重大な決断

昨日の本会議採決の欠席は、まさしく党執行部による重大な決意の所産である。
私も国対副委員長として、その重大決定の責任の一端を担っているから決して他人事ではない。これまでは、私はつねに国対手法や国対判断を批判してきた。今回は、そんな単純な立場ではない。ただし、「副委員長」といっても20名ほどの2-3期生議員の一人であり、私独りの抵抗でこの重大決定が覆るわけでもないが。

野党の論理はこうだ。
「100時間超の審議を尽くした」との与党の主張には意味がない。
審議終盤の2週間に、教育現場はきわめて深刻な事件に見舞われた。
たった2週間の間に、9人の生徒児童がいじめ自殺で命を絶ち、命の大切さを教える教師のトップである校長先生の3人が自殺した。
公立高校に端を発した未履修問題が、私立へ、中学校へと波及する様相を見せている。
この深刻な事態に、文部科学省・教育委員会・学校という既存の教育行政システムは完全に機能不全に陥っていることが露呈した。
(おまけに、「子供たちに規範意識を!」と叫んでいる安倍首相のお膝元でタウンミーティング偽装が発覚し、国民新党所属議員に対する「議席買収」ともいうべき暴挙が行われた。)
・・・したがって、与党はこの新事態に鑑み、当初のスケジュールを粛々とこなす(採決を急ぐとはそういうこと)のではなく、もう一度真摯に事態を見つめなおし、教育の根本から議論しなおすぐらいの姿勢を見せるべきだ。それには、さらに国会で教育基本法案審議の場を利用して、慎重審議を尽くすべきだ。60年ぶりの法改正なのだから、1-2ヶ月の遅れはどうということではない。すべては、子供たちのため、国家百年の大計たる教育の将来を見据えた英断を!

この論理にどれだけ説得力を感じていただけるかわからない。
しかも、審議復帰の目処は立っていない。すなわち出口戦略は見えない。イラク戦争に突っ込んでいったブッシュ政権に喩えるのは、不謹慎か。
厳然たる共通項は、イラク戦争開戦を決断したブッシュ大統領に向かってパウエル国務長官が放った次の言葉だろう。「You broke it, you own it」(あなたが壊したんだから、あなたが責任を持つのですぞ!)
本件では、主語は「We」、つまり私たち民主党だ。

今朝は、地元で朝食会、明日は午後タウンミーティング。
厳しい有権者の皆さんのご叱責は覚悟している。
この重大決断が正しかったのか否か・・・。
もとより甚だ不本意な決断であったことは隠す必要もないと思う。

私個人としては、せっかく民主党の代案として提出された「日本国教育基本法案」の内容が素晴らしかった(民主党案には、今日起こっている事態にも的確に対応できる「教育行政の責任の所在」が明記され、機能不全に陥った教育委員会の廃止も盛り込まれていた!)のだから、与党に修正を迫り、与野党共同で成立させる道を真剣に模索して欲しかった。与野党間にそのような国民第一、国益最優先の考え方が共有されていなかったことが残念でならない。(ただし、参議院での修正をあきらめたわけではない!!)

どんな事態に直面しようとも数の力で粛々と予定通り法案を上げていく与党の姿勢も、与党案に乗ればアイディアは吸い取られ、(しかも、失敗した場合には)連帯責任を取らされメリットは何もないとする硬直した野党の論理も、等しく批判されるべきだと思う。しかし、いずれにしても、国会審議欠席戦術が国民の理解を得られなければ、返り血を浴びるのは私たち野党国会議員だ。厳しい現実だが、目を背けるわけには行かない。

しかし、頻発するいじめ自殺を解決しなければならない、という課題は重い。そこに野党も与党もない。いじめはいじめる人間がいなければ成立しない。今日のいじめは、私たちの知る過去のいじめとはまったく異質。より陰湿で、より集団的で、より長期にわたる。これは虐待だ。犯罪だ。いじめ根絶には、加害者を厳正に処罰するほかない。加害者が居たたまれなくなるような、加害することが人間として卑怯で卑劣で耐え難いことあることが明白になるよう、社会全体の正義感を涵養しなければならないと思う。そして、いじめの当事者はもとより、「傍観者」や「観衆」に成り下がることに対しても徹底的に反省を求めて行くべきだろう。いじめに割って入る「仲裁者」や「救済者」を増やす努力を教師、保護者、地域社会が一体となって行っていくべきだと思う。

先週末にも空手の市民大会に参加している子供たちに呼びかけた。「皆さんは、空手道を身につけた強い人間です。どうか、周囲でいじめの被害にあっている友達をその力で助けてあげてください。そういう正しい人間になってください!力は正義を実現するためのものです!」・・・この訴えにどれほどの子供たちが耳を傾けてくれたかわからない。しかし、社会の大人の一人として、やむにやまれぬ一歩であった。これからもあらゆる機会を捉えて、子供たちの良心と正義感に訴え続けたい。
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