小指ほどの鉛筆

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39 ごめん、本当……言いたくない。(トロ+クル+ドロ)

2008年07月06日 19時31分13秒 | ☆小説倉庫(↓達)
整理整頓を怠ったのが悪かった。
ちゃんと目を離さずに監視していればよかった。


―そう思った瞬間、彼はニヤリと微笑んだのだ。


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「やっほー曹長~~!」
ラボに入ってきた少年に、クルルは椅子を回転させて苦笑を返す。
「またかガキ・・・」
「いらっしゃい、トロロ君。」
隣にいたドロロに笑顔を向けて、トロロはクルルの近くの椅子に腰掛けた。
そして持ってきたコーラとピザを機材の上に乗せて、食べ始める。
「壊したらお前のとこの隊長に金払ってもらうからな。」
「多分大佐から巻き取るんじゃないノ?」
ピザを器用に頬張り、トロロが笑う。
ドロロはクルルのカップにコーヒーを注ぎ、トロロの前に立った。
「今日はどんな用事かな?」
その問いにトロロは首を横に振る。
そのジェスチャーにクスリと笑い、ドロロはクルルを見た。
クルルは困ったものだというように目を瞑り、コーヒーを飲んだ。
「どんだけ暇なんだお前は。」
「なんかガルルが・・・良い勉強にもなるだろうから、行って来なさいって言って追い出したんだよネ~。」
要するに厄介払いか。
ガキのお守りを任されたクルルは、納得いかないというような表情で溜息をついた。
ドロロはむしろ嬉しそうに、トロロの世話を焼く。
「コーラ、おかわりいる?一応冷蔵庫に入れておいたんだ。」
「いつの間に・・・」
クルルが危うくコーヒーを噴出しそうになった。
一方、トロロは上機嫌で紙コップを差し出す。
「ヨロシク~」
甘やかしすぎだろ、と言いたいクルルの心を読んだかのように、ドロロがウィンクをして通り過ぎる。
けれどもドロロの言いたいことはサッパリ分からない。
困惑するクルルに、トロロが微笑んだ気がした。
「あ、曹長!!あの辺のはみんな手作り!?」
トテトテと走っていくトロロに目もくれず、クルルはトロロの言っていたあの辺が何所だかを考えた。
アイツが興味を持つとしたら・・・恐らくメンテナンス途中の発明品だろう。
そう思い、好きにさせることにした。
けれども、ふと思い出す。
アイツはピザを食べてから、手を洗っていない、と・・・
「おい、ガキ・・・」
振り返って注意しようとした瞬間・・・白い煙がラボに充満した。
とりあえず鼻と口を抑え、トロロの安否を心配する。
「ガキ!!」
修理代はお守りをおしつけたガルルに請求しようなどと考えながら、立ち上がる。
「トロロ君!?」
ドロロの声が聞こえる。
この状況でもトロロの姿がちゃんと見ることが出来るドロロは、すぐに走り出す。
ドロロが忍術で煙を吹き飛ばすと・・・そこにいたのは、クルルたちの知っているトロロではなかった。

「そんなに慌ててどうしたのさ、美人さん。」

そんなキザは台詞を吐き、彼はニヤリと笑った。
慌てて駆け寄ったドロロは予想外のことに即座に反応できず、彼の腕に収まってしまっている。
「へ・・・?」
「お、お前・・・まさか・・・」
クルルが青くなる。
「あれ?もしかしてアンタ・・・ゼロロ?」
彼の横に落ちていたのは、新・夢成長促進銃。
ということは、この青年は大人のトロロということになる。
しかも運の悪いことに、その銃はクルルが試しに改良したばかりで、未来から大人の本人を連れてくるという、どこかの漫画の牛さんが使っているバズーカのような機能となっている。
だからこのトロロは、未来の自分たちを知っているばかりか、今よりもずっと大人な思考をしているのだ。
何歳大人になっているのかは、分からない。
「んでそっちにいるのは・・・昔のクルル!!!!」
「呼びつけにしてんじゃねぇよ。」
「あ、あの、離してもらっていいかな・・・」
「あぁ、ごめんごめん。」
パッと手を離して、トロロは笑う。
その笑いは子供のトロロとは違う、どこか爽やかな笑顔だった。
「何々?俺、過去に来ちゃったわけ?」
どこか生意気なイントネーションも消え、完璧に大人な感じだ。
「これを使ってな。」
クルルが隣に落ちていた銃を拾って見せる。
「へぇ~~・・・。アンタの歳、今いくつ?」
「20だが・・・なんか文句あるか。」
「おっ!じゃあ今は俺のほうが年上!!」
「・・・」
悔しそうな表情と冷や汗が、クルルの絶望感をあらわしている。
「俺今21なんだよ。」
「僕と一つしか変わらないんだ。」
「あ、ゼロロは22?じゃあ年上だね。敬語使ったほうが良い?」
ドロロに対してやたらと良い子なトロロに、クルルも機嫌を損ねる。
「けっ。」
「でも俺より身長高いし・・・」
見上げるような形に、不服そうな声を出す。
ケロロと同じくらいの背だろうか。
「過去のアンタにまで負けるなんて悔しいから、なんかで勝負してほしいとこだね。」
「その言い分だと、未来でも俺様はアンタを打ちのめしてるっつーことか。」
クックックと笑うクルルに、トロロは頭を抱えた。
「あー、その笑い方が嫌いなんだよ!!ったくさ・・・この頃だと、俺はガルル小隊に入ってる頃か?」
「そうだな。」
「そっか・・・クルルもまだケロロ小隊に入ってた頃ってわけだ。」
「未来はそうじゃないのか?」
トロロは知的な目をして、ドロロを見た。
「・・・」
「オイ、なんかあんのか?」
「ゼロロ、いや、今はドロロか・・・仕事は、選んだ方がいいよ。」
「え?」
それだけ言うと、トロロは小さく微笑んだ。
「どういうことだ!」
「・・・ごめん、本当・・・・・・言いたくない。」
俯いてしまったトロロに、ドロロは歩み寄った。
そして、一つだけ問う。
「未来の僕は、生きている?」
「あぁ、それは保障するよ。今のところ。」
「そっか。じゃあいいよ。」
頭を撫で、キョトンとするトロロに笑いかけた。
クルルも安堵の溜息をついて座りなおした。
「生きてりゃいいわけ・・・?傷ついても?」
「構わないよ。ゾルルは?」
「アンタといつも一緒にいる。」
トロロがそう言うと、ドロロはとても嬉しそうに笑った。
その笑顔が、トロロにとってはこの上なく辛かった。
「じゃあ心配ないね。これからも。ゾルルは強いから・・・僕のことも助けてくれる。」
冗談めかして言った言葉に、トロロはわずかな希望を抱いた。
未来に何があるか、彼らは知らない。
今はこの次元で、自分だけが知っている事実。
けれども未来に戻って、一つだけ変わることがある・・・それは、きっとゼロロとゾルルの間の信頼関係が、更に深くなっているだろう事。
それは、恐らくゼロロのことも、ゾルルのことも救ってくれる。
「安心したよ。ゼロロがそう言ってくれて。」
「そう?」
「つーか、ゼロロに戻ってるのかよ。」
クルルが尋ねると、トロロはすぐそこにあったピザを頬張り、笑った。
「元ケロロ小隊のメンバー間でだけは、ドロロって呼んでるみたいだね。クルルがこのあいだ教えてくれたよ。」
「へぇ・・・」
未来のことを教えられるというのは、なんだか気持ちが悪い。
トロロはコーラも飲み、一息つく。
「あーあ。俺、未来では上層部からの頼まれモノ作ってたのにな~。」
「未来には過去のお前が居るはずだぜ。」
「まぁ、過去の俺でも十分作れるものだから、心配ないかな。」
そんなマイペースナ事を言って、トロロはクルルとドロロの2人を眺めた。
「過去だとやっぱ、2人とも可愛い系だよね。」
「ふざけんな。」
「いやいや、未来だとさ、色気が増すわけだよ。」
やれやれと首を振る。
「ゼロロは忙しいから知らないけど、クルル、アンタは結構人気あるよ。」
「何の。」
笑うトロロが飲み物を置くと、またもや白い煙がラボに充満した。
クルルは目を細めて様子を見る。
「曹長?」
煙が消えた後にそこに居たのは、子供のトロロ。
今、この瞬間に生きているトロロだ。
「よかった、戻ったんだね。」
「ドロロ!」
嬉しそうなトロロに微笑み返し、ドロロはクルルに小声で言った。

「未来なんて、知らない方が楽しいね。」
「あぁ。」

クルルは手元の新・夢成長促進銃を見つめ、分解を始めた。
トロロはコーラを飲み、クルルとドロロの2人を見比べて、幸せそうに笑ったのだった。

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2 コメント

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おぉ・・・ (ゆき)
2008-07-07 17:43:35
なるほど・・・。
未来か・・・
なるほど・・・。
ダササ君が・・・ゾルル化してますが?
思い出したんですか?
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痛いところを・・・; (naru)
2008-07-09 19:16:11
痛いところをつかれましたが・・・;
私の書く小説は、基本設定が特に無いので、年齢も変わったりしますし、出会い方や過去もずいぶんと違っていたりします。
そのへんはご了承ください(苦笑
今のところ、ドロロはゾルルを思い出してます。
というよりも、忘れていたのは「わざと」という事にして設定を固めようかとも思っています。
分かりにくく読み辛い事は百も承知ですが、その辺は未熟さ故、お許しください。
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