土星には現時点で60個もの大小様々な衛星があります。
大きさもさることながら、土星の衛星はそれぞれ特有の性質を持っていて、非常にバラエティーに富んでいます。
NASAの土星探査機カッシーニによる観測で、各衛星の詳しい姿が明らかになってきました。
それとともに、各衛星がどのような過程をへて現在の姿になったのかについても研究が進んできています。
その中で今回は、パンとアトラスという2つの小衛星がどのように進化してきたのかについて、独自に作成した最新画像とともに、私の仮説を紹介していこうと思います。
【要約】パンとアトラスは、ちりを含む固い球形の核と、細かい氷の粒子が赤道に沿って堆積してできた円盤状の部分とからできていると考えられます。より外側で形成された核が何らかの理由で現在の場所へと移動し、その表面にリング粒子が少しずつ降り積もって円盤状構造が形成されたと思われます。
1.パンとアトラスについて
パンは土星のエンケの隙間を公転する大きさは25kmの小さな衛星です。1990年、ボイジャーの画像からM. Showalterらによって発見されました。エンケの隙間とは、Aリングの中にある隙間で、1837年にエンケが発見した隙間です。
アトラスは大きさ37 x 34.4 x 27kmの小さな氷の衛星です。Aリングのすぐ外側を回っています。1980年、探査機ボイジャーの画像からR. Terrileらによって発見されました。
2.パンとアトラスの形状
これは以前オリジナル画像No.199で紹介したパンの画像です。
やや潰れた楕円形で、赤道部分が尖っています。
こちらはオリジナル画像No.204で紹介したアトラスの画像です。
やはり赤道に沿ってのびた形をしています。
下は今年6月に撮影されたこれまでで最も解像度の高いアトラスの画像です(より詳細な画像は近くオリジナル画像コーナーで配信予定です)。
上側が自然色画像(赤、緑、青)で、下側が擬似色画像(赤外線、緑、紫外線)です。
赤道に沿って円盤状に突き出た形をしており、上から見た麦藁帽子のようにも見えます。
これらカッシーニの画像により、パンとアトラスは赤道部分が円盤状に突き出た奇妙な形をしていることがわかってきました。
3.アトラスの内部構造
今回新たに作成した上のアトラスの最新画像をもう少し詳しくみていきます。
前述のように、アトラスは赤道に沿った円盤状の部分(赤枠外)と、それ以外の部分(赤枠内)とに分かれています。
表面の性状を観察すると、赤枠内の部分は他の多くの氷衛星と同じように表面がごつごつしています。
ところが円盤状部分は非常に滑らかであり、クレーターのような凹凸は全く見られません。
このことから円盤状部分には非常に細かい粒子が厚く積もっていると考えられます。
さらに、上で紹介した擬似色画像(色強調)をもう一度詳しくみてみます。
すると、円盤状部分とそれ以外の部分とでは表面の色が異なることに気付きます。
このことは構成成分が異なることを示しています。
円盤状部分は比較的純粋な氷で覆われており、それ以外の部分はちり(または岩石)を含んだ氷でできていると思われます。
以上より、アトラスは大きく2つの部分から成ることが分かります。
つまり、ちりを含む氷でできた固い球形の核と、細かな氷の粒子が堆積した円盤状部分から成ります。
下はそのようなアトラスの構造モデルを図にしたものです。
パンについては観測がまだ不十分ですが、形状がアトラスとよく似ているため、その構造も似ていると考えられます。
4.パンとアトラスの形成過程
その構造から、まず最初に固い核が形成され、その後氷の粒子が堆積して円盤状部分ができあがったと考えられます。
下はそのアニメーションです。
円盤状部分を作っている氷の粒子は、恐らく近くのリングから捕獲されたものだと考えられます。
パンはエンケの隙間の中を、アトラスはAリングとFリングの間をそれぞれ公転しており、近くのリングからたくさんの氷の粒子が供給されたと考えられます。
また、パンの軌道付近には細く淡いリングが発見されています。
アトラスの軌道上にもR/2004 S1という細いリングがカッシーニによって発見されました。
さらにアトラス軌道付近には、以前私が独自に発見した数本の細いリングが存在しています(下図及びオリジナル画像No.222参照)。
これらの小リングと、衛星の形成過程との関係も注目されます。
ではそもそもパンやアトラスの核はどこでどのように形成されたのか?
それについてはまだわかりませんが、構成成分が異なることなどから考えて、恐らく現在の位置よりも外側で誕生したと考えられます。
それが何らかの理由で内側へと軌道を変えたと思われます。
以上が勝手な私の仮説です。
ここまで読んで下さったもの好きな方、ありがとうございますw
大きさもさることながら、土星の衛星はそれぞれ特有の性質を持っていて、非常にバラエティーに富んでいます。
NASAの土星探査機カッシーニによる観測で、各衛星の詳しい姿が明らかになってきました。
それとともに、各衛星がどのような過程をへて現在の姿になったのかについても研究が進んできています。
その中で今回は、パンとアトラスという2つの小衛星がどのように進化してきたのかについて、独自に作成した最新画像とともに、私の仮説を紹介していこうと思います。
【要約】パンとアトラスは、ちりを含む固い球形の核と、細かい氷の粒子が赤道に沿って堆積してできた円盤状の部分とからできていると考えられます。より外側で形成された核が何らかの理由で現在の場所へと移動し、その表面にリング粒子が少しずつ降り積もって円盤状構造が形成されたと思われます。
1.パンとアトラスについて
パンは土星のエンケの隙間を公転する大きさは25kmの小さな衛星です。1990年、ボイジャーの画像からM. Showalterらによって発見されました。エンケの隙間とは、Aリングの中にある隙間で、1837年にエンケが発見した隙間です。
アトラスは大きさ37 x 34.4 x 27kmの小さな氷の衛星です。Aリングのすぐ外側を回っています。1980年、探査機ボイジャーの画像からR. Terrileらによって発見されました。
2.パンとアトラスの形状
これは以前オリジナル画像No.199で紹介したパンの画像です。
やや潰れた楕円形で、赤道部分が尖っています。
こちらはオリジナル画像No.204で紹介したアトラスの画像です。
やはり赤道に沿ってのびた形をしています。
下は今年6月に撮影されたこれまでで最も解像度の高いアトラスの画像です(より詳細な画像は近くオリジナル画像コーナーで配信予定です)。
上側が自然色画像(赤、緑、青)で、下側が擬似色画像(赤外線、緑、紫外線)です。
赤道に沿って円盤状に突き出た形をしており、上から見た麦藁帽子のようにも見えます。
これらカッシーニの画像により、パンとアトラスは赤道部分が円盤状に突き出た奇妙な形をしていることがわかってきました。
3.アトラスの内部構造
今回新たに作成した上のアトラスの最新画像をもう少し詳しくみていきます。
前述のように、アトラスは赤道に沿った円盤状の部分(赤枠外)と、それ以外の部分(赤枠内)とに分かれています。
表面の性状を観察すると、赤枠内の部分は他の多くの氷衛星と同じように表面がごつごつしています。
ところが円盤状部分は非常に滑らかであり、クレーターのような凹凸は全く見られません。
このことから円盤状部分には非常に細かい粒子が厚く積もっていると考えられます。
さらに、上で紹介した擬似色画像(色強調)をもう一度詳しくみてみます。
すると、円盤状部分とそれ以外の部分とでは表面の色が異なることに気付きます。
このことは構成成分が異なることを示しています。
円盤状部分は比較的純粋な氷で覆われており、それ以外の部分はちり(または岩石)を含んだ氷でできていると思われます。
以上より、アトラスは大きく2つの部分から成ることが分かります。
つまり、ちりを含む氷でできた固い球形の核と、細かな氷の粒子が堆積した円盤状部分から成ります。
下はそのようなアトラスの構造モデルを図にしたものです。
パンについては観測がまだ不十分ですが、形状がアトラスとよく似ているため、その構造も似ていると考えられます。
4.パンとアトラスの形成過程
その構造から、まず最初に固い核が形成され、その後氷の粒子が堆積して円盤状部分ができあがったと考えられます。
下はそのアニメーションです。
円盤状部分を作っている氷の粒子は、恐らく近くのリングから捕獲されたものだと考えられます。
パンはエンケの隙間の中を、アトラスはAリングとFリングの間をそれぞれ公転しており、近くのリングからたくさんの氷の粒子が供給されたと考えられます。
また、パンの軌道付近には細く淡いリングが発見されています。
アトラスの軌道上にもR/2004 S1という細いリングがカッシーニによって発見されました。
さらにアトラス軌道付近には、以前私が独自に発見した数本の細いリングが存在しています(下図及びオリジナル画像No.222参照)。
これらの小リングと、衛星の形成過程との関係も注目されます。
ではそもそもパンやアトラスの核はどこでどのように形成されたのか?
それについてはまだわかりませんが、構成成分が異なることなどから考えて、恐らく現在の位置よりも外側で誕生したと考えられます。
それが何らかの理由で内側へと軌道を変えたと思われます。
以上が勝手な私の仮説です。
ここまで読んで下さったもの好きな方、ありがとうございますw
どんどん、映像を多用した記事を書いてください。
そんな論文が既に出ていたんですね…w
ここで紹介したモデルとほとんど同じようなモデルですが、理論的に検討されていて興味深いですね。
配信用に加工していないものも含めて、色々と画像を分析してみましたが、「核」の部分と「砂丘」の部分では組成が明らかに違うようです。
その辺りを検討してたら配信するまでに1ヵ月以上かかってしまいましたが…
観測結果からも理論的考察からも支持されるとなれば、Flying Dune Modelも信憑性が高そうですね。
残念ながら論文ではパンについては考察されていないようですが、パンについてもこのモデルが適用されるのかどうか気になるところです。
パンの方はいわゆる「砂丘」の部分の割合が、アトラスよりも小さいようですが、その辺りもうまく理論的に説明できるとすれば面白いんですけど。
貴重な情報ありがとうございます♪
この手のものについては、私はあえて違う可能性を考えています。それを説明する暇は今はありませんが、この世には、目で見えるものだけが全てではありません。「未知」という言葉がこの世に在るとおりなら、この衛星の期限は、一般的に考えられているものではないかもしれないということも、頭の端にでもいいですので留めておくことが重要です。