白居易(はくきょい)。旧中国の詩人です。
その人生は順風満帆とはいかず、折々で困難にぶつかったようです。
特に問題となったのが住む場所で、
それゆえに自分の名前にも願いを込めたとか。
白……あきらか
居……居る、居住の場
易……たやすい、容易である
住む場所がはっきりとして、住むことが容易であるように。
そんな思いが伝わってきます。
彼はまた力自慢でもあったようで、
自分たちを立ち退かせようとするものに対しては
押し問答どころか力押しで追い返していたとか。
彼が求めた居場所。
彼が望む住まい。
住まいに居続けること、すなわち、すまうこと。
それは、相撲(すまふ)になりました。
お互い徒手空拳、体ひとつで向かい合い、
正々堂々とぶつかり合い、どちらが住まいを得るのかをきそうもの、
それがすもうです。
すもうとは縄張り争いのような意味を持ちます。
実際それを象徴して、現在でも土俵に縄が張られているのを見ることができます。
今回の日本の相撲の不祥事で相撲からおいだされ、
住まいをおわれた人々を見ると、
すもう本来の性質がよみがえったような気がして
なんとも不思議な気分になります。
こんな状況を見たのなら、白居易はいったいどう思うのでしょうか。
すもうもずいぶんと楽になったと笑うでしょうか。
それとも、真剣勝負を汚したと憤るでしょうか。
そんな思惑も想像も超えたところ、
白居易は今日も土俵でたたえられ続けます。
「白居易残った、白居易残った」と。
参照文献:
空田武都軽 『そして白居易は残った』 民明書房 2006年