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鏡の向こうの物語 第3弾 第10話

2005年04月27日 | FanFiction:鏡の向こうの物語
※ご注意※
この物語は「オペラ座の怪人」に魅せられた管理人、音去の
個人的なファンフィクションです。
三枚の鏡を割り、地下の隠れ家を後にしたPhantomの
その後を描いたお話です。
管理人は実に個人的な思い入れにより、とにかく
あの後のPhantomを幸せにしてあげたい一心で
描いておりますので、読まれて不快に思われる方も
いらっしゃることと思います。
なお、物語中に登場する人物の名称は実在の人物とは
何ら関係がありません。
以上を十分にご理解の上、ご興味のある方のみ
お読みいただきますようお願い申し上げます。
また、この記事の無断転載・無断転用・二次使用を固く禁じます。









鏡の向こうの物語 第三弾 第9話の続きです。

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the story behind the mirror
~ may be your story ~

少し心配そうな顔で彼女が言った。

「起き上がれますか?」

彼女にそう尋ねられ、私は何となくうなずき、
体を起こそうとした。
少しふらっとした。
急いで彼女が駆け寄り、手を貸してくれ、
私はベッドの上で枕に背をもたれるような体勢で
ゆっくりと上半身だけを起こした。

「ベッド用のテーブルがなくて・・・。
ちょっと食べにくいかと思うんですけど。
ごめんなさいね。」

そう言いながら、彼女は部屋の真ん中にあった
小さなテーブルを、ベッドの脇へと引き寄せた。

みるみるうちに、テーブルの上には
いくつかの皿とコップ。小さなワインのボトル。
ワイングラス。パンとバター、スプーンなどが、
真っ白いナフキンと共にきちんと並べられた。

これが、いわゆる食卓というものなのだ、と
私は思いながら、しげしげとそれらを見つめた。

その間にも彼女は、こまごまと動き回りながら、
深みのある大きな皿に熱い湯気の立つスープをよそい、
こちらに運んでくると、テーブルの上にそっと乗せた。

私は自分の前に置かれた皿をじっと見た。
作りたての、まだ熱い、湯気の出るスープ。
小さく刻んだ肉と野菜が沈んだ、
薄いブラウンの透明なスープだった。
食欲を刺激する香辛料の香りがほのかに漂う。
なぜだか胸がときめいた。
私はしばらくそのままスープを見つめてしまった。

「ごめんなさい。・・・こんなものしか作れなくて。」

急いでスープの皿から視線を彼女に移すと、彼女は
本当に申し訳なさそうな顔でテーブルのそばに立ち、
小さな声でそう言った。

私が食事に手をつけず、あまりにもしげしげと皿を
見つめていたせいか、彼女は心配そうな顔のまま
続けた。

「きっと、お口に合わないですよね。」

私は慌てて、首を横に降り、つかえながら答えた。

「違うよ、違うんだ。何て言ったらいいか・・・。
 そうじゃなくて・・・。
 すごく・・・・、なんと言うか・・・・、
・・・・美味しそうだ。」

心臓がどきどきして、声が少しうわずった。

私のその言葉を聞くと彼女はちょっと驚き、
それから、くすりと笑い、ちょっと間をあけて、
こう言った。

「・・・あなたは優しい方ね。」

彼女の言葉を聞いて、私は耳を疑った。
いきなり足元をすくわれたような、
そんな心細さと同時に、
胸が締め付けられるような切なさを感じた。

自分は他人の言葉一つでこんなに気持ちを
震わせる人間ではなかったはずなのに。
どんな人に何を言われても、何も感じないように、
心が揺れないように、傷付かないように、
そうして生きてきたはずだったのに。
私はいったい、どうしてしまったのだろう。

私の激しい動揺にまるで気付いていないかのように、
彼女は軽く微笑んだままテーブルの上の皿を
手にすると、ふわりとベッドサイドに腰を降ろし、
布団の上から私の胸のあたりにそっとナフキンを乗せ、
スープの入った皿と、銀のスプーンを私に手渡して、
のんびりとした口調で言った。

「お口に合わないかもしれないけど、
少しは食べたほうがいいわ。
栄養はとってもあるはずだから。
あなたの体のために、少しでもいいから、
どうぞ召し上がれ。」

その口調が不思議と私を落ち着かせた。

母親・・・。

私は彼女の口調に、希薄な記憶の中の母親を
かすかに見たような気がした。
母親にそんなことを言われた記憶はなかったが、
子供たちはきっと皆、母親からこう言われ続けながら
育っていくのだろう・・・。ふとそんなことを思った。

私は彼女の顔を見ると、素直にうなずき、
そっと皿にスプーンを入れてひとさじすくうと、
温かいスープを口に運んだ。

口の中全体がぽっ・・・と温まり、その温かさが
喉の奥を通りながら、体の中へとゆっくりと伝わって行く。
熱い皿を持つ私の左手からと、口から、腹から、
どんどんと体が温まり、生き返っていくような気がした。

私は黙ったまま、ただ黙々とスプーンを口に
運び続けた。

「良かったら、これも・・・」

彼女がテーブルでパンを切り、バターをぬって
小さな皿に乗せると、そっと手渡してくれた。

ほとんど空に近いスープの皿を私は彼女に渡し、
その代わりのようにパンを受け取る。
私がパンを食べている間に、彼女は空になった皿を
再びスープで満たし、テーブルの上に置いて
私がパンを食べるのを優しく見守った。

私はふと気になり、彼女にたずねた。

「君は、食べないのかい?」

「ええ、私はあとで・・・。」

彼女はグラスに赤いワインを注ぎながら
微笑んだ。

私は、ちょっと悩んだ後、勇気を出して言った。

「良かったら一緒に食べてくれないか?
なんだか・・・自分だけ、一人で食べるのが
落ち着かなくて・・・・・。」

正直な気持ちだった。
一人で食べていた時は全く気にならなかったのに、
誰かがそばにいるのに一人だけ食べているのが、
これほど落ち着かないものだとは思わなかった。

私はどぎまぎして彼女の反応を待った。

彼女はちょっと驚いたような表情をした後、
少し考え込むようなそぶりを見せたが

「そうですよね。
食べているところを誰かにじっと見られてたら
落ち着かないですよね。」

と笑って答え、急いで小さな皿にスープを
よそって、自分もテーブルについてくれた。

彼女は胸元で掌を合わせ、口の中で小さく何か
祈りのような言葉をつぶやくと、私に向かって
笑顔を見せ、それからゆっくりと食べ始めた。

二人で一緒に食事を始めてはみたものの、結局、
私は何をしゃべればいいのかわからず、
その後もろくな話もせず、ほとんど黙ったままで
黙々と食べ続けた。

しかし私には、些細な音が、たとえば、
スプーンが皿に当たる音、パンを切る音、
グラスが木のテーブルに置かれる音、
そして窓の外から聞こえる町のざわめきなど、
生活の匂いのする当たり前の音たちが
染み入るように耳に優しく響き、
とても心地良く感じた。

私の皿が再び空になると、すぐに彼女は自分の
食事の手を休め、すっと立って、再び皿に
スープをよそってくれた。
その日、自分でも驚くくらいに、私は良く食べた。

彼女も、特に何か尋ねてきたり、自分のことを色々と
話したりするわけでもなく、パンのおかわりを尋ねてきたり、
ワインを勧めたりする程度の会話しかしなかった。
しかし私がふと彼女の方を見、彼女と目が合うと、
彼女はただ黙って微笑んでくれた。

そんな風に、ただお互いに、時々視線を合わせては、
微笑み返しながら、私達は静かに
ゆっくりと食事を続けた。

ただそれだけのことだった。
ただそれだけのことで、私はなぜかこの女性に
うまく説明できない気持ちを抱き始めた。

それは、今までの誰に対しても抱いたことのない
不思議な感情だった。
Christineに抱いた気持ちとも、
Mirandaに対する感情とも違う、
全く私が今まで知らない、理解できない感情だった。



11話に続きます。
++++++++++++++++++++++++++

・・・ああ、NOWL拝聴以来、体の中で
血液が沸騰している・・・

次回は語り手がマリアに戻ります。
さて、ここで初めて登場した
見知らぬ女性名、誰でしょう?(笑)
ふっふっふ、第一幕もいよいよ佳境。
とりあえず、今回と次回は
まったりとあったまっちゃってくださーい!
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11 コメント

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あ~紙がない (オペラ座の愛人)
2005-04-27 10:34:15
せんせいはいつお休みになっているんでしょうか?

せっかくのお天気なので陽の下に出ようと思っていた私はまたここに縛り付けられたように動けなくなってしまいました。



>心臓がどきどきして、声が少しうわずった

あ~生の声が聞いてみたい。心には聞こえているのですが・・・Nowl聞いて以来ますます妄想は肥大するばかり。
返信する
あったまりました ()
2005-04-27 10:40:51
こんな幸せな時間をファントムと私に与えて

くださってありがとうございます。

次回もまだほわ~~んととろけていてもいいのですね。



この場面を映画化すると(私の頭の中ではすでに上映中なのですが・・)BGMはどんな曲なのでしょうね。

今はまだ私の耳にはNOWLがエンドレスで

流れているので、勝手にBGMにしてしまっているのですが、これはもっと山場にとっておくべきでしょうか(笑)



Mirandaって、マダムジリーのこと・・?

あ、あれは役者さんの名前でしたか・・・。

でも、Mirandaって名前の響き、

あでやかでありながら聡明な芯の強い女性のようで彼女にも、役柄にもぴったりですよね。

この物語のMirandaさんの登場も

待ち遠しいです。



音去さま・・。

どうぞ御無理をなさらないでくださいね。

お忙しさのあまり、体調を崩されるのではないかとハラハラしております。

私の栄養満点スープでよければ、いつでも

お届けしたいくらいですが・・・(笑)







返信する
Unknown (かんこ)
2005-04-27 11:07:11
ついに!お食事。

ぎごちなさが可愛くって、身悶えしてしまいます。

次回の、彼と一緒に食事をするマリアの視点も楽しみです。



Miranda は初めて聞く名前ですが、

彼がChristine 以外で思い浮かべる女性と言うと、

Madame Giry しか思いつかないです。

二人はMadame になる以前からの知り合いなのだから、

ファーストネームで呼んでも不思議は無いのだけど、

その出典は??
返信する
ああ・・・ (はげスケ)
2005-04-27 11:41:02
何気ない生活の一コマに、敏感に反応するファントムがたまりません・・・。誰にでも当たり前な、ごく普通の生活にファントムが溶け込める日を祈りつつ・・・。



それにしても、音去さんは本当に更新が早いですね。いつ休んでいらっしゃるのでしょうか?少しチェックを怠っていると中々追いつけなくて、毎回嬉しい悲鳴を上げております。これからもお身体にお気をつけて頑張って下さいませ。
返信する
BGMはもちろんアノ曲 (タンミンワ)
2005-04-27 13:28:40
皆さんと同じように、一日中、地下室の湖に浸かっているタンミノワです。



食事するファントム・・

ついに・・



今回は



>子供たちはきっと皆、母親からこう言わ>れ続けながら

>育っていくのだろう・・・。ふとそんな>ことを思った。



に、やられました。



このまま、湖の底まで沈んでいきます・・

返信する
何度もすみませんっ (タンミノワ)
2005-04-27 13:49:36
もいっぺん読み返したら、涙があっっ。



幸せにしたって下さい!

ファントム!



も~ほとんど花嫁の父~~~
返信する
music (momo)
2005-04-27 19:57:53
第9話ではマリアの息遣いが聞こえてくるようでした。第10話で私はエリックの新しい"music"が芽吹く音を聞いたように思います。



"No one would listen"・・この歌を聴いた私にとって、ファントムのいう"music"とはファントムとクリスだけに手が届く領域に存在する特別なものでした。

でも、クリスの"kiss"でエリックが生きていく為に身にまとっていた硬い鎧のようなものが砕け散りました。

そして今度はマリアによって卵の薄皮のように、生来人が身につけるべき術(すべ)を身にまとい始めたエリック。

彼は身の周りの何気ないものに新しいmusicを感じ始めている・・そう思えました。



「・・一緒に食べてくれないか。」という一言。クリスとは師弟と弟子だった。

マリアとは初めて同じ目線で会話をしている。きちんと会話のキャッチボールをしている。「食事を一緒にする」って何も会話がなくても相手のペースに合わせたり、そういうリズムがありますよね。



なんだかまとまらないんですが、全ての伏線に何かドキドキしたときめきを感じています。



ところで削除された記事、コメントも消えちゃったんですね。お返事あったのかな?









返信する
まったりあったまるなんて、 (kaori)
2005-04-27 21:13:00
ムリです、できません(TT)

身につまされて・・・



>心が揺れないように、傷付かないように、

そうして生きてきたはずだったのに。



ここが私のポイントでした。私もそうだったから。子供の頃、「村八分」に遭い私は自分を守るためにそうしていた。「一人でも平気だもんね」と自分の内側の世界に砦を築いて閉じこもっていたから。

Shamed into solitude

Shunned by the multitude

I learned to listen

In my dark, my heart heard music

まさにこの歌詞がそうで・・・NOWLを聞きながら昼休みにiモードで読んでいたら、周りに人がいるのに本気で泣きそうになりました。

もう、後のハートウォーミングなシーンを読んでもそれでも、泣けて・・・。

だからこそ、Phantomに共通するものを感じ、ここまでハマったのだと思う。

ジェラルドも同じことを言っていました。



読んですぐ、コメントしようと思っていたのですが・・・挫折しました。

長くなりそうなので、後は自分のブログで書くことにします。

返信する
TBしました (kaori)
2005-04-27 23:10:21
結構重い記事になっちゃいましたが、

続きTBしちゃいました。

よろしくです。
返信する
Phantomが食事・・・ (ちるる)
2005-04-27 23:24:53
こんばんは! Phantom(エリックと呼ぶべきか?)の食事しているのは想像しにくかった。温かい湯気の立つスープはなおさら、食事の時間をちゃんととっているような感じはイメージにありませんでした。

私には作曲に没頭してる時はきっと食べることは忘れていたかも知れなかったのでは?

お肉は食べなさそうなイメージです。

(Gerryはマッチョだけど)

傷つかないように仮面で心に鎧してたのは、深く深く傷ついていたからですね。

でもマリアのような女性(母親のような)がいて愛情の受けなおしがされたらPhantomもきっと・・・人並みのしあわせが得られるのかしら?(音去さんの力も加わり)

私はマリアの生い立ちやこれまでの人生も

気になってます。

今まで虚勢をはらなければ生きてこられなかったPhantomが「よかったら、一緒に食事を・・」とやさしく問いかけてるのを想像してつい私も微笑んでしまいます。

(マリアと目が合って自然と微笑み合えるなんて、Phantomも温かいスープでホットしたんですね!うらやましい!)
返信する

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