マティスの曲線

もう泣かない

海辺の病院

2019年06月06日 11時08分12秒 | Weblog
青い空はみえるけれど
青い海はみえない

点滴を抱えた看護師
ディナーを考えながら
気分はどうですかと、きいていく

見舞いにきた遠い親戚
潮風は体にいいです、と
他人事のように話して行く

白いボールを追う若者
病院の前を
毎日歩いていても
まぶしい明日のことで
頭はいっぱい

新しい本は届きました
膝をかかえた青年の
水の秘密
青い空をみながら読みましょう









りんご探し

2019年03月15日 10時35分50秒 | Weblog
赤いりんご
おいしいりんご
どこにあるのかな

お山のきれいな町に行けばあるのかな
パソコンをクリックすれば出てくるのかな
親切な人に聞いたら、教えてくれるのかな

おんぼろバスに群がる人々に
グアナバラ湾はどこですか、と聞いたあと
りんごはどこにありますか、と聞いてみよう
みんな笑うだろう
空や、ニワトリや、火山を指差して
踊りだすだろう






2018年01月05日 21時55分15秒 | Weblog
空に、ひとにぎりの光がほうりこまれた


水色の波紋をかがやかせて
中心から、善がひろがった


歌声と、踊りと、果実と
人々の喜びがあふれでて
あの空に、善がひろがった


空に、善がひろがっても
地上はからっぽにならない
シャッター通りを歩く高校生は
かぐや姫の続きを考えている


真新しい本のにおい
本のにおいは、善だ
この地上は、光にあふれた善になる
あの空に、光をほうりこんだのは君だよ
光は、君の透明な思いだよ









猫と「あく」

2017年11月28日 22時21分52秒 | Weblog
猫、出ておいで

ソファの下は寒いでしょう
あたたかい部屋に出ておいで

この部屋は、恐くないよ
大きな音もしないし
追いかけ回す人もいない

猫、出ておいで
少し、部屋を暗くしましょうか
あなたのために敷物を新しくしました
わたしのほかに誰もいません

猫、そう、あなたは知っている
人のいないソファの下に「あく」はない
人のいる部屋は「あく」だらけ
猫、これから知ってほしい
「あく」にまみれても、あなたを好きな人がいる





わたしの夢

2017年08月10日 23時47分30秒 | Weblog
わたしの夢は時速60センチですすみます。

お天気とか、学校とか、家族とか
仕事とか、遊びとか、家事とか


たくさんやることがありすぎて
わたしの夢がすすむのは、とてもおそいのです。
おそいけど、すすみます。


ああ、そうでした。
わたしの夢をお話していませんでした。
わたしの夢・・・
きいてもらえますか。


たくさんの友だちとバーベキューをすることと、
おじいさん、おばあさん、おじさん、おばさん、
兄妹、両親、いとこ、はとこ、子どもや孫と、
旅行に行くことです。
ささやかな夢は時速60センチのスピードですすみます。






6月のプシュケ

2017年05月17日 13時00分41秒 | Weblog
プシュケが散歩をします


カスピ海の風で髪をゆらし
キリギスの山並で深呼吸


日いずる国の雨の下
困った顔の人々に
くすりとわらいます


雨が やめばいいのかしら
雨雲をそっとおしのけて
太陽に ごあいさつ
見上げた人々の笑顔



ネイルサロンのマニュキュアが乾き
パソコンがたちあがり
コンビニのコーヒーの蓋を閉め
期末試験の高校生が電車に乗ると
プシュケは 歩きだしました






噴火口

2017年03月07日 17時09分18秒 | Weblog
噴火口へ突撃して行く

波に さらわれた思い
波から 逃げられた思い


もともとはひとつ
同じ思い
ひきさいたのは 大地の怒り

海流にのった汚染水のように
故郷の名は 
地球をめぐっていった
懐かしい故郷は、穢れた?

呪文のように繰り返され
引き潮のように執拗で
猫の機嫌よりも気まぐれに変わる
たくさんの心は
火山へ もどっていく