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日々触れる情報から様々なことを考え、その共有・一般化を図る

頭はよくな"れ"ない

2006-03-06 22:13:58 | 社会
(*(注1)タイトルについて)

日常何気なく日々を送っていると「世の中は広い」という知覚は意外に容易く忘れられがちなものだが、こうして「ブログ界」の最下層に身を置くようになってそれは余りなくなった。なるほどチープ革命ってばげに恐ろしきものかな(笑)


弾さんのブログは、私がブログを始めて2,3ヶ月ほどして存在を知って、それ以来、専門的なプログラミング以外のエントリーは大抵拝読している。
読み始めた当初から「すげー人だなー」と思っていたけど、やっぱ凄かった。

《だいたいペースとして、買うのが月100冊程度、立ち読みで済ませるのがその2倍程度。代金にして最低5万円、でも10万は行かない程度です。これでも昔に比べるとだいぶペースが落ちてきています。》
「新書萌のハードカバー萎え」

このエントリーは昨年の5月に書かれたもので(私が弾さんのブログ読み始めたのがこのもう少し後)、たまたま今回弾さんがこのエントリーに追記&他のブログにTBされていたから、私も気づいて読むことができたのだが。

それにしても、凄まじい読書量だ。私なんぞは、相当頑張った月でもこの1/5といったところ。普段は1/10ぐらいがやっと、だろうか。
もっとも、弾さんが毎月購入される約100冊のうち、漫画(コミックス)や小説などがどれくらいの割合なのか、「立ち読みで済ませる」程度がどの程度なのかはちょっと分からないので何とも言えないのだが、それでも弾さんの情報処理能力(演算処理能力)は相当なものだろう。弾さんがPS3だとしたら、多分私はファミコンぐらいだ(苦笑)

というのも、上で引用したエントリーのタイトルにもある通り、弾さんは新書もかなりの量お読みになられているので、約100冊の購入分のうち少なく見ても3割程度は新書じゃないかと思われるのだが、つまりその計算でも「新書だけ」で1日1冊ペースってことになるからだ。

新書は確かに「専門書」ではなく、せいぜい「専門分野の入門書」的な位置付けの書籍だ。その道の玄人の方であれば存在価値なんてないかもしれない。
でも全知全能とまではいかなくても、専門分野を幾つも持ち得ている人間はそうそういないので、多岐にわたる分野を広く浅くカバーしてくれる新書の存在は、私のような浅学の徒にとっても非常に有難いものだ。

で、分かりきっていることならそれこそ読む必要はない訳で、いくら新書が「中途半端なその程度」のものでも、読むことを選択した場合は「自分がよくor全く知らないこと」について読み進めていくのだから、物語を読むようなスピードで読むのはなかなか難しい。私も小説であれば1冊読了するのにそう時間はかからないが、例えば科学医学に類するような分野の新書を読むとなると、「前提の知識経験」がロクにないゆえに、一つ一つのtechnical termにひっかかって1ページ読むのに苦労することさえある。

だから、購入分だけで1日平均3冊強というのは読書家からすれば大したペースではないかもしれないが、弾さんの読まれる書籍の中には新書だけでなく当然専門書も含まれているであろうこと・活字メディアだけではなくWebの文章も相当量読まれていることを考慮に入れれば、やっぱり弾さんの読書ペースは少なくとも凡人レベルではない。
(*ちなみに今更だが、私はこのエントリーを弾さんをヨイショする目的で書いている訳ではなく、信者でも利害関係者でもなければ無論弾さんに萌えている人間でもないことを念のため注記しておく)


ともかく、何がこのエントリーの趣旨かというと、『チープ革命によって、例えば弾さんのような、既存メディアには普段登場しない(弾さんもライブドア絡みの件がなければTVなどには出ておられないだろう)頭の良い人達の表現物に、私のような「ただ人」でも触れることができるようになった』という再認識がまず一つある。
そしてもう一つ、私が弾さんの上のエントリーを読んで考えさせられたのは、ブログと検索エンジンによって進展する「総表現社会」が今後どうなっていくのかってことだ。

余りにぼんやりとしてテキトーな見解なのだが、私は「総表現社会」が『知の格差社会』になって、それが又新たな問題を生むのかな、と一瞬感じた(思いついた)。

表現者が増えれば増えるほど、「玉」も増え「石」はそれ以上に増える。一方、表現物の受け手からすれば、どれだけ表現物が増えても、それらを読んだり観賞したりする時間は限られている。

だから、玉と石の選別に関してどれだけ精緻な自動システムが作られても(受け手が選別だけで余計な時間を費やすことがなくなっても)、というよりそのシステムが精緻になればなるほど、「石」の表現者は一受け手として「玉」の表現物に触れることはできてもコミュニケーションはできなくなっていく。
結局、「玉」の表現者達は彼らだけでどんどん先に行って、「石」の表現者達は、またその中で「玉に近いもの」と「相変わらず石」で自分達をふるいにかけ、それが繰り返され、最終的に一番下の「石」の表現者は、自らの表現物は誰の目にも留まらず上の方の「玉」(とその表現者達)を眺めているだけってことになりかねない。


・・・・所詮今書いたことは私の勝手な「妄想」に過ぎないが、そういう流れになれば、折角ITの進歩によって表現発信のコスト的敷居が下がって衆愚が衆愚でなくなる可能性が見えても、実は「これまで顕在化しなかった・させる必要もなかった根本的な知の格差」がより明確に認識されるようになり、それは新たな差別と絶望を生むだけだったなんてことにもなりはしないだろうか?

"今はまだ"、私がこんなしょうもないエントリーを弾さんにTBして(させて頂くのだが)、弾さんの目に触れる可能性があり、又、弾さん(=玉)の側に、私(=石)にも「何か感じた」があれば取り上げて下さる可能性というのも僅かながらある。
ただこれが、弾さんの一つのエントリーに対してTBが100だ200だと付くような状況が当たり前になれば、弾さんが仮にTB先を全てチェックしたとしても、当然私(=石)の書いたものなど0.5秒でスルーされることになる。

上述した「妄想」は具体的にはそんなことだ。「下位」の表現者が「上位」の者達によってどんどん脇に追いやられるのも"致し方ない"ほど表現者が増えてしまったら、さてどうすればいいだろう?

問題提起するだけして、具体的に考えるのは私より「玉」の人達にお任せしたい(笑)
マジメな話、私のような「石」の表現者でも読んでもらう機会をどうやって作ればいいかと言えば、自分と同レベルか或いはそれ以下のレベルの読者を探し求めることではなく、とりあえず頑張って何らかの問題提起はしてみて、「玉」の人達にそれを「拾い上げてもらう」スタイルがいいのかもしれない。

私がどんだけ努力したって、弾さんのような情報処理能力は獲得できないのだから。

(本文はここまで)

*注:
(1)
このタイトルに大した意味はない(一応最後の文章に対応させてはいる)のだが、『頭はよくならない(洋泉社/小浜逸郎)』という新書を読んだことがあったので、それにひっかけてみた。でも、その書の内容とこのエントリーも何の関連もありません。

*
ちなみに、もし弾さんがこれを読んで下さったら、上の本文の「妄想」には反応して頂かなくてもいいので、以下の質問に答えて頂ければ幸いです。

(1)弾さんは、普段のタイムスケジュールの中で、読書には大体どの時間帯にどれだけ充てられているのですか?
(2)実際の読書のスピードは、どの程度のものですか?漫画・小説・新書・専門書それぞれ、もしご自身でおおまかな平均を割り出せるなら、お答え下さい。
(3)いわゆる「速読法」などは修得されていますか?
(4)ぢつは、弾さんは、脳味噌まで義体化されていますか?(笑)


2 コメント

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新書 (くがーと)
2006-03-08 01:14:43
「新書って面白いけど、連続して30冊も読むと

 頭がスカスカになる」知人のS氏の言葉です。

 たしかに入門書レベルの本ばかり読んでいると、

 カップ麺ばかり食べさせられたような気分に

なります。30冊連続読めるっていうのもすごい

話ですが(笑、なにしろ伝説の読書家なので)



堀米庸三「正統と異端」中公新書



滝浦静夫「時間」同上

この二冊は入門書のレベルを超えた名著として

あの呉智英氏が推薦していました。



私も新書は好きです。新書300冊読破計画

なんてのを計画中なのです。



無くなってしまった旺文社文庫、現代教養文庫

など、無くなってみて、もっと読んでおけばなあ、

と思います。



前にも書いたでしょうか、伝統的な哲学書が読めなく

なりつつあります、ハイデッガー、サルトルなど。

英米系にかたよりつつあります、ここらで「存在と

時間」「存在と無」などに再チャレンジしようかとも

思いますが、やはり英米系の読みやすさに慣れて

しまうと辛いものがあります(苦笑)
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Unknown (管理人)
2006-03-08 20:50:44
>くがーとさん

私レベルでは、「カップ麺」の新書でも、「味も理解できないくらいの美食」の場合が多いです(苦笑)



昨日も、「話題」の新書を数冊、購入してまいりました。1冊はじきに読み終わります。

どうも、「話題」になるような新書というのは、やはり大半が新書の中でもとりわけライトなものが多いかもしれません。『バカの壁』しかり、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』しかり。



ところで、呉智英氏は、大学だけじゃなく高校も私の先輩にあたる人ですね・・・なのにこの差は何(死)
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