小指ほどの鉛筆

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貴方にだけで良い。世界が優しくありますように。(大佐←秋)2

2010年02月15日 19時11分14秒 | ☆小説倉庫(↓達)
「寒っ。」
冬の空気は冷たくて、外に出たことを少しだけ後悔しながら、大佐は身体を丸めた。
隣には涼しい顔をしたシャイン。
何が面白くて、男二人で平日の町をうろちょろしなければいけないのか。
他星人である自分達に、この星での世間体などはどうでもいいことなのだが。
「こうやって街歩くのってさ、」
不意に喋りだしたシャインを見る。
「久々だよな。」
町の風景を眺めながらも、大佐の隣からは一歩も外れない。
無駄に車道側を歩いていたり、なんだか過保護すぎて気持ち悪い。
「・・・そうだね。」
「あんまり忙しいもんだから、地に足つけんのも忘れてた感じだ。」
地というのは、俗に言う世間のことで。
民間人が過ごすその世間という場所から、自分達は少しだけ外れている。
それを善悪のどちらかで判断するのは難しい。
一般の人々を巻き込むことなく仕事が出来るのは素晴らしいことだ。
けれども自分達を孤立化させることも事実。
元より軍人など、自分を犠牲にすることを目的としているのだから、それでも良いのかもしれないが。
もちろんそれは、生死を問わないわけではないけれど。
「シャインは、最近休んでなかったね。」
「まぁ、完璧に一日仕事が無いってのも、感覚が狂うから困るんだけどさ。」
それは感心なことだ。
「それよか大佐、寒くねぇ?」
隣を気遣うように声をかけたシャインに、大佐は少し伏せ目がちに答える。
「少しね。」
「んじゃあ、ちょっとカフェでも寄ってこーぜ。俺コーヒー飲みたい。」
道の脇に構えられたコーヒーショップを指差して、シャインが笑う。
まだ朝の出勤通学時間帯だ。
この手のカフェは、朝の一杯を求める客が多いことだろう。
大多数がテイクアウトだということは、目に見えているが。
「・・・奢り?」
「大佐の?」
「・・・」
期待することは、やめた。

「ガルル。」
「・・・なんですか。」
朝の射撃練習の後、通路を歩いていたガルルをジララが呼び止めた。
ガルルはジララに限り、妙に敵対心が強い。
ゾルルを壊しかけた代償は重く、それはガルルにとって、死罪にも当たる程重要なことなのだ。
だから本来友好的なジララとしては、あまり話しかけるのは本意ではなかった。
しかしこれも慣れだと腹を括って・・・基、第一印象を悪くしているのは自業自得なのだが、話しかけてみる。
その甲斐あってか、最近は大分普通に話せるようになった、と思う。
ガルルもそこまで鬼ではないということか。
「大佐とシャインを見ていないか?」
朝から姿が見えないのだが。
「あの二人のことですから、何処かに出かけたんじゃないですか?」
「そう、か。」
少しだけ残念そうだと、ガルルはその乏しい表情を見て思う。
ジララの表情を読み取れるようになってきたところを見ると、彼自身、慣れてしまったようだ。
「シャイン先輩が誘って、大佐もそれに乗ったか・・・やることもないから、渋々か・・・そんなところでしょう。」
「・・・そうだな。ありがとう。」
「!?」
驚いたような表情をしたガルルに、ジララは踵を返そうとした足を止めた。
「なんだ。」
違和感。
今の言葉に、何か問題があったか?
立ち止まったジララに、少し戸惑いながらガルルは口を開く。
その言葉は、ジララとしては多少、心外だった。
「貴方が「ありがとう」なんて言うとは・・・思いませんでした。」
「・・・俺のイメージが悪すぎるだろう。」
いや、確かに、今までは率直に「ありがとう」などとは述べなかったか。
言うとしても「礼を言う」やら「恩に着る」やら、堅苦しかった気がする。
もしかして、今初めて使っただろうか?
嫌われている相手になんて、実に滑稽である。
嫌味に聞こえていなければいいのだが。
「そんな言葉も使うんですね。」
そう言ったガルルの顔は、微笑んでいて。
言葉こそ意地が悪かったが、嫌な気分にはならなかった。
先に背を向けたガルルを、ジララは暫く見送る。
やがて自身も楽しげな笑みを浮かべながら、通路を歩き出した。

「ねぇ、シャイン。」
「ん~?」
頬杖をつきながら、大佐はシャインを見つめていた。
正確には、シャインの手元を。
「君ってさ、甘党だっけ?」
「違うけど。」
「なんでそんなに、カロリーのありそうなもの食べてるの?」
シャインの手元には、シフォンケーキやらドーナッツやら、デザートにでも一つしか食べないだろうお菓子の大群。
大佐は一切手をつけていないが、着実にそれらは消費されていく。
胃もたれしそうな程に甘いだろうそれを、シャインは躊躇いも無く胃袋に収めていく。
「朝ごはん食べてなかったなーと思って。」
「いや、それは朝ごはんとは言えないでしょう。」
そう言った大佐にニヤリと微笑んで、シャインはドーナッツを飲み込む。
「敵地に赴く際のスタミナ付けは重要だぜ。何があるか分かったもんじゃねぇし。」
恐らく何もないだろう。
けれどもきっと、こんな油分も糖分も、彼にはなんてことはない。
いつも通りの運動をすれば、すぐに消費されてしまう。
「原動力。云わばガソリン?」
羨ましいことだ。
「あっそう。」
「食う?」
銀色のフォークを向けて、シャインが首をかしげる。
「いらない。」
咀嚼し続けるシャインの様子を見て、大佐は笑った。
何かを食べているときの人間は、何所と無く可愛い気がする。
特に頬張っているとき。
「なんか、おなかいっぱいだよ。」
「ふーん?」
なんだか大佐が楽しそうだ。
それならそれでいい。それだけでいい。
シャインは何も気にすることなく、ただ目の前のノルマの達成に、心身を注ぎ込んだ。
やがてそれらは、欠片も残らず消費される。
ブレイクのコーヒーは、ブラックだった。
満足げに笑ったシャインに溜息をついて、大佐は立ち上がった。
食後のコーヒーを飲み干したシャインもそれに続く。
最初はただ、コーヒーが飲みたいとだけしか言われなかったのに。
どうしてこうなったのか、なんだか騙された気分ではある。
けれども想い人の可愛い姿を見られたのだから、少しだけ得でもあったかもしれない。
自分の奢りでもなかったし。
店を出れば、やはり冷たい外気が頬を撫でる。
まだ春は来ないようだ。
「なぁ、大佐。手、繋がねぇ?」
遠慮がちに言われた言葉に、キョトンとする。
「駄目か?」
「・・・駄目。」
「やっぱり駄目かぁ。」
残念そうでもあり、楽しそうでもあり。
最初から予想していたのだろう。わざわざ聞いてきた意味がわからない。
藁にも縋るというやつか?
いや、単純に、本当に今、手を繋ぎたかったのかもしれない。
こんな寒い日に、せっかく温めた手が冷たくならないように、握っていたかったのかもしれない。
そう思うと、少しだけ後悔した。
「でもさ、人目につかないときなら良いんしょ?」
「そんな制約はないけど・・・やっぱり人目は気にするさ。」
「アハハ、だよな。」
大佐はそうだと思った、と。
呟いたシャインの両手へ視線を落とす。
コートに突っ込んだ両手が拳を作っているのかどうかも、大佐には分からなかった。
「シャインはさ、そういうの、気にしないよね。」
フラフラと歩いたままで、尋ねてみる。
「まぁな。」
「なんでだい?」
少し困ったような笑みが、愛おしかった。
「大佐の為なら何も気にしないってのもそうだし・・・何より、俺のこと何も知らねぇ奴等のことなんか、気にしねぇよ。」
本当は、世間体のこともよく気にする人だから。
全てが嘘ではないとしても、多少の無理をしていることは分かった。
「へぇ。」
込み入ったことは聞かないけれど。
「それよりさ、次、どこ行くよ。」
冬の空のような笑顔。
「どこでも。」
一瞬、目を閉じる。
彼が無理をする時間が、少しでも減るように。
あぁ、しかし、
次に開けたときにも、乾いた、澄んだ空が広がっていた。
だから。
「君が連れて行ってくれるところなら、僕はついていくよ。」
こちらも少し無理をしてみたりして、
打ち消した。

「ゾルル、ガルルさんのところに居なくていいの?」
冬の冷たい空気が肌に痛い。
自然と一体となり過ごすという事が、とても厳しいことだと知った。
山の奥にあるドロロと小雪の住居へと赴いたゾルルは、白い息を見つめながら頷いた。
「問題・・・ない。」
大きな石の上、隣に座るドロロのために、自分はここへやってきた。
「・・・それは、大佐殿がいるから?」
「どういう、意味、だ。」
ドロロは少し困ったように目を伏せて、それから遠慮がちに口を開いた。
「ガルルさんも、ジララ様も、大佐殿を凄く大事にしているように思ったから・・・」
「だから、なんだ。」
「なんて言えばいいんだろうね。どう言っても、君を傷つけてしまいそうだけど・・・なんというか、大佐さんを守ろうとしている二人の決意を妨げちゃいけないような、そんな感じがしたんだ。君もそれを気にしているんじゃないかと・・・だから、ガルルさんから離れているのかな、とか・・・思ったんだけど。」
その言葉に、少なくとも間違いは無かったのだが。
けれどもゾルルは空を仰ぎ、フッと笑った。
「考え・・・すぎ、だ。」
「そう?」
「あぁ。」
別に自分は、そんな遠慮はしていない。
自分だって大佐を大事に思っているし、同じように思う人間の気持ちはよく分かる。
第一、そんなガルルの優しさに絆されたのだ。今更何を妬もう。
ただし、やっぱり時々もやもやすることもあって。
もしもガルルが大佐になびこうとするようなことがあったなら、容赦なく邪魔してやろうと。
そう思った。
「お前は、あの眼鏡と・・・まだ、続いている、のか。」
「うん。おかげさまで。」
ケロン星にいても、いい噂は聞こえてこないのだが。
「クルル君は優しいし、毎日楽しいよ。」
とても心配だ。
ゾルルはケロン星に居たころのゼロロをよく知っている。
だからこそ、とても不安だろうドロロの気持ちが理解できる。
無理をしてはいないだろうか。
またどこかで、泣いていたりするのではないだろうか。
「お前は・・・優しいのか、苦労性なだけ、なのか・・・よく、分からない。」
ドロロは笑う。
ゼロロの頃にはなかった、華のある笑顔。少しは、変わったのかもしれない。
「両方、なのか・・・」
全く、不憫な奴だ。

カゲゲは通路を歩き回っていた。
やることもなく、ボーっとしながら。
ケロンにいるときもそうだ。変わらない日々。
特にやることがあるわけでもないから、ふらふらと出歩いてみたりして。
時々ジララとばったり会って、大佐のところへ行くことはあるけれど。
やはり今日も、楽しいことはなにも無いのだった。
「おや、カゲゲ殿。」
初めて入り込んだケロロ小隊の基地だったから、詮索のし甲斐はあった。
特に奥まった、錆びた扉を開く。
そこにいたのは、ガンプラを作っている緑髪の男だった。
「どうしたんでありますか?こんなトコまで来て。」
「あぁ、いや、やることも無いから、少し散策をな・・・」
「そうでありますか・・・我輩も、それくらいの余裕が欲しいでありますよ。夏美殿ときたら、朝から家事仕事我輩に任せてさー。」
学校があるのだから仕方ないだろう。
むしろ、とても感謝されているのではないか?
カゲゲはそう思いつつ、ケロロの手元に目を向ける。
ニッパーとヤスリを使って、器用に部品を組み立てていく手。
なかなか面白い。
「気になるでありますか?」
「え?あ、その・・・」
「入るでありますよ。見学は自由であります!」
気さくな様子が、シャインに被った。
カゲゲはケロロの隣に座り込む。
その様子を確認してから、ケロロは作業を再開させた。
「不思議なものでありますな。」
「?」
「本日の客人は皆様、前は敵として戦ったってのに・・・全然緊張感が無いでありますよ。」
その言葉に、カゲゲはクスリと笑う。
それは大佐のおかげだ。
全てはあの人が、自分の都合のいいように取り計らったことだから。
「そうだな。」
パチリと、乾いたニッパーの音が響く。
静かな作業場などは、とても居心地が良い。
大佐の執務室然り、ジララの部屋然り、シャインのいるテラス然り・・・
それでも誰かに居て欲しい、寂しがりやなカゲゲだ。
「これは、毎日作っているのか?」
「ほぼ毎日でありますな。」
「飽きないのか?」
ケロロは以外だというように、丸い目を更に丸くした。
「全っ然!同じものを作っても、後でディスプレイするときに使えるでありますからな。」
「ふーん・・・」
ジッと、ケロロの手元ばかり見ている。
器用な指先が、とても面白いと思った。
「それより我輩は、カゲゲ殿の方が不思議でありますよ。見てて楽しいでありますか?」
カゲゲは首をかしげる。
「楽しいぞ?」
「どこが?」
「・・・静寂の中で、誰かが真剣な顔をしているところとか、そこに自分の出来ない技術があったりとかするからだ。」
それが万人にとって楽しいのかと問われれば疑問だが。
カゲゲにとっては、紛うことなく楽しいの部類に入るのだった。
「面白いでありますなぁ。カゲゲ殿は。」
「そうか?」
「そうでありますよ。」
そしてまた、沈黙。静寂。
知らないことを知りたい。見たことの無いものを見たい。
そう思うのは、必然的なことで。
自分もあながち大佐と違ってはいないのではないかと、カゲゲはふと思い、笑った。
「大佐をどう思う?」
「大佐殿でありますか?あの方こそ、不思議でありますよ・・・ブラックジョークが洒落になんねえっつーか。」
実際ケロロは、クリスマスのときに酷い目に遭っている。
ガルル小隊が来たときもそうだった。
「でも会ってみると、案外ほんわかした人でありますな。あと美形。もうちっと、いかにもな感じのを想像していたであります。」
「そうだろう。私もそうだった。」
初めて会ったときは、驚いたものだったが。
実力さえあれば、軍は本当にどんな人間でも使う。
その貪欲さが、よく分かった。
「ジララは昔から知っていたそうだが・・・」
正直、こんな美人に出会っていて、何故自分を選んでくれたのかとか、色々考えた。
結局奴は、まだ彼に未練があるままなのだが。
「ガルル中尉、ジララ大尉、シャイン殿、大佐殿・・・仲良いでありますよな・・・」
「そうだろう・・・?そうなんだよ・・・」
「・・・嫉妬してるでありますか?」
チラリとカゲゲを窺い見て、ケロロが問うた。
その言葉に、シャインは盛大に顔を赤くする。
「な・・・!べ、別にジララが大佐と居ようと居まいと、私には関係ないし・・・!!」
「ジララ殿とは言っていないでありますよー。」
「!!」
あたふたしながら口をパクパクとさせるカゲゲを見て、ケロロはさぞ面白そうに笑った。
手元のガンプラもそのままに、ニヤリと笑う。
それはやはり、シャインに似ていた。
「可愛いところもあるんでありますな。カゲゲ殿。」
「!?」
年上に可愛いとは何事だ。
言われ慣れているとはいえ、やはり癪に障る。
カゲゲは頬を膨らませて、立ち上がった。
「フンっ!くだらないことを言うな!!もぅ戻る!!」
「あー、そうでありますかぁ。楽しかったでありますよ。」
その笑顔に、カゲゲは面食らう。
無表情なジララを好いている反面、こういった無邪気な笑みに弱いところがあることは、自覚していた。
「わ、私も・・・楽しかったぞ。」
先程の威勢の良さは何所へ行ったか。
何処か恥ずかしそうに扉をくぐり、カゲゲは自室へと戻るために歩みを始めた。

―某漫画家宅にて。
「日向さん、なんだか楽しそうですね。」
漫画家の一言に、秋はクスリと笑った。
「そうみえる?えぇ、とっても楽しいのよ。」
あんなに手のかかる良い男、そうそういないもの。

「ただいまー」
当たり前のように玄関をくぐって帰宅したシャインと大佐は、外気から逃れた温かさにホッと一息をついた。
まだ誰も帰ってきていない。
当然と言えば当然なのだが、家主が誰も居ない家でくつろぐというのも、なんだか申し訳ない気分だ。
「ガルル君たちはどうしてるかな?」
「朝飯食ったかねぇ?」
「今何時だと思ってるの。食べたでしょ。」
地下は施設が充実している。
多くの資金を与えずとも、クルルがどうにかしてくれているらしかった。
誰よりもいい加減に見えて、実は誰よりも苦労していたりするから、彼は面白い。
足掻いたり努力したりするところを人に見られるのが、嫌いなのかもしれない。
とても、素敵なことなのに。
「ここのキッチンは、凄く使いやすかった。」
「大佐んちのも良いヤツじゃん。」
「そうだけど・・・ここのは、高さも調節できる。」
しみじみとそう言った大佐の顔を窺い見たシャインは、溜息をついた。
きっと、今後の予算について考えているのだろう。
高い技術力を軍のために使うのなら、そこに資金をつぎ込むのもいい。
だがシャインだったら、減らす。
その方が面白いし、逆境でこそ輝く小隊だと知っているから。
さて、大佐はどうするのだか。
「クルル曹長って器用だね。」
「んだな。俺も結構器用だぜ?」
「知ってる。」
しばらくボーっと立ち尽くした後、大佐は地下へと向かった。
特にすることも無いから、部屋でゆっくりするのだろうか。
そもそも何のために、地球に来たのだろうか。
自分達は、何も聞いていない。
いや、そもそも、大佐の提案にジララとゾルルが乗って、そこに自分とガルルとカゲゲが付いてきただけなのだが・・・
それにしても、大佐の策略に嵌っているような気がする。
「なぁ大佐。部屋行ってもいいか?」
「なんで?」
何故と聞かれても困るが、別に深い意味は無い。
出来ることなら、甘い一時を・・・送ってみたいものだが。
「ガルル君達と合流しようか。」
「ん?あぁ、そうだな。」
完璧にスルーされた要求に涙しながら、シャインは頷く。
せっかく大人数で来たのだ。
何か楽しいことでも考えよう。
そこでトラブルやらアクシデントやらがあれば、それはそれで大歓迎だ。
あとの楽しみはクルル曹長に任せて・・・
ニヤリと笑ったシャインの心理を、前を歩く大佐は知る由もなかった。

―吉祥学園昼休み。
「夏美ー。今日放課後、カラオケ行かない?」
「ごめんねー、今日はちょっと・・・」
本気で残念そうな夏美に、その友人は心配そうに尋ねた。
「どうしたの?」
「ううん!別に大したことじゃないんだけど・・・ごめんね。」
「そう?じゃあ、また今度ね。」
「うん。」
晴れきった青空が、妙に悔しかった。

「あ。」
シャインと大佐が通路を歩いていくと、前方にジララの姿を見つけた。
ポケットに手を突っ込み、上の空で進んで行く。
「ジララ。」
「ん?あぁ、帰っていたのか。」
ジララは二人の姿を見受けると、パッと表情を変えた。
穏やかな微笑みを浮かべる。
「何所へ行っていたんだ?」
「ちょっとそこらへんを散策にな。」
「そうか。いい観光にはなったか?」
「それなりに、ね。」
まだまだ物足りないと言いたげな瞳で、大佐は笑って見せた。
本当に地球が好きなのだろう。
いつまで経っても、子供のような無邪気な瞳が印象的だ。
「それなら、後で俺と出かけるか?」
「え?ジララ何処か行くの?」
「出かけようかと思っていたが・・・」
考えるように腕を組んだ大佐は、やがて顔を上げた。
「いや、カゲゲ君と出かけなよ。どうせまた、朝から会ってないんでしょ?」
きっと寂しがっている。
もっと一緒にいてあげればいいのに。
いや、本当はそうしたいのだろうが、何に邪魔をされたか、未だにそれが出来ない。
第三者はとてももどかしくて仕方が無い。
「そういえば見ていないな。ガルルは私室に向かう途中で見かけたが。」
「ほら、そうやってずぼらなんだから。」
「はぁ・・・?」
まだわかっていない。
「ずぼらだってさ。ウケるわ。」
「ウケるな。意味が分からn「そういうのがずぼらだっていうんだよ。」
ピシャリと言い放った大佐は、カゲゲの代わりにむくれて見せた。
全く酷いものだ。
もっともっと、愛してあげればいいのに。
見える形で。もっと。優しさだけじゃなくて。

「相手の気持ちをさ、もっと、考えようか。」


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