携帯+定期+おサイフ「モバイルスイカ」あすスタート

2006年01月27日 | ポイント/電子マネー/決済
JR東のカード登録必要
 携帯電話で東日本旅客鉄道(JR東日本)の電車に乗れる「モバイルスイカ」サービスが二十八日から始まる。非接触IC技術「フェリカ」を搭載した「おサイフケータイ」の強力コンテンツとして期待される。ただ、対応端末がまだ少なく、利用するためにJR東のクレジットカードが必要などハードルも高い。二○○六年度末に利用者百万人というJR東の目標について、専門家は厳しい見方を示す。
 モバイルスイカは携帯電話をかざすだけで自動改札が通過でき、電子マネーで買い物ができる。券売機に並ばずに携帯電話の通信機能で入金できたり、利用状況を画面で確認できる点も利便性が高い。ただ、これが会員制サービスということはあまり知られていない。
 利用にはJR東が運営するビューカードの会員登録が必要だ。「代金回収に必要な住所や名前などの情報を毎回入力してもらうのは利用者にとって不便」(鉄道事業本部Suica部の山田肇次長)という観点から、クレジットカードによる課金を採用している。
 期待の高いサービスのハードルをみずから高くしている最大の理由は「モバイルスイカをビューカードの利用促進と新規顧客獲得の商材と考えているから」(野村総合研究所の森本伊知郎上級コンサルタント)。少子化で旅客収入の拡大が見込みにくい中、カード事業を新規事業の柱として一本立ちさせる千載一遇のチャンスと見ている。
 JR東はサービス開始に合わせて、新宿や品川など主要駅で加入キャンペーンを始める。約一時間で会員登録できるよう携帯電話事業会社と協力した人海戦術を展開する予定だ。
 生活情報提供サイト「オールアバウト」クレジットカードガイドの岩田昭男氏は「自社カード限定は利用者の利便性に反する」と指摘。「半年から一年で軌道修正し、他社クレジットカードに門戸を開くことになる」(森本氏)という見方が多い。
 山田氏も「ボーダフォンの遅れもあり百万人は挑戦的な数字」と認める。普及動向を見極めて他社カードへの開放も検討する考えだ。
対応、まだ10機種どまり
 モバイルスイカに対応した携帯電話がまだ少ないことも課題だ。おサイフケータイは現在一千万台を超えたとみられるが、モバイルスイカ対応機種はNTTドコモとau(KDDI)の計十機種だけ(二十五日現在)。ボーダフォンに至っては「お願いしているがJR側の確認に時間がかかっている」(野副正行副社長)状況でサービス開始に間に合わなかった。
 適合技術の目安は「一分で六十人が通過する朝の改札に対応できること」(山田氏)。カードと比べて金属物に囲まれた携帯電話の中のチップを読み取るのは技術的に難しいという。auが対応端末として一度発売した「W32S」を「モバイルスイカの要件に十分マッチできなかった」(KDDIの小野寺正社長)として回収し修理するということも起きた。
 「ここまで苦労すると思わなかった」と漏らすJR東は管轄下の駅の約三千七百通路の自動改札をすべて改修するなど対応を強化。モバイルスイカ関連投資は合計で四十億円に上った。
 今後発売されるおサイフケータイがすべてモバイルスイカ対応になるかどうかも「技術面を含め簡単ではない」(小野寺社長)。利用者が急増しにくい状況だ。駅以外で電子マネーとして利用できる「街ナカ拠点を拡充できるかが普及を左右する」(岩田氏)という声も強い。電子マネーの実用性を高めることがカギだ。