杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・裁判官評価のエールを!~「空自イラク派遣は憲法9条に違反」 名古屋高裁判断

2008-04-17 22:01:28 | 憲法問題
「空自イラク派遣は憲法9条に違反」 名古屋高裁判断
                       2008年04月17日14時17分

 自衛隊イラク派遣の差し止めや派遣の違憲確認など求めた全国の市民3千人以上が原告となった裁判の控訴審判決が17日に名古屋高裁で出されました。
青山邦夫裁判長は、結論として一審と同様に原告らの請求を認めませんでした。
しかしながら、その判決文の中で「現在の航空自衛隊のイラクでの活動は日本国憲法9条1項に違反している」との判断を示したということです。
憲法判断をしていますが、これは結論に直接かかわるところでの判断ではないので、判例としての効力は持ちませんが、それでも、裁判所が傍論にせよ、違憲の判断をしたことは大きな意味があります。
また、この裁判の結論は、原告の請求を認めなかった、つまり、不利益を受けなかったということになりますので、国側からの上告はできません。
最近、このように傍論で非常に重要な判断を示し、それが覆されないように結論は負けにする、という判決がでています。
これは、その判断が覆されないようにあえて原告を負けさせる、ともいえるし、裁判所の体制の中で傍論でしかなかなか判断を示せないともいえますが、それでも大きな一歩です。このような判断をすることについて、裁判官はある意味裁判官生命を賭けることもあります。支持する世論が一番のエールになります。またそれが、このような果敢な判断をしようと思う裁判官を育てることになります。

ちなみに、福田康夫首相は17日夜、同判決について「傍論だ。判決は国が勝った」と述べた、ということです。国の機関が(参議院も含めて)すべて一色で行かなくなってきた空気を読んでほしいものです。



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9 コメント

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よくわかりました (志村建世)
2008-04-18 00:01:42
裁判という枠の中で、裁判官がどのように判断を示すのか、ここの解説のおかげで、よくわかりました。高裁の判決だというところも、いいですね。最高裁が違憲審査権を放棄してから何年になるでしょうか。自衛隊の存在は憲法違反と判決して「玉砕」した地裁の裁判官もいましたね。常識を失わない裁判官が存在することを、久しぶりに思い出させてくれました。
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正直なところ (鉄甲機)
2008-04-18 00:34:20
陸自とは違い、空自のイラク派遣については不測の事態を危惧しているところではあるのですが。バグダッド空港は非戦闘地域としても途中はそうとも限りませんし、何と言っても近年の携行兵器の発達ぶりは目を瞠るものがあります。

 しかし、この「違憲判断」には釈然としないものを感じるのも確かです。
 原告の要求は
・イラク派遣は違憲だから止めろ
・精神的苦痛に対し慰謝料を支払え
 素人考えですが、裁判官がイラク派遣を「違憲」と判断するのなら、慰謝料はともかく「政府の派遣判断は違憲」として原告の訴えを認めることができるのではないでしょうか。
 杉浦さんもお書きのように、この「違憲判断」は主文の理由にならないのですから一裁判官の思想主張、単なる感想にしか過ぎず(裁判官と言えども思想信条の自由は当然保障されるべきですが)、判例としての効力は皆無です。しかも判決と、この無用とも言える「判断」とによって被告は上告の機会を奪われたわけで、いわば司法権の乱用とも感じます。

 そう言えば民主党の菅代表代行が、昔の杉浦さんと同じく「小泉首相は『自衛隊が活動している地域 が 非戦闘地域だ』と言った」と勘違い発言を。(笑
 誰かきちんと指摘してあげる人はいなかったのでしょうか。いや、自分たちが政権攻撃に使うためにわざと聞き間違えたことを忘れているのかも。
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退官した人をどう評価しろと? (TT)
2008-04-18 11:22:34
新年早々からのブログ主さんのつける薬のない開き直った発言の連発に、あきれ果ててコメントを控えてましたが・・・。

ブログ主さんは、例によって、あえて無視していますが、件の青山邦夫裁判官は3/31付けで「依願」退職しています。

つまり、この裁判官は、自分の判断について、元々責任をとるつもりもなく、あまつさえ、判決文を読み上げることすら他人任せ(高田健一裁判長代読)にしているわけで、裁判官として、何をどう評価しろと。

この人の経歴を調べてみれば、さらにおもしろい事実も明らかになってきますし、この人の今後の身の振り方を見ていれば、さらにおもしろくなりそうです。

>その判断が覆されないようにあえて原告を負けさせる

これ、人権屋弁護士の得意技ですね。
原告の利益なんかお構いなし、自分たちの思想実現だけが目的。
反論を封じて、既成事実を積み上げていく、自分たちが批判しているはずの手法をそのまま使っている。

>> 誰かきちんと指摘してあげる人はいなかったのでしょうか。いや、自分たちが政権攻撃に使うためにわざと聞き間違えたことを忘れているのかも。

で、事実をもって指摘されると知らなかった、と開き直る、言った痕跡を抹消して無かったことにする、と。
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こんばんは。 (bando)
2008-04-18 18:32:06
傍論でも、裁判官は本当に頑張ってくれたと私も思います。

しかし、この傍論の問題もまだまだ皆で話し合わなければならないですね。
違憲の確認の請求方法がもっと単純になれば良いと思うのですが。
利害関係関係無く請求できるように法整備するのは難しいのでしょうか。
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どうなっているの? (伊賀 敏)
2008-04-23 01:23:24
弁護士と裁判官、 日弁連と最高裁、 力関係が全く見えない。 ますます日本と言う国がわからなくなってきた。 というか、これで国家と呼べるんだろうか? 判決を出して自殺したり、辞表を書いたり、、、日弁連は裁判官の人権を守るように最高裁に申し入れをしたらどうか? ポーズだけでも(皮肉)
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裁判官の立場・姿勢 (杉浦ひとみ)
2008-04-23 02:09:42
裁判官の独立が憲法上保障されていながら、独立でないころは自明のこととなっています。なんとかすべきですね。日弁連が声を上げる(皮肉)ことはたしかに必要かも知れませんね。昨日の光市の母子殺害事件についても、裁判官が感じた世論の風はどれほどだったかと思います。
本当は、マスコミがもっとその存在意義を示してほしいと思っています。
弁護士会も頑張るべきですが。


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風林火山いつになったら動くのか (伊賀 敏)
2008-04-24 11:28:25
おそらく弁護士も司法自体が見えなくなってるんでしょうね、世間は弁護士よりも敏感に感じ取ってますよ。 

マスコミは裁判官よりも独立を阻害されていることはご存知でしょう。 日弁連も国民から信用されなくなってきてます。

これでは良い裁判官はどんどんいなくなっていく、平目大量増殖中じゃないですか。 
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ヒラメが良いとは思えませんが (宇宙戦士バルディオス)
2008-04-30 22:40:13
 自分だけの「良心」で突っ走って、上級審で覆されたり、事件の解決の域を越えてくだらない傍論をくっつけるような裁判官も、納税者としては困りものです。
 「かの団藤氏も、最高裁判事になったら共謀共同正犯説に賛成するようになったが、これが法曹の良心というものだ」というのは、友人の裁判官の言葉でした。
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違憲ですよ。 (崩壊した家族より)
2008-05-04 20:34:48
杉浦様。
こんにちは。
ご無沙汰しております。

自衛隊自体が憲法上、違憲なのだから、イラクでの活動が陸であれ空であれ海であれ、違憲になるのは明白です。一市民の立場から、歪曲した考えではなく素直に、そう思います。
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