外交安保は民主党のアキレス腱か?

いよいよ東京都議会議員選挙が迫ってきた。連日、地元の候補(予定)者とともに街頭に立ち、「総選挙へつなげるためにも、首都決戦での勝利を!」と声を嗄らして訴えている。日に日に、政権交代への有権者の期待が高まっていることを実感する。そんな中、「民主党で大丈夫か」という声も錯綜する。とくに不安なのが、外交安保政策だという。

そのような懸念に対する私なりの答えが、本日7月1日発売の月刊誌『正論』に掲載されたインタビュー記事「民主党政権で日本は守れますか」である。民主党の政策、とりわけ外交安保政策に批判的な産経新聞社が発行している硬派雑誌『正論』だけに、厳しい質問の矢面に立たされることとなった。私の議論に説得力があったかどうかは読者に委ねるほかないが、鳩山「友愛外交」に対する世間の誤解や、民主党の安保政策は支離滅裂だなどという不信感はある程度払拭できたのではないかと自負している。

民主党の外交安保政策をめぐっては、麻生・自民党もここがアキレス腱とばかりに徹底的に突いてくる姿勢を見せている。先日の党首討論でも、麻生首相は、時間切れ間際に話の脈絡もなく突然に小沢前代表の「第7艦隊発言」を論って非難していた。報道によれば、昨日も首相は国際問題研究所での講演の中で、民主党に対し「国家としての重要な選択に、いずれも反対や異議を唱えた」「日本が果たしてきた役割をどこか他の国にやってもらいたいということなのか。観念論ばかりで、具体論には反対と留保ばかりつける外交・安全保障では、国際社会の現実には太刀打ちできない」などと厳しく批判したとのこと。

ここで首相が言う「国家としての重要な選択」とは、最近ではソマリア沖海賊対処のための海上自衛隊護衛艦派遣のことを念頭に置いているものと思われる。ただし、これは言いがかりも甚だしい。きっちり反論しておかねばならない。たしかに、民主党は、ソマリア海賊対処のための政府提出法案に衆参両院の採決で反対した。しかし、政府原案に反対したからといって、海賊対処のために海上自衛隊の護衛艦を派遣するとの考え方自体に反対したわけではない。ズバリ結論を言えば、民主党は、ソマリア海賊への対処は賛成、海上保安庁が対応できないのであれば自衛隊の派遣が必要となることにも賛成、その際に現場での対応を円滑にするため武器の使用基準を緩和することにも賛成だったのだ。にもかかわらず、政府原案に反対した理由はたった一つ。法案の出来があまりにも悪かった、ということに尽きる。

それを「観念論ばかり」と難癖をつけて、「具体論には反対と留保ばかりつける」と切り捨てられては、国会における建設的な与野党間の議論は成り立たない。私たちが政府原案に対して要求していたのは、自衛隊という実力組織を海外に派遣する場合の最低限のルールとして「国会の事前承認を付すべきだ」という一点だった。国際社会における平和構築のために我が国として応分の役割を果たすことは、国益を守る上で極めて大事なことだ。しかし、軍事組織を海外に派遣する場合には、諸外国においても一定のルールが確立されている。ドイツや韓国はもとより、米国でも戦闘開始に当たっては必ず上下両院の承認決議が行われる。我が国でも、自衛隊法に規定されている防衛出動、治安出動、災害派遣をはじめ、自衛隊の運用にあたっては、必ず原則事前の国会承認が定められてきた。したがって、ソマリアに限らず海賊対処のために長期にわたって海上自衛隊の艦艇を派遣するにあたって国会の関与が必要であることに疑問の余地はないはずである。

また、派遣される海上自衛隊員の名誉のためにも、国会の両院における圧倒的な賛成の下で送り出すことが望ましいことは言うまでもない。自民党の中でも、浜田現防衛大臣や石破前大臣も、国会の事前承認にはこだわりを見せていた。それが、穏当な政治判断というものだ。この我が国における民主的統制(議会による軍事に対する優越性の原則)の根幹にかかわる最低限の要求が、首相に理解されず、「ねじれ国会だから、衆参両院で承認が得られるか覚束ない」などといった皮相的な理由で政府与党によって拒否されてしまったことは甚だ残念だ。私自身、昨年10月に海賊対処の必要性を国会で最初に提案した者として、それを補強するための法案に反対することは忍び難いものがあった。しかし、致し方ない。このような無原則な欠陥法案に対しては断固反対だ。この与野党攻防の記録は、100年残る国会議事録にしっかり刻まれねばならない。

いずれにしても、私たちが政権を担うようになったら、ただちにこの原則を確立させる。衆参の議席配分が「ねじれ」ていようがいまいが、これは与野党の間で共有されるべきシヴィリアン・コントロールの大原則であり、今後、国際平和協力についての一般法(恒久法)を整備する際の基本指針となるからである。この他、日米同盟の在り方をめぐる米軍再編や日米地位協定といった課題など、まだまだ多くの論点はあるが、私の基本は、「外交は8割が常識、あとの2割はニュアンスの違い」(チャーチル元英国首相)というもの。国際関係が絡む外交安全保障政策の選択肢はそれほど多くはない。ただし、与野党の間でニュアンスやアプローチの違いを競い合うことは民主主義国家として当然のことだ。選挙戦を通じて大いに議論して行きたい。そして、有権者の皆さんにどちらに説得力を感じていただけるか、それが勝負を分かつと信ずる。
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