六月(水無月)
先月GW期間中に、ホテルオークラで開催されていた「新緑盆栽展」へ行ってきました。
まず、展示されている盆栽を出展者ご自身の解説を聞きながら鑑賞させていただき、その後、盆栽に囲まれているカフェでお茶をする・・という、なんとも優雅で贅沢な時間を過ごさせていただきました・・。
「盆栽鑑賞」・・・実は、生まれて初めての経験でした(^'^)。
どの位置から、どこをどのように拝見すれば、何をどう感じ、その世界を楽しめるのか・・・、全く素人の私に、ていねいに解説しつつ案内してくださったのは、数年ぶりに再会したハザカプラント創設者の葉坂勝さんでした・・・。
昨年六月ブログに、偶然(偶然はないと云いますが^^;)、ハザカプラントを通じてご縁を頂いた今は亡き中嶋常允先生の「土」の話に触れていたのですが、
中嶋先生同様、葉坂さんも、オーガニックバンクが伝える“ホンモノオーガニック”のベースとなる部分を教えていただいたおひとりです。
中嶋先生が、ご自身の講演(「土に“いのち”がある」「土の生命が作物の生命を育む」など)でも、必ずといっていいほどお話しされていた(ハザカプラントから生み出される)ハザカコンポストの特徴を、オーガニックバンク発行の「オーガニックプレス」に掲載いただいたことがありますが、専門的な解説のあと、誰もが“なるほど!”とわかる一文が、
『ハザカコンポストの特徴は、普通の堆肥は種をまいても芽はでませんが、
この堆肥は芽がでてくるので「命ある土」といえると思います』でした。
今、多くの市民農園に、コンポスト容器が設置され、当たり前のように、コンポスト(堆肥)として使用しているようですが、ホンモノのコンポストでなければならない理由(『未完熟堆肥は、土壌中で二次発酵分解する為、有機酸(有害)物を分泌し、作物の細根・根毛を傷めて生育障害を起こすものがある・・』)は、まだまだ、浸透していない感がありますね。
完熟堆肥と未完熟堆肥の違い・・・、やはり、ハザカプラントを通じて直接お話しをお聞きする機会を頂いた東京農大名誉教授・発酵学の権威者小泉武夫氏も、学校給食の残渣を堆肥にする試みは称賛するけれど、完熟した状態でなければ・・・と、発酵学の専門見地からもおっしゃっていました。
微生物学の観点からは、
『ハザカコンポストには1gに100億匹の微生物が居る・・』
そうで、この微生物の量と種類が、完熟かどうかに関わっているわけです。
中嶋先生は、(『・・・未完熟堆肥が大半であって・・・設備も無駄なものが建設されて困っています・・』)と、一時期のプラント建設ラッシュを警告、『このコンポストはホンモノ!』と、ハザカプラントを多くの方に伝えていらっしゃいました。
そのホンモノコンポストを作り出すハザカプラントを作った葉坂さんの盆栽の世界観は・・・・、やはり、趣味という世界を超えているものでした。
「盆栽」・・・前述通り、全く素人の私ですが、海外の方へ日本の文化を紹介するテレビ番組で見たことがありますが、
『盆栽は大自然の樹木の姿を写しとったものです。海辺や山中の豊かな自然を、小さな空間に再現するのです・・』(NHK 「Trad Japan」より)と表現され、bonsaiは、すでに、英単語としても通用する言葉となっているそうです。
中国を起源とする盆景が、800年の日本の歴史の中で育まれ、「盆栽」となり、「日本のこころ」を現す文化の一つ「bonsai」として、海外の方々へ発信されているわけです。
饒舌ではない葉坂さんが、その盆栽の世界を通じて、発信されていることは、20年前プラント建設の意味を伺った話と共通していました。
もともとハザカプラントは、有機性の排出物を処理するために作られたもの。最初からコンポストを作る目的で作られたプラントではないのです。
そこが・・・コンポストを作って、それで商売しよう・・と考えプラント作りをしていた人たちとの大きな違いでした・・。
葉坂さんの中には、『・・・廃棄物(後に排出物と表現を変更)を堆肥にまで分解処理して土に戻すことしか考えていませんでした。畜産にしても農産にしても・・・一番困っているのがこの部分です。だからこそ、廃棄物を正しく土に戻す、昔から伝わって来た方法を社会の蝶番にして、地球環境サイクルを回さなければならない・・・』(葉坂勝著「バクテリアを呼ぶ男」より抜粋)
葉坂さんには、「有機性排出物は、ごみではなく資源・・」「命のサイクル」という二つの概念が存在していた・・・だから、出てきたものは害のないものでなければいけない・・・ただ、それだけだった・・わけです。
ホンモノコンポストとしての評価、微生物が1gに100億近く存在する・・などなどは、その結果・・だったわけですね。
下記の絵は、20年前、オーガニックバンク設立者の大浦さんと葉坂さんとの共通項が、「いのちのサイクル」だったことから誕生した一枚です。
無肥料栽培であっても、健康な土壌があってこそ!
その健康な土壌づくりの一つとして、ホンモノの堆肥を必要としている所もあるのではないでしょうか。
20年前、初めてハザカプラントを訪れた時から、10回以上訪問させていただいたと思うのですが、いつの間にか、事務所には、盆栽が少しずつ増えていた記憶があります(^’^)。
葉坂さんとの再会後に大浦さんから渡された資料(葉坂氏が会長を務める盆栽の設立総会関連)に、
『日本の伝統美「盆栽」は、自然との調和を考えながら、
「土・光・水・風」と日々会話し、人間の技との融合により
「命のサイクル(循環)~自然との共存を体現」する芸術・・・』
と、書かれていました・・・。
趣味という世界を超えて、プラントで発信してきたことを、今度は、日本の文化の一つである盆栽を通じて、世界にむけて、発信しているんだなあ~と、ホンモノをめざし、ホンモノを伝えようとする人にはどの世界を通じても、そこの起点には、同じ概念が存在している・・・と、感じた次第です。
たった一度鑑賞したくらいで、その世界の奥深さを語ることはできないですが、
正面から観た同じ盆栽を、角度を変えて観てみると、全く違った空間を表現していることに触れることはできました・・。
“角度を変えて物事を観る”・・・、
ホンモノオーガニックが定着する世界になったらいいな~と思いつつ、いつも同じ方向でしか見えていない(?)伝えられていない(?)自分を振り返る機会にもなり、また、日本食大好きな私にとっては、違う角度(笑)から、日本文化のひとつに触れる機会を頂き、教養を高めることができた(!?)、素敵な時間と空間でした(*^_^*)。
☆生ごみをコンポストにされ、たい肥として使用されている皆様へ
完熟されている状態であるかどうか、確認してお使いくださいね・・。
完熟かどうか・・・簡単に誰でもわかるヒントは、このブログでお伝えした方法以外に、“臭(にお)い”・・です。完熟堆肥には、悪臭はなく、ほのかな土の香りがします(^_-)。