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未熟DREAMER
ここ数週の『ラブライブ!サンシャイン!!』のエピソードには思わず唸るものがありました。1年生が加入し、PVの作成も成功に終わり、スクールアイドルとしてようやく形になってきたように思えたAqours。そこに訪れる東京遠征の話、ライバル「Saint Snow」との邂逅。得票数「0」という現実を突きつけられ、抑えつける悔しさの中で千歌ちゃんが吐露した想い、出した答えが「ゼロだからこそ、これから歩んでいく先に何があるのかを知りたい」だったのも胸が熱くなった。
自分たちがいまだ何も見えない場所にいることを痛感させられながらも一歩を踏み出したいのだと。第8話は千歌ちゃんの芯の強さ、責任感の強さ、何よりもスクールアイドルへの想いを強く感じさせる文句なしの名回だったでしょう。
そこへ来て、今回の9話。またあの頃のようにみんなでスクールアイドルをやりたいと願う鞠莉、鞠莉の将来のためにスクールアイドルにはならないという果南、そして二人の喧嘩を止めるダイヤさん。少しずつ散りばめられていた三年生の過去、その真実が明かされ、お互いを思うが故にバラバラだった彼女たちが一つにまとまっていく様は、はまらずにいたピースが綺麗にはまった時のような爽快感とカタルシスがあった。
話の構造として上手いなと思ったのは、8話において明かされた「東京で歌えなかった」という三年生の過去が事実でありながら本質的にはミスリードであったこと。というのも、第9話放送以前の物語においては明らかに果南というキャラクターにまつわるエピソード、彼女が内に秘めた本当の気持ちを描写することを避けていた節があった。彼女の登場回数が少なかったのも第9話を観れば納得がいきます。
だからこそ、「東京で歌えなかった」という挫折話が前面に押し出され、それが嘘ではないが故に、当事者であり、果南の一番近くにいたはずの鞠莉さえも――いや、一番近くにいたからこそ、果南がスクールアイドルを避ける理由が2年前の挫折に起因していると考えざるを得なかった。そして、それこそが今回のすれ違いの一番の論点だった。1・2年生組の挫折回の延長線上に3年生組の回帰があると思っていた自分としてはここまで上手く練られ、自然に納得させられるミスリード演出には思わず唸るものがありました。
そして、今回の目玉ともいえるAquoursの新曲「未熟DREAMER」。ようやく完成をみたAqoursの9人で歌う初めての曲。この曲が3年生組の想いにずっぽしはまっていたことは、もうお見事と言う他ありあせん。
未熟DREAMER
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いつもそばにいても 伝えきれない思いで ココロ迷子になるナミダ
忘れてしまおう 歌ってみよう いっしょにね
忘れてしまおう 歌ってみよう いっしょにね
果南だってずっと鞠莉といっしょにいたかった。いつもそばにいた大切な友達だから。でも、鞠莉の立場・気持ち・将来。その全てを誰よりも考えていたのも果南だった。そんな果南の想い、鞠莉に伝えきれなかった気持ち。その想いを今ならきちんと言葉に出来る。
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言葉だけじゃ足りない そう言葉すら足りない 故に
すれ違って 離れてしまった事が悲しかったの ずっと気になってた
すれ違って 離れてしまった事が悲しかったの ずっと気になってた
離れたくない。お互いにそう思っているはずなのに、言葉だけでは伝えきれない想いがあって、お互いの本当の気持ちをぶつけあえなくて、すれ違っていた果南と鞠莉。そんな2人をずっと見守り続けてきたダイヤさんの想いが真っ直ぐな言葉で紡がれる。
お互いがお互いを想いあうが故にすれ違い、苦悩を内に秘める2人を見てきたダイヤさんが一番歯がゆい想いを堪えてきたのでしょう。誰よりもスクールアイドルが好きな彼女が果南の想いを尊重してスクールアイドルを避けてきた。その2年間どんな気持ちでいたのか、それを考えるだけで、ダイヤさんというキャラクターの優しさ・人間としての深さを感じざるを得ません。
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わかってほしいと願う 気持ちが止まらなくて きっと傷付けたね
それでも 諦めきれない 自分のワガママ 今は隠さないから
それでも 諦めきれない 自分のワガママ 今は隠さないから
逃げていたんだと思っていた。東京での挫折が果南の、私たちの時間を止めてしまったのだと。でも、果南とダイヤさんとずっと一緒にスクールアイドルを続けていたい。ずっと一緒にいたい。そんな溢れる気持ちをただぶつけるだけで、果南の真意に気付くことが出来ず、きっと傷付けてしまったこともある。それでも、この気持ちだけは諦めきれない。果南が自分の事を想ってくれるように自分も果南やダイヤさんのことを想っているのだから。その溢れ出る想いを精一杯歌に込める。
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力をあわせて 夢の海を泳いでいこうよ きょうの海を
どんな未来かは 誰もまだ知らない でも楽しくなるはずだよ
みんなとなら 乗り越えられる これからなんだね お互い頑張ろうよ
どんな未来かは 誰もまだ知らない でも楽しくなるはずだよ
みんなとなら 乗り越えられる これからなんだね お互い頑張ろうよ
そして、三年生組の想いが一つになり、力を合わせて、海のように無限に広がる未来へ踏み出していく。千歌ちゃんが言ったようにこれから先どんな未来が広がっているのかはわからない。今はまだゼロで未熟なDREAMERの彼女たち。でも、みんなとならどんな未来も乗り越えられるはずだから。『みんなで叶える物語』、その意志はきちんとAqoursにも受け継がれているのでしょう。
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紡がれる想い
部室のホワイトボードに消えかかっていた歌詞。失った時間は戻らない。でも、かつての思い出と今に至るまでに抱えてきた想い、そしてこれからの未来への期待。空白の2年間を埋めるように消えかかっていた文字をなぞっていく。空白の2年間があったからこそ、生まれた曲。それが「未熟DREAMER」。最高の形で3年生が抱えていた過去の物語に決着が着いた回であり、「これから9人の未来」を期待させる文句なしの神回に思わず唸った話でした。