小指ほどの鉛筆

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110 タイトルは文中記載(クルゼロ)

2008年08月30日 21時05分41秒 | ☆小説倉庫(↓達)
私は、自分の事が好きではありません。謙遜でも、何でもなく、ただ、もうここにいる自分の事をお世辞にも、愛している、だなんて言えそうにないのです。

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薄暗い部屋。
広すぎる部屋。
カタカタと自分がキーを叩く音しか聞こえない、静かな部屋。
そんな場所に、いったいどのくらいいたのだろう舗。
自ら好んでいたときもあれば、押し込められていたときもある。
それでも、少しは自由だった。
少なくともあの頃よりはずっと。
「あーあ、ガルルいねぇし・・・からかう相手もいねぇか・・・」
仕事の手を休め、伸びをした。
パキパキと骨が形を戻す音がする。
今なら脱走してもばれないだろう。なんにせよ、あのガルルがいないのだ。
暇つぶしになる相手でも見つけようか、それともここで悪戯を仕掛けようか。
腕を組んで考える。
「データハッキング・・・か。」
自分が遊び程度にしてきた罪。
それは、一度成功してしまうと楽しくてやめられるものではなかった。
というよりも、最初から失敗する気も止める気もなかった。
「アサシンのデータって、あんまねぇんだよな。」
前に一度個人情報を盗み出したことがある。
けれども、大した情報は得られなかった。
特にアサシンは。
いつ何所でどんな指令の下で仕事をしているかわからない。
時には内部調査もしている。
そして暗殺も。
「俺おもいっきり独り言言ってるけど・・・」
天井を見てみる。
その後に扉を見て、溜息。
「・・・まさかな。」
「そのまさかだったら、どうします?」
「!!」
扉から目を逸らした瞬間。
まさにその『瞬間』に、人が現れた。
自分の目の前に。
「お久しぶりです、クルル少佐。」
「おま、ゼロロ!!」
―ゼロロ兵長
彼はアサシンのトップであり、クルルの想い人でもある。
あの青い瞳、白く滑らかな肌、ふわりとなびく髪。
そして・・・
「話は聞いてしまいましたが。」
その笑み。
「・・・どうするんだ?」
「どうしましょうか。」
思考が読めない表情も、また彼の魅力。
クルルはいつもおもう。
―彼を征服したい・・・あの表情を歪ませるか、本物の笑みを引きずり出したい。
と。
けれどもそれは叶わぬ野望。
少なくとも今は。
「今回は彼方の監視のためにいたんですけどね、思いがけずブラックリスト追加ですよ。」
「・・・前から知ってたんじゃねぇの?」
「そうかもしれませんね。」
「・・・」
読めない。
これはクルルにとっては危機。
それでも、ゼロロの感情を読むのに夢中な彼は、そんなことどうでも良かった。
彼に斬られて死ぬのなら、それはそれでいい。
「殺さねぇんなら、俺は仕事に戻る。」
「どうぞ。」
それはつまり、殺さないということだろうか?
いいのか・・・?
「彼方を殺したところで、上にもメリットがないでしょう。もちろん私にとっても。」
それは正当化?
それとも、仕事として?
「そりゃどうも。」
同じ部屋で、2人だけ。
これがガルルだったらなんでもないものを、どうしてゼロロなのだろう。
監視?
何が監視だ。
「俺がアンタに殺されるためには、どうすればいい?」
壁にもたれてじっとしているゼロロに、そう尋ねてみた。
すぐに返答が返って来る。
「今、遠隔操作か何かで大統領でも殺せば、殺しますよ。」
「めんどくせ。」
「ですね。」
「は?」
「人を殺すなんて、面白くもありません。ただの体力の浪費です。めんどうなだけです。」
アサシンがそんなことを言っていいのだろうか。
そう思ったが、考え直す。
アサシンだからいいのだ。
結局彼らは、人を殺す。
だからきれいごとでもなんでもなく、そう言えるのだ。
「ふーん・・・で、俺は人を殺さないと殺されないわけ?例えば陰謀とかは?」
「重度によります。そのへんは私にも詳しいことはわかりませんから。」
「じゃあ、強姦とかは?」
「・・・凄いことを言いますね。」
「子供の癖にとか思ってねぇだろうな?」
クルルは笑った。
ゼロロはそう思っているかもしれない。
それでも、表情が読み取れなかった。
「思ってませんよ。ただ、凄いことを言っていると思っただけです。そうですね・・・その人にもよるでしょう。」
「アンタだったら?」
クルルは何かしらのアクションを期待して、そう言った。
けれどもその罠にも、彼はかからない。
「私は慣れてますからね。強引ではないですけど。」
「ってか、その前に捕まらねぇだろ。アンタなら。」
「かもしれませんね。」
ドロロは笑っていた。
その笑みは本物か、偽物か。
「じゃあ、俺がアンタを押し倒しても、死にはしないわけだ。」
「面白いことを言いますね。」
笑顔が見れない。
本物の笑顔を見せてくれるような話を、クルルは出来ない。
だったら、歪めよう。
彼の綺麗な顔が歪む瞬間が、見たい。
「出来るんですか?」
「当たり前だろ。俺を子供だと思って甘く見たら、負けだ。」
その言葉にも、ゼロロは笑っていた。
子供の戯言?
いや、違う。
ゼロロはクルルの本気を感じ取っていた。
だから、なめてかかったりはしない。
ただ・・・
「本当は上手い具合に彼方を殺すつもりだったんですけどね。」
「・・・それは本気か?」
「えぇ。でも、今日はやめましょう。私は彼方を殺せそうにない。」
次に見た笑顔は、本物だったのか。
「どうしてだ?」
「彼方にも聞きたい。どうして私を押し倒そうだなどと言えたんですか?」
「アンタの顔を歪めさせたかったからだ。」
クルルは正直にそう言った。
「なぜ?その程度で歪むような神経を、私は持っていない。」
「なんでだろうな。俺がアンタのことを好きだからじゃねぇの?」
ストレートな告白。
冗談に聞こえるだろうか?
いや、彼ならわかるはずだ。
「また、面白いことを言いますね。凄いサディストだ。」
笑う。
「あぁ。初めて知ったのか?」
「えぇ。」
「・・・」
彼は話を逸らそうとしている。
クルルはそう感じた。
だから、話を戻した。
触れられたくないのなら、触れてやろう。
「アンタが好きだぜ。」
「どうして?」
「見た目とか、中身とか。」
「中身とは?」
「俺好みの危うい感じとか、征服し甲斐があるとことか。」
「本当にSだ。」
「ドSと言え。」
何を話しているのだろう。
違う。
違う
違う。
「好きなんだよ、ゼロロ。」
「私が彼方を殺そうとしていても?」
「好きだ。」
「でも・・・私は、自分の事が好きではありません。」
それはそうだ。
誰も自分のことを好きだなんて大っぴらに言うわけがない。
「謙遜でも、何でもなく、ただ、もうここにいる自分の事をお世辞にも、愛している、だなんて言えそうにないのです。 」
「もう?」
「昔はまだ良かったんですよ。でも、今はもぅ、嫌いですよ。」
嫌い
その言葉が突き刺さる気がした。
彼は自分が嫌いだと言った。
けれども、自分は彼が好きだ。
クルルは苦しむ。
彼の言った言葉のために、ただ、苦しかった。
「それでも、俺は好きだ。」
「止めてください。私は彼方のことも殺せずに切腹してしまう。」
「そしてら、俺が蘇生させてやる。」
困った、という表情を作ったゼロロは、クルルに背を向けた。
「自分のことは嫌いです。でも、彼方のことはある程度好きなんですよ?クルル少佐。」
胸の痛みが、増した。
「彼方が好きだけれども、だから私に何が出来るんでしょうね。」
「・・・」
「彼方は、何を望みますか?私はガルル中尉が戻ってくるまで、彼方の傍にいます。何もなかった場合、それが任務なので。その間に、私に命令をしてください。命令という形で、私は彼方のものになりますから。」
青い
その瞳は、青い。
そして冷たい。
氷のように冷たくて、悲しい。
彼の涙は氷の瞳が溶けて湧いてくるのではないだろうか。
そして、冷たいのではないだろうか。
不意にそんなことを思った。
「ゼロロ。」
壁にもたれて目を閉じていたゼロロへと、クルルは近づく。
青い瞳が氷なら、自分の赤い瞳は、火だ。
「アンタ、苦しいのか?」
自分が感じている苦しみよりもずっと深い傷を負っているのだろうか?
「何がです?」
「俺に命令されて、それでアンタが俺に仕えたところで、それこそ何が変わるってんだ。」
今となんら変わらない。
違う
違うんだ。
俺がお前に望んでいるのは・・・
「アンタの心が欲しいんだ。アンタは俺に命令しろっつった。それは、逃げてるだけじゃねぇか。何か辛い痛みから、逃げようとしているだけじゃねぇかよ。任務での傷を、俺からの命令を果たすことで忘れようとしてる。ただの現実当時だ!俺はそんな空虚みたいなアンタが欲しいんじゃねぇ!!そんなアンタの、心から出た笑顔とか、憎しみから出た憎悪の表情が欲しいんだよ!!何よりも、何よりも!!」
一瞬、何が起きたのかと思った。
これほど自分が熱く語ることもなかったが、それ以上に
「やめてって・・・いったじゃないですか・・・」
彼が無表情で泣いたのを、はじめて見た。
「どうして、歪んでくれねぇんだよ・・・」
あんなに酷いこともした。
こんなに愛した。
それほど好きだった。
なのに・・・
「なんでそんな、空っぽなんだよ、アンタ・・・」
感情を押し込めて、涙にして流してしまった。
もぅ、何も残っていない。
「好きだって言ったのに、無視された。」
「だって、私は自分が好きじゃない。」
「アンタの『好き』は、本心から出たもんじゃねぇ。」
「君は本物が欲しいの?」
そんなの、汚いだけだ。
偽りは綺麗で、眺めているだけでいいから。
「アンタに、触れたい。観賞用にしとくには勿体ねぇ。」
「ありがとう。でも、それはまだ、ずっと先のことにしておいたほうがいい。」
まだ、自分には表情がない。
彼を満足させられない。
そんな偽りの自分に触れたいんじゃないんだ。
本物の自分を、見つけ出して欲しいんだ。
「ガルル中尉が戻ってくるまではここにいる。でも、私をこれ以上いじめないでください。」
ちゃんと仕事が出来なくなってしまう。
「じゃあ、優しくしてやるよ。」
「それも嫌ですね。彼方らしくない。」
「俺はどうすりゃいいわけ?」
「いないと思ってください。空気か風のように思ってください。」
それがアサシン。
例え彼方の前だろうと、それだけは譲れない。
「分かった。・・・未来では、覚悟しとけよ。ちゃんと待っててやるから。」
「えぇ。」
そのころには、ちゃんと表情を用意できているだろうか。
彼はいてくれるだろうか。
自分は死んでいないだろうか。
彼を殺してはいないだろうか。
「好きだ。」
「私も好きですよ。だから、数か月もの間も、彼方を殺せないんだ。」
・・・

「長!?」

そんなにも長い間自分の命は狙われていたのかというショックと、
そんなにも自分を想っていてくれたんじゃないかという嬉しさと。

「好きです。私は彼方を殺せません。だから、安心してください。」
「信じて、いいんだよな。」
「もちろんです。」

アサシンだって、恋はする。
それがどんなに悲しい恋だとしても、逃げられないのだ。
仕事をとるか、恋をとるか
その選択肢で、全ては決まる。

恋をとった私達が、幸せになれればいいのに。
そんな未来を願って
今はほんの少しの後悔と
溢れるほどの愛情を、彼方に。
彼方から溢れるのは血ではなく、想い。
これからもそうであると信じていたい。

好きです。

愛しても、いいですか?

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あれ?主旨が変わって・・・;


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