小指ほどの鉛筆

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237.手が触れあって… (テルグラ)

2012年01月22日 20時23分54秒 | ☆小説倉庫(↓達)
注:ナチュラルに日向家にいます。
  携帯で書いたものそのままなので文体が違う

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冬は嫌いだ、とグララは思う。
そもそも自分たちケロン人は寒さと乾燥に弱い。
それが現代っ子たちは雪の中でも元気に過ごしている。
時代が変われば、人も変わる。
まぁそんなことはいいとして。
グララは今、とても後悔していた。
寒い。とにかく寒い。
ケロン人の大半はやはり今でも寒さに弱く、とりわけ自分はそうである。
アサシンとしてあらゆる耐性をつけてきたが、これだけは如何ともし難かった。
地球に来て、この国の寒さをなめていた。
ピーコートとロングブーツだけではまだ寒い。
ちょっと本屋を巡るだけだと高を括っていたが、そろそろ限界である。
あらゆる店を梯子しながら、やっとの思いで帰り道を辿る。
冷えきった指先が鋭利になって、空気を切り裂きながら歩いているようだ。
乾いた空気に喉がひゅうと鳴り、小さく咳き込む。
いい加減にどこかのカフェにでも入って、何か温かいものを飲もう。
そう思っていた時だった。
携帯のバイブが、腰の辺りで振動する。
ポケットから取りだして、かじかむ手でボタンの感覚を探した。
「はい?」
「グララ!?大丈夫か!?」
過剰な程に心配してくれたのは、愛しい恋人であるテルル。
電話越しに聞こえるその声は忙しない。
「ん…寒い。」
「やっぱり…!今日は昨日より寒くなるって言っていただろう?」
「おぅ。」
「今どこにいる?」
辺りを見回して、目印となるものを探す。
コンビニを見つけてホッとした。
「大通り抜けて、セブンがあるとこ。」
「今から行くから、中にいるんだぞ。」
「ん。」
バタバタと走る音と、早々に切れた電話。
愛されていると感じて、顔だけが少し熱を持った。

コンビニの中は流石に温かかった。
外との温度差は、ガラス窓を見ればすぐにわかる。
そのすぐ前に立って、興味もない料理雑誌なんかを手に取った。
ロールキャベツ煮なんて美味しそうじゃないか?
レシピがあれば作れる。普段はもっぱらチャーハンなどの炒めものしか作らないのだが、村にいた頃は煮物なども作った。
あの味が懐かしい、と思う。
今の季節はなんの野菜が美味しかっただとか、そんなことを考えながらページを捲った。
ふと、曇ったガラスの外側に人影を見る。
背格好でも分かる、少し慌てた様子。
そっと雑誌を戻して、ドアの方を向いた。
「グララ、待ったか?」
少し息切れしている。
そんなに慌ててくれなくてもよかったのに。
「全然。早かったな。」
「少し疲れた…」
そう言いながら、テルルはグララにマフラーと手袋を差し出す。
それをありがたく頂戴してから、二人で店内を廻った。
「新作モンブランだって。」
「コンビニスイーツって進化してんのな。」
生クリームの菓子類をしげしげと眺め、グララはおもむろにカゴを掴んだ。
中にポンポンとそれらを放りこみ、レジへと向かう。
缶コーヒーとにくまんも追加して、パンパンの袋を下げて店を出た。
先ほどよりも大分暖かい、とグララは微笑む。
マフラーと手袋。ホットコーヒー。
そしてさも当たり前のように、にくまんをテルルに差し出した。
「え?」
「迎えの報酬。」
「あぁ、ありがとう。」
そういえば小腹が空いていた。
「なんでまたこんなにスイーツを買い込んで。」
「夏美と、冬樹と、モアと、タママと…まぁ、最低でもこれだけはいるだろ。」
「父親じゃあるまいし。」
そうはいっても最年長。
子どもは可愛いし、きっとテルルがバタバタと迷惑をかけただろうから。
泊めてもらっている、というのもあるが。
「珍しく今日は世話を焼かれた。」
「それも、これでチャラにされたけどな。」
そう言ってにくまんにかぶりつくと、テルルはため息をついた。
それは別に気づかれるはずではなかったのだろうが、白い息を見送ったグララがすぐに反応する。
「あんまんの方がよかったか?」
「そうじゃない。たまには、こう…お前に世話を焼きたいんだ。無償で。」
「ふーん?」
「だから、」
にくまんを2つに割った。白い湯気が視界を一瞬覆って、けれどもすぐに消えた。
「半分くらいは、俺に借を残しておいてくれないか?」
差し出された半分のにくまん。
「…変なやつ。」
そうは言いながらもしっかりと頬張って、並んで歩いた。
「コーヒーとにくまんはあんまり合わねぇ。」
「あんまんが良かったんじゃないか?」
「…」
日向家に帰ると、グララは買ってきたスイーツ類をテーブルに置き、夏美に声をかけてから地下へもぐった。
途中でマフラーと手袋は外した。なんだかムズムズして仕方なかったから。
温かくなっている通路をテルルと二人で歩きながら、だんだんと感覚を取り戻していく皮膚に、時々触れるテルルの指先の温度が心地好かった。
思いきって触れた指を絡めると、なんとも言えない温度が混じり合って、生温いような、気持ち悪い感触。
いや、気持ち悪いのは自分の行動か。
「ぐ、グララ…?」
「お前もそんなに手ぇあったかくねぇよな。」
人に手袋もマフラーも差し出して、自分だって寒いくせに。
「今日は特別寒かったからな…お前も運が悪かった。」
「…そうでもねぇよ。」
少なくとも、今、この時は。
彼が迎えに来てくれたその瞬間から、自分は幸福だ。
「グララが自分から指を絡めてくれるなんて、今日はついている。」
きゅっと指を折り曲げて、ひっかけて歩いた。

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冬が苦手なグララ。
あんまり寒いと冬眠します。

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