調査員の「目」

 日常の何気ない雑感とつれづれ日記。

『大使が書いた日本人とユダヤ人(中経出版)』

2006-10-01 | 書評系
『大使が書いた日本人とユダヤ人(中経出版/1,575円)』
著者:エリ-エリヤエフ・コーヘン氏(駐日イスラエル大使)
 1949年エルサレム市生まれ。イスラエル国立ヘブライ大学数学・物理学科、ロンドンテームズヴァリー大学でMBA取得。マーレアドミム市副市長、国防大臣補佐、国内外の複数のハイテク企業の社長などを経て、2002年~03年リクード党国会議員。2004年から駐日イスラエル大使。イスラエル松涛館空手道協会会長(黒帯五段)。

 まえがき
第1章 武士道精神とユダヤの人生哲学
第2章 自害、切腹の考え方には深い理由がある
第3章 神道とユダヤ教
第4章 男系男子を貫く皇室と祭司の家系
第5章 日本における古代イスラエルの伝承
第6章 民族を結ぶ三つの糸をたぐる
第7章 日本人とユダヤ人-その過去と現在の暮らしを見る・・・
 あとがき-異邦人を照らす光
(以上、223ページ)

 現役の駐日イスラエル大使が書いた「日本人とユダヤ人」論。
一般に「日本人とユダヤ人」と言えば、イザヤ・ベンダサン(山本七平氏)の著作が有名であるが、本書の書名では 「大使が書いた」となっており、山本七平氏の著作を意識した上での書名であるように感じた。実際私は「大使が書いた」という書名に目が止まり、立ち読みして買ってしまった(笑)。

 詳しい内容は上述の目次にある通りで、本書を手にとって欲しいが、「ユダヤ教の至聖所にあった七枝の燭台と四国の倭大国魂神社の七枝の神紋(写真がある)」や「ショファールを吹くユダヤ教徒とほら貝を吹く山伏(写真あり)とそのかぶり物」が類似していることが写真で分かるほか、男系男子を貫く日本の皇室とモーゼの兄のアロンの時代から男系男子を貫くユダヤの祭司(著者コーヘンの家系)の血統の守り方なども似ており非常に興味深い。日本人とユダヤ人が同じ祖先であるとする「日ユ同祖論」が巷間語られていると思うが、同じ祖先かどうかはわからないが、本書にある通り徳島県美馬市の白人神社を祭祀している75家族の伝説(2000年以上前にやってきたとされる)など日本国内には古代ユダヤ人が来たと考えてもおかしくない「証」が多数あるようだ。

 著者のエリ-エリヤエフ・コーヘン氏は駐日大使を務めるだけあってか、宮本武蔵の「五輪の書」や「古事記」「葉隠」などに通じているほか(恐らく平均的日本人以上に)、空手も修めておりイスラエルではテロリストに立ち向かった経験も有しているなど文武共に一流の人物である見て間違いない。文章からもユダヤ人としての誇りや信仰心の高さ、日本に対する親近感が伝わってくる。しかも前述の通り、モーゼの兄のアロンの時代か3500年も続く祭祀の家系・・・。
 
 日本ではラビ・M・トケイヤー氏が有名だが、また別の観点で公的な職にあるユダヤ人から見た日本はどのように映るのか、興味がある人にとっては有意義な本であると思う。