小指ほどの鉛筆

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・されど、それでも、また何度でも。 (テルグラ)

2011年06月15日 22時10分35秒 | ☆小説倉庫(↓達)
きっとお前の前に戻ってくるから。


「グララ、今日は何の日か知ってるか?」
含み笑いをしたテルルが、ベッドに寝たまま本を読んでいるグララの隣に腰掛けて尋ねた。
二人分の重みで少しだけ沈んだベッドに、グララは体勢を変えて読書を続ける。
テルルの問いかけなんて、少しも気にしていないかのように。
「グララ?」
それでも尚、嬉しそうに、そしてどこか寂しそうにグララの視線を追いかけながら、テルルは問いかけ続けた。
5分間ほどの短い詰問。
めんどくさそうにため息をついたグララが、ぼそりと呟く。
「・・・お前の命日。」
テルルはにっこりとほほ笑んだ。
「あれ、知ってた。」
その表情に、グララは一気に感情が害されていく気分がした。
「当たり前だろ。てか、記念日みたいに聞いてくんな。」
あの空白の20年間、この日が自分にとってどれだけ憂鬱だったことか。
特に最初の10年間ほどの苦しみなんて、お前には分からないだろう。
苛立ちながら、不貞腐れたように文字ばかりを追うグララの目に、突然闇が映った。
それがテルルの手によって視界が遮られた所為だと気づいた時には、もう既にグララはその手を払いのけていた。
「っんだよ、何が言いてぇの。」
バッと飛び起きたグララに嬉しそうに笑う、テルルの本意が分からない。
「グララ、俺、本当にもったいないことをしたと思うんだ。」
ゆっくりとした口調で、テルルの口が開く。
グララは苛ついていた心を落ち着かせようと、数度深い呼吸をした。
「あの時死んでいなければ、俺はお前と和解するためにアサシン寮へ行ったよ。」
「来んなよ。」
「そう言っただろうね。グララは、俺を心配してくれただろうと思う。それから俺は、もう一度、誠意をこめて告白しただろう。」
「保留だな、完全に。」
「それでも、お前はきっと俺のことを考えてくれている。返事を必死に考えるはず。」
御人好しで、愛おしいグララ。
「・・・」
「もったいないことをしたよ。俺は、グララと過ごすはずだった長い時間を、まるっきり無駄にしてしまった。」
「だから?」
そんなの、自業自得だろう。
自殺も同然な死に方をしておいて、何がもったいないだ。
グララは更に苛立ってきた感情を押し殺すこともせず、ただしかめっ面で話を聞いていた。
「この日は、俺の勝負の日だよ。記念日にしてもいい。俺と、お前が離れ離れになって。お前が、一時の間だけでも、俺のことを忘れられないくらいに愛した日だ。」
「気持ち悪い。」
それは心からの罵倒だった。
「はは、でも、俺はこんなことが嬉しくてたまらない。好きだった。だから、どんな仕方でもいいから、お前に想われていたかった。」
それは狂気的な恋愛だった。
「愛しているよ。」
ちぅ、
本を持っていた手に軽く口づけると、本で叩かれた。
「痛い。」
珍しい。大好きな本で人を叩くなんて。
それとも自分は、遂にその大好きを超えた存在になれたのか。
「馬っ鹿じゃねぇの。」
あ、怒っている。
無表情で本を眺めていて、その目はどこか虚ろで。
少し危険なくらいに怒っていることが、昔の彼の癖から明らかだった。
「もちろん、お前のために死んだわけじゃない。でもな、俺は、やっぱりお前の言葉に囚われていたんだよ。」
不機嫌なグララに触れようと思った手を、ひっこめた。
まだ駄目だ。きっと拒絶される。
「後輩の期待を裏切ったらいけない。俺は、殺すくらいなら殺されたいと思っていた。それを、ルベウスに言ってしまったんだ。」
真実なんだから、悪くない。
でも、それは生きることを諦めることだった。
「ルベウスが見ているところで、自分が助かるために、たとえそれが悪人でも、人を殺すわけにはいかなかったんだ。」
それだけは分かってくれ。
「後悔はしていないよ。今でもね。でも、未練はたくさんあった。お前に、好きになってほしかった。」
それでも死んだことが馬鹿げていたと思うか?
「今日は俺が死んだ日だ。色んなものを置いて逝った日だ。だから、これから、それを全部回収する日にしたい。」
「回収?」
どこか上の空なグララが、ぽつりと言葉を繰り返した。
「そう。ルベウスとの時間も、お前との時間も、軍への期待も、全部全部、取り戻してみせる。」
「時間を、取り戻す・・・」
「そうだよ。無理だと、無謀だと思うかい?」
グララは少し悩んでから、首をテルルの方へと傾けた。
「いや、可能だ。」
「そうか。なら、よかった。」
微笑んだテルルが、グララの手をとった。
そこから、本を取り上げる。
「だから、今日は俺につきあってくれないか。」
俺がお前との時間を取り戻すために、お前の時間を俺にくれないか。
「好きだ。愛している。生きていたかったと、今なら思う・・・」
こんな俺に、返事をください。
「てーら。」
いつもより少しだけ丸い目を覗き込んだ。
「ん?」
グララの手が伸びて、テルルの腕を掴んだ。
そうして、グイッと引っ張る。
されるがままに姿勢を低くしたテルルは、近くなった互いの顔に、少しだけ赤面する。
「好き。」
突然放たれた言葉に、一瞬だけの口づけ。
その両方がグララからのものだなんて、信じられないくらい嬉しくて。
けれども、どこか寂しそうな顔をしているグララの頬を、そっと撫でた。
「ありがとう。俺も好きだよ。」
「知ってる。」
どこぞのバカップルも赤面するような告白に、グララ自身は不思議と冷静だった。
普段なら、絶対にしないようなこと。
でも。今日が特別なら。
彼が本当に、あの頃を思い返して、悩んで、悔しがって、反省して、そうして謝罪するのなら。
それなら今日こそ、彼を許してやってもいい。
「テーラ、聞いていいか?」
キスした体勢のまま、ずっと近い位置で寄り添っていた。
グララは寝転がっているわけだから、添い寝に近い。
そろそろ手を出してやろうかと目論んでいたテルルは、浮かせた手を一旦停止して耳を傾けた。
「ん?」
「俺、お前のこと、まだ許してねぇんだよ。」
それは大変だ。
「何か不満な事でもあったか?」
グララは仕方ないとでもいうように嘲笑って、テルルを見た。
「お前が死ぬ前にしたこと全部。俺に手を出したことも、ルベウスを悲しませたことも、軍を捨てたことも。」
「それはもう、散々言い訳しただろう?」
伸ばした手で、グララの輪郭を撫でた。
その手を掴んで、グララは真剣な目をする。
「反省してんのかよ。」
「しているさ。」
だから今日という日を、こんなにも思い出している。
「本当にか?」
「あぁ。グララの、あの時の顔は忘れないさ。裏切ったんだ、俺は。お前の気持ちをな。」
「そうだな。」
否定されなかったことに、むしろ救われた。
見当違いな苦悩をしていなくてよかった。
「それに、なにもルベウスの前で死ぬことはなかったな。もっと他に、やり方があったはずだ。」
「・・・」
「そうでなくとも、少なくとも、もっと生きることに対する執着を持つべきだった。」
グララはその言葉を、ジッと聞いていた。
「後悔はしていないけれど、やっぱり反省はしているよ。」
前にも言った通りだ。
「ごめんな。もう悲しませたりしない。」
「はは、んな言葉望んでねぇよ。」
ごろんと仰向けになって、グララはテルルから視線を外す。
その言葉を聞けて、嬉しかった。
「そっかぁ、反省したかぁ・・・」
「許してくれるか?」
「んー・・・」
髪を掻きあげたグララの、マイペースな様子に安堵した。
怒らせてから、少しのことですぐに機嫌を戻してくれる。
このことは、実はとても穏やかなグララの性格をよく表してくれて。
嬉しくなった。
彼はすぐに許してくれる。
「もう許してくれよ。」
「んー・・・しょうがねぇな、許す。」
呆れ気味な微笑みが、優しかった。
「じゃあ、もうキスしていいかな。」
「懲りねぇのな。」
「懲りたさ。殴られるのはね。」
「まぁ、一応段階を追えるようになったのは成長だよな。」
「そうだろう?」
だから、と、仰向けなグララの上に乗り上げた。
途中、ぐえっという声が聞こえたが、気にしない。
「キス・・・」
「だけで終わらせねぇ気だろ。降りろ。」
どうやら腹にテルルの膝を喰らったようだ。
そこを押さえながら、テルルを睨みあげる。
「段階はおさえてるだろ?」
「ざけんなよ。俺明日仕事だから。」
「俺は今日、グララとの20年間を取り戻さなきゃけいないんだ。」
「来年にも持ち越せんだろ。」
「分からないぞ?明日死ぬかもわからないんだから。」
人間誰しもそうだろう?
当たり前のように言ったその言葉が、しかしグララには不愉快なようだった。
口をへの字に曲げている。
「グララ?」
恐る恐る手を伸ばして、胸の辺りを撫でてみる。
反抗はない。
「わかった。いいぜ。」
「?何が。」
「してもいいけど、支障きたしたら容赦なく殴る。」
恥ずかしがるでもなく、だからといってやる気があるわけでもなく。
淡々と述べたグララに、どこか虚しさを感じながら。
テルルはそっと、キスをした。
グララは身じろぎもしない。
「っ・・・グララ、俺は別に、無理にしたいわけじゃないんだけど。」
「無理じゃねぇよ?それに、言い出したのはお前だろ。」
「そんな機械的に受け止めてほしくないんだ。これは命令じゃない。」
「同じことだろ。」
同じこと。命令も、お願いも。
グララにとっては大差なくて、それは別にマイナスなイメージではなかったけれど。
心の空白には、確かに風が吹いていた。
「俺はお前が好きだ。だから、これは命令じゃなくて、お願いとかそんな感じなんだろうって、そう思ってるけどな?」
「・・・なぁ、任務は忘れよう。」
「その意味、分かってるか?」
アサシンが、アサシンでなくなることの意味。
主従関係での愛情が、恋情に変わることの意味。
それをちゃんと覚悟したうえで、こんなにも早く、お前は俺を手に入れたいのか。
それは、エゴだろう。
「俺はまだ、多分お前のことを、主人だと思ってるんだろうな。」
「どうして?」
「親友であり、主従であり、でも、お前が俺を裏切ってから、俺らの関係性は主従のみだ。」
「・・・親友では、いられない?」
「あぁ。いられねぇよ。好きになれば、友人だなんて思ってらんねぇし。でも、俺は多分、恋愛感情より、アサシンとしての防衛本能の方が勝ったんだ。」
それは今でも、胸の中で対決していて。
時には恋愛感情が優勢に立っても、すぐにアサシンとしての自分がその想いを殺してしまう。
正しいのだ。アサシンとしては。
現役を離れたくても、自分はこんなにも優秀で。
だから、恥ずかしくても、愛おしくても、テルルをそれ以上の目で見ることに、負い目を感じてしまう。
「好きだけど、俺はお前を守りたくて、もう失いたくはなくて、お前があんまりそのことを脅しに使ってくると、アサシンとしてしか向かい合えなくなる。」
「ごめん。」
「違う。お前が悪いわけじゃない。でも、やっぱ、俺はこういうことには向いてねぇよ。」
目を逸らせたグララが、唇を噛んだ。
精一杯応えたいのに、仕事が頭を離れない。
本能が、全ての想いを殺してしまう。
守りたい。でも、それだけじゃいけないんだ。それは分かっているのに・・・
「あの20年間が、俺にとってどれだけ苦しかったか、お前はわからないだろうな。」
恨み言。
だって、俺の方がずっと苦しかったのに。
お前の方が俺を愛しているなんて、言わせない。
「お前がいてくれればよかった。そうすれば、俺はアサシンとして以上に、お前のことを考えてやれた。」
「うん。」
「軍を変えてやろうって、笑って言えただろうよ。でも、今じゃもう、職業柄が抜けねぇとこまできちまった。」
「ごめん。」
「遅いんだよな、お前は。タイミングが悪いんだ。あの時も、今も、遅かったり早かったり・・・」
「悪いな。」
「俺、もう、一般人には戻れそうにねぇよ・・・お前のために、また20年分お前のこと想ってやるなんて、できねぇよ・・・」
これ以上は無理だ。
だって、もうこんなに愛してる。
「いついなくなるか分からないって、当たり前だよな。でも、俺に至っては、そのことがトラウマなんだぜ?んな軽く言うことじゃねぇだろ?」
また失ったら、今度こそ生きていけない。
死んでしまいたいと、本気で思ってしまうだろうから。
「あんま脅すなよ。俺、本気で怖ぇんだ。そんな風に言われたら、なんでもしちまいそうになる。」
それが本当に怖いとでも言うかのように、グララはシーツに顔を埋めた。
「・・・ごめん。」
「それでも、退かねぇのな。」
「当たり前だろう?離しはしないよ。」
「・・・」
「どこにも行かないさ。お前の毒気が抜けるまで、待ってるから。少しずつでも、俺の指先に慣れてくれればい。」
「言い方・・・」
「ん?」
「いや、なんでもねぇや。」
少しだけ照れたグララに、テルルは和やかな笑みを浮かべる。
好きだ。大好きだ。愛している。
20年分の気持ちは、受け取った。
「もういい。好きにしろ。」
もう何も言わないから、と。
グララは小さなため息と共に覚悟を決めた。
「よかった。許してもらえて。愛してくれて。俺は・・・もう、これ以上望むことなんてない。」
「ふーん。」
「まぁ、それとこれとは別だけどな。」
繰り返されるキスに、グララは少しだけ苦い顔をして。
けれどもそこに否定的な感情は一切籠ってはいなくて。
愛されている、と感じたのは、見当違いじゃない。
愛しあって、求めあって、それから感じた幸福感は、理屈じゃない。
幸せな疲労感に両手を突き出したグララが、テルルに一旦待ったをかける。
時計を見れば、1時間が経っていた。
短い時間かもしれない。
けれどもグララの表情には疲労が浮かんでいて。
突然喋りはじめたグララに、テルルも一度身体を離した。
「明日仕事っつったろ。」
「まだ余裕だろ?」
「馬鹿。年齢考えろ。」
普段は年増扱いすると怒るくせに。
「あぁ、そういやさっき思い出したんだけどよぉ。知ってるか?誕生日よりも、命日の方が大切なんだぜ。キリスト教も仏教も。」
いきなり何を言い出すんだ。
「そんなこと考えてたのか?」
「思い出したんだ。パッと。」
「俺のこと考えたんじゃなくて。」
「・・・あぁ・・・まぁ、色々考えてた。」
テルルは脱力する。
「これだからお前は・・・!」
「おいおい、怒るのはちょっと待てよ。」
「待つもなにもっ!俺は今、お前のことしか考えていないっていうのに・・・お前は俺だけ考えていてはくれないんだな・・・っ」
眉を下げたテルルに、グララは少しの罪悪感を感じた。
自分が悪いとは思っていない。
考えることを辞めたら、人間はダメになってしまうだろうから。
けれども、ただひたすら自分のことだけを考えてくれている目の前の恋人が、とんでもなく馬鹿に見えて、愛おしい。
思わず慰めてしまいたくなるような、弱弱しい表情。
いや、思い出せ。彼は狼だ。
先ほどまでの若い力を身体中で思い起こして、グララは抱きしめてしまいそうになる手の平をグッと握った。
「だって、ここは軍だぜ?俺はグララだ。お前の忠実な部下のな。」
「まだそんなことを・・・」
「ここにいる限りはそうだ。ずっと、ずっと・・・でも、だからこそ、俺はそろそろここを出て、俺の好きなとこに行きたいと思う・・・」
それは、グララが長い時を過ごした村へ帰るための口説き文句。
「お前と、帰りてぇんだ。」
「!!」
あの爽やかな空気を、美味しい水を、明るい笑顔を、自分が見てきた様々な美しいものを、彼にも見せてやりたくて。
グララは笑う。
「お前、さっさと死んじまったからさ・・・まだ知らねぇこと、沢山あるんじゃねぇの?」
「グララ・・・」
「本当に惜しいことをしたんだぜ?」
俺が経験したことをすべてを、お前も経験するはずだった。
喜び、楽しみ、幸福、どれもこれも、自分が感じるよりも早く、テルルが感じるべきだった。
惜しいことをした。惜しい人を失った。
彼が自分に対して思うよりも早く、そして深刻に、自分は彼の死を嘆き、惜しんでいた。
そのことを、お前は知るべきだ。
「テーラ、今日はそろそろ寝ようぜ。そんで、明日また、詳しく話そう。」
テルルを押しのけて、グララは上半身を起き上がらせる。
サラリと被った前髪の隙間から見えたのは、悪戯っぽい瞳。
構える隙もなく、テルルはグララにデコピンされた。
「~~っ!!」
アサシンの威力を、なめてはいけない。
「あんまがっついてんじゃねーよ。」
最後に赤くなった額にキスをして、グララは立ち上がった。
シャワーを浴びるだろうか。
まずは水を飲むだろうか。
そんな一挙一動さえもが愛おしくて、手放したくはなくて、テルルはそっと呟いた。

(ずっと、一緒にいてくれるかい?)


明日があることを当たり前のように信じて、
そうして馬鹿みたいに死んでいくのが日常だというのなら。

抗えぬその運命を、世界から買い取ってでも、

君と、明日を歩みたかった。





―(もちろん)





__________


お久しぶりです。
そろそろ私が二次創作していることを忘れている方も多いのでは?←
というか、今初めて知った方がいるのでは?
そもそも、ここに来るのが初めての方がいたりするのでは!?(落ち着け
ちょっと危機感持ってます。




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