杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・憲法96条(改正規定)の2/3を過半数にすることが危険なわけ

2013-04-20 22:40:23 | 憲法問題
自民党憲法改正草案Q&A
http://www.jimin.jp/policy/pamphlet/pdf/kenpou_qa.pdf#search='%E6%86%B2%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3%E8%8D%89%E6%A1%88Q%26A'

のなかで、
Q38 憲法改正の発議要件を緩和したのは、なぜですか?

憲法改正は、国民投票に付して主権者である国民の意思を直接問うわけですから、国
民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意思を
表明する機会が狭められることになり、かえって主権者である国民の意思を反映しない
ことになってしまうと考えました。

と答えています。

でも、もともと代表民主制を採用したのは、
国民には、物理的にも能力的にも、政治に関する事柄を検討することは困難なので
代表に任せたわけです。
物理的に、とはそれを検討するだけの十分な時間をとることはひとりひとりの国民にはできませんし、
ましてや多くの国民で議論するような場所もとれません。
また検討しようにも専門的な知識がなかったり、研究したり、必要な視察に行ったりする金銭的な能力もありません。

ですから、できる限り専門的なことは国会で十分に、慎重に検討してから発議してほしいのです。

このことを裏付けるような事実がありました。
これは、現在国会にある憲法審査会に先立って存在した憲法調査会の報告書の中に書かれていることです。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/houkoku.pdf/$File/houkoku.pdf

引用します(「まえがき」)


「 また、5 回にわたって、合計28 の国と国際機関の憲法事情を調査した海外調
査も、本調査会の「広範な調査」の代表的なものである。
特に圧巻だったのは、2 年目(平成13 年)の海外調査であろう。
 その年の4 月に小泉政権が誕生したが、小泉首相は、憲法調査会委員であったときの持論である「首相公選制」を
唱え、多くのマスコミや国民世論もこれを肯定的に論じていたように思えた。

 私は、「首相公選制」のような国家の基本的な統治システムの変更は、これに対
する深い洞察と調査なくして、ブーム的な論議のみが先行するのは危険ではな
いかと考え、その年の海外調査に、当時「首相公選制」の唯一の実施国(であ
り廃止国)であったイスラエルを選んだ。
 米国でのいわゆる9・11 同時多発テロの直前であり、空港などでは相次ぐ自爆テロ等に対して厳重な警戒がなされ
ていたが、調査のための会談は、極めて平穏かつ和やかな中で行われ、しかも、長時間にわたって充実した濃密な議論が行われた。

 その詳細な会談記録と収集資料は「海外調査報告書」にとりまとめた上で、
本調査会における冷静なる議論に供した。
 その結果は、本報告書で述べているとおり、「首相公選制の導入の
是非については……消極的な意見が多く述べられた」というものであった。」

                    ・・・・引用終わり


このような視察も検討も、国民では到底できないことです。
でも、マスコミの情報によった国民の世論のなかで、国民に問いかけられれば、容易に流されてしまった可能性があったわけです。

一時のブームで過半数をとった政党が賛成して、国民にこの問題を投げかけられても、
国民は到底扱いきれるものではないのです。

力のある国会で、できるだけ慎重に、重要な問題を検討してもらうことが必要だという実例だと思います。
国民投票は、それからで遅くないのです。




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2 コメント

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誤記があります (アッシュ・テ)
2013-05-09 17:38:39
最後の方、訂正して下さいませ。 過半巣(過半数)
返信する
訂正しました ()
2013-05-09 21:04:14
ご指摘ありがとうございます。訂正しました。
返信する

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