もうパンは作れない

　子供がいないマーヤはマンション住人とお付き合いがありません。
　知っているのは管理人さんか、片方のお隣さんだけ。
　あとの人は、『顔を合わせたら挨拶をする程度』で、会話をした事はありません。
　上ともう片方のお隣さんは、マーヤ達の後に入居して来て挨拶に来ませんでした。
　私達の方から挨拶に行きましたが、インターホンを鳴らしても出てこない。
　隣の人は私達が玄関を出ると、パタっと扉を閉めて顔を合わせないようにしているので、顔を見た事がありません。
　『近隣付き合いがしたくないからマンションに住む』・・・と言う人もいるので挨拶は控えました。


　入居して2年半。
　最初は皆が知らない同士。
　でも、最近はママ友同士が仲良く立ち話をしている光景をよく見かけます。
　エレバーター待ちの時、ホールで、子供の幼稚園のバスの送迎前後玄関で…。
　みんな時間の経つのも忘れ長くおしゃべりしています。
　でも、子供と言う共通点がないマーヤには無縁の世界です。
　
　
　片方のお隣さんはとっても可愛い奥様。
　『遊びに来て下さい』と誘って下さり、一度だけお宅に招待され、お子さんと一緒に遊んだ事もあります。
　その時メール交換をしました。
　マーヤの家にも一度あがった事があります。
　でも、ほとんど会うことはありません。
　この数ヶ月顔を見ていませんでした。　
　
　そのお隣さんからメールが来ました。
　
　『家で太鼓をたたいてますか？』
　『トントンと音がする…子供がお隣さんは太鼓をたたいている』と…。

　とても配慮されたメールで私を気遣った優しい文章でしたが、苦情でした。
　

　詳しく聞くと、
　トントンと音がすると子供が起きてしまう…。
　お隣さんは男の子が二人いて、そのトントンの音がお隣さんから出た音だと他のママ友に勘違いされた…。
　お隣さんを含め、四人のママ友がトントンの音の正体が気になっている…。

　パンを作っている音だと話したのですが、ママ友の話題になっていたようで撃沈です。
　

　できればマンションでは目立たず、一目につかず、静かに暮らしたい。
　話題に上がりたくない。
　なのに、『騒音おばさん』（後日ドラゴンさんからご指摘を頂き、『騒音おばさん』は実は被害者で真実は報道とはかけ離れたものであると教えて頂きました。『騒音おばさんの真実』で検索してみてください）になっていたなんて。

　でも、迷惑にならない時間帯（お昼や夕方）に作っていて、トントンするのは14分。
　新しく見つけた楽しめる趣味で、生活の一部だし、すっごく楽しいし、ストレス発散の場所だし、なんとか作りたい。
　でも、子供はいつ寝てるかわからない。
　音が響いたら苦痛だろうし。
　せっかく寝た赤ちゃんや子供が起きてしまったら、子育てしているお母さんからしたら大迷惑。
　マンションは共同住宅だし…。
　噂されるのもイヤだし…。
　でもさ、二度と手ゴネパンは作れない。
　引っ越すのは無理だし。
　パン作りって自分の手で作り上げるから楽しいんだよね。
　機械を使ったら、なんか…マーヤの作りたいパンとは違ってしまい楽しくない。
　（ホームベーカリーも朝うるさくて目が覚めるって聞いたけど）。
　でも、駄々をこねても仕方ない。
　マーヤが迷惑をかけているのは間違いないんだから…。


　だからパン作りはやめます。
　

　『うぐいすパンとあんぱん』が最後に作ったパンになるなんて…。
　作った最後を思い出したら悲しくなりました。
　

　せっかく習いに行ってるのに、何のために習っているのか…。
　パンつくりが上手になるように、2日に1回を目標に作っていた。
　その楽しみがなくなり、自分が悪いけど、悲しいです。

　でも、子供のバタバタ＆ドンドンだって、泣き声だって、（そんなにマーヤは気にならないけど）うるさいのに…って思うあたしは心がせまい。
　

　でも、お隣さんが教えてくれたおかげで、マンションの掲示板の『迷惑覧』に載らなくてすんだのだから、お隣さんには感謝しています。

　貼りだされたら、もうココでは暮らせないもん。
　でもね…悲しいです。


　その後のお返事日記