やぎの宇宙ブログ

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惑星の新定義 第2部

2006-08-23 08:47:18 | 特集
第1部に続いて、この第2部では今後その扱いを巡って議論となりそうな様々な天体について書いていこぉ~!

前にも書いたように、「太陽系の惑星が何個になるか」という問題なんかよりも、多種多様な天体を分類して整理することが重要。
「惑星」「小惑星」「衛星」などの昔ながらの概念にとらわれずに考えてみよぉ~♪

①地球型惑星・木星型惑星・海王星型惑星
今回の提案で典型惑星と呼ばれている8つの惑星は大きく2つのグループに分かれる。
水星、金星、地球、火星は、主に岩石でできた地球型惑星(岩石惑星)。
水素やヘリウムなどの軽い元素が少なく、主に珪酸塩岩石からなり、金属の核を持っている。
一方、木星、土星、天王星、海王星は、主にガスでできた木星型惑星(巨大ガス惑星)。
岩石や氷を含む核と、それを包む水素など軽いガスの分厚い層からできている。
大きさ、質量ともに、地球型惑星よりも巨大で、最も軽い天王星でも地球の14倍以上の質量を持つ。
ガスと言っても内部では高圧のために液体水素や金属水素の状態なんだけど…
特に天王星と海王星は氷でできた部分が大きいことから、巨大氷惑星(海王星型惑星)とも呼ばれている。
地球型と木星型は同じ「惑星」とは言いながら、全く異なる性質を持っているというわけだ。
それならばやはり、この分類を太陽系外の惑星にも当てはめたい!ってことになる。
とは言っても、岩石惑星は小さくて観測が難しい。
ようやく最近になって、岩石惑星の仲間が発見され始めた。
HD 69830は赤色矮星という暗く小さな恒星だけど、その周りには地球の10~18倍の質量を持つ3つの惑星が回っていることが分かった(下図)。
大きさとしては海王星型惑星だが、恒星に近いために地球と同じくらいか、それよりも熱い天体のようだ。

さらに、OGLE-05-390Lという赤色矮星には、地球の約5倍の質量をもつ惑星が発見された(写真はOGLE-05-390:taken by PLANET with the Danish 1.54m at ESO LaSilla)。
5倍というと大きいように思うけど、密度が同じだとすれば大きさは1.7倍ってことになる。

このような海王星型と地球型の中間のような天体も今後たくさん発見されるはず。
「惑星」であることは間違いないこれらの天体だけど、その分類を巡って将来議論されることになりそう…

②「小惑星」「彗星」
以前からこの「小惑星」や「彗星」といった名称には曖昧な部分があった。
そもそも日本語で「小惑星」というとminor planetを指す場合と、asteroidを指す場合があって、混乱もみられる…
恐らくasteroidはminor planetの中に含まれるんだと思う…
Asteroidと言えば、多くは火星軌道と木星軌道の間にある主小惑星帯main asteroid beltにあって、岩石や金属などからできている小さな天体だ。
一方「彗星」は、同じように小さな天体でありながら、ガスやちりを放出して、太陽に接近するときには「ほうき星」として観察される。
現在はminor planetと彗星cometは別々に登録されている。
放出されたガスからなるコマを持っていれば彗星、それ以外はminor planetとされてきたわけだ。
しかし、最初はminor planetに登録されながら後で実はコマを持っていることが分かったケースや、ガスを放出し尽くしてしまった彗星など、混乱があった。
また、彗星の起源は太陽系の外側の方にある氷を主成分とする天体(エッジワース・カイパー・ベルト天体(EKBO))で、それが何かのきっかけで太陽に近づき、氷が気化してコマや尾ができると考えられている。
そのような彗星の起源となるEKBOも、1992年以降数多く発見されている。
しかもそのような天体は、起源としては彗星に近いのに、コマを持たないためにminor planetとして登録されている。
もはやminor planetと彗星を分ける意味は薄れてきていて、いっそ一つにまとめた方がよさそう…
その上で軌道や起源に基づいて再分類した方がいいのかもねぇ~

③セレスCeres・パラスPallas・ヴェスタVesta、…

上はハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「小惑星」セレス(Credit:NASA/ESA/J.Parker(SwRI))。
セレスは主小惑星帯最大の天体で直径は959×933km。
主小惑星帯で2番目に大きいパラス(570×525×482km)と比べてもかなり大型。
この画像からもほぼ球形であることがわかるねぇ。
今回の「新定義」案では、このセレスも「惑星」の定義に当てはまることになる。
しかし大きいとは言え、最小の地球型惑星である水星(4879km)と比べれば圧倒的に小さい。
しかも、近くを回る全ての主小惑星帯天体の質量に占めるセレスの質量はごくわずか…
それなのに、主小惑星帯天体の中でセレスだけを特別扱いすることには疑問も…
ただし、「惑星」に含まれようと含まれまいと、セレスが太陽系の中で特殊な天体であることには間違いない。
地球型惑星へと成長しきれなかった天体だと考えられ、地球型惑星の中に含まれても不自然ではないかも…

また、次に大きいパラス、3番目に大きいヴェスタ(468km)は、球形というよりは少しつぶれた形をしており、大きさも小さいことから今回の提案の「惑星」の定義からは外れた(上はハッブル宇宙望遠鏡が撮影したヴェスタ、Cresit:B.Zellner (Georgia Southern University)/NASA)。
とは言え、これらの大型アステロイドは、去年日本の探査機「はやぶさ」が訪れたイトカワのような小型アステロイドとは明らかに異なる特徴を持っている。
これらの大型アステロイドは成長の過程で内部が融け、重い物質と軽い物質が分離して層状になっていると思われる。
一方イトカワは、まるで瓦礫の山のように、岩石の塊が緩く集まってできた天体だった。
これらの特徴から考えれば、パラスやヴェスタはむしろセレスに近い特徴を持っていることになる。
この辺りの線引きは難しいねぇ~。
これら大型アステロイドの探査はこれまで行われていなかったけど、来年打ち上げられるNASAの探査機「ドーン」がセレスとヴェスタを探査する予定♪
大型アステロイドについての詳しい情報が得られるはず!

④冥王星、2003UB313、2005FY9、…
さて、今回最も世間を騒がしているのが、冥王星と2003UB313の扱いだね!
長年第9惑星として知られていた冥王星(直径約2300km)よりも大きな天体、2003UB313(直径約2700km)がついに発見された!
冥王星を惑星から外すのか、2003UB313を第10惑星とするのか、…去年から議論が続いてる。
両天体は主に水の氷でできており、中心にはちりを含む核、表面にはメタンの氷が存在し、非常によく似た天体だ。
なので、冥王星が惑星なら2003UB313だって惑星でいいじゃないか、というのは最もな意見。
ただし、2003UB313の軌道は黄道面から44度も離れており、離心率も0.44と大きい(つまり軌道が長い楕円である)ことから、惑星とすることに違和感も…
両天体ともほぼ球形であるのは間違いないので、今回の提案における「惑星」の定義には当てはまっている。

ところで冥王星(及びその衛星のカロン)はエッジワース・カイパー・ベルト天体(EKBO)に含まれる。
上はその写真で、左下が冥王星(枠内も冥王星)、右上がカロンCredit: R. Albrecht/ESA/ESO/NASA
海王星軌道(太陽から約30AU、1AU≒1億5千km)から約48AUの距離にかけて円盤状に広がる、氷の小天体の集団だ。
EKBOの中には、小さなものから、冥王星に匹敵する大きさのもの(2005FY9:直径1600~2000kmなど)までたくさんの天体が含まれている。
そのためやはり冥王星に関しても(主小惑星帯におけるセレスのように)、EKBOの中で特別扱いしていいのかという疑問が残る。
冥王星を「惑星」とすると、やはり線引きが難しくなる。
しかも、EKBOは遠距離にあって、その大きさや形状を観測するのが困難だという問題も…

上はハッブル宇宙望遠鏡が撮影した2003UB313Credit:NASA/ESA/M.Brown (Caltech)
2003UB313は、その軌道がエッジワース・カイパー・ベルトよりも外側へとのびた形をしていて、散乱円盤天体(SDO)と呼ばれる。
SDOは恐らくEKBOが海王星などの重力の影響によって軌道を乱され、外側へと移動した天体だと考えられている。
逆に短周期彗星やケンタウルス族(木星軌道と海王星軌道の間の、長い楕円軌道を回る小天体)は、EKBOが軌道を乱されて内側へと移動した天体だと考えられている。
天体の起源という観点から考えれば、冥王星を含むEKBO、2003UB313を含むSDO、ケンタウルス族、短周期彗星などは同じグループに属することになるわけだ。

⑤セドナSedna

上は2003年に発見された天体セドナの画像(ハッブル宇宙望遠鏡が撮影、Credit: NASA/ESA/M.Brown (Caltech))。
発見当初は冥王星に匹敵する大きさをもつことから「第10惑星発見か」と騒がれた。
「惑星」についての議論を巻き起こすきっかけにもなったセドナは、直径1200~1800kmと大型。
セドナの軌道はエッジワース・カイパー・ベルト(太陽からの距離:30AU~48AU)の完全に外側に位置し、最も内側にくるときでも76AU、遠ざかるときには850AUにもなる。
球形であることが確認されれば、今回の「惑星」の新定義案では「惑星」とされることになる。
2003UB313などが回っている散乱円盤よりもさらに外側を回る、拡大散乱円盤天体(ESDO)と呼ばれるグループに属すると思われる。
細長い軌道をもっているけれど、海王星よりもはるか外側を回るためにある程度軌道は安定しているらしぃ…
近くの恒星や銀河系円盤、迷い込んできた「浮遊惑星」(後で説明)によりSDOが軌道を乱されてより外側へと追いやられた天体かもしれない。
しかしどうも表面の組成など、EKBOとは異なる特徴も多いみたい…
1万~10万AUの距離に球状に広がるオールトの雲(惑星の重力などの影響で弾き飛ばされて遠方にたむろしてる小天体で、長周期彗星の起源とされるが、存在は未確認)からやってきた天体とも、あるいは太陽系の外から迷い込んできた天体とも考えられる。
「惑星」かどうかという問題はともかく、セドナの正体は謎に包まれたままだ…

⑥二重惑星
カロンは冥王星の衛星とされてきたが、その質量は冥王星の7分の1ほどもあり、これは惑星質量に対する衛星質量の比としてはかなり大きい。
そのため、冥王星とカロンの重心は冥王星の表面よりも外側に位置し、その重心を中心に冥王星とカロンが公転しているという奇妙な関係を保っている。
このことから、冥王星-カロン系は二重惑星と呼ばれることが多く、今回の「惑星」新定義案でも、冥王星とカロンの両方が「惑星」とされた。
しかしながら、カロンを「惑星」とするならば、どこからが二重惑星でどこからが衛星なのかをきっちり決めなくてはならない。
つまり、「衛星」の定義をはっきりさせなきゃならないということに…
冥王星-カロン系を二重惑星系だとする理由は多分次の2つ。
①冥王星-カロンの質量比は7:1で、カロンは衛星にしては大きすぎる
②冥王星-カロン系の重心は冥王星内部ではなく、冥王星-カロン間の宇宙空間にある
だとすれば二重惑星と衛星の定義は、①質量比、もしくは②重心の位置、で定義されることになるねぇ~。
しかし質量比で定義するとなると、やはり線引きが難しくなってくる。
かと言って重心の位置で定義しようとしても、すっきりしない…
例えば、冥王星-カロン系と同じ大きさ、質量を持っていても、両天体間の距離がもっと近ければ重心の位置は天体内部になってしまう。
また、もしかしたら、軌道が楕円で、重心が天体の内部に入ったり、外部に出たりを繰り返すような系も存在するかもしれない…
しかも、冥王星-カロン系が二重惑星系だとすると他の2つの衛星ニクスとヒドラはどうなるのか(下の画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮影、Credit: NASA/ESA/H. Weaver (JHU/APL)/A. Stern (SwRI)/HST)…
系の重心は冥王星-カロン-ニクス-ヒドラの重心であり、当然ニクスとヒドラも冥王星ではなくその重心を中心として公転している。
「二重惑星」という言葉は確かに冥王星-カロン系の本質をついているものの、厳密に定義しなければ混乱を招くに違いない…

ところでカロンは、冥王星と同様、EKBOに属する氷の天体だと考えられている。
NASAの探査機ニュー・ホライズンズによる探査が待ち遠しいねぇ~☆

⑦衛星
カロンが「惑星」と認められれば、他の衛星とされてきた天体も惑星とされる可能性も出てくる…

まずは地球の衛星である月(上の写真)。
地球-月の質量比は81:1ほどで、冥王星-カロン系ほどではないが、衛星としてはかなり大きい。
また、月は冥王星よりも大きく、質量は6倍もある!!!
地球-月系の重心は地球内部にあるけれど、冥王星やカロンが「惑星」ならば、月も「惑星」でいいのでは?との声も…
それはともかく、実は月とカロンには共通した歴史がある。
両天体とも、惑星が誕生した頃に他の惑星との大衝突があり、飛び散った破片が集まって形成された天体だと考えられている。
そのため月の特徴は地球型惑星に近く、月を「惑星」とするなら、地球型惑星に分類されるべき天体だ。

上の画像は木星探査機ガリレオが撮影した木星の衛星ガニメデGanymede(Credit: NASA/JPL)。
直径5262.4kmで太陽系最大の衛星であり、水星(4879.4km)よりも大きい。
しかもその内部は、鉄でできた内核、岩石の外核、氷(水を含む?)のマントル、氷の地殻からなっており、磁場を持っている!
これらの特徴はもはや「惑星」そのもの…
「惑星」とはされなくても、小型衛星とは明らかに異なるグループに入るべき天体だ。
しかし、ガニメデは地球型惑星やEKBOといったグループとは異なる天体である。
ガニメデなどの衛星は典型衛星classical satelliteと呼ばれ、巨大惑星が誕生・成長していた頃、惑星の重力で集まったガスやちりを材料に形成された天体だと考えられている。

上は土星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星タイタンの画像(Cresit: NASA/JPL/new_petty75)。
タイタンもまた、水星よりも大きく、直径は5151kmある。
その特徴は窒素を主成分とする分厚い大気で、表面気圧はなんと地球の1.5倍!
惑星顔負けのこの天体は、まるで木星型惑星(または海王星型惑星)になり損ねたミニ惑星のよう…

最後は海王星の衛星トリトン(Cresit: NASA/JPL)。
この天体は直径2706.8km、大きさも重さも冥王星とほぼ同じ。
しかもその表面組成や内部構造も、恐らく冥王星と瓜二つで、EKBOに属する天体だ。
トリトンは海王星の周りを逆向きに回っており、このことはトリトンが海王星の固有衛星ではないことを示している。
恐らくEKBOが海王星の重力に捉えられて衛星になったものだろう。
月やガニメデとは異なり、もともとは海王星の衛星ではなかったトリトン。
もし海王星に捕まっていなかったら、今回の新定義案で「惑星」とされていたことになる。

長くなってしまったので、続きは第3部へ…
次は太陽系外惑星に焦点を当てて、「惑星」の定義がどこまで拡大される可能性があるかを探っていこぉ~♪

ところで…

今回の決議案の内容が3分割されて採決されるようです。
①8つの惑星を典型惑星とする
②冥王星や2003UB313などは冥王族(プルトン)とする
③カロンを惑星とする

確かにこのように分けて考えた方がいいかもしれませんねぇ…
どうしても冥王星を惑星に入れようとする必死さが伝わってくるけどwww
①にはさほど異論はないんじゃないかな?
しかしやはり行く行くは太陽系外惑星にも拡大したい「惑星」の定義…
典型惑星の定義も考えていかなきゃならんなぁ

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2 コメント

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TOB感謝します (菅原)
2006-08-23 12:45:38
これだけ書き込んだブログが読めて、感謝します。ところでで数年前見つかった惑星「2003UB313」ってまだ名前がないのですか? 教科書にも載ってないのですか? ついでで恐縮です。
返信する
菅原さんへ (管理人 やぎ)
2006-08-24 22:41:50
コメントありがとうございます。



2003UB313の件ですが、まだ正式名称はありません。

軌道が確定すれば通し番号がつけられ、正式名称も決められるでしょう。

IAUの規定に従い、創世神話にまつわる名前が付けられる予定です。

教科書については…どうなんですかね(^◇^;)

載ってたとすれば、かなりマニアックですね…



ところでもうすぐ採決結果が出ます。

2003UB313も冥王星も惑星から外される可能性が高いですね…
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