトイレ、ふろ場から流したり、会のメンバーが 接(原文ママ)、川に投入しました。また、事業所のセントラルキッチンからも流したということでございます。
 平成12年9月19日からEM投入を開始し、平成13年4月15日まで、EM投入量は、EM水を1万1,450リットル、EMだんご565キロを投入いたしました。メンバーは、1人につき10リットルの容器に入れて持ち寄り、1回に集まる量が700から800リットル。
 10日に一回、五、六カ所に100リットルから200リットル投入した結果、平成12年12月には、一面のヘドロ汚泥に覆われていた川底を、みどろ状の藻が全面についてきた。また、EMだんごを多量に投入した場所の周辺には、白い糸状の菌類が発生した。
 12月20日には、市長、部長、次長など、市関係者がEM菌投入に参加した。
 平成13年1月には、約40年前に撤去された橋脚の跡が姿を見せた。また、ヘドロで隠れていた空き缶やごみが多量に出てきた。平成13年4月には、藻がはがれて流れ始めた。そして、海もきれいになったという変化があらわれてきた。このように報告されております。
~(以下、戸田市でもEM活用を薦めて質問終わり)~
一般的に、水温が低くなってくると微生物の活動も鈍り、それに伴い透視度は上がり、BOD(生物化学的酸素要求量)も低下する傾向にあります。
よくEM浄化活動の報告で、夏場に投入してから冬場になって綺麗になり、それを見て浄化されたというものを見受けますがそれは誤りです。冬場になって綺麗になるというのはどこでも同じで、EMを投入しようがしまいが、そういう現象は当たり前に起こるものです。

阿瀬知川の事例を考えますと、そもそも前述した理由(ヘドロ除去・河床改修・東海豪雨)により、この時点で例年よりもすでにヘドロの量は少なかったのではないでしょうか。
そして冬になって水量が減少したことにより、今まで隠れていた橋脚の跡が姿を見せたとは考えられないでしょうか。
もちろんこれはあくまで私の推測に過ぎません。また、豪雨後の復旧作業がいかに行われたのかも確認された訳ではありません。
また、EMの効果についても必ずしもゼロだというつもりはありません。少なくとも、家庭内で使用していたものについては、以前よりはある程度は綺麗な排水になっていた可能性もあります。
しかし、EM技術交流大会ではこれら行政の取り組みや気象条件との関連などは何も語られず、ただ一面的な報告しかなされていないのが何とも不自然な気がしてなりません。

四日市市議会の質疑に戻ります。
藤原議員の「阿瀬知川浄化に対し9カ月に及ぶボランティアの方々の献身的な活動に対し、市長はどのようにこたえようとしておられるのでしょうか。」という質問に対し市の助役は、阿瀬知川の浄化と市民参加意識の向上に繋がった事に礼を述べた後、こう答えます。
(2001・6・11 平成13年6月定例会第2日)
 (助役)
~(前略)~
  そこで、議員ご提案の今回の活動を教訓にしたまちづくりの取り組みでございますけれども、基本的にはEM技術の活用といったものを、官民協働のまちづくりの有効な手法の一つとして活用してまいりたいという考えは持っておりまして、ご提言にもございましたように、花づくり運動、あるいは生ごみの堆肥化、福祉 施設でのEMぼかしづくりなど、多岐にわたるEM技術の活用が考えられますが、まず第一には、EM技術を活用したまちづくり、そういったものへの市民の皆さんの意識の高揚を図っていくということが必要であろうというふうに考えておりまして、それにはEM技術といったものへの市民のご理解、ご協力が不可欠であろうというふうに考えております。
~(中略)~
今後ともEM技術の啓発に努めまして、市民意識の醸成を図りながら、いろんな分野での官民協働体制を構築した上で、できるところから順次、EM技術を活用したまちづくりに取り組んでまいりたいと考えております。
~(後略)~
と、市としてはEM技術の啓発に努めるという所で発言は終わり、肝心の阿瀬知川浄化に対する市側のより積極的な関わりについては何の答弁もなされませんでした。
それに対して議員が噛み付きます。
14 (藤原まゆみ)
~(前略)~
 ご答弁には具体的な方向性が全然感じられませんので、何のために助役にご答弁していただいたか本当にわからないなと思っております。
~(中略)~
 10カ月に及ぶ活動に対して、ヘドロが減ったとの結果が出ても、次に何の手も打たない、何もしないのでは、やる気が起きないではありませんか。市民の意識の高揚といいますが、本市の職員の意識が全くないんです。下水道部でさえも、部長、次長以下3~4人ぐらいですよ。最も関心を持ってほしい環境部なんか、化学に強い人ばっかりでも意識がないんです
~(中略)~
 市民の方がEMに対する理解はあると思います。現に阿瀬知川の上流にあったおにぎり工場は、もう既にEMの100倍機を購入し、【浄化対策】を行っております
 市長、尼崎の市長は、公害のまちのイメージをこのEMのまちづくりで払拭しました。市長もこのような点をもっと勉強していただきまして、まちづくりに向かっていただきたいと思います。この点についてはもう一度ご答弁をいただきたいと思います。
この時点(平成13年6月)では、EM浄化活動をしていた人はEM効果を完全に信じきっている訳です。そして、EM投入こそ環境浄化の切り札という思いを持っていたと思われます。だから、3月定例会で小林博次議員が提出した「市でもEM培養機を購入して貸し出す」という案に皆大いに期待していたのかもしれません。
EM浄化活動を行っている人にとっては、確かにEMで浄化されたと思ってしまうのは仕方がない所ではありますが、それにしてもこの発言はやはり言い過ぎでしょう。
(実はこの頃、その時の市長(井上哲夫)はEM導入にはかなり積極的だったのです。)
16 (助役)
 まず、EM技術の活用の点につきまして、具体性がないとか、やる気がないんじゃないかと、非常に厳しいご意見をいただきました。
~(阿瀬知川活動は市民主体で、行政はそのお手伝いをしたとの認識)~
 したがいまして、こういった形でのまちづくり、特に、これまでにないEMという新しい技術を応用した形でのまちづくりというふうなことになりますと、そもそもEMとは何なのか、どういったところに効き目があるのか、効果があるのか、そういったことも踏まえて、市民の方に十分その中身を理解をしていただく必要があるだろうというふうに思っております。したがいまして、そういったことを踏まえて、市民の啓発、あるいはEMに対する意識の高揚を図っていった上で、市民の方々が中心になってまちづくりの中に生かしていただく。そういった形で、先ほど答弁の中でも申し上げましたように、いろんな形で、こういったEMを活用したいろんなやり方というのが出てきておるわけでございます。
~(以下、市民活動をサポートしていくという立場の表明)~
この発言で、市はあくまでEMの検証というものを重要視していた事が分かります。
本来浄化運動というものは、それこそ行政と住民とがタッグを組んで行うもので、その検証作業も本来ならば、行政・住民双方が行った活動を互いに持ち寄って行うというのが筋というものです。
しかしそもそも、行政が行ってきた事について何も言及しなかったのはEMの側です。これでは逆に、行政に対し不信感を抱かせてしまう結果になってしまったのではないでしょうか。
22 (藤原まゆみ)
~(平成9年のヘドロ対策に3000万円かかった旨の発言)~
 ボランティアの方は浄化対策についてどう思っているか紹介させていただきますと、川がきれいになっていくのを見るのが非常に楽しい。ヘドロと悪臭がEMで解決できると知った市民が立ち上がった。まず阿瀬知川をきれいにして、EMの効果を知ってもらうことが目的や。
 予想以上のスピードで浄化が進み、行政や流域の住民の協力の輪が広がってきています。
 先ほども言いましたように、庁内でもいろんなところで使ってはいるんですよね。市民の方もいろんなところで使ってはいるんです。だから、相乗効果を出そうと思ったら、 やはり市の職員の方の研修が一番大事なんですよね。市民の人は「まちづくりやるぞう」と言って、もう構えているんですけど、市長、本当にこれ、皆さんの統一的なものがないんですよね。
 だから、本当にばらばらであるというところから、やっぱりこれは、市長に音頭取りしていただいて、市全体のEMに対する教育という部分が欠けているんではないかと思って私は提案させていただいたんですね。
 ですから、市民参加型まちづくりだよというて、市民の人がしてくれるからというのではやっぱりいけないと思うんですね。そういう点が今回は欠けているんではないかというふうにして指摘させていただきました。
EMに希望の光を見出した住民達は、EMのおかげで浄化されたとしてその効果の程を行政に認めさせ、EM浄化活動に対し行政からのより積極的な支援を期待していました。
しかし意に反し、行政側はなぜかEM浄化活動に対し、積極的に支援する姿勢を見せようとはしませんでした。
この時期、行政と住民との間には、浄化活動に対する思いに大きな「ずれ」があったようです。
そしてこのずれは、この後もっと広まってしまった様に私には写るのです。
続く) 



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