EDLP戦略の神髄――特売消耗戦、避けるが勝ち

2005年11月14日 | 通販/モール
 大黒天物産、オーケーなど低価格型食品スーパーの高成長を見ると、改めてEDLP(毎日安売り)戦略の強みを知らされる。
 大黒天は二〇〇六年五月期見込みで売上高が前期比四二%増の四百二十億円。六年間で九倍だ。同売上高経常利益率見込みも五・六%と高い。オーケーも〇五年三月期の売上高が同二一%増の千四十億円。同利益率は四・一%。今上期の売上高も二〇%増だ。
 低粗利、低販管費で売価を安くして客数を増やした成果だ。前期の粗利率はオーケー一九%、大黒天二二%。通常の食品スーパーの二五―三〇%を大きく下回る。五割引きの冷凍食品、一丁二十円の豆腐。安さが客の来店回数と買い上げ点数を増やし商品単価の下落を補って高成長を実現、販管費比率を押し下げる。
 米ウォルマート・ストアーズや衣料スーパーのしまむらに共通した事業拡大がそこにある。
 「とにかく客数を伸ばす。そのために安さに対するお客の期待を裏切らないようにしてきた」(飯田勧オーケー社長)。「本当に質の良い安い商品をと、愚直に追求してきた」(大賀昭司・大黒天物産社長)
 かっこよく聞こえるかもしれない。だが言うは易く行うは難し。EDLPでは目玉商品を前面に出したチラシの特売作戦は基本的に実施しない。オーケーのチラシ広告費は通常のスーパーの五分の一以下、大黒天ではチラシ特売商品は全体の一―二%。「毎日、全体的に安い」と言っても広告しない分、情報が伝わるのに時間がかかる。
 そこを我慢できずに特売作戦に変更するスーパーは跡を絶たない。その結果、堅実な経営基盤作りに失敗して現場の混乱とコスト上昇を招く。ウォルマート傘下の西友の苦吟がそれを象徴している。
 「特売が終わると客が離れるのでは」と恐怖感にかられ、切れ目なく特売を繰り返す危険。そのむだは直接的な広告費だけにあるのではない。次々と特売を考えねばならず、メーカー、問屋との打ち合わせや値札付け、陳列作業に多大の作業を要する。
 大賀社長によると、大黒天の坪売上高は他店の一・五倍にもなるが、他店を辞めて入社した店長は「ここの方が楽だ」という。定番商品の陳列が中心で特売に伴う仕事がないからだ。
 チラシ特売はメーカーからのリベートを確保しないと実現しにくいため、その分メーカー側の要求を聞かねばならず、棚割りや品ぞろえの自由も制約されがちだ。メーカーの在庫一掃のため、客が求めてもいない商品を見やすい位置に大量陳列しなければならない羽目に陥ることもある。
 顧客本位の商品・販売戦略を推し進めて集客力を高める。EDLPは小売業の体力を粘り強く鍛える経営戦略でもある。