杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・成年被後見人選挙権裁判~被告国に出された宿題は

2012-04-13 23:29:37 | 憲法問題
以前から報告しています、成年後見を付けると被後見人は選挙権を剥奪される(公職選挙法11条1項1号)
ことになるが、それは憲法違反だ、といいう裁判の報告です。

現在同じ裁判が、東京の他、埼玉、京都、北海道で起こされていますが、
東京では5回の裁判が行われました。

争点がだいぶ鮮明になり、裁判長からも「裁判も終盤」を告げられました。

原告の側では、選挙権を行使するについて、国が能力を要件とすべきではない。
つまり、能力の有無によって選挙権が認められたり、認められなかったりするということはない、というのが基本的な主張です。


これに対して、法律(公職選挙法11条1項1号 成年被後見人の選挙権を認めないという規定)や被告国は
公務としての選挙権行使には能力が必要であるとしています。


そこで、裁判所は今回の法廷で以下のような宿題を国側に出しました。

「能力のない人から選挙権を奪うのはやむを得ないんだ」というためには、それを基礎付ける事実(立法事実)が必要だ。
そのような人に選挙権を行使させると、看過できない事態が生じる。過去にこんな事例があった、
つまり、そのように能力のない人に投票をさせた結果、本来選ばれるはずでなかった人が選ばれたり、
選ばれるべきだった人が選ばれなくなった事例があった、ということを主張してほしい。」

「それでそのような目的の主張をした後に、どうしてその「手段」として成年後見制度(成年被後見人)を使うのか。
排除すべき能力を欠く人と、被後見人がぴったり重なるのか、を説明することになる。」

これまで、憲法でもあまり議論されてこなかった問題です。
世界のいくつかの国では、能力に関係なく選挙権認めています。



仮に、抽象的に、選挙に一定の能力が必要であるとしても、その能力に基準が設けられなければ
いい加減な基準で選挙を奪うことになります。
つまり、いい加減に選挙権を奪われてしまう人も出てくるわけです。
そんな危険な選挙権剥奪権限を国に与えない方がいいと思うのです。




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