杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・沖縄密約文書開示請求63人が申立 ~ のび太とジャイアン?

2008-09-03 03:04:39 | 憲法問題
メチャクチャにおもしろい情報公開請求

堅い話ではなくて、子どもでも分かる話です。
ジャイアンにいじめられたくないのび太は、「これからはずっとおやつをジャイアンに上げるよ」と約束し、2人の名前を書いた証文を2人がそれぞれ同じものを持つことにした。ところが、そのことに気づいたのび太のお母さんがジャイアンに尋ねると、ジャイアンは「はい書きました、ごめんなさい」とのび太・ジャイアンと2人の名前が書かれた証文を出してきた。
のび太のお母さんは、ジャイアンの持っていた証文を見せて、「のび太、あなたも

これと同じの持ってるでしょ」と問いつめた。
さて、のび太はなんと答えるでしょう。
 のび太「そんなの持ってないよ」
 お母さん「のび太、あなたはなんでそんなうそをつくのッ!」

これが、今回の沖縄密約に関する日米の合意文書の情報公開請求の内容です。
 1972年(昭和47年)5月の沖縄返還の際、日本政府とアメリカ政府との間で、基地移転費などの負担について日本がその一部を密かに肩代わりするなどの「密約」がありました。
 当時、この密約の情報を掴んだ記者が、なんと“逮捕”されたのです。
いわゆる「沖縄密約事件」「西山記者事件」として大きく報道されました。

最近になって、アメリカが保存していた公文書の公開や当時の外務省担当者である吉野文六氏の証言などによって、この密約の存在が明らかになりました。
 しかし、日本政府は、アメリカの文書公開、担当者の証言などをまったく無視し、今なおこの「密約」の事実そのものを否定し続けています。

そこで、この西山さんをはじめ、ジャーナリスト筑紫哲也さん、作家澤地久枝さん江川紹子さんなど63人もの方が、この密約文書を外務省と財務省に対して、見せてくださいと、昨日9月2日に情報開示請求をしたというのが、下記の記事です。

 ここまで明白となった歴史的事実を否定し続ける政府は、民主主義を否定し、国民主権を軽視しているというほかありません。このような形での情報隠匿を許してしまうと、今後も、政府は、国民に対し、情報を公開しなくてもよい、嘘をついてもよいという安易な考えに基づく政治を行い続けることになってしまいます。

昨日、この情報開示請求を申し立てたあと、記者会見をされましたが、西山さんは集まった報道陣に対して「みなさんが、政府に対して毎日ひとりずつ日替わりで『政府は、まだ密約文書をださないんですか?』と問いつめてほしい」「この密約の開示請求だって、私たちではなく、現役ジャーナリストのみなさんが本当は明らかにせよと迫るべきものです」と叱咤されていました。

情報公開はふつう、000のような名前の文書がありませんか?とといあわせるものであって、相手が持っているはずのものを示して、「これをもってるでしょ?」というのは不思議なことなのです。
でも、政府からは「ありません」という回答が予測される、というのだからもっと不思議なのです。

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<請求した方たち・その支援者のコメント>
2008年9月2日、情報公開制度を実効性あるものにし、民主主義を確立するために、沖縄返還に伴う密約のうち、アメリカが情報公開法により開示した次の3つの公文書(日米間の秘密合意文書)の情報公開を求めました。
① 1971年6月12日付け吉野文六・外務省アメリカ局長とシュナイダー駐日アメリカ公使との「400万ドル(軍用地復元補償)に関する秘密合意メモ」
 ②  1971年6月11日付け吉野文六・外務省アメリカ局長とシュナイダー駐日アメリカ公使との「1600万ドル在沖縄VOA施設の海外移転費用の秘密メモ」
 ③  1969年12月2日付け柏木雄介・大蔵省財務官とアンソニー・ジューリック・アメリカ財務省特別補佐官との「秘密合意議事録」
 
しかし、政府は、密約の存在自体を否定しているため、今回の上記文書の請求も拒否すると予想されます。
その場合、私たちは、裁判所に提訴し、アメリカが公開した上記文書が日本で公開されないことの是非について、裁判所に判断を求めるとともに、公文書の保管及び情報公開のあり方に関ついて国民的議論を展開したいと考えております。


そのためには、コピー代などかなりの実費が必要となります。そこで、それら費用をぜひ、皆様にカンパしていただきたいのです。
カンパの額は一口1972円。これは、沖縄が返還された年です。もちろん、善意をお寄せいただくのであれば、1円からでも結構です。より多くの方に、政府に嘘をつかせないために情報を公開させる運動に参加していただきたいと願っております。
カンパは、ゆうちょ銀行の下記振替口座までお願いします。
口座番号 00130-0-563368
加入者名 沖縄密約文書開示請求の会(会の名称が少々異なっているのでご注意ください)


<新聞の記事から>~~~~~~~~~~~~~~~~~~
沖縄「密約」文書の公開請求 作家の沢地さんら63人

 沖縄返還直前に日米両政府高官が交わした3通の公文書について、ジャーナリストや作家らが2日午後、外務省と財務省に情報公開請求した。記者会見で「政府が『不存在』と回答した場合、密約を司法の場で明らかにしたい」とし、行政処分取り消し訴訟を起こすことを検討する。

 請求したのは、沖縄返還に伴う日米の秘密合意文書について情報公開を求めていた呼び掛け人63人。ジャーナリスト筑紫哲也さん、作家沢地久枝さんのほか、密約に絡む外務省極秘公電のコピーを入手し国家公務員法違反容疑で逮捕、起訴された元毎日新聞記者西山太吉さん、密約を記した米側公文書を発掘した我部政明琉球が大教授も名を連ねた。

 今回、請求したのは1971年6月12日付の秘密合意書簡など3文書。

 沖縄返還をめぐっては、米側負担と定められた軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりする密約など、複数の秘密合意があることが米側公文書で裏付けられたが、日本政府は一貫して否定している。


識者らが請求の対象とした行政文書は以下の3つ。いずれも機密解除された米公文書によって、日本側との合意の存在に関わるもの。それぞれの所管官庁とみられる財務大臣と外務大臣に公開請求を行った。
1.1969年12月2日付け、柏木雄介・大蔵財務官とアンソニー・ジューリック・アメリカ財務省特別補佐官との「秘密合意議事録」
2.1971年6月12日付け、吉野文六・外務省アメリカ局長とスナイダー・駐日アメリカ公使との「400万ドル(軍用地復元補償)に関する「秘密合意書簡」
3.1971年6月11日付け、吉野文六・外務省アメリカ局長とスナイダー・駐日アメリカ公使との「1600万ドル在沖縄VOA施設の海外移転費用の秘密合意書簡」



会見で、原寿雄氏(ジャーナリスト)は、「西山氏が刑事裁判で有罪に終わってしまったことが、日本のジャーナリズム(のあり方)として問題だと感じていて、その延長線上で、情報公開をすることに決めた」「これは新しい知る権利の闘いの仕方であるし、西山さんの名誉を守る闘いでもある」と話した。

西山氏の刑事裁判を追った『密約』の著書のある澤地久枝氏(作家)は、「この国は独立国であり、主権在民の国であるはずです。国家が主であって国民が従である事態に、怒りを覚えます」と訴えた。

昨年、『沖縄密約』を上梓した西山太吉氏(ジャーナリスト)は、「沖縄密約の秘密文書について本質論を闘わせる機会が来たことを嬉しく思う」としたうえで、「今日、上告棄却が通告されたことは、この問題に関しては、行政と司法が一致しているということだ。この問題が、国家権力にとっては存立基盤に関わる問題だからだ」と述べた。

沖縄返還をめぐる情報公開請求では、「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子室長が、財務省に情報公開請求し、「不存在」を理由に不開示とされた例があるといれる。

識者らの公開請求も「不存在」を理由に不開示とされる可能性があるため、その際は、不開示処分の取り消しを求める提訴も視野に入れ、今回の請求に当たっては、現時点で32名の弁護団(団長=清水英夫氏)が、請求者の代理人として名を連ねている。

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5 コメント

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楽しみが増えた (志村建世)
2008-09-03 17:44:26
政府が無理を承知で「密約はございません」と言いつづけるのは、同じ政権党が継続しているからでしょうか。政権が交代したら答弁が変るのか、これも政権交代の楽しみの一つですね。
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情けなさに泣けてくる (鉄甲機)
2008-09-03 19:15:19
>のび太とジャイアン

 お母さんがジャイアンから見せてもらったのはもっと後になってから。のび太に問いつめた時に持っていた証文は、違法行為によって獲得したもの。ジャイアンの家に忍び込み、勝手に持って行ったみたいなものでしょう。
 その結果、のび太は「お母さんは悪いことをしたんじゃないか!」と口答えし、お母さんは「そんなことは関係ない!」と言い返す。いったい真実はどこへやら。
 「違法行為」という大きなポイントをわざと無視するのは、印象操作と言うやつですね。

>西山さんの名誉を守る闘いでもある

 西山さんは、国際外交の闇の中から隠蔽された事実を探し出したんでしょう? 立派じゃないですか。たとえそれが違法行為によるものであっても。
 逆に言えば、違法行為も辞さずに真実を追求した。これこそがジャーナリストの名誉ってものじゃないでしょうか。
 それが「真実なんだから違法行為は関係ない。チャラにしろ!」? これが記者クラブで飼いならされたじゃーなりすとの成れの果てですか。情けない。
 西山事件は有罪確定。しかしそれは「密約」が無かった、誤報だったと確定したものじゃない。有罪を認めたうえで、事実は事実、密約はあったんだと主張してください。
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Unknown ()
2008-09-03 19:51:55
鉄甲機さん、のび太ジャイアンストーリーを追加していただきありがとうございます。
実体と手続き、注意しながらみることは大切ですね。

志村さんの言われるように、たとえばインド洋の給油活動の継続についても、政権が盤石の自民党体勢でないことからみえたことがありましたね、
政権は緊張感をもってあるべきですね。
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裁判でなく、運動に (磯永征司)
2008-09-04 03:33:41
日本政府は余りにも情報公開しない。これは、官僚の度し難い体質になっている。
必ず、突破する事が至上命題。
裁判に矮小化するのでなく、全国的な運動にすべきである。そちらに力を入れるべきである。その圧力で、こじ開けるしかない。
集会、デモ、カンパ、各団体を通じての全国的チラシ撒き、座り込み、ファックス、電話集中・・・・・様々ある。
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Unknown (きった)
2008-09-06 20:32:06
ドラえもんの話おもしろいです!政治もアニメ話にたとえられるとおもしろいんですが・・・。
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