1983年創刊 月刊俳句雑誌「水 煙」 その2

創刊者:高橋信之
編集発行人:高橋正子

高橋正子20句(2008年5月号)

2008-03-09 18:10:18 | 本文
秋水湧く波紋をそのまま手にすくう
水菜洗う長い時間を水流し
乳ふふます母なる者に虫が鳴く
 ドイツ・ヴュルツブルク
鐘の音のわれを包んで夏空へ
 ベルリン
カスターニエの青き実曇天よりもげば
大年の山河も晴れを賜りし
ポプラ黄葉雲寄り雲のまた流る
枯草を踏みおり人に離れおり
稲穂田の隅にごぼごぼ水が鳴り
パソコンを消して露散る夜となりぬ
来たぞ来たぞいつもの目白が蜜吸いに
野ばら咲く愛のはじめのそのように
スイートピー眠くなるほど束にする
白バラの空気を巻いていて崩る
竹落葉わが胸中を降るごとし
 富士登山
夏星を登りぬ一歩を岩に置き
胸うちに今日の夏野を棲まわせる
さわやかに行きし燕の戻り来る
わが視線揚羽の青に流さるる
水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ