小指ほどの鉛筆

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・意味のない存在理由に吐き気がした。(カゲ→ジラ×大←シャ)

2009年03月16日 16時19分02秒 | ☆小説倉庫(↓達)
最近、ジララはよく大佐のところへ行く。
それがどうしてなのかは分からない。
なにやら聞きたいことや言いたいことがあるそうなのだが・・・
その言葉すら、信用なんて出来なくなっていた。
「ジララもそうだが、大佐も大佐だ。」
数度、ジララについていったことがある。
別に嫌な顔もされなかったし、問題があるわけでもないようだったから。
けれども大佐の執務室に入ってしばらくすると、徐々にに気まずい気分になった。
ジララと大佐の仲が、異常なほどに良いのだ。
仕事をする大佐の顔は和んでいて、ジララの表情も優しげだった。
「なんなんだ、あいつ等は・・・」
自分の知らない彼らの過去があることは分かっている。
それでも、ジララが自分を差し置いて誰かと仲良くしている様子を見るのは耐えられなかった。
大佐が仕事をしているデスクに腕を置き、もたれかかるようにして話をするジララは、楽しそうだった。
互いが心を許しているように見えて・・・
そのときは思わず、部屋を飛び出してしまったのだが。
そのことについて、後でジララに問われることも無かった。
正直、羨ましい。
大佐とジララの関係が、とても羨ましい。
「あーぁ・・・私はいったい何を・・・」
考え込みながら通路を歩く。
すれ違う人も殆どいない。
向かうは大佐の執務室。
少し挑戦してみようと思ったのだ。
彼らの様子をもっとよく観察して、考えてみようと。
自分になくて大佐にある、ジララにとって麗しい特質。
全てにおいてそう見えるかもしれないが、考えなくては何も始まらない。
意を決して、扉の前に立った。
この瞬間が一番緊張する。
「・・・」
扉を開ける。
その中に居る2人と目を合わせる・・・はずだった。
「あれ?」
しかし部屋の中には誰もいなかった。
扉の鍵は閉めていないというのに、なぜ?
デスクまで歩み寄れば、置いてあるのはいつもの資料と仕事の山。
もしかしたら、また大佐は脱走したのかもしれない。
ジララはそれを追いかけている・・・と。
それは都合の良い推理だろうか。
「どこへ行ったんだ・・・?」
窓辺へ歩み寄る。
大佐の執務室からは中庭の様子が見える。
もしかしたら彼らが見えるかもしれない、と。
そう思ったのだ。
「ぁ。」
思ったとおり、彼らはそこにいた。
この時間は兵士達も訓練に赴いている時間で、2人の姿しか見受けられない。
何を話しているのかは読唇術で読み取れる。
けれどもあえてそれをしない自分は、臆病者なのだろう。
大佐の表情は笑っているようで、実はそうじゃない。
それに対してジララの表情は・・・真剣だった。
和やかな話ではないことくらい、見て分かる。
ドキドキしながら、2人を見届ける。
やがて、大佐の表情が少しだけ和んだ。
ジララの言った一言が大佐を安心させたのだと、そう思うと少しだけ悔しかった。
ジララは大佐の顔を和ませることが出来る。
けれどもどうだろう。
ここでこうして外を眺める自分を、アイツは笑わせることが出来るだろうか。
この気持ちを落ち着かせることが、今のアイツに出来るのだろうか。
「ジララめ・・・」
なんだかどっちを恨めば良いのかも分からず、カゲゲは溜息をついた。
イライラする。
嫉妬したってどうしようもならないことなのに。
もしも今、大佐と自分の立場が変わったとしても・・・
きっと自分は、アイツを満足させることも出来ないのだろうから。
「良い天気だなぁ~」
「あぁ、本当に・・・って、ぇ?」
突然聞こえた声の主は、カゲゲと同じように窓の外を眺めて笑った。
「シャイン・・・!?」
「こんな日は、外に出るのが一番だよな。」
同意を求めるように、シャインはカゲゲを見て首をかしげた。
カゲゲは困惑の表情を隠せない。
彼は外を見ている。
太陽が地上を明るく照らす様子を見て、微笑んでいる。
けれどももっと見るべきところがあるだろう。
「ジララと大佐が外にいるぞ・・・?」
そう言うと、シャインは困ったように笑って、それからジッと彼らを見た。
何か文句でも言うだろうか。
それとも、いつもの調子で大佐のところまで駆けて行くだろうか。
けれども彼は、そのどちらのアクションもとらなかった。
「あぁ、仲良いからなぁ~あいつ等。」
そんなことは分かっている。
見れば分かる。
そうじゃない。
それでいいのか。二人が一緒にいて、それでいいのか。
それが聞きたいのだ。
「貴様は良いのか!?アイツ等があんなふうに笑っていても!!」
苛立ちを隠せないカゲゲは、思わず声を荒げる。
どうして冷静でいられるのだろうか。
大佐を好きでいるというのは、見せ掛けだけなのか?
違うだろう。
どうして、大佐がジララに流れないという確信が持てるのだ。
あんなに楽しそうにしている2人を見て、何故笑っていられる?
「貴様は大佐が好きではないのか!?」
「勘違いするなよ。」
カゲゲのとどめの一言に、シャインは重く口を開いた。
いつもの彼とは思えないような、低い声でカゲゲを否定する。
「俺は大佐が好きなんであって、束縛していたいわけじゃない。もちろん、出来ることならそうしたいけどな。」
けれども大佐は、それを望んでいないから。
自分よりも、大佐の幸せを願ってあげたいから。
だから・・・
「じゃあ貴様は、大佐がジララにとられても良いわけだな?」
「俺は、アイツの全てを満たせるわけじゃないからな・・・」
太陽のような笑みは、真剣な表情に変わる。
「でも、俺は大佐をとられる気は更々無いぜ?」
「何所からそんな自信が・・・」
「俺が一番、アイツを好きでいるんだからな。アイツはそれを知ってる。」
つまりは、信頼しているのだ。
互いを。
それに対してどちらかがもどかしさを感じてしまったら、終わり。
もちろん嫉妬だって可愛いけれど。
けれどもやっぱり、この関係に耐えることが幸せなのだ。
「ま、今は俺の出番じゃない。」
「?」
「俺はアイツの、孤独と笑顔のためにいるんだ。他に足りない物があっても、それを満たすのは俺じゃない。」
自分の役目を忘れてはいけない。
いつかは前進したいと思うけれど・・・
今はまだ、大佐の心の準備が出来ていないだろうから。
見守っている。
ゆっくりで良いと、そう言ったのは自分じゃないか。
「・・・そうか。」
カゲゲは初めて、隣にいるこの男の強さを見た気がした。
例え大佐がジララと親しく話していたとしても、彼は無意味な嫉妬をしたりはしない。
それはきっと、彼が自分の役割を理解しているからなのだ。
大佐に対する自分の役割。存在理由。
ジララだって、それをきちんとわきまえている。
では、自分は?
自分はジララに対して、いったいどんな想いで向き合っているのだろう。
彼の何になろうとしているのだろう。
親友?恋人?
むしろその、意味の無い存在理由に吐き気がした。
自分はただの我侭だ。
彼等が互いを尊重しあって、守りあっている間に、自分は何を考えているのだろう。
「私は、ジララに何が出来るだろうか・・・」
相変わらず楽しそうな2人を見つめて、カゲゲは呟く。
自分はどうすればいいのだろう。
ジララに足りないものは、なんだろう。
大佐に出来ないことをすることが出来るだろうか。
「笑ってりゃ良いんじゃねぇのか?」
隣にいるシャインは、いつの間にかその笑顔を取り戻し、カゲゲを見ていた。
「いつも通り、アイツに尽くそうと一生懸命になってりゃいい。」
きっとジララだって、満更でもないだろうから。
好きな人が笑顔でいられることほど、嬉しいことはないだろう?
「ま、いつかアイツ等が嫉妬してくれるのを楽しみにしよーぜ。なっ!」
「・・・そうだな。」
笑顔
それがどれほどの効力を持っているのか、自分は知っている。
いつか意中の人が微笑み返してくれることを夢見て・・・
今、そっと微笑を作る・・・―

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