小指ほどの鉛筆

日記が主になってきた小説ブログサイト。ケロロ二次創作が多数あります。今は創作とars寄り。

51 貴方を離したくないの。(雪ドロ)

2008年03月03日 18時42分21秒 | ☆小説倉庫(↓達)
最近私は変だ。時々電柱から足を滑らすし、毎朝の精神統一も上手くいかない。
前にもこんなことがあったような気がするが、今回は「普通」にこだわった代償でもないようだ。
体調が悪い?それともドロロのお友達の所為?
「小雪殿、どうしたのでござる?」
横でお茶を飲んでいたドロロが小雪の様子がおかしいことに気づき、心配そうに顔を覗き込んだ。
「うん、なんか最近変なの。」
「変、というと?」
小雪は少し考えてから口を開いた。
「上手く言えないんだけど・・・」
「それでも良いでござるよ。少しでも役にたてることがあるかも知れぬ。」
ドロロとは忍者村で出会って以来、長い付き合いだ。今小雪が最も信頼しているのは、もしかしたらドロロかもしれない。それはもう、夏美以上に。
「えっと、最近よくドジ踏んじゃうんだ。電柱から落っこちそうになったり、忍術が上手くいかなかったり。これがスランプっていうのかなぁ・・・?なんだか調子が狂うの。」
ドロロは意外だというように目を丸くしてから、腕を組んだ。
真剣に考える姿は、それだけで小雪を安心させた。
「変わった事や、気になることは無いでござるか?」
「う~ん、特に。」
「体調も悪くなさそうだし・・・」
「ね?原因が分からないの。」
もしかしたら日常に慣れすぎて、「普通」になってしまったのかもしれない。
忍者村を離れて都会に来ればいつかはそうなると思っていたし、逆にそれを望んでもいた。
けれどもいざそうなってみると、それは思った以上に寂しく、不安になるものだった。
「ドロロ・・・少し手合わせお願いできるかな?」
「小雪殿!!」
「大丈夫、無理はしないから。」
ドロロは手合わせしようと誘うと、必ずと言っていいほど首を横に振る。
それでもしつこく頼めばやってくれないことも無いのだが、それがドロロの本気とは受け取りがたかった。
「お願い!!ね?」
「危険でござる。」
ただでさえ今は小雪の調子が悪いのだ。怪我でもさせたら大変なこと。
「だからこそ、だよ。実際どれくらい鈍ってるのか、確かめたいの。」
「だったら的当てでも・・・」
「お願い。」
手を合わせ真剣な眼差しで頼み込む小雪を前に嫌と言える訳も無く、仕方なく、ドロロは小さく頷いた。

「右側が空いてる・・・上だよ。・・・遅い。」
小雪は手裏剣片手に、ドロロは何も持たずに実験は始まった。
小雪の調子は本当に悪く、いつもなら避けるのもやっとな手裏剣の切れも悪かった。
「・・・ダメでござるな。」
「ドロロ!!」
動きを止めたドロロに、小雪が慌てて駆け寄る。
「本当に、本当に動きが悪い。」
「・・・うん。」
申し訳なさそうに俯く小雪の頭をポンと撫でる。
そっと顔を上げた小雪に微笑むと、安心したような表情が返ってきた。
「さて、もう良いでござろう?よく分かった。原因を考えよう。」
「うん、そうする。」
水車小屋に戻ると、二人は倒れこむように座布団に座り込んだ。
タフな二人にしては珍しい。
「なんか、すごく疲れた。」
「・・・集中できてないんだ。」
「集中?」
ドロロが呟いた単語に、思わず反応する。
「集中できてないと、後の疲れがすごいんだ。今回は小雪殿の様子を見ながらの手合わせだったから僕はすごく疲れたけど・・・小雪殿は何に?何に気をとられていたんだろう。」
「私が、気をとられていたもの・・・。」
それが原因なら、すぐにでも知りたい。
けれども小雪の頭に、それらしき記憶は浮かんでこなかった。
何を考えていたのだろう。
「ドロロ・・・」
「ん?」
「ドロロのこと・・・考えてた。」
思いもしなかった言葉に、ドロロの口がぽかんと開いた。
対して小雪の瞳は真剣で、思い出すように、搾り出すように、ゆっくりと話し始めた。
「ドロロがこの間月を見てたでしょ?」
「ま、まぁ。」
一週間ほど前のことだろうか、ドロロは真夜中に月を見ていた時があった。
母星を想って、自分の役割を思って、考え込んでいた。
「かぐや姫みたいだな、って思ったの。」
「かぐや姫・・・地球の、日本文学。」
どこかで読んだ気がする。
確かケロン星にも同じような話があって、親しみを感じたのを覚えている。
「いつかドロロは帰っちゃうんだよね。あの星のどれかに。」
「・・・どうだろう。」
本当に曖昧な答えだったと思う。もしかしたら不安を掻き立てるだけだったかもしれない。
「月を見せないようにしたかった。ドロロと分かれるなんて、嫌。」
「それは、僕もだよ。」
いつの間にか日が落ちて、夕日が室内をオレンジ色に染めていた。
もうすぐ月が出る。
そうしたら自分はまた月をみるだろうか。母星を想って?
「でもそのとき、私にドロロの記憶は残ってないんでしょ?」
「・・・うん。」
君だけじゃない。夏美殿も、冬樹殿も、みんな、みんな。
「そしたら私、逃げるね。」
「え?」
「ずっとずっと、ドロロのことを忘れたくないの。」
無駄な抵抗だとわかっていて、そう言っているのだろう。
それは僕もだ、と言いかけて、ドロロはやめた。
「かぐや姫、か。」
「帰したくないな、ドロロのこと。」
僕も、帰りたくない。
「こんなこと考えてたなんて・・・馬鹿だね、私。ドロロにまで心配かけて・・・。」
「そんなこと、無いでござるよ。」
室内も暗くなってきた。
気まずそうに俯いた小雪に、そっと微笑む。
いつ帰ることになるかは分からない。でも、それは割りと近いのかもしれない。
「小雪殿に心配をかけたのは僕のほう、謝るよ。」
「そんな!私のほうこそ・・・」
前に一度、みんなの記憶を消したことがあった。
あの時はクルル君がバックアップをしておいてくれたからいいけど・・・次は無いような気がする。
それがどんなに寂しいことか。
「小雪殿。」
だから、今のうちに言いたいことは言ってしまおう。
不安にさせるだけの言葉よりは、はっきりとした別れの言葉のほうがいい。
「まだ早いけど・・・まだ僕はケロン星に帰らないけど・・・言っておくね。」
「?」
「僕が出会ったのが小雪殿でよかった。そうでなければ僕は殺されていたし、もしかしたら僕があの村を殺していたかも知れないから。」
小雪が目を丸くする。
「早すぎるよ・・・ドロロ。」
泣きそうな小雪の目を見て、ドロロは一瞬次の言葉を飲み込んだ。
「今、僕は幸せだよ。ケロン星に行っても、僕は小雪殿を忘れない。」
「・・・」
その目に浮かんだのは悲しみか絶望か。
静かに目を閉じる。
「僕が居なくなっても、修行はサボっちゃダメだよ。夏美殿と仲良くね。普通にこだわりすぎちゃダメだよ。」
一つ一つに小雪が頷く。
「分かってる・・・分かってるよ。」
でも、貴方のその言葉も、私は忘れてしまうんだよ。
覚えていられないよ。
「かぐや姫のことは、おじいさんもおばあさんも忘れなかったよね。逆に姫が記憶を消された・・・。」
「うん。」
「どっちが幸せだろう・・・小雪殿は、どう思う?」
分からない、そう言おうと思った。
けれども一番幸せなのは・・・
「どっちも記憶が消えちゃえばいいのに。」
それなら、不公平じゃない。
暗くなってきた室内を見渡し、ドロロは灯りを灯した。
ろうそくのぼやけた明かりが、二人の顔を浮かび上がらせる。
「本当にそれで、幸せになる?今までの生活に戻ることが必ずしも幸せになるとは思わない。」
「それでも・・・誰かを誰かを忘れ、誰かに忘れられたと思うよりは、きっと幸せだよ。」
「僕は・・・覚えていて欲しいな。覚えていたいとも思う。」
覚えていられるのなら、それに越したことは無い。
小雪は小さく頷くと、そっと顔を上げた。
「ドロロには覚えてて欲しいよ!?でも、私は忘れちゃうんじゃ、結局ドロロ一人が苦しくなっちゃうよ・・・」
「心配ないよ。きっと何もかも、上手くいく。」
「本当にドロロはそう思ってる?」
「そう信じてる。」
未だに不安そうな小雪を前に、ドロロは立ち上がった。
今までもそうしてきたように、きっとまた、何とかできる。
「どちらにせよ、僕はまだ小雪殿と一緒に居る。何も心配することは無いんだよ・・・。」
「ドロロ・・・」
部屋の奥へとドロロは姿を消した。暗闇の中、声だけが聞こえる。
「もう寝ようか。明日も学校、あるだろうしね。」
「・・・うん。おやすみ。」
「おやすみ」
すっかり暗くなった空に、月が淡い光を放っていた。
今日もドロロは、夜空を眺めるだろうか。そのとき、何を想うだろうか。
でも確かなのは、まだ小雪とドロロは一緒に居られるということ。
それだけでも、眠るのには十分な安心感が得られた。
「明日は電柱から落ちないように気をつけるでござるよ。」
「大丈夫、明日は夏美ちゃんと一緒なんだ。」
「そっか。」
アンドの声が、静かな室内に響く。
「おやすみ、ドロロ。」
「おやすみ。」
二回目のおやすみ。
朝までぐっすり眠れば、明日はいつもどおりに過ごせるだろう。
そっと目を閉じた小雪の脳裏に浮かんだのは、初めて会ったときのドロロの姿だった。
振り払うように寝返りをうち、意識を飛ばす。
(心配ない。)
そう思うだけで、ぐっすり眠れるような気がした。


「おはよー夏美ちゃん!」
「おはよう。」
朝、日向家の前で待ち合わせをして、小雪は学校へと向かった。
ゆっくり歩いて学校まで登校するのも、たまには新鮮で良い。
「フー・・・」
大きく息を吸って、吐き出す。
心を落ち着かせるその行動に、夏美が不思議そうに質問をぶつけた。
「どうしたの?深呼吸なんかしちゃって。」
「え?あぁ、最近なんだか頭がボーっとして、集中できないの。胸が痛いって言うか・・・夏美ちゃん、どうしてか分かる?」
う~ん、としばらく考えてから、夏美はポンと手を打った。
「そのとき、誰かの顔が浮かんできたりしない?」
図星をつかれたような気がした。
「ドロロ・・・かなぁ。」
「ド、ドロロ!?」
必要以上に驚く夏美に、逆にこっちが驚かされてしまう。
「え?どうしたの?」
「い、いや、恋かなー、なんて思ってたんだけど・・・違うわよね、アハハ。」
「恋?」
その言葉は妙にしっくりと来て、もしかしたらそうなのではないかと思わせるような力があった。


「よっ、忍者娘。今日はお急ぎじゃないのかい?」
放課後、日直の仕事がある夏美を置いて、小雪は先に帰り道を歩いていた。
歩いている小雪が珍しかったのか、途中睦実が声をかけてきた。
「急いでいます。」
睦実はどこか苦手だった。飄々とした雰囲気もあるかもしれないし、あのクルルと友達だ、という事もあったかも知れない。
「つれないなぁ・・・何を急ぐ必要があるのさ。」
「ドロロが・・・まってますから。」
とっさに出た言葉がそれだった。
「?ドロロ?」
不思議に思うのも無理はない。
「・・・睦実さんは、恋ってなんだか分かります?」
「唐突だねぇ。う~ん・・・難しいな・・・一言じゃ表せない、複雑な心境かな。人を好きになるって、そういうこと。」
「好き・・・?私はドロロのことが、好き?」
考えても見なかった。
「へ?ドロロ??」
「・・・」
ずっと、同居人として一緒に過ごしてきたドロロ。今、その存在がずっと大きなものに思えた。
小雪は自分の感情と睦実の言った言葉を重ね合わせ、溜息をついた。
思ったよりも自分の状態は深刻なようだ。
「・・・えっと・・・ドロロは、優しいよね。」
「はい。」
気を使おうとしているのだろうか、睦実の言葉はたどたどしかった。
けれどもまたいつもの笑顔に戻り、独特の空気をまとってしまう。
「でも、すぐに帰っちゃうよ?苦しい思いをするのは、小雪ちゃんだけだ。忘れちゃうけどさ。」
人が気にしていることをすらっと言ってしまう睦実が、憎らしくもあった。
「そんなことありません!!」
「!?」
大きな声は小雪にしては珍しかった。
「ドロロはそんなに酷い人じゃない・・・。」
自分が取り乱したことに気づいた小雪は、そっと俯いた。
周りから見れば別れ話でもするカップルのようだったが、そんなことよりももっと深刻なこともある。
「本当にドロロがすきなんだね・・・夏美ちゃんは?」
「憧れ・・・みたいなものです。ドロロもきっと、そうなんだと思います。」
「一応恋愛感情ではないんだね。夏美ちゃんとは。」
「もちろんです。同性愛は認められてませんよね。」
本当は苦しいのかもしれない。
「ねぇ、ドロロじゃなくて、夏美ちゃんでもなくて、俺にしない?」
「・・・」
「俺のこと、好きになってはくれない?」
驚きよりも、戸惑いが先だった。
小雪は睦実の正体を知っている。イラストレーターで、DJで、学園のアイドルだ。
「貴方を好きになったら、夏美ちゃんはどうなるんです?」
「どうって・・・」
夏美の想い人が睦実だということも、知っている。
「夏美ちゃんを悲しませるようなことは出来ません。いえ、したくありません。」
それはきっぱりとした否定だった。
「そっか・・・」
「ドロロも、そしたら安心しちゃう。すぐにでも帰れちゃう・・・」
どうしても帰したくはない。
辛く、苦しくとも、ドロロをあの星へは帰らせたくない。
「・・・ドロロのことなら、クルルに聞きなよ。俺よりは役に立つと思うよ。」
「ありがとうございます。」
手を振って帰っていく睦実の最後の笑顔は、多少の悲しみも含まれていたかもしれない。


睦実に言われた通り、小雪が家に帰る前に向かったのはクルルズラボだった。
「んあ?東谷小雪じゃねぇか。」
「こんにちは、ドロロのお友達。」
ココだけは避けていた。
ドロロがここにいると知っていても、あえて何も知らないように振舞ってさえいた。
クルルが小隊のトラブルメーカーだと知っていたし、嫌な奴と言われるだけのことはすると思っている。
それだけじゃない。
ドロロの恋人、ということもあったかも知れない。
「俺にはクルルっつー名前があるんだが?」
「クルルさん、ね。」
「クックー、やけに素直じゃねぇか。何だ?俺んとこにくるなんて、珍しいじゃねぇか。」
本当なら来たくなんてなかった。
「睦実のことは、易々とは教えねぇぜ?」
「見てたの!?」
「この画面、何のためにあると思ってんだ。」
確かに、クルルならそれくらいのこと、堂々とすることが出来るだろう。
目の前の画面が、青白く光っていた。
「アイツを振るなんて、そうそうできることじゃないぜぇ?大したもんだ。」
告白されたことは分かっているようだが、何を話していたのかまでは知らないらしい。
少しホッとしつつ、小雪は慎重にクルルを探った。
「アイツ、前々からお前のこと狙ってたんだぜ?日向夏美なんてのは目じゃなかった。」
「そんな・・・」
夏美は可愛いし、積極的でもある。
それを差し置いて自分に好意を寄せてくる人がいるなど、小雪は考えたこともなかった。
「で・・・何しに来たんだ?」
話を急に変えられ小雪は少なからず戸惑ったが、それもクルルの策略なのではないかと思うと、自然と身構えることができた。
「何だと思う?」
逆に問うと、思ったよりもあっさり、クルルは考え込んでくれた。
「睦実の情報、怪我の治療、日向家の情報、尋ね人・・・」
腕を組み、いくつかの推測を上げた後、クルルは小雪を真正面から捉えた。
「・・・あぁ、ドロロか。」
くだらないことで小雪がわざわざラボに来るとは考えにくい。
深刻なこと・・・小雪にとって深刻なことを考えると、おのずとドロロの姿が思い浮かんだ。
「ドロロにとどまらない。貴方にとっても、他の誰にとっても、重要なこと。」
「何だ。」
それなりの情報料を取られるだろうか。
彼の代償はお金にとどまらない。
「貴方たちは・・・いつ、ここから居なくなるの?」
・・・しばし沈黙が流れた。
考え込んでいる、というよりも、小雪を見定めるかのようなクルルの視線に、居心地の悪さを感じた。
「何でそんな情報が必要なんだ。」
「ただ気になっただけ。」
「それなりの代償はもらうぜ?」
「分かるの?」
分かるのなら、どんな代償を求められたって気にはしない。
「正確なときまでは分からねぇが、俺たちがどういう行動をとればそうなるかくらいは分かるぜ?」
「教えて。」
間髪いれずにそう答えた小雪に、クルルが目を細める。
機嫌を損ねたのかと思った小雪だったが、その後ニヤリと笑ったクルルにその心配はないと分かり、胸を撫で下ろした。
「代償は・・・何にするかねぇ。」
「何がいいの?」
きっとただではすまない。
それが分かっているからこそ、つい身に力が入ってしまう。
「そうだな・・・あー・・・まぁ、とりあえず・・・ツケにしとくぜ。」
予想もしなかった展開に、驚いてしまう。
「いいの!?」
「無償じゃねぇ、ツケだ。」
「分かってる。ありがとう!」
思わず礼を言ってしまいハッとした小雪だったが、それにさらに衝撃を受けたのはクルルのほうだった。
目を伏せ、バツが悪そうな、それでいて恥ずかしそうな表情をしている。
小雪も驚いた。
まさかあのクルルがこんなリアクションをとるとは思わなかったのだ。
ドロロが以前、「クルル君は可愛いときがある。」と笑顔で言っていたことがある。
それを思い出し、小雪も微笑んだ。
「・・・んだよ。」
「クルルさんも、可愛いトコがあるんだね。」
「は!?」
複雑な表情をしながら、クルルが声を上げる。
「感情を表に出さない人だと思ってた。」
ふん、と鼻を鳴らし、クルルは椅子を回転させて後ろを向いてしまった。
「褒めてるのに。」
「何所がだ。」
小雪はクルルが拗ねた理由がよく分からず、首を横にかしげた。
「・・・で、俺たちが地球を離れることについて聞きたいんだっけな。」
クルルは手元でなにやら操作した。
すると周りの画面は、現在の小隊の様子を映し出した。
ケロロは自室でガンプラを、ギロロは庭で猫と戯れ、タママは桃華とお茶をしている。
「・・・俺たちの役目はこの星を侵略することだ。それは分かってんだろ?」
「わかってる。」
「俺たちがあの星に帰るとしたら、可能性の一つは侵略の完了だ。もう地球にいる意味もなくなるからな。」
小雪が頷く。
元々小雪はドロロと共に地球を守る役目についている。
この可能性は、特に重要視してはいなかった。
「もう一つは・・・今のこいつ等の地球での生活がバレた場合。特にドロロ。」
「・・・裏切りに・・・なるよね。」
それを承知でドロロは地球側に寝返ったのだろう。
それが分かっていても、やはり心苦しいものがある。
「ドロロは確かに裏切り行為になるな。軍法違反はもちろんだ。んで・・・こいつ等のこの地球に馴染んじまった様子を見られたら・・・俺達は一生顔を合わせることを許されねぇ。地球に来ることなんて論外だ。」
「・・・厳しいんだね。」
「そうでもしねぇと裏切られるからな。」
忌々しそうな表情でクルルがそう言った。
クルル自身、この軍法に納得がいっていないのかも知れない。
「ったく、こいつ等は分かってんのかねぇ。未だに地球に居られんのは俺がかくまってるからだってのに。」
「え・・・?」
「軍との通信は全て俺が受け持ってる。情報が本部行くも行かないも俺次第だ。もし俺が裏切ったら・・・どうなるんだかねぇ?」
ニヤニヤと笑うクルルを意地悪く感じた。
小雪は顔をしかめたが、その後すぐに響いた聞きなれた声に、パッと顔を上げた。
「クルル君は裏切らないでしょ?そんな意地悪なこと言っちゃダメだよ。」
「ドロロ!!」
天井裏から現れたドロロは、クルルに軽く苦笑してから小雪に向き直った。
「珍しいでござるな、小雪殿がラボに来るなんて。」
「うん、ちょっとね。」
できるならドロロに心配をかけたくは無い。
小雪は無理に作った笑顔でドロロに微笑んだ。
「・・・」
けれども作り笑顔なんてすぐにばれてしまうに決まっているのだ。
ましてやずっと一緒に過ごしてきたパートナーなら、なおさら。
「・・・聞かない方がいいのかな?」
ドロロは目を細め、いつに無く真剣な面持ちでそう聞いた。
クルルは足を組んで画面を見ている。余計な口は挟まない。
「ただ・・・ちょっと気になっただけなの。ドロロがいつあの星に帰っちゃうのかなって・・・。」
「やっぱりまだ、引きずってたんだね。」
「ゴメンね。ドロロに心配かけるつもり無かったのに。」
それは本当のことだ。
いつまでもドロロに心配をかけてはいられないと思っていた。
でも、やっぱり隠し事はそう長くはもたないものだ。
「作り笑顔なんて、小雪殿らしくないでござるよ。」
「うん・・・。」
いつでも笑顔で自分を支えてくれる同居人。
優しくて、強くて・・・。
「心配すること無いのに・・・。」
「ま、俺達は信用できねぇだろうけどよ。」
「?」
クルルは画面の向こうの隊員たちを見たまま、そういった。
「誰も油断してねぇよ・・・アンタに限らずな。」
「・・・夏美殿たちも、警戒してるんだね。」
「え?」
ドロロの瞳が悲しそうに歪んだのを見た。
「前に一度、誰にもお別れを言わずに帰っちゃったでしょ?記憶を消して。だから、みんな僕たちがまた近いうちに居なくなっちゃうんじゃないかって警戒しているんだよ。心配かけたのは・・・僕らのほうだ。」
クルルの眼鏡が逆行を受けて怪しく光った。
不気味さを隠し切れない。
「そっか・・・あのときからもうずいぶん経ったものだね。」
「あぁ。」
「クルル君が本部との交信を上手くやってくれるおかげで、僕らはまだここに居られるんだよね。ありがとう。」
小雪のときとはまた違う表情で、クルルが照れた顔をした。
小雪は少し悔しくもあった。
クルルとドロロが特別な関係だという事を改めて思い知らされたようで・・・。
「別に大したことじゃねぇ。今まで通りだ。」
「無理しないでね。・・・さて、小雪殿。大丈夫だよ。クルル君は頑張ってくれてる。僕も地球を守るためだたらどんな手段もためらわない。」
「・・・」
「それでも心配なの?」
「・・・」
小雪の言葉をじっと待つ。
「・・・嫌。」
「小雪殿・・・」
小雪はドロロに飛びついた。
服をぎゅっと掴み、顔を顔を埋める。
「貴方を離したくないの。ドロロを、帰したくないの。」
「・・・っ」
クルルはその様子を、ジッと見ていた。
「クルルさんは良いな・・・ドロロと一緒で。ドロロのこと覚えていられて。」
「・・・良くねぇよ。」
ぼそっと、そう言い放った。
ドロロがクルルの方を向く。
「クルル君?」
「一緒に居られねぇくらいなら、もう二度と話す事も、触れることもできねぇんなら・・・忘れた方が楽じゃねぇか。俺は耐えられねぇ。当たり前だったことを失って冷静でいられるほど、俺は器用じゃねぇし強くねぇ。アンタみたいに一緒にいられる日向家の奴等のような存在もいねぇ。」
しみじみとそう言った後、クルルはしまったというように二人を見て、顔を赤くした。

「僕だって・・・」

寂しいよ。
寂しいんだよ。

______________________________

はい、では続く、ということで・・・(涙
書きたいことを書いているうちにオチを見失いました;;
終わり方はまだ考えてないんですが・・・なんとか頑張ります・・・(汗


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ドロロが… (み~る)
2008-03-06 19:50:02
すみません、ドロロが二枚目で鼻血でましたww
アニケロ51話は何度見ても泣けますね。この小説であの話が甦りましたよ。
記憶を消されるのと、記憶はあるけど忘れられるの…
どっちもイヤですね。

あと、受験勝利、おめでとうございます!
心置きなく小説書いちゃってください(笑)。
返信する
書いちゃいます!! (naru(主))
2008-03-07 19:36:53
はい、やっと終わりました。
受験のヤツ・・・
ずっと考えていたネタも忘れかけてきましたよ(笑
小説は一気に書き上げたいと思いますww

ケロロは基本ギャグなので、たまにシリアスが入ると本当に泣けます。
あのときのアニケロは感動しました。
クルルもドロロも、小雪も睦実も大好きです!!

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。