小指ほどの鉛筆

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52 こんな寂しさ、今まで無かったはずなのに。(クルドロ) 51の続き。

2008年03月07日 20時40分06秒 | ☆小説倉庫(↓達)
「僕だって寂しいよ。」
恥ずかしそうな表情を見せたクルルに、そう告げる。
ドロロだって平気な顔をしていられるわけではない。
小雪と離れるのも、クルルと離れるのも、悲しくないわけが無いのだ。
「寂しくないわけが無いよ。僕だって・・・でも、今はまだ一緒に居られる。だから・・・今を大切にしたいと思うんだ。小雪殿と過ごす普通の日々を、クルル君と過ごす少し危険な日々を、今は楽しみたい。」
今自分が弱音を吐いたら、きっと二人は感情に押しつぶされてしまう。
そう思ったからこその、ドロロの精一杯の強がりだった。
「あぁ、分かってる・・・。別に俺は寂しいとか思ってねぇし。」
「本当に!?本当にまだ一緒に居られる!?」
「大丈夫、まだやっていないことがたくさんある。それに、小雪殿と同じ心配をしている人が近くにいっぱいいるんだよ。予想は大抵、裏切られるものでしょ?」
にっこりと微笑んでみる。
それは自分に言い聞かせるためでもあった。
あとどれくらいの時間が残っているのかも分からなかったし、自分が言った言葉に自身が持てるわけでもなかったが、ドロロに出来ることは、それが精一杯だった。
「そうだよね・・・うん、その通りだよ。ドロロ。」
今度こそ、本当の笑顔だった。
「まだ大丈夫。私もドロロと一緒に、後どのくらいか分からないけど、出来る限りを尽くすよっ!」
「ありがとう。」
「じゃ、もぅ帰らなきゃダメだよね。ドロロは今日はお夕飯どうする??」
「・・・ごめん、先に食べてて。」
ドロロはクルルをチラリと見てから、そう言った。
少し話したいことがある。
目が、そう物語っていた。
「わかった。昨日今日とごめんね。今度こそ、本当に大丈夫。ありがとう。クルルさんも。」
小雪はいつものように軽快な足取りで帰っていった。
その背中を見送り、ドロロはそっと微笑む。
大人びているとはいっても、彼女はまだ14歳。ドロロにとって見ればまだまだ子供だ。
「小雪殿には、いつでも笑顔でいて欲しいな。」
親心に似た、ドロロの心からの願い。
「アイツ、アンタのことが好きなんだろ。」
唐突にクルルがそう切り出した。
「どうしてそう思うの?」
「睦実との話、俺が聞いていないとでも思ってんのかよ。あの女。お前も聞いてたんだろ?」
「なんのこと?」
キョトンとするドロロに、クルルは詰め寄った。
「とぼけんな。あの女の様子がおかしいのにお前が平然としてられるわけねぇんだよ。どっかから監視してたんだろ?だからこそ、俺のラボにも来た。この時間帯にお前が来ることは滅多にねぇ。」
「そう?」
「あぁ。断言するぜ。」
「・・・」
ドロロを見るクルルの目は鋭く、真剣だった。
その赤い瞳にジッと睨まれたまま、ドロロは目を閉じた。
「敵わないな・・・クルル君には。」
「当たり前だろ。」
「どうして分かっちゃうんだろう。まだまだ修行が足りないかな。」
「いくら修行したって無駄だぜ。」
ドロロが目を開いて腕を組む。
「どうして?」
「俺が天才だから。」
クックック、と笑うクルルに、ドロロはポカンとしてしまった。
本当に捻くれた人だ。
自然と頬が緩んだ。
「小雪殿のこと、ありがとう。」
「別に、俺は何もしてねぇしな。」
「まさかクルル君のところに行くとは思わなかったから・・・ちょっとびっくりした。」
小雪がクルルのことを苦手だと思っていることをドロロはわかっていた。
タイプの違う二人のことだ、当たり前だろう。
「でね、クルル君に言いたいことがあるんだ。」
緩んだ表情を引き締める。
周りの空気を張り詰めたものに変え、クルルの意識を集中させるよう促した。
「・・・何だ?」
「僕は正式に、地球側に寝返る事にした。」
ドロロの口から発せられたのは衝撃的な、しかし今となっては自然な言葉だった。
クルルも平然としてその言葉を受け止める。
「今だってそんなもんだろ。」
「地球側に寝返るってことは、ケロン星には一切干渉しないってことだよ。もちろん軍からの指令も無視する。」
「・・・」
クルルが言葉を失った。
「小雪殿を一人には出来ない・・・というか、地球に魅せられちゃったのかな。あの星には帰りたいと思えないんだ。」
「・・・本気か?」
「僕が冗談を言えないって、知ってるでしょ?」
それはクルルが一番よく知っていた。
けれども今までのドロロの決意を覆すような発言に、多少の違和感もあった。
「それでいいのか?隊長やオッサンや・・・ゾルルも、お前と約束したんじゃねぇのか?ケロン軍で強くなる、次は自分が二人を守るって言ってたじゃねぇか。ゾルルはどうなんだ。アンタを倒せず、ずっと彷徨ってんのかよ。」
クルルも必死だった。
小雪と同様、クルルだってドロロを放したいとは思わなかったから。
「あの二人は僕が守るまでも無いよ。ゾルルは大丈夫・・・ガルル中尉がいるからね。」
「んなの俺が許さねぇ!!勝手なことさせるかよ!」
「ごめんね。でももう、決めたんだ。」
ドロロはもう、クルルの目を見ようとはしなかった。
どこか遠くを見るように、ただ視線を泳がせるだけ。
「・・・納得いかねぇ・・・そんなのはアンタの我がままじゃねぇか!!東谷小雪のため?地球を守るため?違うだろ!?アンタがただ自由になりたいだけだ!!俺たちのことなんて、少しも頭にねぇんじゃねえか!!」
「そんなことない!!僕だってみんなと一緒に居たい!!でも・・・でもあの星に戻ったら僕は・・・僕は殺すことしか出来ないただの人形になっちゃう!そしたら皆にはもう会えない。皆に見せる表情なんて残らない!!」
「俺は何度もその言葉を聞いてきたぜ?だけどよ・・・アンタはそのたびに暗殺兵として生きることを決意したじゃねぇか。ココに来てアンタのその決意とやらが折れるとは・・・見損なったぜ。」
ドロロの手は震えていた。
クルルも歯を強く食いしばり、口から出ようとする言葉をを押さえつけた。
「・・・何とでも。僕はもう・・・ここにはこない。」
「!!」
「さよなら。」
背を向けたドロロの手を掴もうとしてクルルは立ち上がった。
「ちょ・・・」
けれどもその手は空を切っただけだった。
何所から吹いたのか、風だけが残る。
ラボ本来の静けさが戻ってきたのかもしれない。冷たく、そして孤独だった。
「・・・ドロロ」
クルルは脱力感から、椅子に倒れこむようにして座った。
「いきなり何なんだ・・・」
ドロロは本当にもう、ここには戻ってこないような気がした。
ラボはこんなにも静かだっただろうか。
全ての機能が停止したかのように、クルルの頭の中は静かだった。
何も考える気になれない。
音が欲しい。そう思い、耳につけたヘッドホンに音楽を流す。
しかし結局、何も戻ることは無かった。
「チッ・・・」
静けさが辛い。
そう思ったのは初めてだった。
クルルは立ち上がると、ラボから出て明るい通路を歩いた。
何故だかとても人が恋しかった。


「あら、クルちゃん。」
日向家のリビングには珍しく秋がいた。
のんびり緑茶なんかをのんでいる。
「クルルが来るなんて珍しいわね。飲む?」
「いらね。」
夏美の厚意を短く断ると、他の皆から離れた食卓の椅子の方に座る。
冬樹も含めた3人が顔を見合わせ、首をかしげた。
「クルル、どうかしたの?」
「ただの気分転換だ。」
「本当?」
「あぁ。」
外をボーっと見たまま上の空で返事をするクルルの様子は、誰が見てもおかしいと思うだろう。
庭から様子を伺っていたギロロが室内に入ってきた。
「どうしたクルル。なにかあったか?」
「何も。」
「・・・」
やはり首をかしげる。
「本当か?」
「あぁ。」
秋がクルルに歩み寄った。
額に手を当て、神妙な顔つきになる。
「熱は・・・ないわね。」
「当たり前だ。俺は医師免許も持ってる。」
「どうしたのかしら・・・様子が変ね。」
「なんでもねぇよ。」
秋が心配そうに立ち尽くす。
夏美も冬樹もその様子を見守っていた。
「ただいまであります!!」
「ただいまですぅww」
「あ、軍曹。」
ガンプラを片手にご機嫌で帰ってきたケロロは、日向家の神妙な空気に眉をひそめた。
「なんでありますか?この空気は。」
「クルルが・・・」
「何でもねぇっての。俺がここにいちゃおかしいか?」
「おークルル・・・ってエエエエエエ!!!!!」
大げさなくらいのリアクションをとったケロロは、秋と同じようにクルルの額に手を当てた。
熱が無いのを確かめると、今度は何所から持ってきたかカレーを差し出した。
「・・・んだよ。」
「た、食べる?」
「今いらね。」
「ゲ~ロ~~~~~!!?だ、大丈夫でありますかクルル曹長!?おなかでも痛いんでありますか??」
「・・・」
クルルはもうめんどくさくて答えようとしない。
心の中で「俺は医師免許も持ってる」と呟く。
「クルル先輩がここにいるのって、なんだかすごく不自然ですぅ・・・。」
「ただの気まぐれだ。空気くらいにでも思っとけ。」
「でも・・・」
フイと横を向いてしまったクルルに、誰も何もいう事は出来なかった。
「・・・そ、そういえばドロロはどうしたでありますか?クルルの様子がおかしいのにドロロがいないってのは・・・」
「そういえばそうだな。」
クルルがピクリと反応したのが目に見えた。
「もしかして・・・喧嘩でありますか?」
「ちげぇよ。」
喧嘩ではない。ドロロが一方的にどこかへ行ってしまったのだ。
確かにクルルも言い過ぎたとは思っていたが、悪くはない。
「全く・・・至急ドロロを呼ぶであります。」
「いつもみたいに屋根裏にいそうですねぇ。」
「ドロロ!!出てくるであります!!じゃないと絶交~~。」
ケロロの必殺技、絶交。
これを言われるとドロロが出てくるしかないことを、ケロロはよく分かっていた。
強引な手に、ギロロが溜息をついた。
しかしドロロは出てこない。
「あ、あれ?」
「いないんですかねぇ?」
「えっと・・・隊長命令であります!!」
・・・反応が無い。
「やっぱりいないんじゃないか?」
「そうでありますなあ・・・」
クルルは知っている。
ドロロが出てこないわけを。
ドロロがここにいない理由を。
「アイツ、多分もうここには来ないと思うぜ。」
「え?」
「どういうことだ、クルル!!」
胸が締め付けられるかのようだった。
けれどもどこか冷静でいられる自分もいる。
自分は本当に、今の事態に動揺しているだろうか。
本当は前々からこの日が来ることを分かっていたのではないか。
「・・・最後まで聞けよ。」
「・・・」
ただ事ではないと思ったその場の全員が、クルルの話に耳を傾けた。
クルルは出来るだけ丁寧に先ほどのことを話した。
小雪の苦悩。
ドロロの決意。
不安。
親心。
恋心。
全てが複雑に絡まりあったとき、ドロロの心には何が生まれたのか。
何を恐れたのか。
「・・・そうでありますか。」
ケロロの反応は思ったよりも冷静だった。
ギロロも俯いている。
タママは瞳を潤ませ、同情に似た視線を向けていた。
「ドロロも、辛かったんでありますな。」
「だがそれは理由にはならない。」
その通りだ。
「暗殺兵の辛さ、少しは分かるですぅ。僕も接近戦ですから。」
誰よりも血に染まり、誰よりも死を望み、誰よりも優しく、誰よりも美しかった。
それが暗殺兵とは、なんと無情なことか。
「小雪殿・・・」
「ポコペン・・・」
「ドロロは怖いんだよ。自分がまたあの頃に戻ってしまうのが。」
冬樹が口を開いた。
「ドロロのあの頃ってなによ。」
「軍曹たちが言う、暗殺兵だった頃のドロロだよ。分かりやすく言えば、ゼロロ。」
クルルが頷く。
「地球に来て忍者になって、人を殺してきた罪悪感にずいぶん悩まされたと思うよ。だからこそ・・・またあの頃に戻りたいとは思えないんだ。戻っちゃいけないって分かったから。」
「あの優しいドロちゃんが暗殺兵だなんて・・・」
「ウソみたい・・・」
秋と夏美が寂しそうに呟いた。
「我輩の所為であります・・・」
「!!ケロロ!」
全員がケロロに注目する。
ギロロだけが慌ててケロロを落ち着かせようとしていた。
「我輩が最初に言ったんでありますよ・・・アサシンになれるって。」
「あれは俺たちが幼すぎただけだ!!お前は悪くない!!」
「でもドロロは苦しんでるんであります!!!我輩があんなこと言わなければ・・・ドロロは笑っていられたんでありますよ・・・?」
ギロロが言葉に詰まる。
幼い頃のあどけない笑顔、それが作り笑いに変わったのはいつだったのだろう。
その瞬間を、自分たちはわかってやれなかった。気づいてやれなかった。
「だがお前に責任があるわけじゃない・・・気を落とすな。」
「・・・わかっているであります。」
ドロロが寝返ったのはアサシンが嫌だったから、という理由だけではない。
小雪も原因であり、この地球自体が原因でもあるのだ。
「隊長が悩んだところで、アイツは帰ってこねえよ。原因が多すぎる。」
「軍曹さん、しっかりしてくださいですぅ~~」
「・・・そうでありますな。我輩がしっかりしないと。」
ドロロの存在がこんなに大きいとは思わなかった。
今までは傍にいなくても大丈夫だったはずなのに。
思いは離れていなかったはずなのに・・・。
「東谷小雪のトコに行ってくるっきゃねぇな。」
クルルが呟いた。
「アイツが素直に話を聞くと思うか?」
「おもわねぇ。」
「ゲロ・・・;」
それではダメじゃないかと言おうとした冬樹に、クルルは不適に微笑んで見せた。
「話は聞いてもらうんじゃねぇ。聞かせんだよ。」
「強引ですぅ・・・」
「アイツはそのくらいがちょうどいいんだよ。」
秋が微笑んだ。
夏美も微笑を浮かべている。
「よく分かってるのね、ドロロのこと。」
「・・・まぁな。」
当たり前だ。
アイツのことを知っているのは自分だけで十分だ。
「行くでありますか。ドロロのトコに。」
「でもどうするですぅ?ドロロ先輩はもう僕らと関わる気が無いんですよ?」
「どうにかなるでありますよ。」
根拠は無い。
けれどもケロロの勘が告げていた。
『なんとかなる』と。
「クック・・・流石隊長だぜ。」
「全く、お前らしい。」
「一生ついてくですぅww」
クルルは思っていた。
何故この隊長にはついていけるのだろう、と。
きっとそれをドロロが聞いたら・・・にっこりと微笑むだけなのだろう。


「ただいま。」
「あ!早かったねドロロ。ご飯食べる?」
家に帰ったドロロは、小雪の笑顔を見てホッとした。
小雪に心配をかけたのは自分なのだ。
責任を取らなければいけないのも自分。
誰も巻き込んではいけない。
「いや、いらない。ちょっと修行に出てくる。」
「え?」
「ちょっと確かめたくなってね。今の自分を。」
本当のことを言わないと、無駄な心配をかけてしまう。
「そっか・・・行ってらっしゃい。」
「うん。」
外に出ると、ひんやりとした空気が心地よかった。
日向家から戻ってくるときには感じなかった風に、自分が悩んでいたのだと気づく。
「クルル君・・・」
いつもの修行場所へ行く道が、とても長く感じられた。
「こんな寂しさ、今まで無かったはずなのに。」
今までは気持ちが繋がっていた。
けれどもそのつながりを断ち切ってしまったのは自分なのだ。
ずっと悩んでいた。
いつまでも曖昧ではいられないと思っていた。
皆に迷惑をかけてしまう。
ケロロとギロロは大丈夫だと思っていたし、ゾルルにはガルルがいる。
「斬!!」
いつもの場所に着くと、ドロロは刀を振るった。
舞い散る木の葉が一つ残らず真っ二つに分かれる。
次はワイヤーで、そして素手で、最後に忍術とアサシンマジックを使って同じ修行を繰り返した。
「はぁ、はぁ・・・」
ただでさえ気力を使う忍術とアサシンマジックを連続で使えば、体力はみるみるうちに減ってゆく。
けれども気力が無くなれば体力を使えばいいこと。
ドロロは腕に力を入れ、刀を振り降ろした。
「鈍ってはいないみたいだ・・・」
夜風で冷たくなってゆく自分の右手を左手で握り締め、ドロロは笑いながら涙をこらえた。
「地球か、ケロン星か・・・忍術か、アサシンマジックか・・・」
地球を選んだことは後悔していない。
けれども自分が居ることによって地球に災いが降りかかったら?
この力は地球に本来あるものではない。
けれども忍術はケロン星に持って行きたくは無い。
「わがままだよね・・・」
月を眺める。
あの星は、自分を迎え入れてくれるだろうか?
この星は、自分を歓迎してくれているだろうか?
「どうしたらいいんだろう・・・分からないよ・・・」
自分の存在意義が分からない。
自分の居場所が分からない。
こんなとき、いつもなら傍にいてくれる人・・・
静かに抱きしめてくれる人・・・
恋しい。

「夜風に当たりすぎんのは身体に悪ぃんだろ?」

突然、ぬくもりがドロロを包んだ。
冷えたからだがじわじわと体温を取り戻してゆく。
「クルル・・・君?」
「夜は冷えるから暖かくしろっつったのはアンタだろ。」
慌てて逃れようとするが、クルルの腕が思ったよりもきつく身体を締め付けているために逃れることが出来ない。
「放して!僕はもう小隊には関わらないっ!!」
「うるせぇ!!」
突然怒鳴られたドロロは、ビクッと身体を震わせた。
「小隊じゃねぇ。ケロン軍じゃねぇ。俺とお前の問題だ!!」
「僕と・・・クルル君の?」
恐る恐る言葉を発する。
「そうでありますよ。」
木々の間から顔を出したケロロが笑う。
「我輩たちは仲間であります。小隊とか関係なくさ。」
「お前は俺たちといろ。だいたいあの女にお前を預けることなんぞできるか!」
「ケロロ君・・・ギロロ君・・・」
クルルはドロロを束縛していた腕を放すと、いつもの笑みを浮かべた。
「僕はここにいるしかないんだよ・・・わかって。」
「馬鹿。俺達はケロン人だ。地球人といつまでも仲良くしてるわけにはいかねぇんだよ。」
「でも、そしたら僕は何所に居ればいいのか判らないよ!!」
「ドロロ。」
頭を抱え、苦しそうに息を吐く。
「僕はもう人を殺したくない!!そう思っちゃったら、アサシンでいられないよ・・・軍がそれを許すはずなんて無い。良くて記憶消去。悪くて・・・」
暗い夜空の下、ドロロの表情は伺えない。
あのときの自分は残酷だった。それが今になって分かったから、今、ドロロは苦しむことになっている。
夢を抱いた自分は幼すぎた。
夢を追った自分は若すぎた。
絶望を抱いた自分は・・・もう大人になってしまった。
修正の効かないその夢は、現実となって重くのしかかってきた。
それにドロロは、耐えることが出来なかったのだ。
「小雪殿が僕と別れたくないって言った時、僕もそうだって思った。残酷な任務に戻るには・・・大切なものが増えすぎた。」
「アサシンは正義じゃないのか。」
「違う!!違う違う違う!!僕は知ってた、最初から知ってた!!でもこれが人を助けるんだって暗示をかけてた・・・そう信じるしかなかった!!」
自分の役職に、部隊に、普通は誇りをもって任務を遂行する。
けれどもドロロは最初からそんな思いはなかった。
ただなんの感情も持たずに人を殺すことだけを求められた。
誰かを守ることも、誰かを想うことも、許されることは無かった。
何故自分は刀を握っているのか、いつしかそれすらも疑問に感じた。
「人を守りたかった・・・地球はそれが出来る。そのために刀を振るう事が出来る。この力を制御することが出来ない今、それしかボクには出来ない。普通に過ごすことは出来ない。」
しゃがみこんだドロロの肩を、ケロロがそっと抱いた。
「辛かったんでありますな、ドロロ。」
自分が傍にいてあげられなかったから、ドロロは目的を見失ってしまった。
守る人がいれば少しは違った?
再びケロロの胸には罪悪感がよみがえった。
「嫌、もう戻りたくないよ・・・戻ったら・・・僕はもうドロロでいられない。」
「・・・」
何もいえないケロロ、何もいわないギロロ。
その二人を見て、クルルが口を開いた。
「アサシンは残酷なだけなのか?俺はそうはおもわねぇ。」
「え・・・」
「ただ残酷なだけなら、お前はとっくに殺人兵器だ。俺はお前をただの殺人兵器だと思ったことはねぇぜ?」
どこか懐かしむように、クルルは目を閉じた。
「血の海の中、最後まで自分が血に染まることを拒んだ。他の奴等は皆血に酔ってたってのによ・・・アンタが綺麗だったから、東谷小雪は、あの村は、お前を受け入れたんじゃねぇのか?」
「骸殿・・・長老・・・」
村が消えたのは、ちょうどこんな暗闇の中だった。
自分を迎えいれてくれた蛍火は別れの灯火に変わったが、皆が同じことを想っていた。
『忘れない』
と。
「お前がアサシンに戻って指揮をとれば、余計な犠牲を増やすことも無くなるだろう。アンタにもやるべきことがまだある。」
「守る対象なんぞ、山ほどいるだろう。」
「ドロロは忘れないでありますよ。小雪殿のことも、我輩たちのことも。」
顔を上げたドロロの目には、涙が溜まっていた。
「忘れないでいられる?本当に?僕はただ殺すだけの兵器じゃない?小雪殿を泣かせるようなことをせずにいられるかな?」
「ドロロは優しいでありますな。・・・大丈夫。」
「クルル君は・・・」
忘れないでいられるかな?
僕は赤くない?殺人兵器になってしまうことはない?
忘れないでいてくれる?
沢山の思いがこみ上げてきて、ドロロはそれを言葉にすることが出来なかった。
しかしクルルはそれを全て悟ったかのようにドロロを抱きしめ、言った。

「当たり前だろ。」

涙が頬を伝い、地面へと消えた。

忘れないで
忘れたくないから。
怖いのは、今の自分が変わってしまうこと。
今のように笑えなくなってしまうこと。

あぁ、どうしてだろう
こんな寂しさ、今まで無かったはずなのに。

__________________________________________

終わった・・・?
なんか異常に長かった気が・・・。

そうそう、お題の台詞、最後と途中の二箇所に入れちゃいましたw
失敗☆
というか、もはや話がぜんぜん繋がっていませんが・・・ね。
こんなんで完結させてしまってすみません;
自己満足ですが、これからもよろしくお願いします!!


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