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2017年2月からこのブログを始めました

最終作48作目「寅次郎紅の花」を前にして

2017-10-27 15:10:32 | 日記







旅にある寅さんは実に分別のある大人です。人情家です。耳学問ではあるが知識人です。カバンを持って歩く後姿などはさすらいの旅人と言ってよい、と思います。

ところが葛飾柴又に帰ってくると、わがままで理不尽な男になってしまいます。

あるときなんか、とらやの人々がメロンを食べていたら寅さんが帰ってきて、自分にもひとつご馳走になろうかとせがむと、人数分に入れていなかったもので、みんなは慌てて自分のを差し出しますが、寅さんは完全に切れてしまいました。自分を勘定に入れてもらえなかった腹立ちです。分からぬわけではありませんが、周りの気の使いように気をとめないで実に大人気が無いのです。

寅さんは恋多い人ですが、その恋は神棚に祀られている限りであって、現実世界へ降りてくると、寅さんは怖気始めるのです。振られてばかりの寅さんの印象がありますが、全作品の半分ぐらいは寅さんの方から身を引いているのです。寅さんは現実の自分を実によく知っている人なのです。それが見ている私たちからすると切ないのです。

寅さんの映画を観ていて、僕らは腹を立て、苛立ちを覚え、笑い、そしてほんのり涙する、このパターンを繰り返します。が、決して飽きはしない、なぜか。もちろん山田洋二の演出手腕と渥美清のキャラクター、演技力に負うところが大ですが、それ以外に、私たちが寅さんに自分自信を投影しているから、あるいは逆に寅さんから、おめえはどうなんだ、と問い返されているからではないでしょうか。それと、寅さんの打算を抜きにした圧倒的な人情に、仏を観る心地がするからではないでしょうか。

寅さんこと、渥美清は68歳で逝きました。彼と僕は20歳違い、僕は彼の齢を超えました。そんな気持ちもあって、「男はつらいよ」を再度、第1作から特別編も入れて48作を観ました。44作あたりから寅さんの表情に力が無くなってきました。最終作48作目「寅次郎紅の花」を前にして立ち止まっています。
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