政府の悪あがき、さらに続く

米艦、イラク戦使用の可能性=インド洋の海自給油活動で-自民・福田氏
(9月23日13時1分配信 時事通信)

 自民党総裁選に立候補した福田康夫元官房長官は23日午前のテレビ朝日の番組で、テロ対策特別措置法に基づき海上自衛隊がインド洋で給油した米国艦艇が、イラク戦争に参加した可能性があるとの見解を明らかにした。
 福田氏は「インド洋(で活動する米艦)と思っていたものが途中から『イラクに行ってくれ』ということも、あったかもしれない」と述べ、米国に情報提供を求める考えを示した。
(引用終わり)

・・・派閥の論理で自民党の新総裁に選出された福田氏は、明日にも内閣総理大臣に選出され新政権を担うのであるから、彼の発言は重い。

その福田氏が、昨日のエントリーでも触れたように、03年2月の官房長官記者会見で出た補給量に関する自らのいい加減な発言を棚に上げて、今度はあたかも米国が日本政府を欺いたかのような物言いである。作戦エリアごとに指揮統制が分立すし、その間を艦艇が行き来するという米軍の基本的な運用システムを知りながら(同盟国軍隊の運用システムを知らないとしたら、それこそ統治能力が問われる!)、日本国民向けに出鱈目な答弁を繰り返しておいて、その政府の立場が危うくなると、米国に情報提供を求めるとは! 昨日の繰り返しになるが、米国に責任転嫁する前に政府がすべきは、まず自らの非を認め、過去の政府答弁を撤回修正することだ。

福田氏の言いぶりは、あたかも、日本はアフガン向けと「信じて」燃料を提供したのに、途中で米軍が勝手に艦艇の向きを変えてイラクに行ってしまったのは甚だ遺憾だというように聞こえる。この責任転嫁は、同盟国に対してあまりにも失礼。「日米同盟が重要だ」「民主党では日米関係がおかしくなる」などと言いながら、その実、こういう無責任発言で国民の反米感情を煽るのは姑息。この怪しからん責任逃れを次期首相が平然とやってのけようとするのであれば、私たちは徹底的に真相究明と責任追及をして行くまでだ。敢えて予告させてもらえば、これ以上米国から情報を提供してもらっても、「やっぱりイラク作戦にも日本が提供した燃料は使われていました」という確かな証拠が突きつけられるだけのことだろう。 

もちろん、民主党としても、「反対」の結論を強調してばかりはいられない。今こそ、洋上給油に代わる具体的な代案を提示していかねば、政権担当能力が疑われてる。そこでは、6年間の「テロとの闘い」を総括し、日本としての主体的な「闘い方」を示し、国際社会との協力の進め方についても、原理原則アプローチのみならず現実的なアプローチを踏まえて新たな構想を提示して行かねばならない。その構想は、単に「洋上給油を再開する」だけ(と巷間伝えられる政府与党提出予定の新法)の次元を超えるものとなるであろう。

この間、ワシントンとの情報交換や、米国や欧州から帰国した研究者からブリーフを受ける中で、私はある重要な事実を改めて認識するに至った。すなわち、いったんインド洋から補給部隊を撤退させてしまったら(それは安倍首相の辞任に伴う国会空転で、もはや必至の情勢だ)、単に洋上補給を再開させるだけでは済まされない、という事実だ。それが、国際社会の偽らざる「空気」だというのだ。2日前の国連決議に対するロシアやドイツの反発は、そのことを如実に物語っている。「なんだって?日本は、カナダをはじめ多くの国々がアフガニスタンでのテロとの闘いで夥しい血を流しているのに、戦火から遠く離れたはるか彼方の海の上で安穏とガソリンスタンドをやってきたのか?!」と。

このたび、日本で「謝意決議」といわれる国連決議1776を無理やりもぎ取ったお陰で、かえって日本の足らざるコミットメントが浮き彫りにされてしまったのである。したがって、補給部隊の撤収という「仕切りなおし」に続く我が国の次なる行動を世界は凝視しているのだ。そこで、国連安保理の常任理事国を狙うと公言してきた日本が、洋上ガソリンスタンドの再開でお茶を濁そうとしたら、きっと世界から総スカンを食うであろう。日本は、安倍政権の挫折によって、ここまで緊迫した状況に追い込まれてしまったのである。したがって、民主党の代案も、このような認識を十分踏まえたものでなければならないだろう。これは、「政局」などという中途半端な問題ではないことだけは間違いない。
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