婆婆と夫の介護日記 ~嫁のお仕事~

脳硬塞になった婆婆の様子を,彼女を愛し心配している人達にご報告します。皆さん婆婆を応援してください。

『青い部屋』にて

2007-05-25 19:45:22 | Weblog
『戸川昌子さん』といえば、私と同世代なら、そのお名前は必ず耳にしたことがある有名人です。
シャンソン歌手であり、江戸川乱歩賞を受賞したミステリー作家であり、酒場『青い部屋』のオーナーでもある実業家。
もちろん彼女の小説は凄く面白い!
ひところはよくテレビにも登場されていて、その才能溢れるキャラクターがくり出す痛烈なコメントや、時代の最先端ファッションのアフロヘアは大変印象的で、忘れることのできない昭和を代表する傑物のひとりです。
そういえば最近は、新作も耳にせずテレビ出演からも遠ざかっていらっしゃいますが、いったいどうされているのでしょう?

娘から電話があって、渋谷にある『青い部屋』でライブをすることになったと突然聞かされて驚いてしまいました。
酒場だとばかり思っていた『青い部屋』も、いつの間にかライブハウスに模様替えされていたのです。
なにやら都合の悪くなった友人の代理で急遽決定したことらしいのですが、娘にしてみれば、私が、戸川昌子さんの作品の大半を読んでいることや、『青い部屋』の存在を知っていることの方が驚きだったようです。
「聴きに来る?」と誘われる前に
「行く!行く!」と答えていました。

学生時代に声楽を専攻していた娘は、卒業とともにクラシックはあきらめてポップスに転向。
学生時代と卒業以降も良き指導者に恵まれて、現在は、自ら学んだ技法を独自に生かして、ボイストレーナーとして生計をたてているかたわら演奏活動を続けています。婿殿の理解と協力に寄るところが大きいことはもちろんです。

ライブ当日は、娘の生徒さんたちが30名ぐらい集まってくださった中を、夫と私、息子、姪と一族4人でくり出す親バカぶりの物見高さでちょっと恥ずかしくなってしまいました。
入室してすぐキョロキョロしていたら、あっ発見!戸川昌子さんだ!
76歳になられている筈の戸川さんの、めりはりボディとアフロヘアはいまだに健在でした。

娘はピアノの弾き語りで6曲演奏しましたが、どこか郷愁を感じさせるsoulfulな歌声で、聴く度に上手くなっていると思いました。
他の出演者には、奇妙な舞踏のパフォーマンスチームや、ヴァイオリンとピアニカで楽曲を奏でる不思議な魅力に溢れるペアもいて、私は、若い頃よく見にいったアングラ演劇を思い出し、『青い部屋』の一角だけに昭和が舞い降りてきたような懐かしい錯覚に陥ってしまったほどです。

戸川さんは終始煙草をくゆらしながら、アーティストたちのパフォーマンスや演奏を、脇目もふらず真剣に見守っていました。
週の半分は『青い部屋』に通われて、若きアーティストたちの活動を応援したり、自らも飛び入りでシャンソンを歌われたりしているそうです。

私たちは、夫の体調を考慮して途中で退室することにしましたが、満員の店内の中、気がつけば戸川さんが側にいて私の手を握り
「今日はどうもありがとう。今夜は私も歌うつもりなんだけれど、最後まで聴いていただけなくて残念だわぁ。」
と声をかけてくださったのでびっくりしました。
娘が慌てて駆け寄ってきて
「私の母なんです!戸川さんにお会いしたくて岩手からやって来たんです!」と言い出したのでもっと恥ずかしくなりました。

これが功を奏した訳では全然ありませんが、娘は『青い部屋』のレギュラーアーティストになったそうです。
またいつか出かける機会があると思います。
......戸川昌子さん、どうかいつまでもお元気で......