アメリカ人従業員にとって、魔の金曜日というのがある。解雇の通告は圧倒的にきりの良い金曜日が多いからだ。これを知らずに、不用意にした発言の一言でアメリカ人をその日眠れなくすること請け合いだ。
野呂利氏は、ある木曜日の夕方、帰るジョンが、部屋の前を通りかかったので、明朝金曜日にミーティングをしようと思い立ち、こう切り出した。「ジョン、明日はオフィスにいるね。朝9時から君とミーティングしようと思うので、そのつもりで」。ジョンが「イエス・サー。ところで準備するものは何かあるか」と聞くと、野呂利氏の答えは「いや、これといって特にないのだが、ちょっと君と話がしたくて」。このところ、ジョンとはあまり話すチャンスが無く、意思の疎通を欠いてはいけない、という軽い気持ちだった。 翌朝、会議室で野呂利氏はジョンを待っていた。9時にジョンが入ってきたが、顔が強張っていて、いつもの陽気さが無い。
「さて、ジョン」と野呂利氏。ここでジョンは次なる野呂利氏の言葉が何か、さぞかし緊張したことだろう。「最近の市況と顧客動向について聞いておきたい」。思わず、ジョンから、「オー」といかにもホッとしたかの大きなため息のような声が漏れた。ジョンのあまりに大きなジェスチャーに今度は野呂利氏がいささか驚いた。「ジョン、どうした、何かあったのか?」。
前日の木曜日の帰り際に明日のミーティングを告げられ、特に準備する物もないと聞けば、明日の花金は魔の金曜日に変わり、エライこっちゃ、となる。ジョンにとっては、帰路の運転も殆どパニック状態。仕事でミスがあったか、いや思い浮かばない。それなら他にどんな理由が考えられるか。いくら考えても出て来ず、結局その晩は一睡も出来なかったと言う。
日本では、上司が、「君、久しぶりに雑談したいが、明日は一時間ほど時間あるかい」と特定テーマなしで言ってきても、部下は、「仕事で何か聞きたいか、探りをいれたいのだな」と了解する。そこには、「解雇」ということが通常では入り込まないことを前提としているからである。
日頃から、レイオフや解雇が付き纏うアメリカでは、ちょっとしたショートミーティングを持つ場合でも、キチンと話すテーマを相手に明示しておく必要がある。具体的に、「コレコレの件で話したい」と伝えなければならない。舌たらずでも、相手が理解してくれる日本、言葉や文字にして初めて伝えられるアメリカ。この違いを痛感する。
野呂利氏は、ある木曜日の夕方、帰るジョンが、部屋の前を通りかかったので、明朝金曜日にミーティングをしようと思い立ち、こう切り出した。「ジョン、明日はオフィスにいるね。朝9時から君とミーティングしようと思うので、そのつもりで」。ジョンが「イエス・サー。ところで準備するものは何かあるか」と聞くと、野呂利氏の答えは「いや、これといって特にないのだが、ちょっと君と話がしたくて」。このところ、ジョンとはあまり話すチャンスが無く、意思の疎通を欠いてはいけない、という軽い気持ちだった。 翌朝、会議室で野呂利氏はジョンを待っていた。9時にジョンが入ってきたが、顔が強張っていて、いつもの陽気さが無い。
「さて、ジョン」と野呂利氏。ここでジョンは次なる野呂利氏の言葉が何か、さぞかし緊張したことだろう。「最近の市況と顧客動向について聞いておきたい」。思わず、ジョンから、「オー」といかにもホッとしたかの大きなため息のような声が漏れた。ジョンのあまりに大きなジェスチャーに今度は野呂利氏がいささか驚いた。「ジョン、どうした、何かあったのか?」。
前日の木曜日の帰り際に明日のミーティングを告げられ、特に準備する物もないと聞けば、明日の花金は魔の金曜日に変わり、エライこっちゃ、となる。ジョンにとっては、帰路の運転も殆どパニック状態。仕事でミスがあったか、いや思い浮かばない。それなら他にどんな理由が考えられるか。いくら考えても出て来ず、結局その晩は一睡も出来なかったと言う。
日本では、上司が、「君、久しぶりに雑談したいが、明日は一時間ほど時間あるかい」と特定テーマなしで言ってきても、部下は、「仕事で何か聞きたいか、探りをいれたいのだな」と了解する。そこには、「解雇」ということが通常では入り込まないことを前提としているからである。
日頃から、レイオフや解雇が付き纏うアメリカでは、ちょっとしたショートミーティングを持つ場合でも、キチンと話すテーマを相手に明示しておく必要がある。具体的に、「コレコレの件で話したい」と伝えなければならない。舌たらずでも、相手が理解してくれる日本、言葉や文字にして初めて伝えられるアメリカ。この違いを痛感する。