僕と香澄の新刊マンガ感想日記

香澄が紹介したがっている新刊マンガ等々

山崎さやか『はるか17』3巻、講談社、モーニングKC

2004-09-02 | Weblog
 図書室で立ち上がって熱弁を振るっている加藤香澄も、下から見ると蛍光灯の刺す光がぼんやりと包み込んでいて神秘的になるんだから女性は得だ。日頃から鬱積しているストレスを一気に独白形式で吐き出して快感を得ているようだが、ときおり、眼鏡のレンズが蛍光を反射してうっとりした眼差しを隠してくれるから余計謎めいて見える。
 ひょっとすると、読書することよりも語ることの方が好きなのかもしれない。10代半ばを超えてようやく声を発する喜びに目覚めたかのように、今はとにかく説き明かすことだけに没頭している。たとえ舌を食って死んでも後悔はしないだろう。
「『モーニング』にはグラビアがないからね。だから、山崎さやか『はるか17』3巻、講談社、モーニングKCが連載可能ってわけね。同じ青年誌でも、アイドルグラビアが表紙を飾るヤンジャンやヤンサンでは成し得なかっただろうし、グラビアがなくてもビジネスジャンプやスーパージャンプでも集英社ではちょっと無理。そこらへん、普段から反バーニングを標榜しているオヤジ週刊誌のある講談社でないと。そう、この巻には“バーニング”という芸能プロダクションが露骨にモチーフになってるでしょ。さして魅力も無いはずの新人アイドルの主人公にお株を奪われ、躍起になってオーディションやマンガ雑誌に圧力をかけている事務所ファインプロというのがまさしくそれ。その圧力のかけ方がじつにいやらしくて、これはぜひ読んでほしいっ。普通、マンガの劇中に出てくるマンガ雑誌編集者なんかとは力関係が逆! いや、現実には芸能事務所の方が仕立てに出るもんなんだろうけど、だからこそバーニング、いやいや、ファインプロの力山を抜き気は世を蓋うほどの権力が際立っているって話ね。じゃあ、なぜバーニング、いやいや、ファインプロがそこまで横暴を働けるかというと、現実にはヤクザや宗教などが絡んでもっとドロドロした側面があるはず。そこまで描ければ大したもんなんだけど」
「でも、僕も、ちょっと読んでるけど、オヤジがモーニング買ってくるから。主人公のはるかのサクセスストーリーなんでしょ。ライバル事務所の妨害を乗り越えられちゃうんだから」
「そう、完全に芽を潰すほどの嫌がらせを描いては物語にならないからねえ。難しいところだね。ヒールに画鋲ってレベルじゃなくて、本気で芸能界に居られなくなるほどの嫌がらせ、、、読んでみたいー! まあ、非バーニングの小野真弓だってなんだかんだで2年以上売れているわけだから、さまざまな障壁を乗り越えてる人も現実にいるしね」
「最恵国待遇の事務所の圧力を乗り越えるくらいファンのマスを持つほど成長しさえすれば良いんだね」
「そう、ストーリー的には映画やドラマを段階的に上り詰めるんだけど、結局はそこに詰まるはずなんだけど。でも、今後、女優道を極めることにより成功、とかの安易な落とし所の流れになったら嫌よねえ。ファンをおざなりにするのは」
 たしかに、そういうことになったらちょっと嫌に思う。僕も、すぐ身近の女の子にファン意識が働いているからよくわかる。