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鏡の向こうの物語 第3弾 第11話

2005年04月28日 | FanFiction:鏡の向こうの物語
※ご注意※
この物語は「オペラ座の怪人」に魅せられた管理人、音去の
個人的なファンフィクションです。
三枚の鏡を割り、地下の隠れ家を後にしたPhantomの
その後を描いたお話です。
管理人は実に個人的な思い入れにより、とにかく
あの後のPhantomを幸せにしてあげたい一心で
描いておりますので、読まれて不快に思われる方も
いらっしゃることと思います。
なお、物語中に登場する人物の名称は実在の人物とは
何ら関係がありません。
以上を十分にご理解の上、ご興味のある方のみ
お読みいただきますようお願い申し上げます。
また、この記事の無断転載・無断転用・二次使用を固く禁じます。









鏡の向こうの物語 第三弾 第10話の続きです。

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the story behind the mirror
~ may be your story ~

私が食卓につくと、彼はさっきよりも少し安心したような、
ちょっと嬉しそうな顔になった。
出逢ってすぐの時よりも、少し人なつこい笑顔に見えた。
彼が気にしている右半分の顔も、こんな風に
打ち解けた笑顔になれば、そう捨てたもんじゃない。
少なくとも私にはそう思えた。
そんな彼の笑顔につられて、私も思わず笑顔になった。

実は、落ち着かないのはむしろ私の方だった。
なぜだか、じっとしているのに耐えられなくて、
何か体を動かしていないと、どことなく居心地が
悪いような気がして、ある意味、無理に仕事を
作って動いていた。

それがなぜなのか、はっきりとした理由は
わからなかった。
ただ私は、この突然の訪問者に対して、
自分がどう距離をとったらいいのかを、
測りかねていたような気がする。

彼の持つ雰囲気・・・彼の顔、声、姿、仕草。
あの路地で、初めてうずくまる彼の姿を見た時から、
暗闇から聞こえた、美しい声を聞いた時から、
私は抗いようのない不思議な感情を止められずにいた。

それは私の気持ちのどこか奥底から、勝手に
ふつふつと湧き出してきては、私の感情をそっと逆なでし、
居場所がなく、出所を探して私の体の中を
右往左往している。そんな感じだった。
そしてその感覚は、ちょっとしたきっかけで
どう噴出するかわからない、そんな気もした。

私は、多感期の少女だった頃のように、
自分で自分をコントロールできない不安と
理解できない混沌とした感情を持て余し、
ずっと落ち着かずにいたのだった。

しかし、彼に言われるまま、ためらいを持ちながらも
こうして食卓についてみると、不思議と、
何となく気持ちが落ち着く自分に気付き、
逆に驚いた。

自分の食事をゆっくり口に運びながら、時々、
彼のためにグラスにワインを注いだり、
スープのおかわりをよそうために席を立ったり、
パンを切って渡したり、という何の変哲もない行為の
ひとつひとつが、なんだかとても大事なことに思え、
同時に、そんな一つ一つがとても愛しくも思えた。

ポツリ、ポツリと彼は言葉少なに話かけてきた。
・・・・と言うよりは、正確には、質問をよこした。

「これは、・・・何?」
「塩漬けの肉よ。豚だわ。」

「これは?」
「にんじんを刻んだもの。」

「・・・・・これは?」
「ブラウン・マッシュルーム。白いのもあるのよ。」

驚くことに、彼はほとんど野菜の名前を知らなかった。

「まさか、みんな、初めて食べた、
っておっしゃるわけじゃないですよね?」

半ば冗談のつもりで言うと、彼は

「違うよ。食べたことはある。
ただ、・・・名前は知らなかった。」

と答えた。

驚いた。彼はいったい、今まで
どんな暮らしをしていたのだろう?

私が言葉を失って呆れていると、
スープから微かに匂う肉の香りに誘われたのか、
彼の足元から、黒い仔猫がひょこひょこと
彼の胸元に近付いてきた。

彼は少し目を細めた笑顔で仔猫を見ると、
自分のスープの皿に二本の指を突っ込み、
肉の切れ端をつまみだして仔猫に与えた。
黒い仔猫は、そっと鼻を近づけ、クンクンと匂いを嗅ぐと、
前歯の先でちょっとつまんで持ち上げ、ひょいっと
投げ上げるようにして自分の口の中に入れると、
ゴクリと飲み込んだ。
彼はとても楽しそうに笑い、続けて仔猫に肉をやった。

すると、どうだろう。
今まで、仔猫の闖入者は受け入れても、図体の大きな
得体の知れない男の滞在はごめんだわ、とばかり
決して彼には近付こうとしなかったブランが、
そーっと、少しずつ、用心深げに彼に近付いた。

ブランは、仔猫に肉の欠片を上げる男を
少し離れたところから、じっと見つめ続けた。

私はテーブルについたまま、ブランがどうするのか
見守っていた。

彼は、ベッドの下で自分と仔猫を見つめるブランに
気付いた。
彼が自分に気付いたことに気付き、ブランは慌てて
小さくシャーーッと彼を威嚇した。

彼は気にせず、チチッと舌を鳴らして、
手招きしてブランを呼んだ。

ブランは慌てて、むしろ彼からもっと離れた場所まで
一気に後ろへジャンプして、体を硬くして身構えた。

すると彼は、思いついたように、再びスープの中から、
一番大きそうな肉片をつまみだすと左手の掌に乗せ、
顔をブランには向けずに前を向いたまま、
肉を乗せた掌を上に向けた左手だけを
ベッドの下にゆっくりとおろした。

彼は目だけでブランを気にしている。
ブランは私の顔をうかがう。
私は視線でブランに「大丈夫よ」と伝える。

ブランがゆっくりと立ち上がり、
彼の方へ一歩一歩、歩き出した。

ブランは慎重に本当に少しずつ彼の手に近付き、
肉の匂いを嗅ぐと、急いで肉をくわえ、
慌てて一歩、後ずさった。

彼が私の方を見て「やった!」というように
ちょっと得意そうに笑ってみせた。

ブランは彼の手から一歩下がったままで
急いで肉を飲み込み、再び、ベッドの下から
彼を見上げた。

彼は今度はわざと、肉を掌に乗せてブランに
見えるように手を動かすと、今度はそのまま
下に手を下ろさず、自分の体の脇に置いた。

ブランは上目使いにベッドの上を睨み、
助けを求めるような顔で私を見る。
私はそんな彼らの様子が微笑ましくて
わざとそしらぬ顔をしてみせた。

私の顔と彼の様子を不満そうな顔で
交互に見比べていたブランは、とうとう
意を決したように、ゆっくりとベッドから
数歩後ろに下がると、勢いをつけて
彼の腹の上へダイブした。

ブランの勢いに、黒い仔猫は驚いて
大急ぎで彼の布団の中に逃げ込む。
ブランは彼の手から肉をくわえて口に入れると、
今度は急いで飲み込むことをせず、その場で
ゆっくりと食べた。
そして、今度は慌てて逃げずに、
彼の顔を横目でうかがいながらも
おもむろに彼の傍らに座った。

緊張した様子のブランに彼はそっと手を
差し出し、ゆっくりと彼女の頭を撫でた。

最初こそ、びくっとしたものの、
大きな手に包み込まれるように頭を撫でられる
ブランは、とても気持ち良さそうだった。

その内に、彼女は前足を丸め、体も丸め、
彼の隣で、自分のベッドで眠るかのように
落ち着いた様子で目をつぶった。

彼は再び、私の顔を見て、とても嬉しそうな
笑顔を見せた。
この部屋に来て、これは何度目の笑顔だろう?
私は、見る度に、彼の笑顔が少しずつ
柔らかく明るい笑顔になってきていることに
ふと気付いた。


++++++++++++++++++++

ああ、なんだかPhantomではないですね。
もうすっかりエリック・・・?
と言うより、気分はもうすっかりGerryですな(笑)。




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8 コメント

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脱帽 (kaori)
2005-04-28 02:28:15
野菜の名前を知らないというのが、すべてを物語っていますね。



Gerryの表情が見えてきました。
返信する
もっと笑って・・・ ()
2005-04-28 07:06:02
連日のUP。本当にありがとうございます。

ファントムの楽しそうな笑顔。得意そうな笑顔。嬉しそうな笑顔。そして、柔らかく明るい笑顔・・・。

・・・・・見たいです・・・!!!

そんな笑顔を向けられたら、私は泣いてしまうだろうけど・・。
返信する
なんと言ったらよいのか・・・ (J.O)
2005-04-28 09:09:29
おはようございます!!



文章と言い、アップのスピードと言い、もう素晴らし過ぎるとしか言いようのない・・・。



お肉をつまむ指のところなんて、詳しい指の描写はなくてもG.Bのあの印象的な指が浮かんできます・・・。

家にも猫がいるのですが、まさに!!な文面に微笑んでしまいました。

Phantomにやはり犬より猫が似合う=^O^=(と私は思うのですが・・・。)



「ファントム」や「マンハッタンの怪人」のように、絶対に本にしなくては!!ですね。

返信する
もう用紙がありません (オペラ座の愛人)
2005-04-28 10:48:38
まさにGerry@ファントムに出会ってからの

自分を言いあてられたよう。

>私は、多感期の少女だった頃のように、

自分で自分をコントロールできない不安と

理解できない混沌とした感情を持て余し、

ずっと落ち着かずにいたのだった。

一日中彼の姿を求めて、音楽を聴き、本を読み、PCに向かい、思いを馳せ・・・

いつになったら治まるのでしょうか。この胸の痛みは。

今から急いでA4用紙買いに行ってきます。
返信する
猫達が… (まーちー)
2005-04-28 19:24:45
J.O様がおっしゃっているように、子猫とブランの様子、手に取るように分かり私も微笑んでしまいました。



猫達がいる事で…

彼の心が開かれるのが早まる?

マリアも心の乱れを落ちつかせられる?

少なくともこの場は、そうですよね?



状況,描写共にさすが!!!

相変わらずの表現力に感謝と感動です。





返信する
Unknown (タンミンワ)
2005-04-28 22:00:45
ファントムの手のひらの肉片に食いつきたいタンミノワです。



ネコに変身したいです。



ファントムって、本当に無邪気な少年になってますね・・。(大泣)

かれの失われた少年時代が、今補填されてるような気持ち・・
返信する
ファントムはコドモなんです。 (音去)
2005-04-29 21:10:56
私の印象としては、シュマッカの演出もあるんだろうし、

Gerryのキャラもあるんだろうけど、この映画のファントムって

ホント、もろコドモなんですよ。

オトナコドモ。それがツボなんですけど(笑)。

そのへん、きっと舞台とは全然違うんだろうな。

言ってみれば彼の人生、赤ちゃんからやり直しですから(笑)。



マリアの気持ちの表現は、本当に私の気持ちですね。

なので、書くのはカンタンです(笑)。



難しいのは、当時のフランスの暮らしぶりを描くことかな。

わからないので。

マリアみたいな庶民のお風呂とか、近くまでの外出(歩きじゃ無理な場所)

とかって、どうしてたんだろう?





返信する
庶民生活 (kaori)
2005-04-29 21:54:17
同じくらいの時代の映画から考えると乗り合い馬車とかに乗ってるイメージがありますね。今で言う中距離バスみたいな。交通手段が発達していないと、めったに行動半径の外にも出ないのでは。

ヨーロッパの人は日本のようにあまりお風呂に入る習慣が無さそうです。今でもシャワーがメインですし、熱いお湯も苦手なようです。入るとしたらバスタブにぬるめのお湯をいれてその中でゴシゴシとか。給湯設備がない時代だし五右衛門風呂みたいに下から焚くわけでもないから、水量も浅め。欧米で香水が発達したのもそういった面での、体臭問題もあるかと思います。昔、日本でも平安時代あの長ーい髪をそうたびたび洗えない貴族たちの間でお香が用いられていたりする事情と重なるかと・・・。
返信する

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