杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・成年後見選挙権訴訟違憲判決~「 国は控訴すべきではない 」

2013-03-20 11:58:04 | 憲法問題
「国は控訴すべきではない」 (判決内容を少し読みやすくしました)


普通、裁判で勝っても、負けた方が控訴、上告をすることがあります。
特に今回ように被後見人の選挙権を否定した公職選挙法の規定が違憲であるというような
「憲法訴訟」においては、最高裁判所まで行くことは当然のように思われています。

仮に、原告の言い分にも理があるが、被告国の言い分にもそれなりの理がある。
それでも原告は勝訴したのだから控訴しないでほしい、という内容の裁判であれば、
私も「控訴すべきではない」とは本気では言いません。

でも、今回の判決の中身は、非常に筋の通ったものでした。
これを覆せるのでしょうか。

判決は、簡単に言うと以下のようなものでした。
              【筆者注:筆者がつなぎのためにことばを足しています】

『選挙権は重要だから、「やむを得ない事由」がなけれは制限できない。
【平成17年の最高裁大法廷判決のとった枠組みと同じです。】

【憲法はもともと選挙権について以下のように考えている】
そもそも被後見人も国民である。国民には望まざるにもかかわらず障がいを持って生まれた者、
不慮の事故や病によって障がいを持つに至ったもの、老化という自然的な生理現象に伴って
判断能力的能力が低下した者など様々なハンディキャップを負うものが多数存在する。
そのような国民も本来わが国の主権者として自己統治を行う主体であることはいうまでもない。
【そう考えるとき】
成年被後見人には選挙権を行使できる能力を持つ者が少なからずいることが認められる。
すなわち、後見開始の能力と選挙権を行使するための能力は同じものとはいえない。

ところで、成年被後見人に選挙権を付与することによって、
選挙の公正を確保することが事実上不能ないし著しく困難である事態が生じると認めるべき証拠はない。
【注:つまり、被告国が弊害だと主張する事実は裁判で証明されなかった】

さらに、成年後見制度は自己決定の尊重及び残存能力の活用やノーマライゼーションという理念
によって設けられたものであるから、選挙権を行使する能力を持つ被後見人から選挙権を奪うことはその制度の趣旨に反する。

このように、選挙権を行使する能力を審査するについて、
およそ制度趣旨を異にする成年後見制度を借用して被後見人から一律に選挙権を奪うことが
選挙の公正を確保するために「やむを得ない」ものとはいえない。

以上のように、成年被後見人の選挙権を奪うことは「やむを得ない事由」がないのに選挙権を制限するものであって違憲である。』

というのです。


この理が覆せるのであるならは、控訴をして争うことはしかたのないことですが、
裁判の中でも、原告側には学者の意見書を書いてくださる学者がたくさんいましたが、
国側は新しい学者の意見書や文献は提出されず、古い文献だけが挙げられいました。

このことは、新聞の記事や社説、識者のコメントを見ても
これに反する論を展開するものが見当たらなかったことからも分かると思います。

そして、元最高裁判事である泉徳治氏(現在弁護士)が、
今回の判決について「国内では画期的でも世界の趨勢からすれば当たり前の判断である」
ことを広く知ってもらうことが重要だと述べておられることは、
まさに、従前の制度を死守して控訴して争うのではなく、
有用な成年後見制度にするための立法に力を注ぐべきことを示唆しています。

国がどのような姿勢をとることが国民のことを本当に考えた方針であるのか、
有用な税の使い方であるのかを、私たちがしっかり考えて、
「国は控訴すべきではない」
と声を上げていきたいと思います。ご協力下さい。



★★成年後見の選挙権規制規定を廃止へ!法務省に控訴を断念させましょう!!!★★

控訴期間は3月28日。
国が控訴しないように、効果的な意思表示をしましょう!!!
下記内容での電報、または、HPからの意思表示をお願いします。

◆1.法務省宛ての、控訴断念の要請電報
  『法務大臣 谷垣禎一 殿』
  〒100-8977
  千代田区霞が関1-1-1 法務省
  ℡ 03-3580-4111

  (文例案)
  ①「控訴しないでください」
  ②「3月14日に違憲判決が出された原告名兒耶匠さんの成年後見選挙権訴訟【東京地裁平成23年(行ウ)第63号】について、控訴をしないよう申し入れます。」

  http://www.moj.go.jp/mail.html
  (HPでも、ご意見ご提案 出来ます)


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
◆2.総務省宛ての、法律削除の要請
(期限はありませんが、早めに。早期に法律が改正されればそもそも控訴できなくなります)

  『総務大臣 新藤義孝 殿』
  〒100-8926 
  千代田区霞が関2-1-2 中央合同庁舎第2号館
  ℡ 03-5253-5111

 (文例案)
 ①「3月14日に違憲判決が出された原告名兒耶匠さんの成年後見選挙権訴訟(東京地裁平成23年(行ウ)第63号)を受けて、公職選挙法11条1項1号を削除するよう要請します。」
 ②「公職選挙法11条1項1号を削除してください」

   https://www.soumu.go.jp/common/opinions.html
   (HPでも、ご意見ご提案 出来ます)


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
宮武嶺こと徳岡宏一朗です (ray)
2013-03-23 16:42:32
杉浦先生、勝訴判決おめでとうございました!
及ばずながら助勢をということで、ブログ記事を書きました。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/preview?eid=984a5bc42e8535cd63d66e6be831e4a5&t=944019558514d432de7cfa?0.8065693576354533

そしたら、BLOGOSにも転載されました!
http://blogos.com/article/58674/

以上、ご報告まで。これからの闘いも応援しております!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。