小指ほどの鉛筆

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281.切っちゃった(ジラ←ガル)

2010年03月17日 21時46分53秒 | ☆小説倉庫(↓達)
鳴り響く警告音。
爆音、靴音・・・
兵器開発部では沢山の金属や電気工具がばら撒かれ、肉弾戦では戦力とならない兵士達が逃げ惑っていた。
それを高みから見下ろす青年が、一人。
混乱を作ったそもそもの原因であり、ケロン軍の有力幹部候補だった男だ。
ところがその候補から突然外され、不満を募らせた彼は反抗を試みる。
戦力は集まらなかった。ならば、一人でやるしかない。
彼は化学、技術班を行き来し、そこで様々な技術を学んだ。
一人で戦うための力が必要だったのだ。
アサシンにも負けない力が。
そして彼はそれに成功する。
有る程度の力を有し、反抗して、一部の上司からは、既に降参の白旗を揚げられた。
しかし人間というものは、愚かなもので。
その力に陶酔した彼は、そのまま軍のジャックを目論んだ。
人脈は無いが、技術力で作り出した兵器なら沢山ある。
それで十分だ。
もぅ、捨て駒にはされない。
彼は暴走を始めていた。
そこで基地の半分ほどが破壊された後、上層部はやっと、腕利きの兵を数人投入した。
「頼んだよ。ガルル君、カゲゲ君、ジララ、シャイン。」
もちろんそれだけではないが、大佐は特に仲の良い4人組を共に送り出す。
他の兵はあくまでも援護に当てさせ、メインの戦闘は任せることとした。
上の反応が遅すぎて、早く決着をつけなければ、この基地はもぅ駄目だろう。
それから数時間・・・
大佐の元には、一本の連絡も入ってはいなかった。

「おいおい、やばくね?」
「私語を慎め。」
大鎌を振り回しながらの独り言を呟いたシャインは、不機嫌顔のジララに窘められた。
状況は最悪。
一般兵はほぼ全滅。
死者も負傷者も、動ける人間はどうやら、自分達を含めて数人のようだ。
「連絡手段を絶たれました。大佐に警告も出せません。」
破壊された通信機器を投げ捨て、ガルルは天井から落ちてくる知能兵器を射撃し続ける。
そろそろ腕がキツイ。
一旦落ち着かせないと・・・
そうは思うのだが、何せ人手が足りない。
そもそも人を呼んだところで、被害者が増えるだけだろう。
この男、相当やり手だ。
そう思ったところで、ガルルは頭上で口を開ける怪物には気がつけなかった。
「ジララ!」
シャインの声が響いた。
ガルルはその声で緊張を取り戻し、やっと自らに落ちる影を認識した。
牙が見える。
その奥の闇まで、すっかり見えていた。
「っ!!!」
口内でもいい。銃を放つべきだ。
そう思って腕を伸ばした先には・・・もぅ、怪物はいなかった。
「ガルル、お前は前の敵だけ見ていればいい。上は俺が行く。」
右手の武装をパキパキと鳴らすジララが、怪物の頭を切り離していた。
まだ活きのいい尻尾が、バタンバタンと床を鳴らす。
それを一瞥する暇も無く、ジララは次の獲物へと爪を立てる。
「あ・・・ありが・・・」
礼を言う時間もなかったガルルは、少々不満そうに銃を構えなおす。
目の前の敵が、自分の敵だ。
頭上の敵は自分の敵ではない。
そのことには、全くの不安も、微塵の疑いも無いのだった。
「ナイスジララ。」
「お前が助ければよかっただろうが。」
へらへらと笑うシャインに眉をしかめ、ジララは飛び回った。
シャインなら、自分の身は自分で守れる。
カゲゲもそうだ。
けれどもここでは、ガルルが極端に無防備になってしまう。
狙撃兵は、上に銃を向けて撃つことが難しい。
接近戦も苦手だ。
ガルルがどんなにナイフの扱いを心得ていようが、やはり馴染みの武器は銃なわけで、
それを片手に持ちながらの接近戦など、出来ようもないのだった。
ジララは視界の隅に常にガルルを置き、出来るだけのフォローを心がけた。
これは後々必要となる戦力だ。
今傷つけるわけにはいかない。
「ジララ、援護なら私がやるぞ。」
ただし最も攻撃力がある人間はジララ。
誰かの護衛をしているからには、その力を存分には発揮できない。
それを知っているカゲゲは、そっとジララに近づき、耳打ちした。
ところがそれを、ジララは首を振る否定で断る。
意外だとでも言いたげなカゲゲに、めんどくさそうに口を開いた。
「頭上は任せろと、言ってしまったからな。」
それはとてもプライドの高い、戦場では愚かしい誓いではあったのだけれど。
「そう・・・か。」
それを認めるようなことがあってもいいのではないかと、カゲゲは二人を見やって思う。
元々仲のいい二人ではないのだ。
けれども互いが、互いを信用して戦っている。
その友情を、自分が邪魔してはいけない。
多少無理をすることにはなるが、ジララの分まで、自分が戦おうではないか。
「アサシンマジック、影分身!」
幸いなことに光がある。
自分を数人に増やし、戦力を増大した。
力を集中させる。
早めに決めなくては、自分まで使い物にならなくなってしまう。
正当防衛派が、猛攻撃を開始した瞬間だった。
頭上から、生物兵器に混じって、丸い球が落ちてくる。
それを最初に発見したのはジララ。
その球の落下地点には、沢山の金属片や鉄パイプなどがある。
ジララはもう一度上を見上げる。
もしこれが、爆弾などの起爆兵器だったら・・・
「全員!退避しろ!!」
その一言に、高みの青年は笑った。
光が溢れ、その物質は床にぶつかる。
その衝撃に、世界が揺れた。
「!!」
「!?」
ガルルたちはすぐに身を低くし、地に伏せる。
しかし一般兵もまだ残っている。
ジララはそれらの前に立ち、出来るだけの被害を抑えようと印を組む。
しかしその爆発は、予想以上に強烈だったのだ。
地面に落ちていたその金属は軽かったが、決して柔らかいものではなかった。
爆発の衝撃により意図的に凶器と化したそれは、多勢でジララへと向かう。
軽い素材は簡単に飛び、けれども防ぐことは出来ない強度を誇る。
「っ・・・!」
一本の棒が、ジララの右腕を突き刺した。
痛みを忘れる程の衝撃。
いや、痛感なんてものは、そもそも後回しにされていた。
「ジララ!!」
カゲゲの声に、頭では応じることが出来るが、とるべき行動がとれない。
自然の力にあらがえず、流されるだけの身体を制御出来なかった。
棒の突き刺さった腕と共に吹き飛ばされた身体は、肩が千切れる直前に、壁に叩き付けられて止まる。
突き抜けてはくれないところが、非情なことだ。
とんだ場面で、腕の武装がが仇になる。
筋肉が硬直し、腕はますます抜き辛くなり、挙句、追い討ちをかけるようにして、様々な角度から壁に腕を縫い付けられた。
「ぐっ・・・あ・・・」
数本に増えた棒を直視せずに、ジララは呻く。
どうやら自分は、見物人に成り下げられたようだ。
「ハハハ、どうだい?壁に貼り付けられる気分は。」
不覚。
ついつい防御を怠ってしまった。
青年の冷たい声に、ジララは唇を噛む。
いっそ殺された方が楽だと目を細めたジララの前に、長いマフラーがなびいた。
「黙れクソガキが。」
小さな身体にそぐわない低い声。
後ろ姿からでも、その瞳が相手を睨みつけていることが分かった。
しかし、その姿をジララは知らない。
「カゲゲ・・・」
確かに、その人なのだが。
「ふざけるのも大概にしろ。一人貼り付けた位で、勝った気になっているのか?」
「・・・喧嘩を売られているようだな・・・その男がやられたのがそんなに悔しいか・・・!」
空気が張りつめる。
カゲゲが戦闘モードに入ったのだと分かった。
衝動的に前へ進もうとするジララを、腕の痛みが引き留める。
痛みの中には、苛立ちも憎しみも、全てが詰め込んであった。
「・・・、クソッ・・・」
カゲゲの影の技は、ジララと同等、またはそれ以上だった。
だからジララは、自分の敵わない相手にカゲゲが敵わないとまでは思わない。
しかし、状況が悪すぎた。
「カゲゲ!退け!」
叫んだジララを、ガルルもシャインもも凝視する。
切迫詰まった表情には、本気の心配と悔しさが滲み出ていた。
二人を助太刀したい。けれどもジララの所に行くには、あまりにも危険過ぎた。
「悪ぃ、ジララ。」
隣で呟いたシャインが、走りだした。
カゲゲのフォローに入る。
それぞれが負傷しており、とてもではないが100%の力を出せそうにはない。
けれども一番の重傷を負ったジララを助けるよりは、即戦力に加わる方が効率がよかった。
「シャイン先輩・・・」
苦渋の選択。
ジララにとって、あの場に貼り付けられていることがどんなに辛いことか。
それをわかっていて尚、シャインはカゲゲのフォローを優先させた。
自分もその選択に従うべきだ。
ガルルはそう思いつつも、踏み出せずにいた。
横目でジララを見る。
突き刺さった金属から壁を伝い滴る血。
恐らく解放されれば、彼はすぐに戦力に加わることだろう。
それが出来る人なのに・・・
奥歯を噛み締めれば、その苦悩は一層苦味を増した。
同じ頃、ジララは思う。
目の前で本気を出して戦うカゲゲは、まだあの目をしているだろうか。
まるで昔のように、憎しみを燃やしながら。
それなら自分は、何をしているのだろう。
比較的平和な日々の中にあって、こんな腕になってまで平和ボケを貫き徹して、
それで、どうするのだ?
何を助けられるというのだ。
今だって、昔よりもずっと弱い。
それでは駄目なのだ。
今、戦わなくてはいけない。
今、彼の所に行かなければいけない。
だから、ジララは顔を上げた。
「ガルル。」
最低限、相手にだけ聞こえる声で、
唯一味方をしてくれそうな、プライドの高い男に、
「この腕、切り離してくれ。」
あっさりと、まるで髪でも切るかのように、
痛みも何も、もう興味など無かった。
「な、何を・・・」
「肩は殆ど千切れかけてる。出ている骨を射ち砕いてくれればいい。」
ガルルは自身の手に収まる、小さなハンドガンを握りしめた。
変な汗が伝う。
何を言っているのだ?この人は。
「自分では抜けそうにない。抜けたところで、使い物にならないしな。」
右腕に力を込めたのか、血が噴き出した。
「だからって、そんな・・・」
そんなことをしても、仕方ないのに?
「お前にだから頼むんだ。」
「・・・!」
「お前は俺が嫌いだろう?躊躇うことはない。確実にぶっぱなしてくれ。お前の腕を信じる。」
あぁ、そんなことを信じられても困る。
それに自分は、きっと彼が思うよりもずっと、遥かに前から、
彼が、好きだったと思う。
「・・・」
だからこそ、意を決して両手を構えた。
自分にしか出来ない。
今、もし彼が死んだとしても・・・いや、死なないという、自信があった。
他人に対する自信なんて可笑しいけれど、それくらい、やっぱり自分は、彼の味方なのだ。
それでも手が震える。
目の前の男は仇。
いつの間にか、友。
けれどもジッと見つめられた瞳の間にあるものは、きっと、もっと大きかった。
―バンッ
その空気の揺れる音に、シャインとカゲゲは一瞬動きを停止した。
「ガルル・・・!何を・・・!!」
無言でジララに銃を向けているガルル。
一発目は、肩の骨の中心を強打し、多方面へのひびを入れた。
「ガルル!?どうして!」
「黙ってください!!」
早くもう一発目を打ち込んでやりたいのだ。
その気迫に、カゲゲは目を丸くした。
シャインはハッとしてジララを見たが、その口元が笑みを作っていることに気が付き・・・そっと一歩、後ずさる。
そしてガルルには不思議ともう、恐怖や躊躇いはなかった。
ジララが苦しむ声を発しないことで、手の震えも止まった。
焦点を合わせる。
「・・・!やらせるな!!」
―バンッ
―ブチッ
青年の声と、二発目の銃声と、不吉な音が同時だった。
血が溢れ出したジララの元に、沢山の兵器たちが襲い掛かる。
ジララは一瞬バランスを失いよろめいたが、瞬時に異空間から大きな手裏剣を取り出し、勢いをつけて、投げる。
気味の悪い断末魔と、奇声が聞こえる。
ジララは自己の血の匂いに、陶酔していた。
久々の多流血。
これが、戦闘を煽る。
「ジララっ!」
駆けつけたい。
けれども敵の数が多すぎる。
大きな手裏剣が何枚も怪物たちをなぎ倒し、ジララを前に進めていく。
左手の爪は鋭く光り、目はいつの時代よりも凶暴に光り、狂気に揺れ、
いつのまにやら張り巡らされていた赤い蜘蛛の糸で、兵器たちは天井へと積み重なっていくばかりだった。
やっと一旦武器を下げることの出来た一同は、ジララへ駆け寄ろうと一歩踏み出す。
「ジララ!止血・・・」
シャインの声が、聞こえていないようだった。
どんどん歩を進め、右手を失い、骨を剥き出し、血だらけの姿で尚歩く兵士の姿に、青年は震えた。
「な、く、来るな・・・・来るなぁぁぁ!!!」
左手で振りかぶったクナイが、青年の喉を突き破った。
「・・・」
「・・・」
その様子を、三人は見つめていた。
彼は殺してもいいと、上から許可は下りていた。
ただし大佐にだけは、出来るだけ生かして欲しいと頼まれていたのだが。
けれども手加減などしていれば、このままでは大佐のところにまで害が及んでいたかもしれない。
そう思うと、良いのか悪いのか、どうも判断つけ難い。
「ジララ!」
呆然とするシャインとカゲゲの横を、ガルルが走り抜けていった。
上着をジララの右手に被せ、今更ながらではあるが、精一杯の止血をする。
今生きているのなら、なんとか命は繋げるだろう。
アサシンというのは、G並みの精神力を持っているものだ。
その後、ジララを臨時医務室に連れて行き、大佐の安否も確認できた。
千切れた右手も回収して、なんとか元の腕には戻せるそうだ。
ホッとしたガルルは、治療を待つジララの横に座り、溜息をつく。
ジララの右手はしっかりと止血されており、本人の意識もはっきりするよう、薬も投与済みだ。
先程の血まみれな様子が嘘のような澄ました顔で、ボーっと足元を見つめている。
「あの。」
「ん?」
律儀に首をこちら側に向けて、ジララはガルルに応じた。
すっかりいつもの彼だ。
「何故あの時・・・腕を切る決断を?」
正直、話題提供のようなものだった。
話を始めるための切り口。
けれどもそこから予想外の言葉が返ってきたものだから、ガルルは唖然としてしまう。
「何故って・・・じゃあお前だったら、切らなかったか?」
確かにそう聞かれれば、少し考える問題ではある。
「考えてみろ。」
また下を向いて、ジララは呟く。
「自分は動けない。右手は使い物にならない。目の前では・・・そうだな、ゾルルがブチギレて暴れまわってる。」
「・・・」
「戦闘の枠から外れて第三者になってみるとな、冷静に見えるんだ。こうすればいいのに、ああすればいいのに、とな。」
「そういうもの、ですか?」
ガルルは眉をしかめる。
彼は常に冷静だ。慌てず、騒がず、頭で考える。
「そういうものだ。さて、それでだな、自分なら、今なら出来ると思うんだ。あの生意気なガキの首を刺し通せると。」
あの行為に、躊躇いは無かった。
「なんにせよまず、右腕が邪魔だ。そこに・・・」
ニヤリと、ジララは笑った。
「『俺が』いる。」
「貴方が?」
「そうしたら、どうする。」
随分と限定された場面だ。とは思った。
けれども実際彼はその場面に直面していたわけだし、自分はそれに少なからず共感していたわけだし、
そうなるとやはり、自分も選ぶのだろう。彼と同じ道を。
「苦にはならん。死なないことくらい分かっているからな。痛覚なんて麻痺してしまった。」
どこか寂しげなその言葉に、ガルルは同情することが出来なかった。
「それは、貴方が選んだ道でしょう。」
自分から選び、自分が創り出した道だ。
ジララだってそんなことは分かっている。
だから、自嘲気味に笑ってみせた。
「でも今回ばかりは、よかったです。それで。」
続いたガルルの言葉に、顔を上げる。
「痛みで決断が遅れることもある。G並みの生命力は、有効活用すべきです。」
ガルルは笑った。
よかった。彼が死ななくて。
そう思ったのだ。
そんな楽しそうなガルルの様子に、ジララはしばし呆然とした後、不思議そうに口を開いた。
「・・・お前、結構俺のこと好きか?」
「は。」
突然のことに、ガルルは反応が追いつかなかった。
心を読まれた?いや、違う。それよりももっと曖昧な問いだった。
「な、な、何を言っているんですか!少なくともGよりは好き寄りですが・・・」
「Gは俺の中で最低ランクだが、それより上というのは結構希望があるな。期待しておくぞ。」
その言葉に、ガルルは頭が爆発するほど赤面した。
希望がある。期待しておく。
あたかも自分に好意を寄せて欲しいかのような、安易な発言。
またどうせからかっているに決まっている。
そう思うのに、熱い頬。
今度は、ジララが楽しそうに笑った。
「他人からの好意を嫌う奴はいないだろう。それを求めるも然り。別に特別な意味は無い。」
「わ、わかっています!そんなこと・・・」
俯いたガルルに、ジララは目を細めた。
この後輩を、自分は割と気にいっている。
何より、自分を嫌いだと大々的に述べてくれたから。
裏表の無い性格。
けれども上下関係は、しっかりと保っている。
「お前がやってくれてよかった。」
「・・・腕を、切り離す作業ですか?」
「あぁ。シャインに頼んでもやってはくれたと思うが・・・お前のほうが安心できるな。」
どういうことだ、それは。
顔をしかめた。
ジララは優しい表情で、そんなガルルの頭を撫でる。
「ちょ、なんですか。やめてください。」
「いやぁ、面白いと思ってな。」
「からかわないでくださいよ!!」
その言葉に、ガルルは心外そうに眉をひそめた。
「面白いは最高の褒め言葉だ。」
「なんですかそれ!!」
手をのけようと、ガルルは抵抗する。
それを面白がったジララは、更にぐちゃぐちゃと頭を撫でた。
「あー、もう!やめてくださいってば!!」
「お。」
ジララを押しのけたガルルは、忘れていた。
彼の右腕が無いことを。
「うわっと!」
身体を支える腕の無いジララは、ガルルの体重を受け、横向きに倒れる。
釣られそうになったガルルは、自身の右手でかろうじて体勢を保った。
「どれだけ腹筋弱いんですか!!」
「腹筋が無いんじゃない。体勢を保つ気がなかっただけだ。」
「ハァ!?」
意味が分からない。
「起こせ。」
「いや、自分で起きればいいじゃないですか。」
連れないガルルに悲しそうな(ガルルにはそう見えた)目をして、ジララは自力で起き上がろうとした。
途端、いきなり倒れたジララに、ガルルは慌てて立ち上がる。
「!?」
「っ、すまない。肩に力が入った。」
包帯の下から、血が滲みだしてくる。
応急で施した処置が甘かったのだろう。いや、安静にするべきだったところをふざけた彼が悪い。
「何をしているんですか!あーもぅ。」
手を差し伸べたガルルに、ジララは一瞬虚を突かれたような顔をして、それから微笑んで手をとった。
少ない力で起き上がる。
立ち上がったガルルが強い力で引っ張ったのだから、それはそうだろう。
「助かった。」
「馬鹿ですか。早く手当てしてください!」
「分かった分かった。」
立ち上がったジララは、高い目線でガルルを見下ろす。
ガルルのムスッとした表情を見て、笑った。
「そんなに心配するな。」
「これが心配しているように見えるんですか?」
そうにしか見えないが。
ジララは更に盛大に笑う。
こういう笑い方をすることは少ない。
あぁ、楽しい。
「今日は色々と礼を言いたいことがあるな。」
「今更でしょう。」
「とりあえず今は・・・」
顔を背けていたガルルの頭を掴み、抱き寄せた。
ガルルの目が丸く見開かれる。
「感謝半分だ。両手が揃ったら、また礼をしに行こう。」
そう言って、背を向けた。
スタスタと歩くその上機嫌な背中を蹴り飛ばすことも出来ず、ただ熱い頬と頭をどうにかしなくては、と、
ガルルは逆方向の洗面所へと走った。

そんなお礼、欲しいとか思ってない!


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タイトル軽っ!(笑
まぁ、すぐに直るんですけど^^;
技術が進歩したり、便利になったりすると、物の有り難味ってなくなりますね。
それにしても最後の台詞はなんだろう。

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