ひょんと出会った暫くぶりの女達、酒が進み泥の様に眠った。
いや、泥に成れたのかさえ定かでは無い。
正体不明、故に、見やると其処は小奇麗にした不明の部屋であった。
果て、酔うた弾みに知らぬ人の寝所にでも上がりこんだか、いやいや陽の差込から昼も過ぎだろうに、誰も声を掛け無いのは奇妙である。早計やも知れない、こう考えては如何だろう、家の者は総て出払っているのだ。其れにしては香の匂いが瑞瑞しい . . . 本文を読む
窓辺に見える夕日は、ピアノに置かれた本の表紙を焼いている。
黒いピアノの上にある本の、その夕日で熱せられた温度は何度だろう。
触ってみると矢張り熱い。
じっと本を見つめる。
決まってこういう時、熱に耐えかねて背表紙の隙間からぴゅるりと本の蟲が出てくる「耐え兼ねましたか。と、尋ねると「馬鹿を言うんじゃないよ、私はそこまでこらえ性の無いってわけじゃないんだ。と、まるで出てきた明治文学 . . . 本文を読む
足跡を追って歩いた。
雨が降った次の日は、大学裏に足跡が多い。
これは間違いなく人の足跡ではない。
そう判る代わりに、これが何の足跡なのかは判らない「もしも件の足跡ならば愉快なのだが。などと考えていたら、もう楡の木を三歩行った所。
ここからは芝生が生えているので足跡が見つけづらくなる。足跡を目立たせるための雪は今年にはいって未だ降っていない。誰かに足跡の行方を尋ねようにも、木野子 . . . 本文を読む