小指ほどの鉛筆

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350.一生あなたを守ります(大佐+ジララ目線テルグラ)

2011年02月20日 12時44分08秒 | ☆小説倉庫(↓達)
「アサシンの性、ってやつなのかな。」
大佐が呟いた言葉に、扉を出て行きかけたジララが振り返る。
執務室に二人。
滅多にないことだ。
だからジララは、その唐突で奇怪な言葉に、いましばらく足を止めた。
続きを喋ろうとしない大佐に、仕方なく問う。
「アサシンが、なんだって?」
「ううん。大したことじゃないよ。でも、グララ大尉は古風だね。」
古風?アイツが?
ジララはグララを思い浮かべて、その過去も現在も思い出して、首を振った。
「どこがだ。」
どちらかといえば、年齢にそぐわないほど若作りで、好んで若い人間とつるむ男だ。
古風とは縁もない。ように思える。
「テルル大佐に心身ともに捧げて、彼のために生きている。」
「それはそうだが・・・」
「彼のためなら死んでもいいって思ってる。むしろ、そのために自分が存在していると思ってる。」
「要するに、考え方が古い、ということか?」
ジララの結論に、大佐は微笑んだ。
「古くなんてないよ。立派な事だ。」
それを僕も望むわけではないけれど。
「なんだろうね。凄く悲しくて、切なくて、愛おしい主従関係だな、と思ったんだ。」
テルルはいつだってグララを見ていた。
グララはいつだってテルルの傍にいた。
互いに望むものは違っていて、グララが思うほど、テルルは忠心を望んではいなかったのに。
まるで必要以上に尽くすことで、本来抱くことなど出来ないはずの愛まで伝えていたのなら、それは、もどかしくて美しい。
「グララ大尉は、ジララ以上だね。ジララは僕を死んでも守ってくれると思うけど、彼はきっと、それ以上なんだ。」
何が彼をそこまで過保護にさせるのか。
「ゾルル君も、ガルル君に忠実だよ。カゲゲ君は君に盲目だ。君は僕に過保護で、ドロロ君は、ケロロ君が絶対だ。」
「過保護か?」
「過保護だよ。でも、嫌いじゃない。」
そうやって大切にされることが、どんなに嬉しいことかを知っている。
同じように、君たちも、守れることが幸せなんでしょう?
だからこそもう、グララ大尉は二度とテルルを失えない。
一度護れずに殺してしまった罪を、どうやって償えるだろうか。
生まれ変わったって、生返ったって、あの日守れなかったことは確かなんだから。
奇跡が起きてもう一度廻ってきたチャンスに、彼は賭けているんだ。
「アサシンってみんなそうだね。何かを守ろうと必死なんだよ。殺すより、生かすことの方が性なんじゃないのかな、って。」
アサシンなんて名前、似合わない。
「多分グララ大尉は、それを一番最初に理解したんだ。彼はテルル大佐を愛してた。」
殺すことの虚しさ、無意味さ、不条理も、全てを理解していて、それでもアサシンにいたのは、守るためだった。
後輩が大切で大切で、でも、殺すことを教えなければいけないことの、なんと残酷な事か。
「テルル大佐が言ってたんだ。グララ程愛おしい人はいないって。それがどうしてかなんて、問うまでもないんだね。」
ジララは寂しそうな大佐の横顔を見て、ため息をついた。
大佐だって、テルルのことが好きだった。
大好きで大好きで、だから、死んだときの精神の不安定さはとてつもないものだったし、自分はとても心配した。
けれども生返ってきたテルルは、大佐よりも、グララを見て目を細めたのだ。
苦しそうな、愛おしそうな、申し訳なさそうな、大佐にも注ぐべきはずの感情全てを、まずはグララに向けて笑った。
そのことがどうしてかなんて、当たり前じゃないか。
グララはいつだってテルルの傍にいて、与えてくれていたから。
与えられたものが多くて多くて、けれどもそれに報いてやれなかったことの、なんという不甲斐なさ。
「僕がフラれるのなんて当たり前なのにね。」
「そんなことを言っていると、シャインに怒られるぞ。」
「うん。」
誰よりもテルルを愛して、守ってくれていた人。
大好きな人を守ってくれていた人。
ありがとうよりも前に妬みがくるのは、その愛に自分が到底かなわない事を知っているから。
もどかしくて、もどかしくて、でも、それがなんて優しかったんだろう。
これからだって、グララはテルルを守るだろう。
また生返っても、生まれ変わっても、もしかしたら死んでからだって、ずっとずっと、彼は彼を守るため、存在するのだろう。
「すごいね。グララ大尉は。」
ジララは少しだけ俯いて、それから、頷いた。
その様子を見ながら、大佐は微笑む。
悔しいけれど、幸せになってほしいと願うのは、きっと、彼がそれを裏切らない事を知っているからなんだろう。
幸せにしてあげてください。
幸せになってください。
それは、大佐が、ジララが、グララに望むすべて。

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