俳句
ゆりの木の黄葉かるがる濠へ散り
日本民藝館
秋雨の音もしずくも大甕に
大甕にむかえば雨と森の声
晴れのち雨
○出光美術館の近代日本の巨匠展と、駒場の日本民藝館へ。
小杉放庵がかなりあって、楽しむ。なんと、さんたくろすの絵もあり。帰り、放庵の金時遊行の絵葉書を買う。
仙の併設展も。出光のカレンダーをここ何十年も裕子さんに送ってもらっているので、見慣れた画も。
上村松園の「灯」。襟元のゆるみと、袖口に見える色合いが、やわらかさを出している。浅黄色の着物には紋が付いている。眉が剃ってあるので、若妻であるが、どんな日のどんな場であろうかと思う。
佐伯祐三の踏み切りの絵。大正15年作。日本の風景は脆弱であるとする。物足りなさが鬱屈して画面に出たのか、鬱々とした色。電信柱、踏み切り、家の線がひ弱なのが風景。
平櫛田中の張果像。瓢箪からロバを出して、そのロバにのって走った仙人。ついでに、この田中は、愛大俳句の仲間の祖父の師であったということである。
冨岡鉄斎。これまでの山水画より線が逞しく動きが自由闊達の印象。
陶芸では富本憲吉と板谷波山。憲吉は、砥部焼きの窯元にも数点あったので、馴染みがある。都市的であることは、簡明であることとも言えるのだそうだ。
陶磁器の破片を見る。中国青磁の色がいい。
○日本民藝館の初代館長は柳宗悦。二代は浜田庄司。同人作品に、庄司、憲吉、河井寛次郎、リーチほか、の展示がある。リーチのいわゆるリーチハンドルの小鹿田釉が気に入る。家に置きたい気持になった。そして彼の壷もよかった。
○井の頭線の東大駒場前を出たときには、雨になる。コンビニで傘を買い、民藝館へ行ったのも、心持おもしろかった。駒場は駒場。そこらに生えている雑草に、都会でないものがあるのが昔を語っている。
民藝館を去り、渋谷へ引き返し、東急のレストラン街へ遅い昼食。「四国」で、讃岐の生醤油海老うどんを注文。食べ方の説明をしてくれる男の子に、「わたしら四国人間ですよ」というと、にこにこ。男の子は東京人とのこと。反応を示す無邪気さが残っているのが若い東京人の救い。思惑がないのがよろしい。
○愛代さんか「人間国宝 濱田庄司展を見て」を寄稿してくれる。溝口の生家を訪ね当ててくれた。もとは、和菓子店だったが、今は洋菓子店になっているとのこと。
○22日の朝日夕刊に<「民芸」・日本デザイン>に脚光/パリの展覧会で柳宗悦・棟方志功など紹介 とあった。歴史的背景を評価し、パリで人気の無印の影響も大とある。2年前、エッフェル塔近くに開館した「ケ・ブランリ美術館」で展示されているとのこと。日本民藝館の150点余りが出展とある。民芸運動をより広い時代的、国際的な文脈で再認識する意図があるようだとする。