小指ほどの鉛筆

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316.もしかしてもしかすると…(グラシャ(シャイン女体化))2

2011年01月07日 22時53分11秒 | ☆小説倉庫(↓達)
「ところで、これ、今度はいつ戻んだよ。」
スカートをひらひらさせて、いつもより小さくなったシャインが首を傾げる。
傍から見れば可愛い女子高生とでもいったところだろうか。
しかし中身は、いや、今でも年齢が30代であることは変わらない。
そんなシャインに、大佐はクルルから送られてきたメールをそのまま読み上げて聞かせた。
「[改良版のこのアイテムは、効果が未知数。そっちが急に頼んできたから仕方なく送ってやったんだぜ?つまり、俺は悪くないってこった。]だそうだよ。」
「そんなことだろうと思った・・・。」
シャインが落胆した様子を見せると、ジララがその頭を撫でて慰めた。
そんな優しいジララに抱きつくようにして、シャインは癒しを求める。父親と娘、とまではいかないが、歳の離れた兄と妹のようには見えなくもない。
そんな二人を見つめるグララを一緒に視界に納めれば、どこか事情のありそうな家族にも、見えなくはなかった。
「あー、ジララ慰めてー。」
「よしよし。」
「う~・・・っつーことは、本番やり過ごしてもこのままって可能性もあるわけだよな?」
ジララの顔を不安げに見つめたシャインは、更に眉を下げる。
「周りの奴らへの説明どうしよう・・・」
「それより心配なのは、本番よりも早く戻った場合だね。もう一回これを撃たなきゃいけない。もしくは、本番途中に戻った場合。これは最悪の事態だけど。」
あくまでも行事の心配をする大佐に、シャインは瞳を潤ませた。
何が悲しいって、仮にも恋人である自分が、こんな扱いを受けていることだ。
と、そこでシャインはふと考えてしまった。
自分は今、女としてここに存在している。では、それでも大佐の恋人としていられるか?
・・・無理なのだ。
「っ!」
「どうした?シャイン。」
シャインの動揺を腕に感じ、ジララは視線を下げる。
なんでもないと小さく呟いたその口元が固く結ばれたのを見て、なんでもないわけではない事を悟った。
しかしそんなジララに不安を告げることはなく、シャインは頭の中で最悪の状況を呪う。
今の自分では、大佐に愛されることはないのだ。
それはなぜか。大佐には、死して尚永遠の愛を誓う一人の女性がいるからだ。
大佐は彼女を裏切ることはない。愛すべきただ一人の女性として、その姿は今も心に刻まれている。
代わりに、自分は男として愛されていた。
愛するのではなく、愛された代償としてそれを受け入れることを許可した、彼にとって自分はいわば補欠の人間だ。
女性になってしまった今は、自分は大佐の恋愛対象としては受け入れられない。
それは彼女を裏切ることになってしまうから。
「とりあえず、効果が都合のいい時に切れることを祈っているよ。コーディネートはジララ宜しく。」
そう言って立ち上がった大佐は、一度だけシャインのことを見て、少し寂しげに微笑んだ。
それがどういう意味なのか、それは分からない。
ただ、その意味が別れを意味してはいない事だけを祈って、シャインは顔を上げる。
仕事場であるはずの執務室から出て行った大佐の背を見送って、なんだかやりきれない気持ちになった。
「まったく大佐は・・・」
頭上から、ジララのため息交じりの声が聞こえた。
「自分が仕組んだ結果だというのに、随分とつまらなそうだったな。」
「前回の仕返しも含めて、もう少し楽しむものかと思っていましたが・・・」
ガルルの声も加わる。
続いて、グララの声も。
「なんかやっちまったって感じの雰囲気だったな。んなにこのガキの見た目が気にくわなかったか・・・」
「胸見んな馬鹿!!」
グララの視線に、シャインがぎゃんと吠えた。
大きいか小さいかと聞かれれば、9割が小さいと答えるだろう胸のサイズが、グララは少々不満だった。
「俺はDくらいが好きなんだけどなぁ。」
「知るかっ!動きやすくて最っ高だし!!」
「おーおー、強がりも随分とキュートになったじゃねぇか。」
ケラケラと笑ったグララに、シャインは一瞬言葉に詰まる。
キュート、つまりは、可愛いと言いたいのか。
「女だったら誰でもキュートかよ。随分と軽いんだなっ。」
「んなことねぇぞ?男でも、カゲちゃんはベリーキュートだ。」
その一言に、いつもならぶっつりと切れるシャインの精神が、揺らいだ。
「・・・誰でもいいのかよ。つーかカゲゲは今の俺より可愛いのか。」
「そういうわけじゃねぇけど、まぁカゲちゃんは可愛いよな・・・って、なんか様子おかしくねぇか?」
グララが、少しからかい過ぎたかとジララを見る。
ジララよりも先に目が合ってしまったシャインのその大きな瞳に、ぎくりとした。
いつもならつっかかってくるだろう動作はない。
喧嘩腰になれば必ずと言っていいほど籠る殺気もなく、代わりにその瞳には、不安が詰まっていた。
「お、おい・・・」
「んだよ、調子出ねぇし・・・なんか俺おかしいしっ。そういや大佐も前にこんなんだったな・・・やっぱ性格とか、ちょっと変わんのかも。」
そんな言い訳をしながら、シャインはジララから少し離れて立った。
グララをキッと睨みつけてから、後ろを向いて立ち去る。
扉が閉まってから、ジララは呆気にとられたグララを呼び戻した。
「おい。」
「ん、ん?なんだ?」
動揺しているグララに、更に追い打ちをかける言葉をかける。
「アイツ、多分お前のことが好きなんだと思うが。」
その言葉に、ガルルやカゲゲも固まった。
ゾルルはグララを見る。アサシンにしては分かりやすい冷や汗をかいていた。
「・・・は。それは・・・お前にしてはいいジョークだと、思う、ぜ?」
「本気でそう言っているのか、現実から逃げているのか、どちらだ。」
ぴしゃりと打ち付ける現実。
ジララは厳しい。
「・・・正直逃げてる。」
目をそむけたって、追いかけてくる視線にはかなわない。
「逃げるな。」
「だってよぉ、うっかり俺がアイツとラブロマンス的な展開になってみろ。戻った後が怖ぇよ。考えたくもねぇよ。」
「誰もそうなれとは言っていないだろう。とりあえず、アイツを混乱させるようなことはしないように心がけることが、俺たちの今できることだと思うんだが?」
ジララの正論に、ガルルは驚きから解放されて頷いた。
その通りだ。シャインは今、新しい性別に混乱している。
身体と頭が繋がらないのだろう。
急激に変化がやってくるかもしれない。けれどもそれに慣れるしかないのだから、そのために自分たちが出来ることは、できる限り刺激を与えないこと。
全くもってその通りなのだった。
「ジララの言うとおりです。」
「私もそう思うぞ。よく分からないが、今はよほど不安定なんだろう。」
そうでなければ、グララに恋心など抱くまいと、カゲゲは何気に酷いことを言ってグララを落ち込ませた。
それを弁解するでもなく、ジララも続く。
「そうだな。だから、できるだけ強力してくれるとうれしい。」
「もちろんだ!」
「俺、にも・・・できること、なら・・・」
「私ももちろん協力しますよ。」
「ちょ、俺へのフォローとかねぇのかよ。」
非、恋愛対象としてしか見られない自分に、グララは切なさと敗北感を感じていた。

「おかしい。絶対におかしいっ!」
シャインは自室の扉を閉めると、立ったままの反省会を開いた。
執務室を後にしてから、シャインは知り合いなどに状況を説明しに歩いていた。
大半の人間は予想通りこれを笑い話にし、残りの少数の人間は、少しばかり同情してくれた。
それはよかったのだ。
しかし、問題はその後に起こった。その場にいた女子たちが、恋の話題を向けて来たのだ。
いつも一緒にいるメンバーに、恋心などは抱かないのか、と。
迷うことなく大佐と答えた。そしてそれさえも、笑い話として済まされた。
しかし、愛されない悲しみと共に浮かんだのは、一番嫌いであったはずの男の顔だったのだ。
「グララ、とか・・・ねぇよ。」
ありえないと自分に言い聞かせる。
それはいくらなんでも混乱しすぎではないか、と。
しかし、考えれば考えるほど胸の鼓動はうるさく響き、撫でられた頭がじんわりとくすぐったい。
おかしいのだ。
いや、素直になれば答えは簡単だ。
しかし、認めるのか?
あれほど嫌いだと言ってきた男を、まさか。
「もしかして、もしかしなくとも、これは・・・恋してる、ってやつか?」
そんなの、初恋以来だから。
感覚なんて久しくて忘れてしまったけれど、確かにこれは、懐かしい恋の響き。
胸を打つリズム。脳裏をよぎるイメージ。否定のしようがない。
シャインはドアの前にへたり込み、両手で顔を覆った。
一人で恥ずかしがっているなんて、なんてみっともないんだろうか。
けれどもどうしても、思い出さずにはいられない。
会いたくて仕方がなくて、もともと攻め気質の身体が、心が、狂おしく彼を求めていた。
それから数分が経っただろうか。
息を深く吸ったシャインは、勢いをつけて立ち上がった。
そしてまた、扉を出て歩きはじめる。
滅多に行かない、アサシンの寮がある危険ゾーン付近へ。
まだ紅潮したままの頬を冷ますかのように、少し強く風をきって歩いた。
そうして、一つの扉の前に立ち、勢いよく開ける。
「おじゃまします!」
開いてしまったことへの驚きと、期待と、不安と。
「・・・何しに来たんだよ・・・」
豆鉄砲でも喰らったかのような顔をしたグララへの、愛しさと、戸惑いと。
「お前に会いにきたの。」
そのすべてを、大事に大事に抱きしめて。
どうせいつかは消える恋を、今、精一杯育ててみようかと目論んだ。
「なんでまた。」
「・・・単刀直入に言うぞ。」
後ろ手にドアを閉め、鍵を閉める。
鍵の閉まった音に、グララが動揺したのが分かった。
「いや、言うな。何も言うな。」
さっきまで読んでいたらしい本を机に置き、立ち上がって両手を振る。
何も言うな、と。そう言われては余計に鬱憤が溜まるではないか。
「俺、今女っしょ?」
「そうだな・・・」
「そんで、陽子って偽名つけようと思うんだよな。ほら、コンテストで名前呼ばれんじゃん。あれでシャインは困るから。」
「そうだな。」
「そんで、陽子は世界で一番グララを愛しています。」
「んなっ・・・!ふ、不意打ちは卑怯だろっ!!!」
しかも、某野球漫画の台詞のように言うな。
「だって、そうじゃなきゃ聞いてくれそーになかったから。」
「なんだってんだいきなりっ!新手の嫌がらせか!!」
シャインはムッとしてグララに歩み寄る。
グララは数歩後ずさったが、どうせ逃げてもここは自分の部屋。逃げ場所なんてない。
閉められた鍵を開けて逃げるにはリスクも高いし、どうしようもなく立ち止まった。
頭を下に向けなければ見えないほど小さい身体と、縮まった距離。
グララはジララの言葉を思い出す。
混乱させるようなことをしないように、とは言われても、向こうが混乱を招いてきた場合はどうすればいいのだ。
全力で回避するべきか?それとも、好きなようにさせるべきか?
「俺がお前のこと好きじゃ、だめか?」
「・・・あと1か月して同じ言葉が言えたら、認めてやらなくもねぇけどな。」
冷静な言葉に、シャインの胸中がざわついた。
この冷静さが気にくわない。大人びていて、全てを悟ったかのような物言いや、余裕のある言動が嫌いだ。
もっと、激しい感情が見たい。
自分自身が、かつてない感情に戸惑っていることも確かだ。けれども、少し前の自分を振り返ってもなお、その感情を改める気にはならなかった。
以前の、男の自分に戻りたい、と思えない。
いよいよ重傷であることは事実で、けれども今、誰からも愛してはもらえず、しかしすぐに戻ることも叶わないこの姿で、何を求めるかと聞かれれば、
この男以外の誰をも、自分は想像できなくなってしまったのだから。
「そんな先のことなんてどーでもいい。俺は、今の、この俺の気持ちを第一に考えてほしいんだけど。」
「俺は陽子ちゃんより、シャインのこと考えて言ってやってんだ。やめとけ。言ったこと全部後悔すんぞ。」
そんな分かりきったことを言われて、今更そうですかと頷けるわけもなく。
シャインは両手を命一杯伸ばして、困り顔のグララに抱きついた。
一瞬だけ、息の止まる感覚がした。
戦場に赴いたばかりのころの、あの緊張感にも似ている。
けれどもそれよりもっと優しい。その腕が更に自分を包んでくれれば、もっと優しいのに。
「おい、やめろっての。」
「じゃあ、力尽くで引き剥がしてみろよ。」
優しさをくれないなら、もっと荒々しい感情でもいい。
何も出来ないでいるグララを笑うようにして、上を向いた。
「できないんだ?」
「・・・」
あぁ、バカみたいだ。優しすぎて、物足りない。
「なんでそんなサングラスなんてしてんの。」
彼のトレードマークであるそれに、手を伸ばした。
しかしその手はやんわりと掴まれる。
「何がしてぇんだよお前は。」
「・・・お前のこと愛したいの。」
「はぁ・・・またどーしてそういうことになったんだ?」
子供のイタズラの理由でも聞くかのように、その口は正論ばかりを述べる。
その性質は教え子であるジララにもしっかりと引き継がれていて、以前だったら感心したであろうその理屈も、今は邪魔なだけ。
ジララには教えていない、もっと感情的な面を見せて。
そうしたら自分は、今の自分は、少しは満足できそうな気がする。
そう思ったのだが。
きっとそれだけじゃ満足できない事も、予想はついているのだ。
だからこれはわがまま。ただのわがまま。
グララを困らせて、自分のペースに流れ込ませるための、一つの布石。
どうやら自分は本気らしい。
「慰めてほしーの。」
「何を。」
彼は理解をしていない。
大佐が、自分が、どうしてこんなに悲しいのか。
「大佐は、今の俺のこと愛してくんねーの。アイツ、女は決めた奴がいるから、俺、男じゃねぇとアイツと恋人になれねーの。」
同情してくれる?
笑ってしまう?
流されてくれる?
「・・・そりゃまた、残念だったな。もう少しの辛抱だろ?元に戻ったら、いつもよりヒートアップすりゃいい。そんくらいは許されんだろ。」
慰められた。
本当に、言った通りのことしかしてくれない。
サービス精神のかけらもありはしない。
どうして、どうして。
どうしてそんなに綺麗なの。アサシンのくせに。沢山の血を浴びてきたくせに。どうしてそんなに優しいの。残酷の代名詞だったくせに。
「信じらんねぇ。俺、女と二人でいてこんなに気のきかねぇ男初めて見たわ。」
「お前男だったろーが。」
「普通ありえねぇよ。もっと、こう、甘えさせてくれたりするもんだろっ。」
グララは少し考えてから、首を振った。
「ダメだな。今のお前は危なすぎる。俺のリスクが高ぇから、あんま甘えさせると調子に乗るって警告出てんだわ。」
なんて頑固な奴。
ただの変態エロ親父ではなかった。
むしろ、面白味のないくらいに真面目な奴。
それともこれも、自分だからなのか?他の女だったら、誘われるがままに流された?
もしそうだったら、殴ってやろう。
そう思った。
「何が危ねぇの?」
「んー、そうだなぁ、俺の読書時間が減る。」
「・・・つまんねー男。」
「面白がって来てんなら、さっさと帰れ。俺はガキと遊んでやれるほど出来た大人じゃねぇんだよ。」
シャインの身体が少し離れたのを見計らって、グララは数歩後ずさって距離をとる。
こういうところがぬかりない。
「面白がって来てるわけじゃねーよ!本気で・・・」
「それが余計性質悪ぃんだよ。ほら、帰れ帰れ。ジララにでも相手してもらえ。」
子供扱いも嫌い。
こっちはそっちを恋愛対象として見ているのに。
「やだ。今日は泊まる。」
「は?」
「いいっしょ?どうせ俺じゃドキドキもしないんだろーし。いてもいなくても変わんねーんだ。」
シャインはそっとグララの様子を窺う。もっと動揺するだろうか。
「・・・」
グララはぽかんと口を開けて、それから、呆れたように頭を振った。
ダメだ。全く相手にされていない。
「本気なんだぞ。」
「わかってるっつの。」
お前が冗談を言うような性格じゃないことくらい、知っている、と。
ちょっとだけキュンとするようなことを言われたりして。
ますますグララを好きになっている自分を見つけた。
いよいよまずい。男に戻っても、グララが好きだったらどうしようか。
そんな、今は幸せな心配なんてしたみたりもした。
そんなシャインをチラリと一瞬だけ見て、グララはポケットから携帯を取り出した。
電話をかける。
「俺と居るのに、誰に電話かけんだよ。」
「ジララ。」
自分を引っ張り出すためだとすぐにわかった。
「なんでだよっ!いーじゃんか!俺が良いって言ってんだから、お言葉に甘えて寝盗っちゃえばいいだろ!?」
「なーにマセたこと言ってんだ・・・あ、ジララか?」
電話に出たらしきジララに、事のあらましを伝えるグララ。
シャインは携帯を奪おうとしてぴょんぴょんと飛び跳ねてみるが、身長が足りない上に、容赦なく拒まれる。
「なーなー!いいだろ!?なんでダメなんだよ!」
「うっせーなお前は・・・ジララ聞こえるか?そー、これシャイン。・・・頼むぜー。」
「やーだー!帰んねーからな!なんで電話なんてすんだよ!バカ!」
電話を切って自分を見下すように立つグララに、シャインは上目づかいで恨み言を述べる。
けれども反応は冷たい。
「だってお前煩ぇんだもんよぉ・・・俺はもうちょっとおしとやかというか、清楚な感じが好みなんだよな。あと、Dカップは欲しい。」
「っ、それは仕方ねぇじゃんか!」
「そうだな。仕方ない。だから、お前と俺とは縁がなかったと思って諦めろ。」
コンコンと、ドアを叩く音がした。
「はいはーい。」
ドアを開けようと歩を進めたグララに抱きつく。
嫌だ。まだ二人でいたい。やりたいことがいっぱいあるんだ。
けれども体格差は歴然で。
男と女ではそれは仕方のないことではあるが、この時ばかりは、シャインも自分の元の性別の便利さを思い知った。
グララはひょいとシャインを持ち上げ、肩に担ぐ。
「!?おろせっ!馬鹿!!」
ドアを開けた先にいたのは、ジララ。
驚いているだろうことは見なくても分かる。
これでも親友の仲だ。
「本当にいたんだな・・・」
「俺が嘘つくと思うかぁ?」
「・・・いや。」
数秒考え込んでから、お世辞程度につぶやいた否定。
グララは苦笑してから、シャインをジララに押し付けた。
その間も、シャインはじたばたと暴れまわる。
その動きを器用に封じたり避けたりしながら、グララは慣れた様子で手を放した。
「一生恨むからなっ!夜這いしてやるっっ!!」
「そーゆーことはもっとグラマーなお姉さまになってからリベンジしろな。」
「バカっ!馬鹿真面目!本の虫ぃ!!」
「あー、褒め言葉だわ。」
グララが背を向けると、シャインはジララの腕を抜けようと暴れる。
しかしここは、脱走兵でもアサシンだったジララだ。
「シャイン。怒るぞ。」
少し腕に力を込めて、鋭く怒る。
するとシャインもシュンとなって落ち着いた。
「んじゃ、頼むわ。」
グララの部屋のドアが閉まると、シャインは今度はジララに抱きついた。
大変なことにここは軍内の通路だ。しかも宿舎の。
変な噂をたてられても困る。
しかしたった今フラれた仮にも女性を、無下には扱えない。
ジララはため息をついて、シャインを抱きかかえた。
グララがしたような色気もないような方法ではなく、きちんとしたお姫様抱っこで。
「ほら、部屋に戻るぞ。送っていく。」
「・・・恥ずかしいんだけど。」
「グララの部屋に乗り込んでおいてよく言う。」
通路を歩きながら会話を交わす。
シャインは少し落ち込んでいて。
しかしグララの前で見せていたような無邪気な女性のようではなく、どちらかと言えば男性よりのような、そんな表情。
人を選ぶ、ということか。
「フラれちった。」
「そうだな。」
「・・・怒ってるか?」
ジララの表情を窺いながら、シャインは心配そうにそう尋ねた。
通行人が、意味深な目で見てくる。
しかしジララもシャインも気にしない。
「何故だ?」
「いや、一応お前の先輩・・・?だし。」
「それで、どうして俺が怒る必要がある。」
「・・・お前、結構グラサンのこと好きなんじ「着いたぞ。」
その言葉は聞きたくないと、シャインを見るジララの目には拒絶がはっきりと表れていた。
だから、それ以上はタブー。
そうだ。今までだってそうしてきたじゃないか。知らないふりをして、その言動に憧れ以上のものがあることだって、見ないふりをしてきた。
今になって自分は、いったい何を言っているのだ。
嫉妬。まさしくその言葉がふさわしいと、シャインは頭で理解して混乱した。
「悪ぃ・・・」
「何がだ。ほら、降りろ。」
部屋の前に屈んだジララの、腕の中から脱出する。
鍵を開けて中に入るまで、しっかりと見届けてくれた。
もっともそれは、どこか監視にも近いものだった気もするが。
最後にシャインはドアを数センチだけ開け直して、ジララを見た。
いつも通りの表情。いつも通りの、自分を見る目。
ホッとして、微笑んだ。
「ありがとな。」
「あぁ。」
スタスタと通路を歩いていくグララの背を見送って、自室の扉を閉めた。
グララの部屋に行く前に、一度戻ってきた部屋。
そうしてまた、自分はここに戻ってきた。
「フラれちった。あーあ。」
グララの感情的な表情を見ることも、全てを隠しているあのサングラスを外すことも、何もかも出来なかった。
けれどもこれで、少しは自分の気も晴れた。
そうして、今の自分の気持ちも再確認した。
やはり自分は彼が気になるようだ。いや、気になるといったような、可愛い問題ではない。
もはや貪欲で邪な感情しか芽生えない。好き。大好き。愛してしまいたい。
彼なら、こんな自分も愛してくれるような気がした。実際には拒絶されてしまったが。
シャインは自分の両手を見てため息をついた。
しかし、彼はこの手であの一回り大きい身体を抱きしめることを、拒みはしなかったのだ。
甘い男だ。
そしてその甘さは、仇になる。
シャインは無邪気な笑みを浮かべて、両手を固く、ギュッと握った。


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まだ続きますよ!
終着点が見つからないっ!!><

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