![]() ◆JR八戸線・陸奥湊駅を過ぎて、眠りはじめる。 眠っては覚め、覚めては眠る……を繰り返す。 半覚と半睡のスイッチが切り替わるたびに、いろいろな景色が浮かびあがった。 まず『あすなろ物語』の場面が現れた。 これは高1の国語の時間だ。 視野の端にちらついている濃い白黒写真は、教科書のカット写真で、寺のひとり娘、雪枝の顔が映っている。 〈七月二十日に、一学期の成績が発表になった。鮎太は一気に三十番に落ちていた。 「秀才もねえ!」と、雪枝はため息をついてみせた。 「学問もだめ、鉄棒もだめ、歌もだめ」と言った。 「歌って?」 「見たわ」 「見た!?」 恥で顔をまっかにして、鮎太は雪枝に飛びかかっていった。 …… 「なるなら一流になったらいいわ。なまはんかな秀才より、よほど気がきいている」 〉 ◆おォ! 次は『富岳百景』だ! これは高2の1学期だった。 明るい光のほうを見上げたら、担任の平野日出夫センセが笑っている。 センセ、お元気ですか!? 〈寝る前に、へやのカーテンをそっとあけて、ガラス窓越しに富士を見る。月のある夜は富士が青白く、水の精みたいな姿で立っている。わたしはため息をつく。ああ、富士が見える。星が大きい。あしたはお天気だな、とそれだかけが、かすかに生きている喜びで、そうしてまた、そっとカーテンをしめて、そのまま寝るのであるが、あした天気だからとて、別段この身には、なんということもないのに、と思えば、おかしく、ひとりでふとんの中で苦笑するのだ。苦しいのである、仕事が。〉 わたしは、あすなろ物語+富岳百景のダブルパンチで、人生の方向と速度が、すっかり変わってしまったのだった……。 ◆半覚と半睡の繰り返しのせいで、きっと夢の中でもお腹が空いたのだろう。 昔、通いつめた食堂の主人が出てきた。 ここは、牛丼がおいしかった。 わたしは料理のことはなにもわからないが、ぎりぎりのところでタマネギらしさを残しているところと、なつかしい甘辛さが気に入っていた。 ある夜、その主人がわたしのテーブルにやって来た。 「きょうで、この店を閉めることになりました」 どうやら、わたしが最後の客らしかった。 「連れ合いに死なれて、もう、なにもかも、やっていく気持ちがなくなりました」 そのとき主人の使った「連れ合い」ということばが、耳に焼きついた。 「長いあいだ、ごひいきにしていただき、ほんとうに……」 と言いながら、主人は涙ぐんだ。 わたしが奥さんのお悔やみを言い、料理をほめると、それは号泣(T_T)に変わった。 夢の中で、わたしも、ボロボロ泣いている。 ◆有家駅を出たところで、泣きながら、目を覚ます。 わたしも「みなさん 長いあいだ おおきにィ!」と言って、もう終わりにしたいよ。 (なお、夢の話も、夢の中の主人の話も、作り話ではない。昔、新井田の妙団地の入り口付近にあった食堂だ。)
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ああ、JR八戸線・陸中八木駅。非現実から現実への道が閉ざされている 13年前
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